49 インターネットによる生徒会交流
--- 開かれた学校,生徒達が興味をもち,楽しく参加できる学校を目指して ---
宮崎県立延岡商業高等学校 教諭 松田正弘
インターネット保守研究委員会

インターネット利用の意図 
 この企画は,生徒側の組織「インターネット企画委員」,「生徒会役員」と職員側の組織「インターネット保守研究委員会」で討議決定し企画されたものである。
 近年,生徒を取り巻く環境の多様化,生徒自身の価値観の多様化にともない,学校への興味・関心が薄れてきている生徒が増加傾向にある。実際,多くの不登校生や在校生のアンケートや意見などを聞くとそのことが窺え,生徒会活動や諸行事等への関心が低くなりはじめている。その対策として4年前より少しでも生徒達の目を学校に向けられないかと生徒会役員とともに考えた。はじめの2年間は生徒会行事の見直しと活性化を行い,本校にインターネットが普及しはじめた2年前より,生徒が興味・関心を持って取組んでいるインターネットと生徒会活動を結びつけることにより,多くの生徒が自由に生徒会活動へ参加でき,他校との交流を行い生徒会活動を活性化がはかれるのではないかと考えた。また,同じ悩みを抱える全国の生徒達と意見交換し,他の学校の様子を生徒が実感でき,開かれた学校作りができるとともにメール交換やCU-SeeMeを使った生徒会交流を行う事で,他校生徒会の存在や活動方針に刺激を受け,本校生徒会執行部としての自覚を促すことができるのではないかと考えた。

1 目的
 ・楽しく開かれた学校作り
 ・学校内に生徒の手でインターネットを普及させる
 ・生徒会活動の参加と活性化
 ・生徒間の交流・コミュニケーション能力の育成
 ・リーダーシップ・企画力の育成
 ・部活動の活性化
 ・クラス活動の活性化
 
2 実践の準備
ハード面:CU-SeeMe用パソコン
      CU-SeeMeソフト
     校内LANの整備設置
 
ソフト面
(1)教員側の組織,インターネット保守研究委員会の開設
<インターネット保守研究委員会とは?>
 商業科の職員を中心に10人で構成され毎週1回委員会を開き,インターネットやコンピュータに関する仕事全般を受け持ち検討する委員会である。(校務分掌とは別)
主な仕事として,
 
(2)生徒の組織,インターネット企画委員会の設立と開催
<インターネット企画委員会とは?>
生徒側の組織で生徒会役員と各クラスから募集した生徒で組織されたインターネット全般について企画運営する委員会である。1・2年生を中心に募集し中心となる旧生徒会役員3年生をリーダとして残した。
主な仕事として
 
(3)参加校募集の文書作成等
 
3 企画の実践
<生徒の実践>


活動予定

活 動 実 践

4月〜7月  

生徒会行事(体育祭・文化祭など)の形態や生徒会執行部の活動方針をメーリングリスト参加校に問い合わる。   

 4月  

4月は行事が多く,生徒会オリエンテーションと新入生歓迎遠足について,メーリングリスト問い合わせ数校と意見交換。生徒会役員自身ので実施要綱を企画作成しオリエンテーションは成功に終わった。<資料1>
歓迎遠足は2年ぶりの実施で経験が少ない役員であったがよく動いてくれた。ただ実施要綱の作成は担当の先生の援助を必要とした。<資料2>
インターネット企画委員会の設立を検討。昨年からのメンバーのためインターネットの導入教育終了。

 5月  

今年はリーダ研修会を7月に行う予定なのでメーリングリストで問い合わせ,何通かの返事が返ってきて実施要綱作成を始めた。初めてのことで非常に参考となり,リーダー研修会は大成功であった。この頃から一般の生徒にも交流の呼びかけや参加の呼びかけを始めた。<資料3>

 6月  

サマースポーツ(クラスマッチ)について交流。ここ数年問題となっている「行事の精選」が叫ばれる中,1日半であったものが2日間に延長,それに見合う内容にするためメーリングリスト参加校によりよいアイディアを求めた。

