X17 地域に学ぶ学習材の開発とネットワークの構築

---理科調べ学習への活用を通して---

 

小学校第5学年・理科

佐賀県唐津市立志道小学校 浦郷 孝一
 


インターネット利用の意図


 簡易校内LANの構築とコンピュータの活用により,児童が社会科・理科・総合的学習等で調べ学習の課題を解決していく時に,図書・新聞などの活字情報を利用していくのと同じように,インターネットのホームページ情報検索や地域の仲間との情報交換,百科事典系のCD-ROM ソフトを利用することが容易になる。さらに,学習の結果をデジタル情報として残すことができ,自分の学習の結果を見直すだけではなく,次の学年の学習素材として残すこともできるなど,コンピュータ・インターネットの利用は,児童の学習にとってより興味関心を持って取り組むことが期待できる。



1 月と太陽
(1) ねらい
 小学校5年理科の単元「月と太陽」では,月と太陽の位置や形などを目視観察し,それらの動き,および位置の関係を学習するが,表面の様子の違いを調べる段階ではコンピュータを活用し,インターネットの情報やCD-ROM情報を取捨選択しながらまとめ,発表交流することで,学習目標の達成を図りたい。
 
(2) 指導目標
 月と太陽について,児童が学習課題を設定し,自分たちで調べていく中で自然事象への関心・意欲を養い,インターネットをはじめとした情報から,それぞれの表面の様子の違いを知り,自然事象についての知識・理解を深め,さらに,自分たちの表現方法でわかりやすい情報に創り変え,交流・発信・蓄積することにより,情報活用能力の育成を図る。
 
(3) 利用環境
@使用機種   Fujitsu FM-TOWNS 20台
        NEC PC9801C13 3台
        この他に職員のノートパソコン 4台
A周辺機器 TAルータMN128SOHO,ハブ
B稼働環境 ISDN回線を利用し,TAルータとハブを介して,インターネットにNECとノートパソコンがつながり,インターネットの情報を検索できる。学習のまとめはFM-TOWNS上でHTML文書として作成する。
Cその他の利用ソフト マイクロソフトエンカルタ97,マイぺディア98
D利用プロバイダ 佐賀県教育センター「EDU−QUAKEさが」

2 指導計画
単元の目標
 月と太陽の位置や形などを観察し,それらの動き,および位置の関係と表面の様子の違いを調べることができるようにする。
@第1次「昼間の月の動き」(3時間)
A第2次「夜の月の動き」(3時間)
B第3次「月や太陽の形と表面のようす」(6時間)
 
3 利用場面

  1. 本時の目標(10/12時間)

    太陽と月の表面の様子について,資料をもとにコンピュータを活用してまとめ,その違いに気づく。

  2. 本時でつけたい情報活用能力

 自分たちで調べて集めた情報を、自分たちの表現方法でさらにわかりやすい情報に創り変え,発信することができる。(情報の創造・発信)(図1)
 
学  習  活  動
機器・教材・教具
教  師  の  支  援
 
1.本時の学習問題の確認をする
2.まとめ方についてグループごとに話し合い,まとめの画面を作る
6グループ) 

★インターネットの利用
 
 
 

3.グループのまとめを見て,よさを探す
 
 
4.次時の学習について話し合う
 
・ワークシート
・シナリオ

・コンピュータ

・図書、CD-ROMなどの資料


★校内LANによるホームページ情報

 

・ワークシート

・大型モニタ

・コンピュータ 

 
・前時の学習を十分想起させる
・何を使って,どのようにまとめれば全員にわかるか考えさせる
・シナリオに基づいてまとめる順序を考えさせる
・違いが一見してわかるような表現方法の工夫と,コンピュータの良さに気づくよう支援する
 
 
 
1グループの発表をもとに,調べ方,表現の良さに気づかせる
 
 
・自己評価と次時発表会への意欲を高めさせる
 

 


