30 いくつあるかな数学の解き方!
 
中学校第1,第2学年・数学
慶應義塾普通部 荒川 昭

インターネット利用の意図
 慶應義塾普通部では,通産省の100校プロジェクトに参加してインターネットの利用について積極的に取り組んできた。1年目は海外とのメールの交換やホームページ作成で情報発信,参加2年目からはインターネットの教科利用の方法として「数学における多解問題」のプロジェクトを実践している。
 ここ数年でインターネットは,通産省の100校プロジェクト,NTTのこねっとプラン,自治体主導の導入などで,学校現場にも徐々に利用環境が整備され活用されてきている。また,数年後には全国の各学校でインターネットが利用できる環境が提供される。学校現場でのインターネット活用は,ホームページを作成して情報を発信し,メールを使っての海外との交流を行なう。それだけでインターネットはよいのであろうか,学校でのインターネット活用推進のポイントは教科の授業での活用であり,実践した。

 
1 課題学習
(1) ねらい
 同じ問題をいろいろな角度から考え,解答を発見し喜んで取り組んでいる様子や,1つの解き方に触発されて何通りもの解法を発見する生徒の姿をみて,日頃の授業では不足している自分自身で考えることの素晴らしさや発表することの大切さを実感した。既知の学習内容はわずかであるが,同じ規則を使って深く考え込んでいく大切さを感じた。いろいろな学校間で1つの問題を考え,解法を交流し,インターネットのインタラクティブな面も生かして新しい教科の授業活用にしようというのがねらいである。
 実際に問題の解答をインターネットを利用して送り,他校の先生方と生徒が交流をもつ。インターネットを使うことで生徒の興味,関心が増し,自主的,能動的に数学の問題を解こうと取り組み,他校や他学年の生徒などの考え方を知ることによって,数学の考え方の多様性について学ぶ。
 
(2) 指導目標
  数学の問題として1999を使って数を作る問題などを考え,クラスごとにまとめ,インターネット上に解を登録する。ブラウザー(インターネットエクスプローラー)の使い方,サーチエンジンの使い方を習熟させ,インターネットでの数学の利用を考え,情報倫理についての話もおこなう。

(3) 利用場面
 今回は復習をかねて3学期に行っているが,ルートや階乗やガウス記号という新しい記号の学習としての授業や,1年生での正負の四則を学習してからのまとめとして利用することもできる。そのページにある問題の単元は次のようになる。
 数学における多解問題から(図1)
 ・1999で数をつくる。  
  1999の順をかえないで正の数,負の数の加減乗除,指数を使って整数をつくる。
 ・星形五角形の角の和が180度になる証明をする。
  多角形の内角,外角の応用として補助線をひいたりして証明を考える。
 ・負の数×負の数=正の数になるわかりやすい説明
  負の数と負の数の積が正の数になるわかりやすい説明を自分で考える
 ・分数
  分数の割り算が逆数を使ってかけることのわかりやすい説明。
 ・アキレスと亀
  アキレスが亀に追いつかないという逆説のわかりやすい説明。
 ・数学は大切か
  いろいろな人に大切かどうかを尋ね,自分なりの意見をまとめる。
 
(4) 利用環境
 @使用機種 NEC PC-9821 Xa13
      (Windows95,Pentium133MHZ)
 A周辺機器 ディスプレーMuiti Sync 15
 B稼働環境 インターネット環境 1.5M光ケーブル スイッチングHub 
       校内LAN敷設,センターモニター
 Cその他の利用ソフト ブラウザーのソフト インターネットエクスプローラー3.0
 
2 指導計画
  指導計画    留意点
インターネットとは何か。 倫理面などの指導(ネチケットなど) 
ブラウザー(インターネット・エクスプローラー)の使い方
★インターネット使用
有害情報などの扱いについて
サーチエンジンの使い方
 YAHOO! JAPAN YAHOO きっず
 での検索の仕方を学ぶ
★インターネット使用
YAHOO!きっず にインターネットとは何か
インターネット利用ガイド
メールマナー入門などがある。
クラスごとに解をまとめる。
多解問題の解を登録する。
★インターネット使用
解答を送る。
他の数学のページもみてみる。


