36 家庭・地域社会と連携した心豊かな人間性の育成
(開かれた学校づくり)

--- 情報発信による諸活動の意識高揚をめざして ---


中学校第1学年・特別活動

武雄市立武雄北中学校 納塚 定生


インターネット利用の意図
 今日,国際化,情報化,高齢化や科学技術の発展など社会の変化に適切に対応し,個性的,創造的な人間の育成が重視されている。本校は豊かな自然環境の中に位置し,生徒たちの家庭の多くは高齢者と同居している。このような特性を生かして,生命を尊重する心,他者への思いやりや正義感,美しいものや自然に感動する心など豊かな人間性の育成,伝統文化の伝承など時代を超えて変わらない価値のあるものを尊重し,心の充実を深めていきたい。特に,家庭・地域社会・学校が連携・協力し,高齢者とふれあう機会の設定,体験学習,地域に関する学習,ボランティア活動の促進及び道徳教育の充実など知識偏重の教育から基調の転換を図りたい。そこで,家庭・地域社会と連携した自主的・積極的な体験活動やボランティア活動など様々な体験を通して,均整の取れた心の豊かな人間性の育成を図るとともに,これらの活動を自分たちの手で情報として発信することにより,さらに意識の高揚を図りたい。

 
1 地域で学んだ体験活動を情報発信しよう
(1) ねらい
 科学技術の発展や高度情報通信社会の実現により,社会の姿が大きく変貌し,子どもたちを取り巻く教育環境も大きく変わってきている。特に,核家族化,少子化が進行し,家庭にも情報機器が普及する中,間接体験が増加した。その反面,自然との触れ合いや野外での遊び,家庭・地域社会の高齢者など幅広い世代との交流といった直接体験が減少し,過度の塾通いなどゆとりのなさが大きな問題となっている。そうした中で,中央教育審議会は,第二次答申において,[ゆとり]の中で子どもたちに[生きる力]をはぐくむことを基本とした教育の充実を謳っている。とりわけ,学校・家庭・地域社会それぞれの場において,様々な生活体験や自然体験,さらには社会体験やボランティア体験などの豊かな体験を積み重ね,様々な人々と交流することを重要視している。
 本地域は,先人の努力で継承すべき優れた文化や伝統的価値,豊かな自然環境に恵まている。生徒たちは,家庭・地域の方とふれあう多くの体験活動を行っている。これらの直接体験をインターネットによって,生きた知識として情報発信させたい。また,生徒たちは情報機器に対する興味・関心は非常に高いので,これを機会に情報活用能力及び情報モラルの向上も図りたい。
 このような家庭・地域社会と連携した自主的生活体験や自然体験,ボランティア体験での様々な人々との交流をとおして,知・徳・体の均衡のとれた豊かな人間性の育成をめざすとともに,これらの活動をインターネットを利用して,自分たちの手で情報として発信することによって,意識の高揚を図りたい。さらに,同様な活動をしている他校との交流を深めることで,地域の伝統や文化に目を向けたり,身近にある豊かな自然や人々とのつながりを実感させ,郷土に対する認識や愛着を深めさせたい。
 
(2) 指導目標
 @ホームページの構成を工夫することによって,テキスト・画像などをHTML化する。
 A自分の役割を理解し,話し合い活動に積極的に参加しながらホームページを完成させる。
 Bホームページを作成しながら諸活動を振り返り,更なる活動や自主的な活動に意欲を持たせる。
 Cホームページの作成活動をとおして,情報活用能力を身につけさせる。
 
2 指導計画(9時間)

指導計画(8/9) 指導内容及び留意点
@インターネットの概要
        (1時間)





○インターネットの基本的仕組みを説明する。
○インターネットの機能の概要を説明する。
・情報化の進展による光の部分だけでなく,影の部分があることを十分指導する。(ネットワークにおける影の影響は不慣れなため,日常生活における具体例を取り上げて説明する。)
指導用語:WWW,電子メール,テレビ会議,情報モラル,プライバシー,著作権,コンピュータ犯罪
AWWWとブラウザの操作とサーチエンジンでの検索方法
       (2時間)
★インターネットの利用

