20 インターネットを利用した「交流学習」の推進
 

東京都調布市立深大寺小学校 立山 和弘

1.企画の目的・意図
 
 本校では平成10年度の4月から、インターネットの回線が引かれ、普段の授業への情報の効果的な利用を目指して取り組みが開始されてきた。
 さて、平成9年10月に発表された「体系的な情報教育の実施に向けて」と題した、文部省の「情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育に関する調査研究協力会議『第一次報告』」の『今後の検討課題』の中には・・・・・情報通信ネットワーク環境の整備の在り方としては,中教審答申が指摘するように,近い将来すべての学校がインターネットに接続されることを想定して,当面は,その効果的な活用法,教育利用に適合したシステムの検討,開発,利用の際の留意点等について,実践的な研究を積み重ねることが必要である・・・。と提言している。
 本校の情報教育推進委員会はこの趣旨に基づいて、インターネットに接続されることを想定して,当面は,その効果的な活用法,教育利用に適合したシステムの検討,開発,利用を主に研究してきた。
 具体的には、インターネットを活用した交流学習、校内LANによる交流学習の推進を中心に据えて研究をしてきた。
 
2.実践の準備
 
 上記の二つの目的のために、下記の『交流学習構想案』を検討し、インターネット開設初年度の取り組みを開始した。    

・4   F・・・・・音楽室(Windows98版)
・パソコン室・・・・・21台、MS−DOS版(教室内LANで21台接続)
・パソコン室・・・・・1台 インターネット接続(Windows98版)
・図 書 室・・・・・1台(Windows98版)
・校 長 室・・・・・1台(Windows98版)
・職 員 室・・・・・2台(MS−DOS版、Windows98版)
・保 健 室・・・・・1台(Windows98版)
  ※その他数台のパソコン・ワープロ
 
(2)導入機器
・Windowsパソコン・・・・・2台
・ネットワークボード・・2枚
・ハブ・・・・・・・・・・・・・・・・1台
・LANケーブル・・・・・・50メートル(5本)
 
(3)接続環境
・校内LANは、TPC/IPを使って接続
・ハブは8ポートのものを使用
・LANケーブルは100BASE-TXを使用
・使用ソフトウェアー『IP Messenger』 (フリーソフト)
 

(4)校内LAN配線計画(将来の構想図) ・・・・・・は配線済み

3.企画の実践
 
(1)交流学習の概要−−−その1
 
■【校外に向けて】
 ・学校のホームページ作りを、パソコンクラブの児童を中心に作成する。
 ・電子メールやデジタルカメラの操作、ホームページ作りの基礎的な学習をする。
 ・電子メールを活用し、他校との「交流学習」を推進する。
 ・インターネットを活用した「調べ学習」の推進

@年度当初インターネットに接続されてから、パソコンクラブの児童を中心にホームページの作成をしてきた。最初にどんなホームページにするか児童からアンケートをとりながら進めてきた。その中には「学校行事」「クラスのページ」「学年のページ」「学校の歴史」「地域の様子」等多数のアイディアが出された。その後、デジタルカメラの操作に慣れさせるため、各委員会活動の様子や各クラブ活動の様子を撮影した。そして、学校の周りの「深大寺」や「神代植物園」「水生植物園」「野草園」等の写真もデジタルカメラで撮影してきた。
 夏休みにいよいよホームページの作成にとりかかった。しかし、市教委の指導で児童の写った画像や個人名等は児童のプライバーシー保護の面から慎重に取り扱い、保護者からの「承諾書」をとることとした。インターネットを教育の場で活用しようとする場合、慎重に考えなくてはならないことを痛感する。
 インターネットに接続してあるウインドウズマシンが1台であるため、また「MO」が接続されていないためホームページ作りには苦労した。未完成ではあるが本校のホームページは次にある。(http://www.ne.jp/asahi/jindaigi/school/
A電子メールの活用は、パソコンクラブの児童を中心に行ってきたが、コミュニケー
 ションの幅が、地域・日本全土を越え全世界へ飛躍的に広がってきている。
 「雪国の小学校がいい。」「暖かい地方の小学校がいい。」「外国の日本人学校がいい。」
 という児童の声に答え、宮崎県宮崎市立本郷小学校のパソコンクラブの児童との交流が昨年10月より開始されている。
 また、海外の日本人学校との交流は(http://www.ak.cradle.titech.ac.jp/ngp/)により現在開拓中であり、アメリカのニューヨークとエクアドルのリマの日本人学校と交渉中である。
 児童は日々の天候や学校行事の様子、クラブ活動の様子を電子メールで送っている。
 そして、毎週のクラブ活動の日になると「今日はメール来ているかな。」と返事を心待ちにするようになってきている。
B6年生の「国語科」の授業で「意見作文」を書く単元があるが、今回はインターネット検索と電子メールの活用による「交流学習」で、今までは考えられなかったような成果が出た。まず「意見作文」を書くにあたって児童一人一人が「テーマ」を決めるが、昨今の社会問題を反映してか「ダイオキシン問題」「リサイクル」「青少年の犯罪」「向井千明さん」「森林資源」「ダイエー野球疑惑」「北朝鮮とテポドン」
 「希少生物の保護」「オリンピック接待疑惑」「毒物混入事件」「環境問題」「スポーツとドーピンク」・・・・(原文のまま)等のテーマが出された。児童は自分でテーマに沿った新聞記事・書籍等を参考にするが、ここでインターネットが大活躍した。
 「先生、こんなに資料があってどれを使ったらいいか迷っちゃう。」と言う声が聞かれるくらい情報は豊富であった。豊富と言うよりは情報が多いので、選択する能力も児童に要求された。
 検索の方法も新聞社のホームページで検索したり、「YAHOO」検索したりと児童も検索の方法がいろいろあることを体験してきている。
 資料が入手でき、いよいよ「意見作文」を書き始め、清書にはワープロを使うこととした。ワープロを使うと、知っている漢字に即座に変換でき、児童も好んで利用するようになってきている。
 そして、できあがった「意見作文集」は電子メールを活用し、他校の児童との「交流学習」へと発展していった。他校の同じ6年生の「意見作文」を読み合うことで児童も今までのクラスや学校だけの交流から、飛躍的に視野が広まったと言える。
C本校では毎年、外国からの留学生を招いて「国際交流学習」を開催しているが、今年度は児童の希望でスペインからの留学生による「国際交流学習」が開催された。 児童はこの「国際交流学習」に先立ち、スペインの地理・歴史・気候・文化・教育・子どもの遊び等を調べたいとインターネットを活用した。「闘牛」「フラメンコ」
 「バルセロナ」等の検索で児童は自分の目指す資料を入手することができた。このように「調べ学習」でインターネットは大活躍したり、「国際交流学習」の後もスペインからの留学生との電子メールでの交流も継続している。
D電子メールの活用は、送信する相手が不特定多数ではなく、送信する相手が誰か分かっているから安心して「写真画像」や児童の個人名も出せ、交流できるというメリットがある。ただし、それには教師同士の事前の連絡が必要不可欠である。
(2)交流学習の概要−−−その2
 