 7月  

サマースポーツやリーダ研修会準備のためインターネットに関する活動ができなかった。リーダ研修会について質問した程度である。

8月  

CU-SeeMeを使いより深く質問や討議を行う。部活動,生徒会のHPを立ち上げる。

 8月  

数人は学校でメールを送信していたが,夏休みのため,交流相手がいないのが現状であり,計画通りの活動ができなかった。  

9月  

CU-SeeMeを使い文化祭について,より深く質問や討議を行う。   

 9月  

インターネット企画委員を募集,生徒会役員とともに今後のインターネット利用について検討 。来年のことも考え1・2年生を募集したところ反響は大きく,たくさんの生徒が希望した。その後も1月まで希望者は増え続けた。この頃から文化祭についてのメールのやり取りが盛んになり,親睦が深まっていった。<資料4>

10月  

ホームページ上で生徒会行事(文化祭)の報告を行う。  

10月  

文化祭についてメール交換
ホームページ作成を開始し非常に興味があるようである。新生徒会役員とインターネット企画員のメールID発行の申請

11月
 〜
3月  

CU-SeeMeを使い生徒会執行
部の活動方針につ
いて,より深く質
問や討議を行う。  

11月  

インターネット委員会が卒業のホームページ作成を提案し,3年生3クラスが作成することになった。

12月

石川県の小松工業高等学校よりCU-SeeMeの交流の依頼があり,喜んで参加した。
生徒は驚きより一層興味関心が高まったようである。何度かチャットとCU-SeeMeを併用して交流をした。今年度の進歩の一つであろう。<資料5>

 1月  

修学旅行で実際に交流をしていだだく高校を探し,メールが返ってきたが時間が合わないので調整中の状態である。<資料6>
   
 2月  

1月30日〜2月5日修学旅行2年生のインターネット企画委員が京都・浦安近辺の高校と交流予定  
<教師側の実践>
 教員側の主な実践は生徒会交流全般の指導と準備である。下記のような実践を生徒会担当とインターネット保守研究委員会が協力して行った。
 実践を行っていく上であくまでも教師主導型でなく,生徒に自主的に企画運営させるよう心がけて実践を行った。また,昨年より生徒会室にパソコンを設置し,生徒が自由にE-mailを使える環境を整え,生徒への連絡もなるべくE-mailで連絡するようにし,生徒達がパソコンを使用するようにした。3年生の情報処理科と商業科の1クラスに卒業文集ではなく「卒業ホームページを作ってはどうか」と提案したところ,授業担任の先生や生徒に快く引き受けてもらい今後1・2年生へのインターネットや情報教育への関心につながるのではないかと思った。
 
