39 学習成果のプレゼンテーションをしよう
WWW公開を前提とした,計画的なホームページ作成指導

中学校第3学年 技術・家庭科
笠間市立笠間中学校 蔵渕 俊郎


インターネット活用の意図
 本校では,インターネットをさまざまな教科で授業に活用している。WWWによる情報検索,電子メール,ホームページ作成など,生徒は意欲的に取り組んでいる。しかし,作成したホームページを公開する場合,データの著作権や写真の肖像権など,注意しなければならないことがたくさんある。
 そこで,「情報基礎」領域において,WWW公開を前提としたホームページを作成することにより,インターネットについての総合的な知識を身に付けさせていく計画を立てた。ホームページ上のガイドラインのページを利用して,ネチケットの指導をする。ホームページをつくるために,WWW上のデータを集める。著作権については,場合によって電子メールを利用して許可をもらう。そして,最終的に本校のホームページに載せて公開するという学習の場を設定したのである。
 また,「住居」領域でもWWW等を利用した情報収集を行っている。その内容をホームページ作成のテーマとし,「情報基礎」領域と連携を深めて履修していくことにより,相互効果を期待した。

1 ホームページを作成して情報を発信しよう
(1) ねらい
  ○ 「住居」領域,「快適に住むための住居について調べよう」というテーマのもと,WWWを利用してデータを収集するとともに,インターネット利用のガイドラインについて理解できるようにする。
  ○ 収集したデータをホームページにまとめることにより,HTMLプログラムについての知識を高めることができるようにする。
  ○ ホームページを利用して発表することにより,プレゼンテーション能力を高めることができるようにする。
(2) 指導目標
  ○ 生活をより豊かにするために,コンピュータを継続的に活用することができる。
                              (関心・意欲・態度)
  ○ 自分の思いを,さまざまな資料や方法でホームページ作品としてまとめ,インターネットで発信することができる。           (創意工夫する能力)
  ○ コンピュータの構成と機能を知らせ,基本的な操作方法を身につけることができる。また,インターネットで集めた情報を活用することができる。(生活の技能)
  ○ コンピュータの構成,ソフトウェアの機能や特徴,情報の管理の仕方について理解することができる。                    (知識・理解)
(3) 利用環境
  @ 使用機種  NEC PC-9821Cb (Windows3.1) 20台,
          NEC PC-9821Xa20 (Windows95) 1台
  A 周辺機器  液晶プロジェクター,カラーイメージスキャナ,デジタルカメラ,MO,カラープリンタ,ハブ,ルータ
  B 使用ソフト
   「Al-mail」         (電子メール)
   「Internet Explorer3.0」  (WWWブラウザ)
   「簡易HTMLエディター」,「ホームページビルダー」 (ホームページ作成)
   「Paint Shop Pro」     (スキャナからの画像読み込み,画像処理)
   「cube for Windows Ver.2」 (画像・テキスト・表・グラフ作成)
 
2 指導計画(「住居」領域と連携しながら指導を進める)

「住居」領域(25時間計画) 情報基礎」領域(25時間計画)
第1次 いろいろな住まいについて
・住まいの違いを調べる。
・住居学習の見通しを立てる。
・課題をつかみ,学習計画を立てる
第2次 住空間について
・家族がいろいろな生活行為を行うための住空間があるか調べる
第3次 応用ソフトウェアの利用
・住居作図ソフトウェアを利用,生活に必要な住空間の構成を考える

第4次 情報の活用
・課題を設定する。
・作業計画を立てる。
・WWW,図書資料,広告等を利用して情報を収集する
・住居見学を実施する。
・収集したデータを整理する。

第5次 作品発表会
・ホームページの発表会を行う。
・各自の疑問や課題を再検討し,解決する。
第6次 快適な住まいのまとめ
・快適な住まい方のまとめをする。

第7次 学習事項のまとめ
・学習事項のまとめをする。


































 
第1次 コンピュータの利用
・生活の中でのコンピュータの使われ方や情報の処理の役割を知る。
第2次 コンピュータのしくみ
・コンピュータの構成やしくみ,基本操作を知る。

第3次 応用ソフトウェアの利用
・コンピュータで利用するソフトウェアの種類,はたらき,基本操作を知る。
第4次 情報化社会について
・インターネットについて知る。
・WWW,電子メールの使い方を知
 る。
・ガイドライン,ネチケット,著作権等について知る。
第5次 情報の活用
・作業計画を立てる。
・使用する情報機器や資料などを選択,収集する。
第6次 ホームページの作成
・HTMLプログラムについて知る。
・住居学習で収集したデータを活用して,ホームページを作成する。
第7次 作品発表会(本時)
・ホームページの発表会を行う。
・各自の疑問や課題を再検討し,解決する。
第8次 コンピュータの適切な活用
・コンピュータの適切な活用についてまとめる。
第9次 学習事項のまとめ
・学習事項のまとめをする。
 

