3 利用場面
 
(1) 目標
 普段の授業は単元を教科書で学習し,先生から教わることが多いが,自分で興味のある問題を選んで考えたり,自分の考えを解答としてメールで送ったり,公開して他の人の考えを聞くなど自発的,能動的な生徒の動きとする。
 
(2) 展開
  学習活動  活動への働きかけ  備考
数学における多解問題
   (図1)    
1999で数をつくる問題
   (図2)
グループごとに範囲を決めて,数を作る問題を考え,斬新なアイデアで数を作っている生徒に発表してもらい,同様な考えで別の数が作れないか。発問する。 解答をCGIで登録することができる。
(図4)
星形五角形の角の和が180度になる証明をする。 (図3)
三角形の外角は内対角の和に等しいを使って角を集めること。
平行線を利用して角を移すこと
多角形の内角の和,外角の和の応用として補助線をひいたりして考える。
紙面で考えて提出したものを,後でスキャンして,電子データ化する。
数学は大切か。
大切・大切ではないというそれぞれの意見を
まとめて話し合いをしてみる。
 




図1 数学における多解問題のページ




図2 1999で数を作るページ




 図3 星型五角形の角の和のページ


 図4 解法登録画面


4実践を終えて
 今回は復習を兼ねて冬休みの課題として各自に考えてきてもらったものをまとめる授業を行った。「インターネットでメールは送ったことがあったけれども,数学に使ったのは初めてです。使い方がわかってとても良かった。家でもやってみたい。」「普段の授業は,先生が,生徒を教えるという一方通行的な感じだったが,これは生徒自身が考えることなので楽しさが増す。数学は生きていく上でかなり重要だと思っている。それは,人類が進歩したのは科学つまり数学的思考によるものである。今後,あらゆる分野において数学を使うものと思うので,これからもがんばって身に付けていきたい。」「多解問題は取り組むと当然,解がたくさんあるので,今まで一つの方向からしか見ることのできなかったものが,いろいろな方向から見ることができるようになり,柔軟な発想を生み出せるので良いと思う。数学がただ知識を詰め込むだけのものなら,特定の職業に就かない限り大切ではないと思えるが,実際は数学を学ぶことによって柔軟な発想が身に付くのだから,どんな職業についても,未来で何があっても数学は大切であると思う。」など,なぜ数学を勉強するかということでの感想がかなりあった。また,生徒は自分の考えをインターネット上に公開するということにも喜びを感じていた。ネットサーフィンをするときにもいえることであるが,WEBをただ見て授業時間が終わりにならないように教員側がうまく発問したり,ワークシートを作ったり,生徒同士で話し合わせたり,発表させたりすることが必要である。普段の授業以上にインターネット利用では,WEB上に公開されている教材の質と利用の仕方に工夫が必要である。今回は学校での一斉利用であるが,この取り組みは生徒が自宅にいても,同じように可能であるので,インターネットで地域,時間,学校を越えて学習ができるようになる。インターネットでの共同学習が盛んになることを期待している。


ワンポイント・アドバイス
 インターネットを利用して,情報を得るにはサーチエンジンと呼ばれる,検索を使用
するとよい。検索にはYAHOO やgoo,infoseekなど様々なものがある。
 YAHOOキツズは生徒が見ても安心なページしか登録されていないので,情報は少ないがこの範囲で検索させる方法もある。
 インターネットを自宅で使用するには,モデムなどの周辺機器を用意して,プロバイダーと契約して,高価な接続の使用料を払って利用することになる。生徒は授業でインターネットを使うことをとても楽しみにしている。また,インターネットといっても実際はホームページを見るだけであったが,最近はCGI,JAVA,JAVAScript,VBScriptなどのプログラムを利用して,インタラクティブなやり取りが出来るようになってきている。このようなホームページは無料でアクセスできる(公開しているところ)が多いので環境さえ整っていると世界のどの場所の人ととも共同学習(コラボレート)できる。
 教材がとてもおもしろいものが多くなってきている。是非有効に活用されたい。

利用したURLなど
YAHOO!JAPAN  サーチエンジン              (http://www.yahoo.co.jp/)
YAHOO!キッズ サーチエンジン 小・中・高対象       (http://kids.yahoo.co.jp/)
数学における多解問題                (http://www.kf.keio.ac.jp:8000/math/)