28 「掲示板やメール交換を通した交流」の研究

--- 手作り校内LAN構築とその活用 ---

              中学校 第3学年 技術

          土佐市立土佐南中学校 和田 幸稔


インターネット利用の意図

 地理的・時間的条件を考慮しないで交流できる一つの方法として,インタ−ネットの活用が考えられる。本校は昨年度,職員室の1台のパソコンが端末型ダイアルアップ接続でインタ−ネットに接続可能となった。(INS64回線)しかし,授業での利用を考えると接続できるパソコンの絶対数が不足していた。そこで,パソコン担当者が4月に赴任と同時に,スタンドアロンで使われていた9台のWindows95搭載の PC/AT互換機を校内LAN接続とし授業での利用を模索した。利用方法としてはTV会議システム,E-mail,掲示板などがあるがまず手始めに掲示板・E-mailに注目した。
 
また,WEBを作成しインターネットを通して高知県の教育改革で声高く言われている「開かれた学校作り」の一つの方法として,本校の様子を保護者や全国に発信することも目的の一つとした。


1 手作り校内LANの構築

(1)ねらい

 豊富な教育予算があれば,容易に校内LANが構築できる時代である。一方LANに関する機器やソフトの価格が安くなり,予算の少ない学校でも段階を追って努力すれば,どの学校でも校内LANが構築できる時代でもある。このことを,証明するために「手作り校内LANの構築」の課題をサブテーマとした。
 すなわち,ネットワーク構築の経験がなくても,校内の教員が努力して校内LANを構築し,生徒一人一人が「LAN型ダイアルアップ接続」でインターネットに触れる機会を多くすることを試みた。

(2)少ない予算で構築するために下記の項目を考慮した。

    1. 教員が汗を流す:業者や外部のボランティアに依頼せず,配線工事から10BASE-TケーブルのRJ-45コネクター取り付けまで校内の教員で各種作業を行う。
    2. 接続費の軽減:専用回線の導入は困難なので,LAN型ダイアルアップ接続」とする。
  • 専門家の活用:教育センターの活用。OSの導入・メンテナンスはそれ相当の技術が必要である。本校の教員は各種の設定・運用に必要な知識・技術を習得していない。そこで,専門家である県の教育センターの情報担当者にお願いすることにした。

    (3)サーバーソフトの条件

      1. 安いこと。
      2. 「LAN型ダイアルアップ接続」で外部とE-mail交換ができること。
      3. 遠隔メンテナンスができること。
      4. サーバOSはブラックボックス化ができること。

    (4)サーバの内容(FreeBSD 2.2.5の導入)

         UUCP:外部とのメール配送システム

        iij-ppp: ダイアルアップルータ機能

        delegate:プロキシサーバ 

        sambs:ファイルサーバ・プリンタサーバ

        pop: メール受信サーバ

        sendmail:メール送信サーバ

        Apache:校内用WEBサーバ

        dhcpd:IPの自動割り振りサーバ

        poppasssd:パスワード変更サーバ

     (5) 結果

      1. 10BASE-Tケーブルが届くところは,どこからでも運用が可能になった。「潮風祭」(文化祭)が体育館で開催されたとき,臨時にケーブルを会場まで引き,インターネットカフェを運用した。参加された保護者の方にもネットサーフィンをして頂き,その場で本校WEBの感想をもらうことができた。保護者の方でキーボ−ドに慣れている方は少なく,貴重なご意見を直接伺える機会を得ることができた。
      2. サーバ   PC/AT互換機(Pentium  133MHZ)…1
      3. クライアント PC/AT互換機(コンピュータ室)…7台(4台追加)
      4. クライアント PC/AT互換機(廊下) 1

     (6) 費用

       校内LAN構築のために購入した物は,次の通りである。購入費は,¥57000円。

      1. 10BASE―Tケーブル(300m
      2. RJ-45 コネクター 20
  • 圧着ペンチ    1
  • HUB(8ポート)  2

     (7) 追加購入品

     2学期になり,CECの自主企画に採用され研究資金の援助があった。また委員会よりノートタイプのPC4台配備された。そのため次の物を購入した。

    2 活用例(実践例)

