22 ネットデイズ98-あなたの学校生活はいかがですか?-

--- Web とE-mailを利用した国際交流 ---

中学校第2,第3学年・学級活動,英語

長野市立篠ノ井西中学校 松下 設吉


インターネット利用の意図
 インターネットは,国際交流を進める上で最も手軽で有効な手段の一つであるが,いざ始めようとすると,交流相手が見つからずに苦労する。本校では,数年前より主にE-mailを利用した国際交流を行ってきたが,本年度は,EU連合のNetd@ys Europe98 に参加することにより,新しい交流相手校を見つけることができた。

1 はじめに
 Netd@ys98は,インターネットの教育利用を促進することを目的とし,EU加盟国やその他の地域の学校や教育機関の参加により,インターネット上で国際交流や文化交流を行うプロジェクトである。昨年第1回目が開催され,2回目の今年は10月17日(土)〜24日(土)にかけて行われた。特に今回は,10月21日(水)をJapan Day として,日欧間の交流に当てることとなった。これは欧州委員会が教育分野での日本との協力や交流の拡大をねらって設定したもので,日本では,コンピュータ教育開発センターやこねっとプラン事務局が窓口となり,全国の小中高24校が参加した。
 交流の内容や方法は各校に任され,それぞれの学校がそれぞれのテーマでホームページを立ち上げた。本校では交流テーマを「Let's compare our school life styles.」とし,日欧間の学校生活の様子を比較することを目的とした。
 
2 準備
 プロジェクト実施に当たり,まずホームページを制作する必要があった。準備期間はおよそ2週間程度しかとれなかったため,ページの制作や写真撮影等は全て教師側が行うこととし,生徒には,その内容を考える活動を主に行わせることにした。
 また,日本の学校生活の様子を紹介するために,ページ内に動画を使用したいと考え,コンピュータ教育開発センターより,ビデオ編集用パソコン1台の貸与を受けることができた。
 
3 実践内容
(1) ホームページの制作
 本校の文化祭が終了した10月の初めよりホームページ制作の準備を開始した。今回は,情報発信のみに終わるのではなく,ヨーロッパの学校からの反応を期待しているため,短期間で,しかもそれなりに見ごたえ(読みごたえ)のあるホームページを制作したいと考えた。
 制作には,2年生のクラスと3年生のクラスが関わった。2年生のクラスでは,学級活動での扱い,3年生のクラスでは,英語科の授業としての扱いである。
 2年生のクラスでは,ヨーロッパの友達に日本の学校生活の様子を知らせる目的で,自由に紹介文を書かせた。国際交流では,言語の違いが大きな壁になることがあるが,今回は英語科の教師の全面的な支援を受け,生徒が書いた日本語の文を全て英訳してもらうことにした。「日課」「校則」「流行」という大テーマを決めた後,それらをグループ毎に分担した。細かな内容については,グループ内で自由に考え,分担して紹介文を書いた。英訳という言語の壁が無くなったことで,英語に苦手意識を持っている生徒も自由に伸び伸びと紹介文を書くことができた。次は,その紹介文の一部である。


<給食>
 お昼には給食を食べます。給食当番の生徒がコンテナ室から食器や食事,ミルクなどを教室に運んできて,クラスのみんなに配ります。それを教室の中で食べます。給食はとてもおいしいです。給食がある日は月〜金までで,土曜日にはありません。お昼が必要な人はお弁当を持ってきます。給食はみんなにとって,とても大切です。

<服装(女子)>
 私たちは決められた制服をいかにかっこよく着こなすかを日々研究しています。うちの学校の制服は格好悪いからです。
<スカートの丈を短くする>
 買ったときのままだとふくらはぎのあたりまで丈があるので,腰のところで折ったり巻いたりして膝丈くらいまでにします。中には裾を切る人もいます。一応校則で膝丈までと決まっていますが,それより短い人もいます。
<いろんな靴>
 学校では,底の高い靴をはいて登校する人が多いです。体育の授業には向かないけど,中学校でおしゃれを楽しむには靴下か靴しかないのです。でも,そういう靴は足をくじきやすいのです。
 

 3年生のクラスでは,英語の授業の中で,日本の文化についての英作文を行った。今回は日程的に短時間で仕上げる必要もあり,グループを作って共同で英作文を仕上げる形にした。生徒は,思い思いのテーマについて,相談をしながら紹介文を仕上げていった。次はその紹介文の一部である。


A Japanese traditional sport,judo.
Do you know about judo? It started in Japan as a Japanese martial art. We also have kendo,karate,aikido and so on. Judo is the most popular martial art in the world. It was made by Jigoro Kano in 1882. Judo began as one of the Olymp-ic events in Tokyo. What sport is originated in your country?

