42 日田地区地域ネットワークとの交流
 
大分県立日田林工高等学校 河津文昭

インターネット利用の意図
 本校は,九州のほぼ中央部,大分県の西部に位置し林業科,林産工学科,機械科,電気科,建築科,土木科の6学科を設置する生徒数1000名程度の職業系高等学校である。100校プロジェクト指定されて以来,地域と密接に関係を持ちながら地域の特性と学科と特性を加味したユニークな活用方法を展開してきた。平成9年6月1日に日田市郡及びその周辺地域におけるインターネットの振興,研究,実践を通じて会員の親睦とそのレベルの向上を図ることを目的とした「日田インターネットの会」が設立した。本校はこの会の設立準備より密接な関係を持ちながら支援してきた。また,日田市情報教育小中高連絡会および大分県教育ネットワークを設立し日田地域(教育現場を含めて)のインターネットの普及啓発活動をおこなってきた。今回の報告に関しては平成10年度の取り組みのについて報告する。

1 実践の準備
(1) 今までの取り組み
@日田インターネットの会の誕生
 従来から日田地域のインターネットを取り巻く状況は厳しく,アクセスポイント,インターネットに対する知識や活用面での低さなどの問題により非常に立ち遅れていた。そこで日田地域のインターネットユーザの有志70名程度と共に地域のインターネットの普及啓発活動を行う「日田インターネットの会」を平成9年5月31日に発足させた。会の目的を「日田市郡及びその周辺地域におけるインターネット(広義にはコンピュータ通信全般を含む)の振興,研究,実践を通じ会員の親睦とそのレベルの向上を図る事を目的とする。」(会則2条)とした。 (http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp/~hitanet/kaisoku.html)
そして,この「日田インターネットの会」と共に日田地域のインターネットの普及啓発に努めてきた。下記に今までの具体的な活動を記す。
 
  ア 初心者のためのインターネット講習会の開催(日田林工高校と共催)
    平成9年8月3日本校の施設を利用して講習会が開催され100名以上の参加者
    テキストについては
       http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp/~hitanet/inet/index.htm
    講習会の状況は  
       http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp/~hitanet/inet/event_08.html
  イ 市内小中高等学校との連携し教員向け講習会開催
    日田市小中学校公式ホームページ作成(視聴覚研究会主催)
              http://www3.justnet.ne.jp/~hirasen/ht0002.htm
  ウ インターネット接続および技術支援出張サービス
  エ 隣接地域ネットワークとの交流 http://210.145.55.195/~msa/u-net/inet.html
  オ 地域へのインターネットの啓発活動
    インターネットセミナーの開催
  カ インターネット利用についての情報交換
  キ 日田林工高校のサーバ管理支援
 
A本校と地域とのかかわり
 平成7年5月に本校にインターネットが導入された当時は,インターネットユーザーは少なく,もちろん,学校現場においては県内で接続されている学校はほとんどなかった。当然ながら,100校プロジェクト校としてインターネットを地域の学校にいかに広め,また,地域の特性に応じた教材としてどのように展開していけばよいかということを模索した。したがって,積極的に教育現場や地域に対して本校の施設を開放することにした。
 
  ア メーリングリストの提供
    大分県教育ネットワーク(会員40名) edu-oita@hitarinko-hs.hita.oita.jp
    日田インターネットの会(会員200名) hita-net@hitarinko-hs.hita.oita.jp
  イ Webサイトの提供 
    日田インターネットの会ホームページ 
           http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp/~hitanet/
    その他,希望があれば各小中高等学校のホームページを本校に置くことにしている。
  ウ 講習会,研修会における講師,施設の提供
  
2 企画の実践
(1) 小学生向けホームページ講座の実施
 日田地域の小中学校ではインターネット環境に恵まれていない。小学校のインターネット接続校は現在のところコネットプラン校の1校のみである。このようなインターネット環境下において小学生にもインターネットを体験してもらい,自分たちの行動や考えを世界中に発信させてもらおうと小学生のためのインターネット教室を行った。講師については,本校教員4名,協力として日田インターネットの会メンバー10名,大分県教育ネットワークからも応援を頂いた。小学生のための講座については初めての試みであったことから,今回は日田市立咸宜小学校6年生希望者20名を受講者とした。
  講座の内容は下記のように実施した。
 @インターネットって何だろう!
 Aインターネットでどんなことができるの?
 B世界中の仲間はインターネットで,どんなことを勉強しているの?
 Cホームページをつくってみよう
 D世界中に発信してみよう!
特にBでは,新100校プロジェクトの酸性雨プロジェクト,全国発芽マップ98等を中心に本校の実践もふまえて話したところ児童たちに非常に興味を示した。「Cホーム ページをつくってみよう」については,事前にホームページに書き込む内容を考えたり,写真が必要な場合は撮影したりして準備した。学校の話題,環境問題,いじめの問題に関する話題が多くみられた。(図1,図2)

 完成したホームページは本校のサーバに登録した。後日,児童たちから「初めてイン ターネットを体験しておもしろかった。」,「世界中に自分たちの考えを発信できて感動した。」,「これからも,もっとインターネットのことを勉強したい。」,「また,このような勉強会を開いてほしい。」などの多くの感想文が寄せられた。        

図1 小学生のためのホームページ講座 図2 真剣に取り組む児童
                          
 (http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp/~hitanet/kangi-es98/98es_index.html)       
 
