24 「(EUNetday98に参加し)互いの国の日常生活について紹介しあおう。」

<http://www.juen.ac.jp/jhs/eu/index.htm>

3年 英語、社会、技術・家庭
上越教育大学学校教育学部附属中学校   澤田靖
  桑原陽一
  藤田賢一郎



インターネット利用の意図  当校では国際理解教育の必要性を認識し,国際感覚をはぐくむ学習を進めてきた。それは,当初は英語科や社会科などを中心に行われていたものの,断片的に知識を身に付けることが中心であり,系統的に学ぶ必要性を痛感してきた。そこで,教育活動全体を通じて身に付けた知識等を補充,進化,統合する学習の場として,総合学習を開発してきた。また,韓国の廬原中学校との交流を行い体験的な学習を図ってきた。その結果,徐々に生徒の国際理解に対する興味や関心が高まってきたように感じている。
 
一般的に国際理解は,海外でのホームステイを行ったり,外国人を学校に招いてのイベントを行ったりすることが有効だと言われているが,海外との交流を日常的に行うことは困難であるのが実態である。そこで,今回,インターネットを利用することにより,無理なく海外との交流を図ることが可能であり,さらに多様な文化を理解しようとする積極的な心情や実践的態度がはぐくまれていくものと考えた。



1 実践の準備

当校では平成7〜10年度,「21世紀の教育課程の開発」を研究主題に,教育活動をネットワーク化させた独自の教育課程を実施してきた。これは,生徒の追求意欲が連続するように,関連している各教科等の指導内容をネットワーク化させ,そのネットワークをより柔軟にするために当校独自の総合学習グローバルセミナーを位置付けていくものである。
(詳細は「中学校こうしてつくった総合学習」1998年 教育開発研究所参照)
 本実践は,実施学年である3学年部の職員を中心に生徒の実態や今までの学習の経緯を考え,異文化理解,情報等の観点を決めた。また,関連可能な各教科等の学習内容を学習指導要領,年間指導計画から洗い出すことからスタートした。
次に各教科等の立場から,時数を持ち寄ることが適切か,持ち寄った場合どのような学習活動が展開される必要があるか(持ち寄った教科のねらいを達成するため)原案に加除訂正を行った。
 そして,原案を作りなおした上で全職員で再検討した。

  本実践は,上記の研究・実践の手法を用いて英語,社会,技術・家庭からそれぞれ5時間ずつ計15時間を持ち寄り,クロスカリキュラム的に実践した。
(詳細は「教育活動のネットワーク化を求めて〜21世紀の教育課程の開発W〜」1998年 上越教育大学学校教育学部附属中学校研究紀要・教育研究協議会要項参照)

2 実践・評価

(1) 英語科の側面から

 @英語の視点から見た期待される生徒の姿
  英語科ではインターネットの利便性を通じて,期待される生徒の姿を次のように考えた。
о自分の英語や文化の学びに合わせて,随時発信する情報を更新する生徒
о国際理解に関わるタイムリーな情報を発信,受信しようとする積極的な態度をもつ生徒
о双方向でのやりとりを通じて異なった価値観に触れることで,異文化理解に対する受容的な態度をもつ生徒
 A 実践した単元について

単元名

  社会の時間で作成したプレゼンテーション資料を英語にしよう

イ ねらい
о自分の英語力を向上させるとともに,言い換えなど方略的能力を工夫することができる。
о相手の情報を受信したり話題について双方向で意見を交換することによって,異文化に対する積極的な理解の姿勢を身につける。
なぜEU諸国との交流なのか

() 生徒の実態から

 英語を単なる受験科目の一つとしてではなく,コミュニケーションの手段として使えるようになりたいと考える生徒が多い。また異文化理解についても,普段の授業はもとより当校独自の総合学習などにおいて,様々な視点から追求活動や発表会を行いその内容を分かち合った。しかし自国の文化を発信したり,書物ではなく他国の人とふれあいながらその価値観を知る機会がほとんどないのが現状である。