Japanese plays
I studied about Japanese plays. TV games are interesting to play but players are not physically. What do you think about TV games? I think children should play active games. You play soccer,basketball,don't you? Old plays in Japan: "kicking a can","Hide and seek,"jumping ropes",etc Games popular now:TV games,basketball,soccer,baseball,tennis,etc
 

 これらの活動と平行しながら,教師側では写真やビデオ撮影,英訳などの作業を進め,不完全な部分を残しながらも,最終的には10月20日, Japan Day 前日にホームページを立ち上げることができた。(図1)

図1 完成したホームページ

(2) Japan Day 当日

 Japan Day 参加校のURL は,EU委員会のNetd@ys 公式ホームページや,日本のコンピュータ教育開発センターやこねっとプラン事務局が立ち上げたJapan Day ホームページによってアナウンスされた。またEUの日本政府代表部を通じて,EUの学校への参加呼びかけも行われた。しかし,公式ホームページのトップページからの階層がかなり深いこと,仮にホームページ を見てもらったとしても,それに対してコメントをつけることには,かなりの労力を必要とすることなどから,すぐに反応が返ってくることは期待しなかった。他の参加校からは,「事前に100通以上もの打診メールを打ったにも関わらず,ほとんど反応がもらえなかった」という残念な情報もあった。そのため生徒たちにもJapan Day の日時は知らせていなかった。

 残念ながら悪い予感は的中し,10月21日のJapan Day 当日(時差を考えて翌日も)には,1通のメールも届かなかった。事前に十分打ち合わせをしてTV会議などを行った学校を除き,多くの参加校で,同じような結果に終わったらしい。

 今回のJapan Day のために,本校では専用のメールボックスを用意した。その後も毎日1度はチェックするものの,メールボックスは空のままだった。「今回のプロジェクトは何だったのか」と半ば諦めかけた25日,待望のメールが舞い込んだ。

 

(3)その後の交流

 メールの差出人は,イタリア北部のVigevanoという町の学校の先生だった。本校のプロジェクトに大変興味を持ってくれている。イタリアのスクールライフについて,生徒たちに紹介文を書かせてくれているようだ。本校の様子ももっと詳しく知りたいと書いてある。さっそく国際交流担当の先生に知らせて,すぐに返事を出してもらう。

 新しい交流を始めるときには,まずは素早いレスポンスが必要になる。相手が交流相手を探している場合には,返事が遅れると,当然他の交流先を探しに行ってしまうからだ。生徒に返事を書かせるには,それなりに時間がかかるので,まずは教師がすぐに返事を出して交流を行いたい旨を伝えなくてはならない。そして,その後何度かメール交換を行いながら打ち合わせを重ねていくと,次第にお互いのペースがわかって,スムーズな交流ができる。

 しばらくすると,先方からは,イラスト付きの生徒のメッセージや写真などが続々と送られてきた。(図2)本校のホームページに載せたムービークリップ(図3)に大変感心し, 是非生徒の声が聞きたいという申し出もあったので,生徒のメッセージとともに,生徒の声を録音したファイルを送ったところ,"How Exciting!!"と大変喜んでもらえた。

 本校では,今までメールの交換というとテキストのみのやり取りが多かったが,今回は写真,イラスト,音声などを添付ファイルで交換することが多くなった。巨大なファイルの添付は,ネットワークや相手のサーバに大きな負荷をかけるため嫌われるが,ファイルサイズに十分注意して使用すれば,文字だけではできない多彩な情報交換ができる。今後,どのような交流に発展できるか楽しみである。



