41 オランダの中の日本・日本の中のオランダー

日蘭交流史の新しい展開を探る

高等学校国際科2年生 英語

帝塚山学院泉ヶ丘中高等学校 笹恵津子


インターネット利用の意図

国際科2年生は,1年次の平成9年10月よりコンピュータ教室(以下PCL教室)を利用し,電子メール,ウェブ検索,インターネットクラスルームプロジェクトなどのオンラインプロジェクトなどを利用している。
本プロジェクトでは,これまで蓄積された技能を活かして,ホームページ制作を行う。テーマとしては,平成10年10月21日実施予定のEUのネットデー@ジャパンに参加するため,オランダを選んだ。


ハウステンボス調査研究
(1) ねらいと経過
ネットデーに参加するため,掲示板を設け(http://210.163.117.210/~jin98/bbs/),メーリングリストを通じて,海外,特にオランダの参加を呼びかけた。ヨーロッパスクールプロジェクト(以下ESP)のヘンク・シュリーダ氏から関心を持っているというメッセージがポストされたが,それ以後は書き込みが見られなかった。
また,ネットデーに参加するという本プロジェクトの当初の目的は適当なパートナーを見つけることができず,10月21日のネットデー当日は活動ができなかった。
この件につき,EUのネットデー事務局に依頼状を送り,パートナーとなる学校のアドレス一覧を送付してもらい,メールを送ったり,各校のホームページを検索した。メールには返事がなく,オランダの各校のホームページはオランダ語で書かれているため,本校の生徒は,それらの学校について調査することができなかった。
そこで,「日本の中のオランダ」が集約されている長崎県のハウステンボスを取材し,特に同施設が力を入れている環境問題を調査することにした。
(2) 指導目標
本校の他のカリキュラム,例えば,「国際理解」「国語表現」などで生徒が自ら設定したテーマについて図書館などで調べ学習をさせ,レポートをまとめさせている。インターネットが利用できる環境になってPCL教室で資料を収集し,これをレポートに組み込んでいる生徒も増えてきている。
これら教科で習得した資料の収集・分析・総括・感想などの手法をベースとして,本プロジェクトを進めた。インターネット検索を通じたハウステンボスに行く前の事前調査や現地での取材,さらに,これらデータをホームページに掲載するまでの過程は,今後,どの分野の学習でも応用できるものである。本プロジェクトでは,基礎的な情報活用能力の上に,データの収集・分析・総括作業を総合的に身につけさせることをねらいとしている。
(3) 利用場面
本プロジェクトでは次のような場面でコンピュータを活用する。
@事前調査
オランダの状況を知るため,オランダの学校を,また,ハウステンボスに調査にでかけるため事前学習を,インターネットを使って行う。
オランダの学校ではオランダ語が多く,英語ページがほとんどなかったが,これはオランダのインターネット教育活動が,まだ,グローバルな視点をもちあわせていないことを示すものと考えられる。
ハウステンボスについては,入場料などインターネットで調べたが,あまり,詳しい情報を得ることができなかった。このことは逆に自分たちがハウステンボスについて,ホームページを作る刺激にもなった。
Aホームページ制作
収集した資料のデータ入力,スキャナを用いて写真の取り込み,バックグランドの画像や背景色などを含むHTML言語の学習とHTMLファイル作成,これをページに掲載するためファイル転送。以上,ホームページ掲載に必要な一連の作業を通じて,コンピュータを利用した。
また担当生徒はページが単調なので,音楽などを入れることも考えている。
(4) 利用環境
@使用機種 IBMペンティアム200 4台。
A周辺機器 MO,スキャナ
B稼働環境OCNエコノミー128K専用線。端末からサーバマシンにFTPしてホームページ掲載。
Cその他の利用ソフト
今回のプロジェクトでは,以下のソフトを利用した。
・マイクロソフトワード
データ入力,HTMLウィザード,
・JPEG変換ツールソフト
ペイントソフトで描いた画像をJPEGに変換。
・ペイントソフト
背景画像やイラストなどの作成
・インターネットエキスプローラ
ホームページ検索と掲載ページのチェック
WSFTP
ファイル転送,ホームページ上のファイル名変更・ファイル削除

指導計画
指導計画(5/5)
@オランダ事情を調べる
★インターネットの利用
・「オランダの中の日本」について調査を目的とする。
★これはEUのネットデー事務局から紹介された学校のページが,ほとんどオランダ語であったので挫折。オランダの学校とのE-mailによる交流と調査活動もできなかった。
 
Aハウステンボスをどう捉えるか議論
★インターネットの利用
・オランダの都市計画を模擬的に作られたハウステンボスを,どういう観点から捉えるか検討させる。
★インターネット検索や取り寄せたパンフレットから,生徒は,環境問題をテーマとして選んだ。
Bコンピュータを使った報告書をウェブに掲載
★インターネットの利用
・冬休み中に1泊2日で担当生徒4名がハウステンボスを訪問。調査。
★これをウェブに掲載して報告する。このため,3学期の英語の授業や放課後,ホームページ作りをさせる。
 
C総括と感想をまとめる ・単に調べたことを掲載するだけではなく,自分たちの意見をour opinionという形で掲載。
Dホームページの考察 ・作成したホームページが,他のユーザにとって参考になるかどうか,表現力の面はどうか,など考えさせる。結果,画面が暗い印象を与える,単調などの意見が出され,音楽などを入れたいという意見が出された。

・作成したホームページが,他のユーザにとって参考になるかどうか,表現力の面はどうか,など考えさせる。結果,画面が暗い印象を与える,単調などの意見が出され,音楽などを入れたいという意見が出された。

