26 国際交流プロジェクト

アメリカの学校との文化交流

                              中学校3年生・英語

山梨県上野原町立巌中学校 降矢 俊彦 三神 恵子


・インターネット利用の意図
 国際交流には,言葉と時間の壁がある。本プロジェクトでは,インターネットを利用することで,海外の相手をより身近に感じる授業を計画した。インターネットの利用は,授業に対する生徒の興味・関心を高め,更に調べ上げた内容をまとめ上げる時に利用するコンピュータの操作能力や英語の能力も伸長させた。特に英語による電子メールやホームページ作成では,生徒の英語を書く力や編集する能力を育成させることができた。

 
1 国際交流をしよう
 
(1) ねらい
 本校は1997年度新校舎開校と同時に校内LAN が整備され,インターネットを活用した実践を試みてきた。また英語科では,絵はがきやカレンダーの交換など国際交流に取り組み,生徒はこうした交流に生き生きとした表情で参加し,国際交流への希望を持つようになっていた。こうした状況の中で,国際交流にインターネットを利用し,生徒の意欲・関心を高めるとともに,自ら設定したテーマに主体的に取り組み,英語を「書くこと」への抵抗感をなくし,意欲的に文化交流する生徒の育成をねらった。
 なお,本実践では単元を通して,次のような生徒の姿を目指した。
@外国との交流に自ら進んで取り組む姿勢を養う。
A個々の生徒の英語で表現する力を向上させる。
Bコミュニケーションを図り,英語を理解する力を向上させる。
Cテーマに基づいた交流を目指し,日本とアメリカの文化と英語についての知識や理解を深める。
 
(2) 指導目標
@情報処理能力の育成
 伝統・文化をメインにした国際交流を行うことで,生徒は日本の文化について理解することが必要となる。インターネットには日本の文化についての情報を多く見つけることができ,こうした情報をみつけ,それを海外の生徒に英語で紹介することは,生徒の情報処理能力の育成にもつながる。
A主体的な学習態度の育成
 テーマを決めて情報を収集し,それを相手に的確に伝達するためには,様々な要素が関わっている。具体的には,「自分の考えをもつ」「情報を集める」「情報を整理する」「情報を表現する」などが考えられる。生徒には,国際交流を成功させることを最終的な課題として意識させ,個々の意欲を生かす学習を心がけさせたい。
B英語能力の育成
 ここで目指す英語能力は「書く力」であり,それは単純に日本語から英語に訳す力ではなく,英語で自己表現していく力としての「書く力」と考えた。そのために,伝えたいことを厳選し,メモや箇条書きとして簡潔にまとめる過程を踏ませたい。また,本単元の学習内容は,情報収集・辞書の活用・参考表現の活用・既習の言語材料の活用など発展的なものであるが,いずれにおいても,できる限り生徒自ら取り組み,解決していくことを目指したい。
 
(3) 利用場面
 本単元では,次のような場面でインターネットを利用する。
@海外の生徒との自己紹介
 国際交流を行う生徒との自己紹介を電子メールを通じて行う。
A交流テーマの情報収集
 日本の文化・伝統について,インターネット上でも情報収集を行う。
B情報の交換
 Aで収集し,生徒ひとり一人がまとめ上げた日本についての情報をインターネットを通じて交換する。ただし,画像や音声などの大きなデータについてはCD-ROM利用の交換も考える。
 
(4) 利用環境
 プロジェクトで利用した本校のネットワーク環境は次の通りである。
@インターネット接続:PPP ダイヤルアップ回線(64Kbps)
Aサーバ:WindowsNT
Bクライアント:Windows95(40台)
C交流相手校 Parkland High School,Philo Middle School,Kroc Middle School
 
2 指導計画


指導計画(12/12)

留意点

@交流相手との自己紹介
★インターネットの利用




 

・電子メールの交換に積極的に取り組ませる。
・既習の言語材料や辞書を用いて自ら英文を書き上げようとさせる。
・交流相手の英文を読み,海外の相手について理解させる。
★交流校と相互に電子メールを通じて自己紹介を行う。

A交流テーマの決定
 

・交流のテーマを,日本の伝統・文化に焦点をあて,決定させる。

BCDEFGHI
テーマについての情報収集と,そのまとめあげ
★インターネットの利用




 

・情報を,インターネットや書籍から収集し,箇条書きでまとめあげさせる。
・有用なURL を一覧にしておき,利用させる。
・主体的な情報収集を行わせる。
・収集した情報を,htmlを利用してまとめさせる。
・「書くこと」に重点をおき,収集した情報を英語で表現できるようにさせる。
★テーマに基づいた内容についてインターネット上で情報収集を行い,htmlでまとめあげる。

JK国際交流のまとめ
★インターネットの利用






 

・単元全体を振り返りながら,国際交流への関心をより高めさせる。
・交流相手の作成した情報から,アメリカの文化や伝統について学ぶ態度を育てる。
・日本とアメリカの相互の文化についての理解を深めさせる。
★交流相手からのテーマに基づいた内容を電子メールで受け取り,授業で活用する。
 

