40 国際社会との交流を促進する企画

                      高等学校第1学年 英語・社会
                   松山東雲高等学校 國原 幸一朗


インターネット利用の意図
 本校では,英語科の生徒が授業でインターネットを利用している。諸外国の最新の情報を迅速に獲得し,相手の考えをきちんと理解するとともに自分の考えを正しく伝えることは,国際社会に生きる生徒たちにとって必須の条件である。それとともに様々な社会事象に関心をもち,自分の考えを深めていくことも必要である。ネットワークを利用し, 様々な国々の政治,経済,社会,文化など共通の話題についてまとめ,意見交換することを通して,お互いの固有の文化を尊重しつつ,地球規模の問題についても幅広い視野で考察できるようになると思われる。生きた語学の学習にも教育的効果が期待できる。


1 これまでのインターネットを活用した授業を振り返って
 本校はコンピュータ教室にパソコン21台,うちインターネット接続は5台と少ないため,授業クラスの生徒全員が一斉にインターネットを利用することができない。そのため,インターネットを活用する授業は昨年度の場合,普通科の地理と英語科の英語の授業(週1時間)と少なかったが,昼休みや放課後にホームステイ先へメールを送ったり,ネットサーフィンをしたりする生徒でにぎわっていた。
 昨年度の英語科1年のクラスは化学・英作文作成・パソコン実習の3つのグループに分かれ,3人の教員がこの授業時間を担当し,社会の教員がパソコン実習を受け持った。1週間ごとにグループの生徒を替えた。到達度を示すカードを作成して,課題内容を習得すれば印を押す工夫もしたが,総実習回数が少なく,次の実習までの日数がかなり開いたため,パソコンの基本的操作やインターネットに関する基本的知識はあまり定着しなかった。いまひとつ生徒に具体的な目標を明示することができなかったことも関係があると思われる。
 
2 テーマ学習
(1) ねらい
 対象の高校1年英語科は,来年度1学期にオーストラリア修学旅行があり,現在事前学習が進められている。約2週間,受け入れ校やホームステイ先ですごすため,事前に電子メールの交換をしておき,より充実した修学旅行になればよいと思っている。そのために,電子メールの送・受信法やホームページの見方を習得し,語学力のアップをはかる必要がある。また来年度英語科に「国際・情報」という科目が新設される。既存の英語の科目の学習内容をふまえ,より英語に興味をもち,役に立つ英語力や情報活用能力を身につけさせるための一つとして,この科目が期待されている。社会科をはじめ他教科の内容も総合し,より英語の世界に深みと幅を持たせるとともに,インターネットを活用することによって生徒の関心を高め,テーマに関する理解を深めることをねらいとする。
 
(2) 指導目標 
 本校は同志社国際高校が中心となって進めている「Me and Media」のプロジェクトに参加し,高校2年と3年はホームページ作成やホームステイ先とメールの交換,留学を考えている生徒は進路情報を得るためにホームページの検索をよく行っている。その中で高校1年英語科の生徒は,パソコンや書物などを利用して,自分が担当するテーマに関する情報を集めるとともに,どんなメディアを活用すればどのような情報が得られるかを理解させる。グループ学習を実施するが,自分たちで話し合って作業分担できるようになるとともに,持ちよった情報をグループで話し合って意見がまとめられるようになる。その成果はホームページに掲載し,広く公開し,交流の糸口とする。外国や他校の生徒にメールを送り情報交換するが,相手の立場に立って考え,自分の意見が述べられるようにする。ネットワークを利用する際のマナーやエチケットについても身につけさせたいと考えている。外国とのメールの交換に関心がある他の生徒を含めて,11月20日のNetd@yに参加し,この企画をきっかけに放課後を利用してメールの交換をすることを考え,料理や人権などをテーマに作文をしてホームページに掲載し,交流を深めたいと考えている。
 
(3) 利用場面
 このテーマ学習では,以下のような学習場面でコンピュータを活用する。
@テーマに関する情報収集
  ホームページの検索エンジン(Yahoo)などを利用し,参考資料を集める。
Aホームページ作成による情報発信
  グループの自己紹介やテーマに関するグループの作文をホームページに掲載する。
Bメール作成
  類似したテーマについて考察している他校の生徒や外国の生徒にメールを送る。
C成果発表
  グループの成果をノートパソコンとプロジェクタを活用して発表する。
 
(4)利用環境
 使用機種 PC9801BX22台 
 周辺機器 シリアルプリンタ,プロジェクタ,ノート型パソコン(担当者所有)
 稼働環境 OSはWindows3.1が3台,Windows95が2台。5台のクライアント利用。
2 指導計画

指 導 計 画 留  意  点
@オリエンテーション
  先進校の授業実践を撮影したビデオを見せる
・最終的な目標は何かを明らかにして,どのような課題を達成しなければならないかを理解させる。
・ビデオを見て学習意欲を高めさせるとともに,インターネットはむずかしくないと感じさせる。
AB電子メールの送信・受信
  英文の自己紹介を作成
  ★インターネットの利用
 
・クラスメートと教員にテストメールを送信し,メールの送り方を身につけさせる。
・ホームページに掲載し,公開される内容であることを理解させた上で,自己紹介を英文で作成する。
CDグループ分けとテーマ決定・和文作成(図書館)



