16 伝統に生きる工業 
小学校第5学年・社会科 
竜王町立竜王西小学校 志村 香代子 
インターネット利用の意図
 子どもたちが,調べ学習をする時に様々なメディアから情報を収集する。情報を集める手段としては,書籍・ビデオ・テレビ・調査・聞き取り等が考えられるが,インターネットを利用すると,その情報収集の幅と深さが広がるのはもちろんのこと,必要な情報を素早く手に入れることができ,十分に子どもたちの要求を満たせることになる。
 地域の伝統工業については自作のホームページ(山梨の伝統工芸を訪ねて)を活用した。図1がこのホームページであるが,1997年から1998年にかけて「小学校5年生社会科 伝統に生きる工業」の学習の際に,子どもたちが活用できることを願い,作成したものである。
 
1 伝統に生きる工業 
(1) ねらい
  社会5上(教育出版)単元名「伝統に生きる工業」の学習の際には子どもたちの身近な地域の素材を教材化して,関心・意欲を持って追究できるような単元構成を図りたい。県レベルくらいまでの地域を広げて,伝統に生きる工業を地域教材化したい。しかし,単なる地域学習に終わらせることなく,教科書の典型的な教材との比較・検討をさせて学習をまとめさせていきたい。
 
(2) 指導目標
 ・伝統工芸品や生産者に対して関心を持ち,意欲的に調べることができる。
(関心・意欲)
 ・伝統工芸は,地域の自然や人々の知恵によって今日まで受け継がれてきていることを考えることができる。
(思考・判断) 
 ・伝統工芸の製造工程などを調べ,技術や工夫などについて自分なりにまとめたり,発表したりできる。
(技能・表現) 
 ・様々な伝統工芸の学習を通して,伝統工芸品は自然や人々の技術によって支えられていることを知る。
(知識・理解) 
(3) 利用場面
  この単元では,次のような学習場面でコンピュータを活用する。
 
 @山梨の伝統工芸について調べる場面
  「山梨の伝統工芸を訪ねて」のフォルダごとCD-ROMに焼き付けてもらい(情報教育センターに依頼)子どもたちはCD-ROMを使用して調べた。画像がたくさん入っているが,短時間で画像が画面に出てくるので,見やすかった。
 A他県の伝統工芸について調べる場面
  サーチエンジンYahoo! JAPANの使い方を教え,自分たちで見たいところを探した。
 
(4) 利用環境 
  
     
      | @使用機器 | 児童用 | FUJITSU FM-Towns SK53J | (Windows3.1) | 6台 | 
     
      |  | 教師用 | FUJITSU FMV-5166D7 | (Windows95) | 1台 | 
     
      |  |  | NEC VALUESTAR NX | (Windows95) | 1台 | 
     
      |  |  | NEC   PC-9821CX | (Windows95) | 1台 | 
     
      |  |  | SHARP  Mebiusノート | (Windows95) | 私物1台 | 
  
 A周辺機器
 B稼動環境 Windows 対応機種
 Cその他の利用ソフト WWWブラウザ Internet Explorer
            スーパーアトラス君
 
2 指導計画 
    | 次 | 時 | 学 習 内 容 (11/11) | 留   意  点 | 
| 一
 次
 
 | @
 A
 
 | ・岐阜県の美濃紙づくりの写真から,身のまわりの和紙の存在を考える。
 ・手づくりの工業について調べるめあてをもつ。
 | ・岐阜県の美濃紙づくりについて,教科書を使って調べる。
 ・岐阜市のちょうちん作りのビデオを見る。美濃紙づくりは,その地域の伝統 的産業と結びついて続けられていることに気づかせる。
 ・調べ学習のめあてをもたせる。
 | 
| B
 C
 | ・牛乳パックを使って,手漉き和紙作りをする。
 | ・牛乳パックを使って手漉き和紙作りをすることによって,手づくりの難しさや苦労について気づかせる。また,手づくりのよさについても気づかせる。
 ・模様や材料の工夫をさせる。
 
 | 
| 二
 次
 
 | D
 E
 F
 | A:インターネットを使い,私たちの山梨にはどんな伝統工芸があるのかを調べる。
 (図1・図2)
 ★インターネットの利用
 
 
 
 A:インターネットを使い他県の伝統工芸を紹介しているホームページを見る。
 ★インターネット利用
 
 
 
 
 B:パソコンソフト「スーパーアトラス君」を使用して,全国の伝統工芸について調べる。
 ・白地図に工芸品名と産地名を記入する。       (図4)
 ☆スーパーアトラス君
 | ・自分が見た内容を簡単にプリントに記入させる。
 ・原材料・作業工程・歴史・感想などを記入させる。         図3
 