 
○WWWブラウザの操作を指導する。
○サーチエンジンでのキーワード検索の方法を指導する。
・情報の入手が容易であるが,その情報を正しく真偽等の判断する力を身につけさせる。
・見やすいホームページ(配色,画像・テキストの量など)を念頭に置いて閲覧させる。
指導用語:URL,キーワード,検索,リンク
Bホームページの作成
        (5時間)
☆HyperEdit(sharewear)
☆Paint Shop Pro 4
 ア HTMLの基本
 イ ホームページのレイアウト作成
 ウ ファイルの保存及び画像の貼付方法
 エ タイトル画面・GIFアニメの作成
 オ 作成画面の貼付・フォントサイズの変更・リンク設定及び全体の修正(本時)




 




○HTML言語について指導する。(テキスト利用)
○作成するホームページのレイアウトを考え,話し合わせ,役割を分担させる。
○フォルダ作成,ファイルの保存方法を指導する。
○画像の貼付方法を指導する。
○ホームページにおける画像の特殊効果(デザイン)を指導する。
○フォントサイズの変更方法を指導する。
○他のページ・画像へのリンクの設定方法を指導する。
・操作は交代でさせる。
・タグは自動的に付加されるが,どのようなタグが挿入されたか関心を持たせる。
・配色,フォントサイズ等の調整は2台のコンピュータで比較・検討させ,話し合いで決定させる。
指導用語:HTML言語,タグ,フォルダ,画像(JPG形式,GIF形式),ファイル名及び拡張子
Cホームページ作品の発表会並びに修正

○工夫した点など発表させる。
・感想として,よくできているところや配色・サイズなど改善した方がよい点など意見を発表させる。
 
3 利用場面
(1) 目標
 インターネットを情報活用能力の育成及び情報モラルの確立を図る道具として活用する。また,体験活動を振り返り,感謝の心・人を思いやる心など人間として豊かな心を育み,諸活動の意識の高揚を図る。
 そのために,
 @高度情報化社会に主体的に対応できる能力(情報活用能力)や態度及び情報モラルを養わせる。
 A情報受信側に立った表現力(読みやすさ・見やすさ・わかりやすさなど)を育成する。
 B情報発信にあたり,基礎的・技能的内容の定着を図る。
 C情報発信することにより積極性・主体性などボランティア活動・体験活動の意識高揚を図る。
 D地域の文化的遺産を適切に伝え,地域住民や高齢者に対して思いやりや感謝の気持ちを持たせるとともに,地域社会や家庭で自主的・実践的な生活を築こうとする態度を育 成する。
 
(2) 利用環境
 @使用機種  Windowsパソコン10台
 A周辺機器  プロジェクタ(提示用)
 B利用ソフト WWWブラウザ(Netscape),HTMLエディタ(HyperEdit),グラフィックエディタ(Paint Shop Pro 4)
 
(3) 展開

学習内容及び生徒の学習活動 教 師 の 援 助 備考
1 本時の学習内容を確認する
・各グループごとの進行状況及び本時の学習内容を確認する。
・各グループの進行状況を把握する。
 
・コンピュータ
・プロジェクタ
・テキスト
・WWWブラウザ
・HTMLエディタ
・グラフィックエディタ
ホームページの体裁を整えよう。
2 タグ挿入の方法を知る
(1) 画像データの貼付の確認
(2) フォントサイズの調整
(3) メニューページ及び他のページへのリンクの設定方法
(4) 背景色,文字色の調整