    ― 「掲示板やメール交換を通した交流」の研究 ―

    (1) ねらい

     教室のPCから簡単に世界のPCに接続できることを実習を通して経験し情報化社会の便利さ問題点を学習する。 

    (2) 指導目標

    E-mail交換を通して情報化社会の便利さを知る。

    WEBの掲示板を生かし簡単に交流できること。

    情報化社会の課題を考える力を養う。

    (3) E-mailによる情報交換

     UUCPサーバを入れているため,校内用のローカルアカウントがグローバルなアカウントとして利用できる。

    (4) 本校WEBにある掲示板の活用 

    掲示板は2種類準備した。一つは,自由に記述可能な「交流掲示板」と他は,アクセスの時にパスワードを必要とする校内専用の「掲示板」である。

    @ 交流掲示板

    1. 北海道との交流。
    2. 長期研修で10月より新聞社へ派遣されている教員と情報交換。
    3. フランスのパリ在住の邦人との交流。

    A 校内掲示板

    1. パスワードを設定しているので外部からは見えず,気楽に掲示板に書きこみができる。

    (5) 廊下にあるコンピュータ利用

     生徒ができるだけPCに触れインターネットが利用できるように,職員室前の廊下にPCを出した。

     

    3 単元課題:E-mail交換

     日本経済新聞によると(1998年12月13日),高知県の県庁職員全員約6000名に,E-mailアカウントが発行されるとのことだ。また,県の教育委員会は,各学校から積極的にインターネト接続するなど(全国で岐阜県に次ぐ普及率,今年度中に100%になる予定)活用方法を模索中である。この様な時代背景の中E-mailを体験するのは意味あると思われる。

     

    4 利用場面

    1. 目標

    インターネットを利用したE-mail交換ができる。

    E-mailの交換を通して情報社会の便利さを体験する。

  • 指導計画

    指導計画(5 / 5) 留意点
    @ ブラウザの操作方法に慣れる。
    ・マウス操作でネットサーフィンができる。
    A 検索ができる。 ・文字入力ができる。
    ・興味のあるWEBを検索する。
    B 掲示板の利用方法が理解できる。 ・交流掲示板と校内掲示板の違いがわかる
    ・交流掲示板への書きこみのマナーを徹底指導する。
    ・必要に応じて生徒が書きこむ前に内容・表現の確認を行う。
    CPocket Mailerの基本操作方法 ・操作が複雑になるので,最初は一斉指導で確実に操作方法を指導する。
    ・PCが2人に1台なので交代で実習させる。
    D Pocket Mailerで自由にメールの
    発信・受信ができる。
    ・校内・校外へ発信できる。
    ・初対面の方へメールを出すときのエチケットに気をつける。
    ・県内の学校へメールを送る。
    ・橋本県知事・土佐市・教育研究所などへも出してみる。

     

    5 本時について

    (1) 目標   

    イントラネットを利用したE-mail交換ができる。

    UUCPサーバにより外部へメールを発信する。

    (2) 目標について

     本校のように普段授業で使っているMS-DOSのPCとイントラネットで接続されたWindows95搭載のPCでは操作方法が少しずつ違ってくる。また,E-mailを送・受信するための基礎技能として,メーラの操作方法を習得する必要がある。これらの事項を考え時間をかけて指導し,目標が達成できるよう配慮する。

    (3)展開

    学習活動・内容
    指導上の留意点
    備考

    MS-DOSのPCを立ち上げる。


    2本時の内容を確認・理解する。        

    Windows 95搭載のPCを立ち上げる。

        各種の手順を確認。

        Pocket Mailerを立ち上げる。

    4メーラの操作

         

      宛先 ⇒(本校の教員へ)

      写し ⇒(***@tosamn-j.edu.net-kochi.gr.jp)

      題名 ⇒ (自由)

     

    校内・校外へ配信する。


    2人組で1台のPCを使う。

    ディスクトップのアイコンをクリックする。

    FDをドライブA:に入れているか。 

    各自のメーラを使う。

    宛先⇒教員のアカウントを半角で入力。

    写し⇒自分の メ−ルアカウントを半角で入力
    題名⇒好きな題をつける。


    アドレス一覧が出た場合は
    ,ドラッグして移動させる。

     