利用場面
(1)目標
ハウステンボスを調査する中で身についた取材方法,データの収集と分析,ホームページ制作・掲載など一連の作業は,今後別のテーマを学習する場合の基礎となる活動である。これはまた,それ以前の教科学習などの積み上げの上に行われるべきものであり,他の教科学習・学校行事と切り離されたものではない。
以上の観点から本プロジェクトに参加した生徒の情報活用能力が向上しただけではなく,本校の情報教育のあり方を考える上で,意味のある実践である。
(2)展開
活動への働きかけ
オランダ情報の収集 インターネットを使って,どの程度のオランダ情報が得られるか,検索する。
指導者(笹)は,オランダについて以前から関心があり,オランダ在住の日本人女性がオランダと日本の女性の立場や考え方の違いなどをホームページ上に展開していることなど紹介し,アドバイスを与える。
 
ハウステンボス情報の収と視点の決定 ハウステンボスで何を調査し,どこを訪ねるか,一泊2日という短期間の調査なので,効率的な実行プランを考えさせる。また,どのような切り口で臨むか視点を考えさせる。  
ホームページ制作活動 HTML言語の学習などホームページ制作に関する技術の学習  
総括作業 本プロジェクトを通じて考えたこと,身についたことなどを考えさせる。  

実践を終えて
本プロジェクトで生徒はハウステンボスに取材にでかけられたことは素直に喜んでいるが,それと同時に,これまでホームページを見る側であったのが,自らホームページを制作する中で,簡単なコマンドを入れるだけでページがまったく変わってしまうことに新鮮な驚きと喜びを示していた。
大量のデータ入力も,これまで身につけたタイピング力で,かなりなスピードで入力を進めていたが,その姿を見ていると,すでにパソコンが自分たちの道具の一部になっているという印象を受けた。
プロジェクトの当初,掲示板に英語でプロジェクトについて書いていたが,ある程度,力のある英語であった。このページは海外の学校関係者を対象にしたものであるが,あまり反応がなかったのが残念である。
ただ,本校の生徒はヨーロッパに対して強い憧れをもっており,今回の実践で欠けていた海外との双方向の情報交換を,今後,あるいは,次の学年が受け継いでいくよう計画している。
また,生徒は,自ら作ったページに満足していないため,今後,さらに,これを充実させていこうと意欲的である。
ハウステンボスについては,環境問題を意識して作られた施設であることに強いインパクトを与えられたようで,今後,プロジェクト参加生徒たちの学習の方向に示唆を与えるものとなった。
生徒は全員の感想のまとめとして以下のように書いている。
「私たちはこのプロジェクトに参加することによってハウステンボスにいき,普通の観光では気がつかないハウステンボスの裏側を知ることができました。その裏側は私たちが想像していたものよりもずっと技術的に進んでいたので,驚きました。そしてこのような技術がこれからさきいろいろな都市で用いられるようになったら,地球にやさしい時代が訪れるのではないかと思いました。しかし,地下トンネルのような設備はもうすでにビルなどが建っている都市に利用するのは難しいと思います。難しいとは思いますが,このプロジェクトに参加するまえの私たちのようにまだたくさんのひとがこのような環境設備・施設についてよく知らないのではないかと思います。もしこの私たちが実際に見て調べてきたことをホームページという媒体を通して,たくさんのひとが見てくれることによってだんだん重要視されるようになってきた環境保全の問題に興味を持ってくれたらそれだけでも大きな成果だと思います。
しかし参加してハウステンボスに行くことができたのは嬉しかったことは確かですが,なのしろ初めてホームページを作ったということもあって,すごく疲れたし,いろいろとわからないこともあって思った通りには進みませんでした。もっと見て楽しい,親しみやすいホームページにしたかったのですが,学校の先生や,見学している間優しく教えて下さった係りの方のおかげでどうにかこうにかここまでたどり着くことができました。またこのプロジェクトに参加しなければ知ることができなかったであろうオランダについての知識や,環境保全のための最新技術の内容を知ることができたことが嬉しかったし,私たちにとってプラスになったと思います。ありがとうございました。」
情報教育の観点から習得した技術としてホームページ制作の他に,以下の図の中に見られるような表現力の向上があげられる。

< 環境設備・施設 >

コ・ジェネレーションシステム…簡単にいうところの自家発電システムである。
  
 ※現在この機械は3台あるが,将来のハウステンボス大規模化のため4台目のスペースが用意されている。

 ※3×1500=4500kwはハウステンボスの電気使用量全体の約3割をしめている

ワンポイントアドバイス
マイクロソフトワードを使って図などを作成したが,これをHTML変換をすると画像が消えてしまうという技術的なトラブルに時間をとられてしまった。 ホームページを生徒に作成させるために,フロントページやページミルなどの専用ソフトを使えば簡単であるが,HTML言語をエディタやワープロで書かせて,これをブラウザでチェックする中で,生徒は,ホームページの仕組みや,その素晴らしさに感動していた。
HTMLには,最初とまどっていたが,簡単な概念を教えた後,解説書を渡したところ,自分たちで新しい機能などを会得し,使うようになった。今後ジャヴァスクリプトなども,すぐに覚えるものと思われるが,ホームページ制作には,専用ソフトを使わずに,HTMLJavaScriptなど,言語から入っていった方が,生徒の理解を深めるのに役立つのではないかと思った。
また,本校ではインターネットサーバがあるので,ホームページ用にユーザを作ったり,ディレクトリを切ることが簡単にできる環境であるのは,本プロジェクトを進める上で役立った。

参考文献
HTMLタグ辞典 アンク著 翔泳社
利用したURLなど
ハウステンボス関係ホームページ http://konpeito.bekkoame.ne.jp/~suga/htbj1.html
ハウステンボス公式ホームページ http://www.huistenbosch.co.jp/