 
3 利用場面
(1) 目標
  ・ 自分たちの考えた快適な住まいを,ホームページにまとめることができる。
  ・ ホームページを利用して,発表することができる。
(2) 展開

    学習活動・内容 支援及び個を生かす手だて(は評価の視点)
学習課題
学習成果のプレゼンテーションをしよう。
1 本時の各グループの学習課題をとらえる。
 ・日本各地のいろいろな住居
 ・気孔や風土と住まい
 ・家を建てる前後の日本の法律
 ・身近な地域の住まい
 ・地域の生活の仕方
2 グループごとに,ホームページに載せる資料づくりの学習活動をする。
 ・グラフィックを作成する。
 ・表やグラフを作成する。
 ・電子メールを確認する。
 ・HTMLプログラムを作成する。
 ・データを班のフロッピーに保存する。
3 代表グループの発表を行う。

4 学習シートに意見・感想をまとめる。
・ グループごとに話し合いをさせ,本時に行う学習の見通しを立てさせて,各グループごとのねらいや質問事項を書く支援をする。

・ 地域と気候のかかわり,住宅建材,法律,和式と洋式,環境,新技術などを視点として住居,木工,社会科等の学習を生かしていけるよう支援する。
・ ここでの作業は,いままでの取り組みの再確認として行うようにし,まとめたデータに間違いがないかチェックするよう助言する。
・ Internet Explorer を起動し,自分たちのグループのホームページのリンクを確認するよう助言する。 
 自分たちのデータを,ホームページにまとめることができたか。  (ホームページ)
・ 液晶プロジェクターを接続した発表用コンピュータでフロッピーのデータを呼び出し,発表できるよう,操作を支援する。
・ コンピュータ操作,発表内容をグループ内で分業し,だれもが活躍する場ができるように助言する。
・ 発表進行役の生徒に,発表時間を確認するよう助言する。
 ホームページのデータを利用して,分かりやすく発表することができたか。 (発表)
・ ホームページの内容について,グループごとに視点を決めてまとめるように助言する。
 

(3) 授業の概要
  この授業は,来年度開催される「関東甲信越地区中学校技術・家庭科研究大会茨城大会」に向けての研究協議会において実施されたものである。公開授業であり,見学者に授業計画全体の流れをつかんでもらうため,1時間の中にそれまでのホームページ作成作業のようすを盛り込み,WWW情報検索,電子メール,グラフィック作成,HTML作成,フロッピー保存とまとめて行った。ホームページのデータも,事前にMOに集約し,班全体の表紙とのリンク確認も済んでいたので,スムーズに進めることができた。発表も,生徒がコンピュータを操作して自分たちのホームページを次々と公開し,友達の作ったページを見て互いの出来映えに驚き,感心する様子が見られた。
 
4 実践を終えて
 この授業,というより単元において,生徒たちはコンピュータのみならず,インターネットの多方面における可能性に気づき,学習し,活用して自分なりの作品を仕上げ,
 そしてネットワーク上に発表しようとすることができ,本校のインターネット活用に取り組む成果がまさに集約されていたと言えるものであった。
  また,ガイドラインの学習により著作権や肖像権などの権利に気づき,自分たちの作品を仕上げるにあたって,他人のデータを利用する場合のルールを自ら知り,活用していくパワーにはすばらしいものがあった。
  特に,インターネットで得た画像等の資料を使用するために,著作権の問題を解決する手段として,そのホームページを公開している人のところへ直接電子メールを送り,メールによる文通を続けながら許可をいただいた生徒たちには教師側としても驚いてし まった。メールの交換から新しい交流の輪も生まれ,自主的に活動する生徒も増えた。 福島大学の住居学の先生は,まさか中学生が直接メールを書いて送っているとは思わず, 生徒を先生と勘違いしてお答え下さるというようなハプニングもあった。


 図1データ使用の許可を求めた電子メールの例


  

図2 生徒の作成したホームページ


図3 学習シート
 ワンポイント・アドバイス

 授業においてホームページを作成する場合,そのテーマの設定が問題となる。「住居」領域の学習成果をそのままホームページにすることにより,目的意識を明確にして情報を集めたり,グラフィックをかいたり,文章を整理してホームページを作成することができた。また,そのホームページをグループ発表に使用することにより,生徒のプレゼンテーション能力を高めることもできた。

使用したURL
 ・笠間中ホームページ( http://www.kasama-kasama-j.ed.jp )