 
3 利用場面
 
(1) 目標
 今回の国際交流では,予め自国の伝統・文化について交流を設定した。インターネットの利用は,生徒の国際交流に対する興味・関心を高めるとともに,英語を積極的に利用することに役立つと考えた。また,自国の伝統・文化の紹介という課題の解決では,書籍ばかりでなくネットワーク上の多くの有益なホームページも対象にし,その情報の収集と処理の能力の育成も考えた。
 
(2) 展開


学習活動

活動への働きかけ

備 考

1 自己紹介メールの交換




 

・交流する相手校の生徒と自己紹介の電子メールを相互に交換して,交流への意欲や関心を高める。
・生徒の様子もデジタル写真として電子メールで送付する。

・コンピュータ
・デジタルカメラ
・電子メール

 

2 日本の伝統・文化についての情報の収集



 

・交流のテーマを受けて,書籍とともにインターネット上でも必要な情報の収集を行う。
・収集した情報は箇条書きで書き留めておき,英語での表現の参考とする。

・コンピュータ
・WWW



 

3 日本の伝統・文化を紹介する英語ホームページの作成
 

・テーマに基づいて情報収集した内容を,htmlを用いて英語の表現になおす。

・コンピュータ
・html
 

4 日米の伝統・文化についての情報の交換




 

・インターネットを利用してテーマに基づいて作成した内容を相互に交換する。
・音声や画像など容量の大きなデータはCD-ROMなどで交換することも計画する。
 

・コンピュータ
・CD-ROM




 

 
4 実践を終えて
 今回の国際交流プロジェクトは,電子メールを利用した自己紹介のやりとりから始まった。電子メールの交換後,生徒は表1 のようなテーマを設定し,必要な情報の収集を行った。なお図1 に生徒の作成したホームページの例を示す。
 
表1 生徒の設定したテーマの例


伝統的なもの

食べ物

文化

古い寺
こたつ・畳
おとぎ話
着物
忍者
 

うどん・そば
お寿司
鍋料理
納豆
漬け物
 

俳句
日本の文字(ひらがな)
テレビゲーム
高校野球
ファッション
 

 

図1 生徒の作成したホームページの例
 
 日本のことを紹介するために,生徒は我が国の様々な文化を学び,それぞれの考えに基づいて海外の相手への情報を創り上げるまでになった。その情報は,文字ばかりでなく画像や音声も含んだ表現にもなった。インターネットやコンピュータはこうしたマルチメディア情報の伝達には有効で,大いに効果的だった。更に交流相手からの反応でも,マルチメディアとして送った情報は大きな感動を与えることになり,日本への興味関心が湧いたということである。生徒は単元全体を通じて実に興味深く意欲的な学習を継続できた。これは,インターネットの持つ双方向性や特性が,本来の目的である『国際交流をしよう』という目標に対する生徒の興味・関心の向上と継続につながったと考えられる。生徒は自然に外国語やコンピュータに触れながら,情報処理能力の上達させることができた。
 今回の国際交流では,アメリカの三校と交流した。このうち,二校は本校の前AET の勤務する学校である。日本での滞在期間中の交流があったために,計画立案から実施まで短期間であったが,交流相手として最適な相手校であった。国際交流において,今回のAET のような日本と海外の両方の学校を知っている人物の存在は,大変有効なことである。
 

ワンポイントアドバイス
 インターネットを利用した交流は,長い小さな筒の両側で行うような,直接触れあうことができない状態での交流である。日本と海外の学校との学年の始まりや行事の違い,長期休暇の違いなどを克服するためには,毎日電子メールで連絡のとれる海外の先生が必要である。今回の相手校に勤務する前AET は,日米の両校を理解していると同時に,在日中からコンピュータに興味を持っており,インターネットを利用した授業実践も行う程の情報教育に関心がある先生であった。そのためこちらで送った内容についても,表現の補足してくれるなど有益な存在だった。いずれにしろ,直接担当者同士がコミュニケーションしたような交流相手は,インターネット利用の国際交流でも是非とも必要だと思われる。
 本校のインターネット接続環境は,64Kのダイヤルアップ接続である。そこで,下記に示したURL は,便利なリンク集として校内で活用した。こうすることで,予め教師が閲覧したキャッシュを生徒が利用し,コンピュータ教室からの複数のコンピュータでもストレスを感じることなく生徒が閲覧することができた。また,教師側もある程度的を絞った閲覧を意図させることも可能になった。この授業後,URL 集は他教科でも始まり,本校でのインターネットの教育利用の範囲拡大にもつながった。
 

 
利用したURL など
澤田こず恵のホームページ(http://syajyo.tamacc.chuo-u.ac.jp/~kozuem_j/)
高橋書店(http://www.calley.co.jp/takahashi/oyaku/oya9806/bk03371-16.htm)
Kura's Web Page(http://www.hdsnet.co.jp/~kura/link/natto.htm)
福島町 Index(http://www.hakodate.or.jp/fukushima/sumo/english/link.htm)
おおっ,忍者だ!(http://www.jr.chiba-u.ac.jp/~96jre21/ninja.html)