ネットワークでらんLAN 学校事務
          --- 学校事務の効率化と地域連携を目指して ---
 

葛尾村立葛尾中学校 坂下 正重


インターネット利用の意図
 本校では,平成6 年度以降,通産省及び文部省の支援を受けた「100 校プロジェクト」「新100 校プロジェクト」に参加することによって,インターネットと接続する機器と回線の提供を受け,積極的に授業に導入し,学校教育全体でネットワーク環境がもたらす学習効果の可能性についての追求と検証に努めてきた。
 これまでの取り組みにより,校内のネットワーク環境の整備は進み,職員室にいながら自分の机の上からインターネットを利用できる環境になっている。そこで,学校事務におけるネットワーク環境の活用の研究を,教育分野のこれまでの研究の成果と課題を参考にしながら進めようと考えた。

 
1 学校事務の効率化と地域連携
(1) ねらい
 今日の社会の急激な変容は,学校に大きな影響と変化を与えており,中央教育審議会の答申や完全週休二日制に向けての学習指導要領の改訂など,TVのニュースや新聞で毎日のように取り上げられている。また,この数年以内に各学校にもインターネットを導入する予定であることも見逃せない事実である。最近では,一般企業においては事務でのネットワーク環境の利用はごく当たり前であるが,学校事務におけるネットワーク環境の利用の研究は進んでいるとは言いがたい。その要因としては,学校事務職員の配置が一人であること,地域の各学校の事務職員との連絡方法が電話か郵便しかないことが挙げられる。
 そこで,学校事務において,作業の効率化と事務職員同士の情報交換,文書データの共有化のためのネットワーク環境の整備と活用を図りたいと考える。
 
(2) 活用目標
 一般企業における事務のネットワーク化は,以前より整備されていたが,インターネットの発達により,企業内イントラネットを構築している企業は増加している。そして,本校にはその基礎となるネットワーク環境が整備されているため,物理的なネットワークの構築はほとんど必要ない。その恩恵のありがたみを感じながら,ネットワーク環境の利用についての研究を推進していくことにする。

(3) 利用場面

 

(4) 利用環境

 

 

      図1 LAN カード             図2 職員室のHUB

 

 

 

      図3 共有プリンタ          図4 職員室の配線のようす

 

 

2 実践計画


実践計画

留意点

@共有データを利用し,作成した文書等を共有プリンタで印刷して職員に配布する。
 ★校内LAN 環境の利用

・ネットワークセキュリティの関係上,機密に触れるファイルは,アップロードしない。

A「事務通信」を教職員メーリングリストを利用して配送する。
 ★電子メールの利用

・校内向けとはいえ,メーリングリストの性質上,メンバー全員に配送されるので内容を精選する。

B学校事務に関する情報を収集・蓄積する。
 ★ホームページの利用

・著作権等の問題も考慮し,リンクの許可をもらうなど,ページの製作者とコンタクトをとる。

C定型文書のテンプレートを共有化する。(ブラウザによる文書管理)
 ★ホームページの利用

・管内事務職員の協力を得て,共有化する文書の内容を精選する。
 

D管内事務職員のメーリングリストを運用し,情報交換をする。
 ★電子メールの利用

 

・活発に情報交換ができるように,簡単なメーリングリストの運営方針を立てる。

 

 
3 利用場面
(1) 目標
 ネットワーク環境を有効に利用することで,文書データやプリンタ等の周辺機器の共有化を図るとともに,管内学校事務職員との情報交換を通して,交流・連携を図る。
 
(2) 展開

実践内容 ネットワーク環境のかかわり

1 校内の事務処理,教職員に対する事務連絡をネットワークを利用する。
(1) 共有データを利用して文書を作成して,共有プリンタで印刷し,文書を配布する。

(2) 「事務通信」を教職員メーリングリストを利用して配送する。

 

・今まで作成してきた文書データは,ファイルサーバに蓄積する。
・共有プリンタは,他の教職員も利用しているため,一度に大量のプリントアウトはさける。

・学校事務に関するお知らせなどを「事務通信」として,校内教職員メーリングリストを利用して配送することで,職員会の短縮化・学校事務の効率化を図る。(図5)