■【校内での取り組み】
 ・校内LANの接続をする。
 ・校内LAN用のメールソフトウェアーの活用
 ・各学年の「交流学習」の推進。
 ・各クラス、各クラブ・各委員会等のホームページの作成。

@工事予算が無かったため、50メートルケーブル5本の校内LANの接続は、本校職員で実施した。同じ階であればベランダに配線してもいいが、4階から1階までの配線は大変であった。素人なので50メートルのケーブル4本が絡まってしまい解くのに半日がかりであった。結局コンクリート壁には穴があけられないので、校舎の外壁に配線した。今後、耐久年数を考えるとこれからの校内LANは校舎新築時にテレビや電気の配線と同様に考えて配線して欲しい。しかし、最近は「無線」のLANの接続も可能になっている。とにかくLANの接続の予算化を望みたい。
Aさて、校内LANの接続が終わり、いよいよ『IP Messenger』と言う(フリーソフト)(http://www.forest.impress.co.jp/)簡易メールソフトウェアーをインストールし、校内でのコミュニケーションが始まった。
 冒頭の配線図でも分かるように、「校長室」「職員室「保健室」「図書室」「パソコン室」からメールが送られ、児童相互や児童と教師・職員の交流が開始された。今まで児童からのメールが一番多いのは、校長先生で、次が養護教諭、そして給食の栄養士さんである。

 ・「こうちょうせんせい。きのう、おとうさんと○○へいってきたよ。かえりに△△をかってもらったよ。」
 ・「菊池先生、うちのお兄ちゃんがきのう37度5分も熱が出たよ。おいしゃさんがインフルエンザだって・・・・。」
 ・「いつもおいしい給食ありがとうございます。昨日の『天ぷらそば』はとてもおいしかったです。おかわりしようとしたらありませんでした。今度は、天ぷらを一人2枚にしてください。」
 
Bこの校内LANの接続は、インターネットの中にいるかのように学校内の人達と自由に電子メールをやりとりすることができる。いわば教師や友達との電子メールによるインターネット疑似体験である。児童はたどたどしく「ひらがな入力」をしているが、4年生ぐらいになると「アルファべット入力」ができる児童もでてくる。

C今年度は、各学年の「交流学習」の推進。各クラス、各クラブ・各委員会等のホームページの作成までを目標に取り組んできたが、なかなか思ったようには進まなかったのも現実である。しかし、デジタルカメラを操作して、クラスの行事等を撮影する同僚がでてきたり、パソコン室を活用したり、インターネットで「調べ学習」に取り組んだりと、児童の能力を引き出す授業を目指している教師が多くなりつつある。

 

4.実践の評価

 
 文部省の統計によると、全国の公立の小学校、中学校、高等学校、特殊諸学校のLAN設備導入校は11,421校にも及び、全学校数の30,7%にもなっている。また下記の表のようにホームページ所有校は1,019校にもなり今後ますます増加するものと思われる。
 
    「学校における情報教育の実態等に関する調査結果」    文部省(平成9年度)
 
    総学校数 インターネット接続校 ホームページ所有校
小 学 校 23,811 3,230 1,019
中 学 校 10,475 2,375 801
高等学校 4,152 1,557 986
特殊諸学校 1,836 402 226
 本校ではパソコン室に21台のパソコンがLAN環境にはなっているが、MS−DOSのパソコンである。最近ではMS−DOS版のソフトウェアーも数少なくなり製造も中止してきている。しかし、まだまだ活用可能なソフトウェアーもあるし、この環境の中でも児童の能力を引き出すための活用方法を工夫しなくてはならない。
 このような状況の中、校内の数カ所をWINDOWSマシンで接続した校内LANは、今までとはパソコンの利用形態が違ってきていることに対応し、パソコンの活用方法を工夫たものであると言える。また、教職員のパソコン教育への関心を高める結果にもなった。
 パソコンも以前よりも高性能化し、扱うデータも「画像」「動画」「音楽」に対応したマルチメディア対応になってきている。今後、学校の現場では他校の児童との「交流学習」「共同学習」をする場面が想定される中、学習成果を一人一人が表現し、情報として発信することが求められている。
 これからの児童には、世界中の情報をリアルタイムで獲得することができるよう鋭意環境を整備していきたい。
 今回はできなかったが「校内LAN」(パソコン室LAN)から「インターネット」へと、「インターネット」から「校内LAN」への相互の接続環境が「夢」である。