4 実践の評価
 今回の実践は,生徒自身がインターネットにふれ,自分たちで交流相手を捜し,メールの交換やCU-SeeMeで生徒会活動の検討を行うものであった。
 こうした活動を本校は2年前から取り組んでいる。はじめは生徒会役員のごく一部の生徒だけが他高校へメールを出し交流のお願いから始まった。準備段階として情報管理の授業や生徒会活動で各高等学校のホームページを検索し,メールアドレスを調べることから始めた。次に文書発送用のメーリングリストを作成しアンケートと交流への参加案内の文書を発送し,初年度は生徒会ホームページ作成とメールの交換だけに終わってしまった。初年度の反省として,企画の進度が遅れたのは生徒会役員の多忙が大きな要因としてあげられた。本年度はそれを解消するためと生徒会役員以外のインターネット利用の促進のために生徒側の組織インターネット企画委員会を設置し,その委員会には他校との交流やインターネットに関するすべての活動を任せた。結果的には生徒会役員の仕事量も減り,昨年よりは幾分か円滑に活動がなされ,生徒会活動に集中できるようなった。また,各高校へ問題の提議,質問等に応答をしていくうちに各高校から刺激を受け,今年の生徒会活動はすばらしいものとなった。例えば遠足でのチェックポイントでゲーム内容の改善,リーダ研修会では生徒会役員が各班の班長となりHR委員長をリードし,研修では企画から議長や司会を務めリーダーシップを発揮してくれた。そして,最大の行事である桜華際(文化祭)はオープニングを生徒会役員が企画し,各文化部に提案しミュージカル「ウエストサイドストーリー」を行った。演奏を吹奏楽部,出演を演劇部,舞台装置を美術部,企画構成を生徒会役員が担当し,約1時間の超大作を成功させた。クラスマッチでは部活動生が審判を行い,少しずつではあるが部活動間のコミュニケーションがとれ,校内のネットワークつくりができた。今回の最大の成果は生徒がCU-SeeMeの操作方法を理解し,電子会議等が行われるようになったことである。また,教師自身も接続方法の研修を行い知識を深め,連絡の取り合いで他校の先生との交流も深まりインターネットのすばらしさに気づかされた。この成果は交流により各校の生徒会役員や他校の活動に刺激されたところが非常に大きいと思う。
 今回少し残念なのが校内からのメールが減ったことである。生徒会活動や行事は近年にない盛り上がりを見せたのだが,生徒会活動に対する意見があまり聞かれなかった。生徒会への関心が薄れたのではとも思えたが,原因は校内への宣伝活動が少なかった事だろうと思う。会報を発行するなど校内の生徒専用のメーリングリスト作成なども検討していかなければならない。また,ホームページの更新が遅れたことも原因の一つだと考える。
 この交流はけっして派手な活動ではないが少しずつではあるが発展してきている。この様な活動を地道に続けていけば今後また新たな広がりを見せる可能性は大きいのではないかと思う。
 
5 実践をおえて
 現代の若者はコンピューターへの興味関心は非常に高く,上達には目を見張るものがある。生徒会の生徒もCU-SeeMeの操作方法やホームページ作成を自分のものにしていった。一番驚いたのが,「インターネット企画委員」の募集であるが,当初4〜5人集まれば良い方かなと考えていた。しかし,第1回の募集で20人を超える数になり,その後も噂を聞きつけた生徒達の委員会への入会希望が後を絶たなかった。
 本校は教師側への研修としてインターネット保守研修委員会が1週間に1回,輪番制で講師を行い,UNIXやインターネット,パソコンの研修とそれに関する討議が行われて非常に勉強になった。また,全職員に対して月1回の割合で研修会を行った。しかし,私自身,近年,インターネットに対して,少し軽視していたような気がする。確かに容易で楽しく使え,非常に便利なものであるがその反面,ネチケットや保守管理が大切である。この前,生徒達が平気で電話番号や個人の情報をメーリングリストに載せ指導したばかりであったにもかかわらず,私自身も同じようなミスを犯し,多くの高校やその他の機関,個人に多大な迷惑をかけてしまった。ボタン一つで情報を送信でき大変便利な道具であるが,自分の情報に責任を持たなければならないことを実感させられた。インターネット導入当初は,何事にも確認をして送信や受信等の操作を行っていたが,謙虚な心を忘れ,ネチケットを軽視していたことを反省した。

 最後に来年度の展望として,今年は予算面等で実際の交流は難しかったが,今後予算をとり交流を行いたい。CU-SeeMeを他の生徒にも開放し,今後もこの委員会を運営し活発に活動させ,来年度は生徒向けの研修会を生徒自身の手で行わせたい。また,校内のメーリングリストも設置し,多くの意見を生徒会活動や学校教育に生かし開かれた学校作りをしていきたい。

ワンポイントアドバイス
各学校の生徒会役員は10人前後だと思う。この人数では学校行事,生徒会行事に追われ,インターネット等の企画を実践するのは生徒教師ともに大変忙しく,何事も中途半端になる。そのインターネットに関することを専門に企画運営する委員会を設立すれば生徒会の仕事も半減する。また,生徒会室に生徒会専用のパソコンを設置し,自由に生徒が使える環境を作ってやれば生徒は自然に操作方法を覚える。