 ★山梨県情報教育センターのホームページの中にある「Web教材集:山梨の伝統工芸を訪ねて」にアクセス
 
 ・サーチエンジンYahoo! JAPANの使用方法を教える。
 ・筑後機械すき和紙
 ・広島の伝統工芸
 ・有田焼
 ・京都西陣織り
 ・山梨武山堂
 
 ・コンピュータの台数が限られているため,クラスを2分してAとBに分かれ,交代して行った。
 | 
| 三
 次
 
 | G
 H
 I
 | ・「アトラス君」やインターネットで見た伝統工芸品の中から興味を持ったものについて,2〜3人でグループを作り,もう一度詳しく調べ,まとめる。
 ・模造紙・画用紙・紙芝居・絵本等
 ★インターネット利用
 | ・まとめる方法や表わし方は,自由にする。
 ・他の人にわかりやすくまとめる工夫をさせる。
 
 | 
| 四
 次
 | J
 | ・発表会をする。   (図5・6)
 ・発表を聞きながら,内容やまとめ方,発表のしかたについての評価を個々にする。
 ・学習を振り返っての感想を書く。
 | ・発表しやすいように,壁面に掲示させる。
 ・発表の声の大きさに注意させる。
 
 | 
*山梨の伝統工芸を訪ねて	(http://www.hun.ne.jp/ksimura/)
 筑後機械すき和紙		(http://www.systemlink.com/yame-washi/)
 広島の伝統工業		(http://www.cleo.c.hiroshima-dit.ac.jp/EDU/japan.004.html)
 有田焼			(http://www.arita.or.jp/)
 京都西陣織り			(http://www.obi-385.co.jp/)
 山梨武山堂			(http://www.yin.or.jp/user/takehiko/)
 
3 利用場面 
(1) 目標
  ・インターネットを利用して,山梨の伝統工芸にはどんなものがあるのかを調べる。
  ・サーチエンジンの使い方を知り,他県の伝統工芸について興味を持って調べる。
  ・知りたいことをコンピュータを使って調べることにより,コンピュータを問題解決のための道具として使用する便利さに気づく。
(2) 展開  
   
    | 学習活動 | 活動への働きかけ | 備考 | 
  
    | 1 本時の学習課題をつかむ。
 
 | ・ホームページの構成やリンクのしかたについて説明する。
 ・戻り方や進み方の方法を教える。
 ・画面のスクロールの方法を教える。
 | コンピュータ
 | 
  
    | 2 山梨県にはどんな伝統工芸があるのか調べる。
 ・いろいろな地域に伝統工芸があることに気づく。
 ・見た内容をプリントに記入する。
 ・原材料・作業工程・歴史感想などを記入する。
 | 
 
 
 ・あまり詳しく書かなくてよい
 ・いろいろな地域の伝統工芸について調べるように助言する。
 |  | 
  
    | 記入用紙
 | 
  
    | 3 サーチエンジンの使い方を知る。
 ・他県にはどんな伝統工芸があるのかを調べる。
 | ・検索の方法を教える。
 ・コンピュータ操作で悩んでいる子どもに声かけをする。
 | Yahoo! JAPAN
 | 
  
    | 4 本時のまとめをする。
 ・山梨県や他の県にも伝統工芸があることがわかる。
 | ・その地域でなぜ伝統工芸が伝えられてきたのか疑問を持たせる。
 |  | 
 
4 実践を終えて
 今まで子どもたちが経験してきた調べ学習は,図書室にある書籍や学習資料集・ビデオ等を使っての学習が中心であった。書籍を使っての調べ学習では,どの書籍を選ぶと自分の欲しい情報が手に入るのか,なかなか探しにくいという経験をしている。今回インターネットを利用して調べ学習を行ったが,子どもたちは調べたいことが,素早く現れることに驚いたり,喜んだりしていた。
 本校には,インターネット環境が整ってなく,インターネット接続してあるコンピュータは一台だけである。それも,教師用のコンピュータなので職員室に設置してある。情報教育にしてもコンピュータを活用しての情報活用能力の育成は,手付かずの状態である。そんな中での授業実践であったので,授業者はかなりの苦労をした。やはり,段階をおった計画的・継続的な指導の必要性を感じる。また,情報リテラシーの教育も不可欠であるが,今回の実践ではそこのところは指導していない。
 実際の授業では,職員用のコンピュータ3台・教師の個人用のコンピュータ1台を借り,計4台を使用した。
 慣れないマウス操作に戸惑いながらも,子どもたちは興味深くコンピュータの画面を見ていた。写真や画像が子どもたちには,インパクトが強く,文字だけでは分からないことが理解できたようだ。しかし,その反面,画像に気を取られ文章をあまり読まない子どももいた。やはり,自分たちが調べるテーマがはっきりしてからの方が,真剣に深く調べることをしていた。ただ漠然とページを見るのではなく,何のために何を調べるのかという課題をはっきりと持たせることが必要である。グループによっては,まとめの段階になってからも何回もインターネットを使っていたグループがあり,子どもたちの意欲を感じた。
 子どもたちからは,「インターネットで調べるのは,本を使って探すことよりも楽だった。」「長い時間かけて調べたので大変だったけど,よくできたから良かった。」「インターネットで調べるのは,初めてだったので大変だった。」「コンピュータを使って楽しかった。」「また,調べ学習をしたい。」「色々なことを詳しく調べることができた。」等の感想が聞かれた。
 
   
    | ワンポイント・アドバイス | 
   
    | インターネット接続してあるパソコンが一台しかない本校での工夫は,子どもたちに検索させたいページをCD-ROMに記録し,それを使用して検索させた。実際に,電話回線を使用して接続した画面を見るよりも,画像が早く現われ,リンクした時のページの現われ方も早い。 調べ学習をして,まとめる時に模造紙・画用紙・紙芝居・絵本等子どもたちがやりたい方法でまとめさせたことが,子どもたちの意欲と工夫につながった。さらに,コンピュータを使用してまとめる方法などもさせていきたい。
 発表会の方法も,ポスターセッションなどの方法をとる等の工夫もできる。
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協力いただいた方   山梨県情報教育センター  初鹿 義彦先生
授業実践者      竜王町立竜王西小学校 樋川 みち江・星野 恵子・小林 正彦