    既習事項の確認。

    誰に送信するか課題の確認。

     

    協力して操作できるか。

    メールアカウントの確認。

     

     

    半角入力の徹底。

    5交代し(4)の操作から行う。

    6校内の教員に送信。

    7校外へ送信。

     


    8本時間のまとめ

     

     

    メール到着の確認・読む。

    簡単な文章とする。

    能力の高い生徒は校外へも送信させる。

    クリントン大統領(ホームページを使う)
    小渕首相(ホームページを使う)
    橋本高知県知事
    土佐市市長 などへ。

    スムーズに操作できたか。
    E-mailの便利さに気がついたか。

     

     

     

    余裕のある生徒は校内掲示板に感想を書きこむ。


    授業者に感想を送信。

     

    6  実践を終えて(校内LANを構築して)

     コンピュータの専門家でない教員が校内LAN構築に挑戦した。学校の状態や担当者の技量を十分て,どこまで自分たちで可能かどうかを分析し,不可能な部分は他の教育機関に依頼した。ケーブルを通すために管理職と一緒になってコンクリートドリルで校舎に穴あけ作業をするなど,可能な限り教員で努力した。ただ唯一OSのインスツールは教育センターの専門家に依頼した。
     その結果,Windows NTをサーバとした同様な環境で業者に依頼した他校の場合と比較すると格段に安くできた。費用が5万円台で済んだことは,予想通りの低価格で構築できたと思っている。ただし,校内LANの知識がなかったため図書購入費が同等な金額が必要だったことも事実である。
     いつでも自由に使えるPCを複数廊下に準備したかった。しかし,そうするとコンピュータ教室からアクセスできるPCが少なくなるため,使えたのは1台のみであった。昼休みや放課後は常に生徒が操作している様子が見えPCはフル稼働していた。このPCの管理については,特定の生徒に任せた。廊下は一階の窓際にあり外部から見える位置に設置せざるを得なかった。そのため常設は管理の面から不安があり朝廊下にPC>を出し,各種ケーブルを接続し,放課後回収する作業を生徒に依頼した。その生徒が遅刻・欠席したときは,PCが使えないということもあったが,生徒自ら管理したPCということもあり生徒達は大切に使っていた。
     メール配送システムとしてUUCPを使っている。このUUCPサーバは「LAN型ダイアルアップ接続」で外部(UNIXサーバ)とメール交換が可能である。このことからもFreeBSDを採用したのは良い選択だと思っている。本校のALTは常勤ではなく,月に1週間の勤務となっている。ALTがプロバイダーに加入しE-mailアカウントを取得したため,英語に興味のある生徒とメール交換をはじめた。ALTは自宅で生徒は学校でメールを利用している。 更に,学校に来ていない生徒(登校拒否)に級友が学校の様子をメールで知らせるなど授業から発展させて使っている生徒に学ぶことも多かった。


    ワンポイント・アドバイス

    LANという言葉を知って一年以内で校内LANが完成した。「案ずるより生むが易し」まさに,この言葉通りだった。「LAN型ダイアルアップ接続」で僅かな予算で簡単に複数のPCからインターネトに接続できました。現在,全国の中学校には,PCが少なくとも20台は導入されている。本校の実践が校内LANを導入したいものの予算で躊躇している学校の参考になれば幸いである。ただしこれはあくまでも予算がないため,暫定的に構築しており各種の法律を考慮すると,課題があるかもしれない。その理由は配線工事などは,有資格者が施工する必要があると思われるが,無資格の教員が作業したことなどである。なお,業者のWindows NTをサーバとした当校見積もりは約750万円だった。

    利用したWEBなど

    本校WEBの掲示板     http://www.edu.net-kochi.gr.jp/home/tosamn-j

    高知県国際理解教育研究会  http://www.edu.net-kochi.gr.jp/circle/kaigai/

    パリ日本人学校 紹介WEB http://www.edu.net-kochi.gr.jp/circle/kaigai/paris.html

    富士通静岡エンジニアリングWEB http://www.fsel.co.jp/pocket/