         図1
4 実践を終えて
 今まで,学習の観察やまとめの段階で利用していたコンピュータを,今回情報の収集・表現の道具として活用した取り組みであったが,児童は月や太陽などの身近な天体に対し,今まで以上に関心を持って取り組み,自分たちの課題をわかりやすくまとめて伝え,表現する手段として,コンピュータを活用することができた。
 また,HTML文書として修正保存することを通し,情報の加工,次年度の5年生への問題提示としても有効であることに気づくことができた。
 しかし,「天気の変化」の学習のように,ひまわりの画像のような決められたインターネット上の情報収集や,教材を通した学習とは違い,月や太陽については,一般的な公共機関の情報を検索し,自分の課題解決に必要な情報を選択してくるのに相当の時間がかかってしまい,CD-ROM百科事典からの情報収集のみに頼ろうとするグループもあり,昼休みや放課後の時間を利用して作業をしなければならなかった。このことから,児童がインターネット情報を検索する上で,URL 情報を一括してまとめた教材・単元ごとのURL 集を事前に作って,児童はその中から選択できる手立てが必要であることがわかった。
 学習を終えた児童からは「検索が面白かった」「自分でホームページみたいなのができてうれしかった」「みんなの前でコンピュータを使って発表できたのがよかった」「書きなおしや付け加えがやりやすかった」など好意的な感想が多かったが,グループでの学習であったため,入力作業が特定の上手な児童に偏るところもあり,「もっとコンピュータに触りたかった」という感想もあった。
 地域教材ホームページ「わたしたちの唐津市」の活用や「天気の変化」「月と太陽」の学習にインターネットを利用してきたが,「動物や人のたんじょう」の学習において,学習の途中および結果を地域の学校と,テレビ会議システムや「ころんねっと」を使って情報交換(参加校:唐津市立成和小学校 藤浦 聡文,唐津市立鬼塚小学校 高崎 政和)し,まとめていく取り組みを現在行っており,地域ネットワークを利用した学習について追って報告したいと思う。また,児童が収集・選択し,加工・表現した学習内容を,ホームページ上に発表できるスペースと,意見・批評してくれる交流の仲間作りの場も準備したいと考えている。
 
5 これまでの経緯
 本校では、1994年秋、コンピュータ21台導入に始まり,1996年5月,唐津市内の小中学校に通信用コンピュータが1台導入されたときに,佐賀県教育センター“EDU−QUKEさが”をプロバイダとしてインターネットへの接続が始まった。その中でコンピュータリテラシー育成の取り組みから,情報の検索・提示、テレビ会議システム等インターネット活用へと研究範囲を広げ,各教科における道具としての活用の可能性を探ってきた。
 また,社会科等の調べ学習にも利用できるよう,唐津市内各小学校の地域情報を一元的に地域情報データベース化し,学習に利用できるホームページ「わたしたちの唐津市」を別途作成し,佐賀県教育センター“EDU−QUKEさが”上で運用しながら,利用研究を図ってきた。
 さらに,昨年度本事業に選定された後,市教育委員会の支援により、ISDN 1回線およびTAルータ機器が導入され、さらに,本校PTAの援助により,図書館のコンピュータ3台を活用した学習情報センター化と,コンピュータ室,職員室間のネットワーク化を企図した校内簡易LANの構築を行った。こうした中で授業・クラブでのWeb情報の提示や教材情報の取得,職員のインターネット学級ホームページ作成・電子メール研修,唐津市内教職員間の電子メールの交換等に活用してきた。
 本校ではこのシステムを使い、児童がインターネットに常時接続できるコンピュータが現在3台,授業時には,教師所有のコンピュータ4台を加えて,班ごとの情報収集と選択,表現の活動ができるようになり,インターネット活用を探る取り組みをはじめている。
ワンポイント・アドバイス
 調べ学習において,従来の書籍、新聞、周囲の人々に聞く情報だけではなく,その地域でしかわからないことは,直接ホームページや電子メールを活用しながら,当事者の生の声を知る情報取得ができるようになった。
 前年度の取り組みから,学校ホームページの地域情報から,さらに知りたいことわかったことを直接交流する手段として,テレビ会議システムの活用は,直接相手を見ながら話し合うことができるだけでなく,その場で生じた疑問意見の交流で児童の思考を揺さぶり,さらに深めることができる有効な手段であることがわかった。
 インターネット接続から社会科や理科の教材情報の取得と,HTML教材化により,コンピュータ室の21台のブラウザ上で児童の調べ・予想学習に活用することができることがわかり,さらに,グループ台数のインターネット接続でも十分情報の収集を図ることができ,コンピュータの活用範囲が広がった。
 4月から
5月にかけて,簡易校内LANの構築を行った。職員室内のインターネットアクセス,校内文書および教材等のデータの共有を図るとともに,図書室を学習情報センター化し,図書や新聞と同じように,インターネットにもアクセスして情報の取得ができる環境作りを手作業で行ってきたが,少しの時間とわずかな予算で十分な効果があげられるので,ぜひISDN1回線からSOHO化へ取り組んでいただきたい。
 学級交流,授業交流,共同学習,遠隔授業等,インターネットを活用した教師の授業アイデアを活かせるTT活用や,「ころんねっと」・テレビ会議システムの運用支援を本校だけではなく,地域内小学校間でも活かせるシステム作りに取り組みたい。
現在の
Cu-SeeMe3.0等のテレビ会議システムは,「画面が小さい」「時々とまるのがいやだ」「絵と音の時間がずれてわかりづらい」「たくさん準備したのにあまり話せなかった」など,リアルタイム・インタラクティブを利点としながらも,まだソフトウェアのシステム的な問題が完成されておらず,交信の回線の調べたい・話し合いたいときに活用できる状態にはないので,使用する場合は十分な事前準備と回線の確保をして活用を図ってほしい。 

利用したURL
志道小学校
URL:http://www.saga-ed.go.jp/school/shido/