(2) 日田インターネットの会ホームページ講座支援
  4 回シリーズで実施した。
   第1 回目 ホームページを作ってみよう。
   第2回目 デジタル写真と画像処理
   第3回目 FTPの使い方
   第4回目 さらにグレードアップするためには    
 
(3) メールサーバの強化
 100校プロジェクトで初期導入されたサーバについては,WWW,FTP,News,メールサーバが一体化されているものである。本校のWWWのアクセス数は5,000〜10,000件,メールアカウントは45人である。また,ニュースについてはfj等を設定している。特にメーリングリストについては5種類のものがあることからサーバ過負担になることもある。今後とも,企画の進行と共にWeb,メール等の流通量が増えることが予想されるので,サーバの負担を軽減するために従来のサーバからNewsおよびメールサーバについては独立させることにした。(図3)サーバについてはFreeBSDを用いて本校職員で構築することにした。なお,構築に関しては日田インターネットの会の支援も受けた。

          図3 インターネットサーバの構成
 
(4) 今後の計画
 現在,本校は日田地域のインターネットの拠点となっているが,小中高等学校の中においてもリーダー的存在でなければならない。平成9年度より「日田市教育情報ネットワーク」を設立し日田市視聴覚研究会と共に活動をしてきた。しかしながら義務教育校と高等学校の設置機構上の問題もあり必ずしも順当に行っていなかった。インターネットの地域でのネットワークづくりを進めて行く上で地域の小中高等学校の結びつきは重要な因子となってくる。そこで,今後も本校の施設設備,人的な支援を行っていくつもりにしている。今回の自主企画の一環として小中学校教員対象のインターネット講座(ホームページ講座)を予定している。
 
3 実践の評価
(1) 学校,行政,民間の協力体制
 地域の発展は,地域の一体化が条件であるように,地域ネットワークの形成においても行政,教育,一般市民(関係団体を含む)等のコンセンサスが何よりも重要だと思われる。地域のネットワーク化,コンピュータ化,データベース化などを成功させるためには,それらのニーズとシーズに通じるリーダー,あるいはオーガナイザー(組織者または調整者),つまり,情報化アドバイザーの役割が非常に重要であると思われる。しかしながら,日田地域のような小規模な地域においてはアドバイサー的な人材は極めて少ない。したがって,小地域において情報ネットワークの構築を進める上で学校,行政,民間のそれぞれの立場での協力体制が不可欠である。
 本校のような職業系高等学校においては「生涯教育」や「地域の中の学校」という観点から学校の開放を行い施設設備や人的提供を行ってきた。100校プロジェクトの一環としても積極的に本校の施設設備を利用して一般および教育関係への研修会,講習会等を開催してきた。また,メーリングリストなどの提供やメーリングリスト上での技術サポートや家庭に出向いての接続の設定や技術サポートを行ってきた。また,学校外での講習会などに講師として積極的に参加し,これからの日田地区のインターネット環境や方向性を明示したり,日田インターネットの会の世話人会等にも積極的に参加し,「学校と地域」「学校と日田インターネットの会」の関係を築いてきた。また,逆に本校に対してサーバの管理等技術面でのサポートを受けるなど密接な関係が生まれ地域のインターネットの拠点としての役割が増大してきている。
 
(2) 地域と学校をつなぐメーリングリスト
 今まで,小中高等学校や地域住民との接点はほとんどなかったが,「インターネット」というネットワークを用いて結びつきができた。そして,単なるネットワークによるハード的なつながりだけではなく,「人と人との心の結び合い」ができたことは評価できる。また,地域の教材を提供して頂いたり,生徒が地域のネットワークと直接ふれ合うことで,さらに教育効果が高まってきた。また,地域とのオンラインでの交流において,特にメーリングリストは有効な手段であると思われる。地域展開におけるメーリングリストの効果として次のようなことがあげられる。
  @ 技術的な支援
  A インターネット上のマナーについての論議をする場
  B インターネットの各方面での高度利用を論議する場
  C 地域と学校(教育)の接点としての場
  D 地域情報を流す 
  E 地域(住民)からの教育現場への教材提供              
  F 事務連絡
  G 会員間の親睦を深める
 
4 実践を終えて
 このプロジェクトが開始された平成6年頃は,日田地域にはインターネットユーザは極めて少なくアクセスポイントは全くない状態であった。しかし,このような地域での活動を広げて行く中で日田インターネットの会等の連携により現在では6つの民間プロバイダのアクセスポイントを誘致することができた。このようなインフラ整備と共に本校が,日田地域のインターネットの拠点となり,地域のインターネットの普及啓発,技術の向上,高度利用,マナーの向上等に努めてきた。
 今年度で新100校プロジェクトは終了するが,今までの活動を今後とも続け学校,行政,民間がを一体化することにより地域の更なる拠点となるように努力したいと思っている。
 
ワンポイント・アドバイス
地域展開を進めて行く上で最も重要なことは,地域,学校,行政との連携をいかにとっていくかである。それぞれの立場があるので,それを充分に理解していかなければならない。このようにして完成した「草の根的な地域ネットワーク」は非常に強固なものになって作り上げられていく。しかしながら,担当者として夜間の会議に出席しなければならないことが多いし,メーリングリストの管理等多くの仕事が増えることになる。また,オフラインでの懇親会等の機会も増えてくる。 したがって,担当者の体力と気力も地域展開において重要な因子となってくる。
 
参考文献 平成9年度「新100校プロジェクト」成果報告集 U地域展開に関する企画
            
利用したURL
       大分県立日田林工高等学校
            (http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp)
        日田インターネットの会
            (http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp/~hitanet/)