() 教師の願いから

 自分の言いたいことを相手に伝える際,その英語力により表現しきれないことがある。そのような場合コミュニケーション能力の下位概念である方略的能力を用いて言い換えるなど,様々な工夫を凝らして相手に分かりやすく表現できる生徒を育みたいと考える。

 エ 単元の展開

 

時間 活 動 内 容 教 師 の 支 援 評 価
○自分の英語力で表現しきれない部分をピックアップしよう。 ○単語ではなく文型や表現に焦点を当てて各グループに助言する。 ○英語にする際,課題となりそうな場所を把握できたか。
○内容を極力変えずに,別の英語で表現する方法を考えよう。 ○各グループで工夫した点を全体に紹介する。 ○他のグループの工夫を参考にできたか。
○完成した英文を互いに分かち合おう。
※その後随時発信内容を更新する。
○相手に伝えるために更に分かりやすい工夫を,互いに指摘するよう促す。
○自国の文化でも知らなかったことを全体に紹介する。
○全体の中で更に充実した英文を作ることができたか。
 

(2) 社会科の側面から

@ 実践した単元について

単元名

 日本の日常生活を海外に紹介するプレゼンテーション資料を作成しよう

ねらい

o「外国から見た日本」の視点を常に意識しながら,日本の日常生活を多角的・多面的に とらえることができる。

o客観的な事実認識に基づき,自分の思いや考えを的確にまとめ,相手に分かりやすく伝えようと工夫することができる。

なぜEU諸国との交流なのか

 生徒は1年生時の地理的分野において「EU」の学習を経験しており,EU統合の目的や歴史,現状,課題について学んできている。さらに,昨今,通貨統合が話題となり,EUに向ける関心が高まっている。このEUの新たな動きを踏まえ,これからの日本とのかかわりに思いを巡らす生徒が多い。
 EU諸国と日本の結びつきを考えたとき,現在の政治的,経済的なかかわりは大変深いといえる。互いの文化や人の交流も盛んに行われている。したがって,遠くて近い国々としてEU諸国をとらえ,互いの理解が積極的に図られていると考える。そのような状況下で,EU諸国にある日本を紹介する出版物を目にすると,誤解や先入観に基づいた内容が多いことに気付かされる。それは,現代化した日本の日常生活と伝統的な文化が混在していることが原因で,両者のバランスが崩れていたり,一方に偏重したりしているのである。こうしてみると,我々自身のEU諸国に対する知識も,誤解や偏見がないか考える必要がある。
 自国の様子を外国に伝えようとするとき,正しい事実認識に基づき,広い視野から事象をとらえる必要がある。それは,自分を基準にした見方や考え方だけではなく,異なる立場の見方や考え方からも事象をとらえたり,価値を判断したりできることが求められる。そのためには,「我々から見た日本」の視点だけではなく,「外国から見た日本」の視点がもてるよう配慮していくことが大切であると考える。

単元の展開

時間

活 動 内 容

教 師 の 支 援

評 

oEU諸国にある日本を紹介する出版物を見て,気付くことを話し合う。
o自国を外国に紹介する時に必要なことを考える。
o映像資料を提示し,必要に応じて解説文を翻訳して説明を加える。
o情報の受け手の立場に基づいて考えるよう促す。
o誤解や先入観を指摘し,その原因を説明できたか。
o広い視野から正しい事実認識が必要なことを指摘できたか
o日本の日常生活を紹介するために,デジタルカメラで撮影する。 o各グループが撮影した映像の意図を確認したり,助言したりする。 o映像から適切な情報が読みとれるか。
oデジタルカメラの映像の解説文を考え,表現する。
o完成した作品を互いに鑑賞し,意見交換を行う。
o分かりやすい解説文になるよう工夫を促す。
o作品の良さや改善点を指摘し,より完成されたものに練り上げるよう促す。
o簡潔に要点がまとめられているか。
oよりよいものにしようと活発に意見交換をしているか。
 