2 学校事務に関する情報収集・蓄積を行う。



 

・全国・他地域の学校事務研究会や事務職員が個人で運営しているホームページを検索し,事務に関する有益な情報を収集する。
・得た情報は,リンクを張るなどしてホームページ化して蓄積し,管内の事務職員に利用してもらう。

3 管内の学校事務職員との連絡調整・情報交換を行う。
(1) 県や市町村で規定されている文書のテンプレートを共有化する。


(2) 管内学校事務メーリングリストを作成し,情報交換をする。


 

・各学校で共通の様式文書をファイルサーバに蓄積する。
・ファイルの一覧表をホームページ化し,蓄積した文書にリンクを張ることにより,簡単にダウンロードできるようにする。(図6)

・管内(あるいは,他地域)の学校事務職員を対象としたメーリングリストを利用し,事務に関する情報交換を行うことで,交流と連携を図る。
 

※葛尾中学校事務の部屋
 (http://www.katsurao-jhs.katsurao.fukushima.jp/SCR/bange/jimu/)
 

        図5 メールによる「事務通信」    図6 定型文書テンプレート一覧のページ

 

4 実践を終えて

  私と本校との出会いは,インターネットとの出会いでもあった。初めて体験するインターネットは,私に驚きと感動を与えてくれた。そして本校2年目の今年度,学校事務に関する研究活動のテーマを与えていただき,このような研究に取り組めたことは,学校事務に対して少なからずマンネリ化しつつあった私の心に,大きな刺激となって,学校事務改善への意欲・関心を高めることができた。

 また,パソコン初心者である私にもホームページを持つことができ,小さな情報発信の基地として活動を始めることができた。ご協力いただいた本校職員及び地域の学校事 務職員の皆さまに感謝申し上げたい。今後も,ネットワーク環境を活用した情報を参考にしながら,学校事務の効率化に努めていきたい。

 最後に簡単であるが,成果と課題を挙げて終わりにしたい。

 

(1) 成果

 ・職員室にLAN が整備されており,すべての教職員が同一の環境で利用することができるため,データの共有化やメールによる事務通信の配送については効果的であった。

 ・他地域の学校事務についての研究を調べていく過程で,全国規模の学校事務メーリングリストに出会い,参加することができ,多くの有意義な情報を得ることができた。

 ・テスト段階ではあるが,定型文書のテンプレートを共有することは,これからの学校事務の効率化を図る上で,有効な手段であると考える。

 

(2) 課題
 ・本校独自の学校事務のページを開設することはできたが,技術的にいたらず,内容の充実を図ることができなかった。

 ・管内の学校事務職員メーリングリストの運用ができず,カーボンコピー(cc配送)で複数人にメールを送っていたため,操作が面倒なところがあった。

 ・インターネットに接続可能な事務職員との連絡はメール等で可能であったが,個人的にも学校のネットワーク設備の差により,従来通りの連絡方法を取らざるを得ない場合があり,早急なネットワーク整備が待たれる。

 

ワンポイント・アドバイス
 学校事務メーリングリストは,学校事務のホームページを検索システムにより発見した。メーリングリストへの参加の仕方は簡単で,参加希望のメールを送るとすぐにメンバーになることが可能である。現在,全国の小・中・高・大・教育委員会と様々な教育分野の事務職員が約170 名ほど参加している。メーリングリストは,情報交換とメンバー相互の交流の場であるので,参加した際には,どんどん発言してメンバーに打ち解けることをお勧めする。

 
参考文献
 日本放送出版協会 しりごみしている先生のための「実践インターネット講座」
 葛尾村立葛尾中学校「インターネット活用研究発表会」集録(自作)
利用したURLなど
 学校事務メーリングリスト(http://www2.justnet.ne.jp/~junko_honkawa/gakujiml/)
 福島県葛尾村立葛尾中学校(http://www.katsurao-jhs.katsurao.fukushima.jp/)
 ※葛尾中学校事務の部屋
  (http://www.katsurao-jhs.katsurao.fukushima.jp/SCR/bange/jimu/)