・メニューページへのリンク先は共通になるので板書する。


3 ホームページを作成する
(1)タイトル・GIFアニメの貼付
(2)フォントサイズの調整
(3)背景色,文字色の調整
(4)リンクの設定
・本時の作業の見通しをグループで確認させ,作業に入らせる。
・作成が遅れているグループに特に援助する。
・必要に応じて,ホームページの仕上がり具合をブラウザで随時確認することによって,意欲を持たせる。
・パソコンの操作は交代でさせる。
・作業しながら,どんなタグが挿入されたか関心を持たせる。
・フォントサイズ,背景色,文字色はグループの話し合いで決定させる。
・配色等の調整はグループ2台のコンピュータで比較・検討させる。
・複数のページを作成したグループはそれぞれにリンクを張る。
・発想や独創性を大切にさせる。
4 本時の学習をまとめる
(1) 背景や文字の配色の効果について発表する。
(2) 次時の学習について知る。
・グループで決定した背景色と文字色の組合せを発表させる。
・バックアップをとるため作業フロッピーディスクは集める。
・発表会のために工夫した点などまとめさせておく。
4 実践を終えて
 インターネットはバーチャルの世界で,直接体験の不足,人とのふれあいの不足などがいわれている中,「学級活動」において,様々な体験活動を情報として発信し,他へ伝える際の正確さや責任感など表現活動を深めることができた。情報量が多いインターネット上で,本当に必要とする情報を容易に入手することは非常に困難である。そういう状況の中,今回様々な体験活動を情報発信したことで,県内外の本校卒業生から激励のメールが送られたことは,生徒にとって新たな体験活動への意欲へとつながった。このような循環が学校と社会を繋ぐネットワークとして,有効である。そのために,当面の情報教育として,交流と情報発信を優先的に重点を置き,情報モラル・マナーを踏まえた表現活動を中心としたコミニュケーション能力の育成が必要と考える。
 また,本校が取り組んできた,家庭・地域社会と連携した体験活動及びこれらの情報発信活動は,これからの「総合的な学習の時間」においてかなり有効であると考える。このように,取組を情報として発信することで,各学校での取組がその学校内だけで終わることなく,他校の実践の参考になりうるであろう。さらに,同様の活動をしている学校相互が交流を深めることで,生徒たちが活動を誇りにし,さらなる意欲をかき立てることができるといった点でもインターネットは効果的であると考える。
今回の取組において,第1学年からホームページ作りに挑戦したが,少々時間がかかるものの,無理なく意欲的に活動できた。本校は,第3学年の技術・家庭科の「情報基礎」において,HTML言語等を履修しているため,現在のところ,学習の成果が他教科等の学習に生かしにくい状況である。今後の課題として,学校の裁量等を工夫して早くから「情報活用の実践力」を育成しなければならないと再認識するとともに,関連する教科で横断的,総合的に指導し,教科間の連携を考慮した年度当初の指導計画等を立て,実践する必要がある。
 ホームページ作成においてテキストを作成したが,テキストを参考にしないで意欲的に活動する生徒が多く,「こうしたいがどうすればよいか。」など自分たちが表現したいことを意欲的に知りたがっていた。テキストは最小限にとどめ,自ら課題を見つけ,実践していく態度を重視すべきであった。生徒からは,「楽しく意欲的に活動できた。」「作ったホームページの感想をもらいたい。」「見るときにはおもしろかったが,作成者の苦労がわかった。」など感想が聞かれた。また,情報発信後の『地域のよさ』をテーマにした意見発表の中にも,文化的遺産にのみならず,「登下校中も地域の方が挨拶をしてくれる。」「おじいちゃんやおばあちゃんの昔の知恵深さを感じた。お年寄りを改めて尊敬した。」など身近な人とのつながりなど内面的なよさにも気づくようになったことは成果としてあげられる。

 ワンポイントアドバイス

 情報発信の手段としてHTMLエディタを利用した。ワープロで入力後,HTML変換という手だても考えられたが,変換が作成どおりにいかなかったり,将来的に技術の習得(HTMLの基本)を考慮して利用しなかった。タグの習得を重視するのではないが,作業している間に付加されるタグに生徒たちは関心を持っていた。今回,容易にWWWを作成できるHTMLエディタとして,シェアウェアで古原伸介氏作のHyperEditを利用した。操作は意外と簡単であり,生徒に使用させるHTMLエディタとして十分な機能を付加しており,登録料は学校法人登録で10,000円である。シェアウェアなのでバージョンアップにも対応できるのでよい。

参考文献
 中学生にボランティア・スピリットを育てる(明治図書)上杉賢士 田中雅文編著 
 これなら誰でもつくれる!超簡単ホームページ(かんき出版)ネットワーク研究会編著
利用したURLなど
 HyperEditを使ってホームページをつくってみよう
                    (http://www.kunitachi.com/ikis/homepage/home.html)