(3) 技術・家庭科の側面から

@実践した単元について

単元名

 Webページを作成・発信しよう<http://www.juen.ac.jp/jhs/eu/index.htm>

ねらい

о簡単なHyperText Mark-up Language(ISO:国際標準化機構の文書の電子化の規格に準拠 以下HTMLと表記)を作成することができる。

о簡単なHTML作成や修正を通して,自己設定テーマをよりよく表現しようとする。

なぜEU諸国との交流なのか

 生徒は2年生時に「情報基礎」領域の内容を中心とした教科内総合単元において,コンピュータシステム(含OS)の基本にかかわる学習,校内ネットワークシステムを利用した活動,マルチメディア機器を用いた表現活動の基礎について学んでいる。また,生徒はこれらの学習の中で,コンピュータシステムの基本構成やデジタルスチルカメラ,プリンタ等の周辺機器の利用法,ワープロ,表計算データベース,グラフィック, Webページブラウザー,電子メール等の応用ソフトウェアを用いた情報の活用について学習している。
 
本題材では題材としての適時性や,既有の学習経験との連携化を図るために情報技術教育の基本であるプログラミングを含む活動を学習する。
 
マルチメディア情報の作成や発表活動を行うことにより,今までの情報技術にかかわる学習のまとめの一端となるようにしたい。
 
そして,それらを校内LANサーバやインターネットwwwサーバを利用し公開することにより,情報に関する学習の相互評価の場となるようにしたい。
 
生徒は関連して実施されている社会科や英語科の学習で,自分たちが追求してきた内容をEU諸国の学校に紹介する活動を展開している。また,その手段としてインターネットの利用を模索し始めている。
 
そのため,この時期に本題材を位置付けることにより,生徒は発表テーマや内容について高まった目的意識を継続,発展した学習活動を展開することができる。

 エ 単元の展開

時間

活 動 内 容

教 師 の 支 援

評 価

ОHTMLとは何かを,資料を基にまとめる。

оプログラムの基本的な機能と役割について確認する。

о基本的なタグ(開始と終了)の役割を,簡単な例で確認する。

о基本的なタグの使用法を練習する。
о簡単なタグを利用したwebページの例をLANサーバ上に用意しておき,生徒が必要に応じてHELPページとして利用できるようにする。

оプログラムの基本的な機能と役割について説明できたか。

оHTMLの基本的なタグを用いて文字,画像,リンクのページが作成できたか。

оメモ帳,ペイントブラシ,サウンドレコーダ等の応用ソフトウェアを利用し,各自のテーマに沿ったHTMLを作成する。

о必要に応じて,デジタルスチルカメラ,スキャナ,シンセサイザ等のハードウェアを利用する。
о既に発信されている先輩や世界のWebページをブラウズし,参考にするよう助言する。 о自己設定テーマをHTMLを用いて表現することができたか。

о各教科等やグローバルセミナーで学習してきた情報や情報手段を,有効に活用しようとしているか。

о校内LANサーバにログインして,自分の作品を発表する。

о発表を通して,参考になった点,アドバイスを受けた点を基に,作品の修正を行う。

оモラルやセキュリティに対する配慮を促す。

 
о発表会を通して,参考になった点アドバイスを受けた点を考え,よりよい作品に仕上げようとしているか。
 

3 実践を終えて

 社会,英語,技術家庭のクロスカリキュラムで行われた今回の実践を終えて,今後に向けて次のような成果と課題が浮かび上がった。

成果
課題  今後は特に課題であげられた点を解決するような工夫をした実践を積み重ね,よりよい学習を生徒とともに作り上げていきたい。

 

参考文献

上越教育大学学校教育学部附属中学校
「中学校こうしてつくった総合学習」 教育開発研究所 H10 
「21世紀の教育課程の開発T〜W 〜教育活動のネットワーク化を求めて〜」 H7,8,9,10
「上越教育大学学校教育学部附属中学校Webページ」
          
<http://www.juen.ac.jp/jhs/cyugakko.html>