・生徒の人間関係や興味に応じ,グループの人数やテーマは比較的自由に選ばせる。
・作文は図書館の書物を活用し,英文に訳せるような内容と外国人に分かるような内容になるよう配慮させる。グループの作業分担がうまくできるよう工夫する。書物の丸写しにならないよう,サブテーマを 決めて考えさせ、まとめさせる。
EF情報収集とテーマ作文
  (コンピュータ教室)
  ★インターネットの利用
・インターネットで情報収集し,さらに詳しく調べさせるとともに,「一太郎ver.4 」で英文と和文を作成させ,テキスト形式で保存させる。
GH他校の生徒や外国の生徒にメールを作成する。
  ★インターネットの利用
・相手の学校や国のことを考えながら,共通のテーマとして意見交換できることとそうでないことに気づかせる。
Iインターネットのマナーやエチケット  ・他校のガイドラインなどを紹介しながら,本校のガイドラインを生徒にも考えさせる。
JK成果発表

・自分のグループの作文や考察したこと,問題点などを発表させる。パワーポイントを利用したいが,時間的制約から担当者が生徒の原稿を入力し,その画面を活用させる。
 
3 利用場面
(1) 目標
 ホームページや書物を利用して,与えられたテーマに関する意見をまとめ,国内や外国の学校と意見交換することにより,異文化理解を進める。さらに学習したことをふまえ,ホームステイ先や訪問校等と自主的かつ積極的に交流する態度を育てる。
 
(2) 展開
 テーマは人権やファッション,漫画,宗教など多岐にわたるが,なぜそのテーマを選んだのか,現代社会におけるその分野の特徴と問題などにふれながらまとめるよう指導した。そのうち「宗教」のグループの作文の一部を紹介する。

 The religion of my school is Christianity. So we have chosen "Christianity" for our
topic. Christianity is often called " the religion of love " . In Judaism , the nucleus of
Christianity valued rule and pursued righteousness. But Jesus Christ put up "love" . 

  Netd@yに参加した後で,カナダの中学生からメール交換をしたいと応答があり,1月になりロンドンから本校のデータベースを活用しないかとメールが届いた。グループによってはESPに参加しているスロバキアやドイツから自己紹介のメールが届いた。生徒には返答のメールを迅速に送るよう指導している。また5月にオーストラリア修学旅行が予定されており,ホームステイ先へのメールを書かねばならないようであるが,その内容をフロッピーに保存し,手直しをすればいつでも電子メールと使えるよう準備しておくことを指示した。グループの作文の内容をホームページに掲載することが遅れているため,他校の生徒と交流できない状況になっているが,類似のテーマを研究している学校とメールで直接交信するよう指導した。この学習が,今後どのように発展するかまだ分からないが,その成果を最終的に授業で発表させるよう指導したいと考えている。
 
(3) 今後の課題
 電子メールによる交流が中心であったが,CU-SeeMeなどのビデオ会議システムを利用したリアルタイムでのコミュニケーションやデジタルカメラやデジタルビデオカメラなどを用いて,相手の顔が見える交流を進めようと検討している。
 また本校には外国人教師や留学生,帰国留学生や現在留学している生徒が数名いる。彼らの出身地域やホームステイ先,研究活動などと関連した交流ができないかと考えている。

4 実践を終えて
 自分たちが決めたテーマについて,グループで考えをまとめ,パソコンを使って文書を作成し,さらに電子メールを活用して交流を進めるというテーマ学習は,どの教科・科目でも実施していない新しい試みであったので,すべてが試行錯誤であった。
 何よりも嫌だと思う生徒があまりいなく,意欲的に学習に取り組んでいる姿が印象的であった。他のグループよりいい作文を書こうと放課後遅くまで残って仕上げていた生徒もいた。少なくとも英語学習やパソコン実習に対する意欲は以前よりも高まったと言えるのではなかろうか。
 昨年度の反省から,パソコンやインターネットに関する知識や技術の習得と定着をはかること,目標を明確にし成果を上げることが課題であったが,一定の授業時間数を確保し,原則としてできなければ次の授業に持ち越さず,放課後残って仕上げるという方針をとった。授業で暇になる生徒をつくらないよう,緊張感をもたせなければ,どの生徒にとっても効果的な授業とは言えない。
 テーマに対する理解と異文化理解を深め,ネットワークマナーを身につけさせることがねらいではあったが,テーマに関する適切な書物がないときにホームページは有効であり,今の諸外国の様子や様々な方の見方・考え方を知る上で,電子メールも重要である。
 宗教を担当した生徒の一人が,テーマ学習を通して,宗教に対する理解が深まり,英語に対する興味も強まったと述べている。すべての生徒を満足させるのはむずかしいが,このような生徒が一人でもいればうれしく思う。
 

ワンポイント・アドバイス

・年間カリキュラムの中にタイピングやパソコンおよびインターネットの基礎知識や技術を学ぶ時間をうまく配分しておかなければ,授業でねらっていることまでなかなか到達しない。
・グループ学習はメリットもあるが,全員がある一定の知識や技術を習得し,インターネットを使えるようになるという点では問題がある。といっても設備やスタッフが十分でないとグループ学習に頼ってしまう。生徒の核,つまりリーダーを育てることが必要である。
・インターネットで国際交流の前に練習する場が必要であり,メールのやりとりが活発に行われないと,生徒の意欲は弱まってしまう。
・異教科の教員によるTTがうまくいけば,テーマのグループ作文の内容にも奥行きと幅ができるが,授業のねらいや方向性について細部に至るまでの共通認識がないとむずかしい。  

 
利用したURL
 ・CEC Netd@ys JAPAN(h t t p : / / w w w. c e c. o r. j p / n e t 9 8 / N e t d a y s /)
 ・同志社国際高校(h t tp : / / w w w. i n t n l. d o s h i s h a. a c. j p / p r o j e c t s / m e - d i a /)