図2 イタリアから送られてきたメッセージと写真


図3 好評だったムービークリップ

 
(4)今後の構想
 今回のプロジェクトを今後に発展させていくために,現在2つの構想がある。1つは相手校との共同作品の制作である。今回の交流では,前述のように画像や音声などのメディアを利用しているので,これらを利用した共同作品を制作することが可能かも知れない。もちろん忙しい学校生活の中で,それを行うためには,各教科の連携が不可欠である。全くの構想段階ではあるが,是非実現したいと考えている。
 もう1つは,このプロジェクトホームページの充実である。今回は,EUの学校を対象としたプロジェクトであったが,様々な国や地域の学校の情報を集めることで,面白い比較ができるのではないかと考えている。本校は現在,アメリカやオーストラリア,インドなどとも交流を行っているので,それらの学校にも協力を呼びかけていきたいと考えている。
 
4 実践を終えて
 Netd@y自体始まったばかりのプロジェクトであり,またJapan Day は初めての試みということで,日本側が期待したほど,EU側の関心は高くなかったという印象である。もちろん,あまり多くの反応があっても対応しきれないことは目に見えているが,せっかく苦労して準備したものの,まったく反応がなかった学校があったことは,非常に残念である。
 インターネットが普及し,ホームページを見ること自体はとても簡単で,特別なことではなくなった。しかし,そのホームページを見て,それに対してコメントをつけたり,また新しいホームページを作って情報を発信するとなると,非常に大きな労力を必要とする。「よろしければ,お返事を。」というようなスタンスでは,まず返答は期待できないと考えてよい。今後,このようなプロジェクトを実施,あるいは参加するにあたっては,「不特定多数に情報発信するなら,反応は期待しない(反応があればラッキー!)。」「必ず反応がほしい場合には,事前に当事者間で十分に打ち合わせをする。」という意識でいないと,生徒を落胆させることになるだろう。
 本校にとっては,今回たった一校ではあるが,反応をもらえたことが大変幸運であった。この一校の相手校が見つかったことにより,今回のプロジェクトは,新しいヨーロッパとの交流の糸口を与えてくれる大変価値のあるプロジェクトとなった。
           

ワンポイント・アドバイス
 インターネットに接続できる環境を持つ学校が多くなり,今後,ますます国際交流は盛んに行われていくようになるだろう。
 国際交流を行う場合にまず問題になるのは,交流相手校である。交流相手校は,独自のコネクションがあればよいが,そうでない場合には,何らかの国際交流プロジェクトに参加するのがよいと思う。多くの場合,プロジェクトには共通のテーマがあるので交流を進めやすいだろう。
 また端末数やメールアカウントの問題もある。インターネットに接続したといっても,生徒用コンピュータ全てから接続できる環境があるとは限らない。またメールアカウントについても同様である。本校でも,インターネットに接続できる端末は少なく,メールアカウントも市のセンターが管理しているため,生徒個人用アカウントはない。しかし,1端末1アカウントでも交流は十分に可能である。本校が今まで行ってきたメールの交換も,ほとんどが(相手校も)教師のアカウントを使用し,生徒のメッセージをまとめて送る形式である。むしろ管理面では,この方法の方が簡単かも知れない。ただ,この方法の場合,全ての生徒にメールの送受信を体験させることが難しいのが残念である。E-mailの利用では,特に,届いたメールを受信する時が最高に感激する瞬間なので,これをできるだけ多くの生徒に体験させたい。 
 

 
利用したURLなど
篠ノ井西中学校ホームページ
 http://www.city.nagano.nagano.jp/school/shinonoinishijh/welcome.html
篠ノ井西中学校ネットデイズページ
 http://www.city.nagano.nagano.jp/school/shinonoinishijh/netdays/index.htm
Netd@ys Europe 1998 公式ホームページ
 http://www.netdays.org/en/home.html
Netd@ys Europe 1998 (日本語版)
 http://www.dataland.co.jp/NetDay/EUNetDay/index.html
CEC NetD@ys Japan Page
 http://www.cec.or.jp/net98/Netdays/
KONET Japan Day Page
http://www.wnn.or.jp/wnn-s/eu/japanday.html