52 初心者対象メーリングリスト「わかばネット」

東金女子高等学校 高橋 邦夫

大和市立林間小学校 浅野 智子


インターネット利用の意図

 インターネットを教育に積極的に利用してみようと思ってはみても、むずかしく考えWEBの利用等で留まっている教員も、女性教師を中心として数多くいると思われる。インターネットの醍醐味は人と人とのコミュニケーション、すなわち、電子メールを中心とした交流活動にあり、これらを体験していくことがインターネットの積極的な教育利用の拡大にとって重要である。電子メールによる交流活動の場としては、新100校プロジェクトにはすでにaimitenoという教育問題を議論するメーリングリストがたちあがっているが、はじめて参加する者にとっては敷居が高くなってきている感じを受ける。


1 はじめに

 2001年度までの全小中高校へのインターネット接続の導入、およびインターネットの活用をカリキュラムに組み入れた新学習指導要領の施行に向けて、情報教育および教育の情報化に関連して教育現場で準備を行うべき課題は多く、その中心に情報手段を活用した教育活動を展開できる教師の不足がある。授業で利用する前に、自らインターネットを体験して概要を知っておきたいとは思うものの、なかなか機会がないうえに、初心者が安心して着手できる居場所もなく、漠然とした不安から二の足を踏んでしまう者も少なくない。特に、いくつかある既存の教育関係のメーリングリストでの参加者は圧倒的に男性が多く、女性参加者が少ないことは、新規にチャレンジしてみようと思う女性教員にとっては、なお一層の敷居の高さを感じさせるものとなっている。

 インターネット利用教員の裾野を広げるには、校内研修や外部の教員研修等もあるが、時間的な制約にとらわれず都合の良い時間に自分のペースで進めることができる点でオンラインの研修は有効であり、敷居の低い、自由で安心できる雰囲気でインターネット利用の初歩からを体験していける場が用意されれば、有効な支援手段になるものと考えられる。

 そこで、主として女性教員を活動の中心とする、インターネット初心者を対象としたメーリングリストを開設し、ゆっくりとした活動の中で教育におけるインターネットの効果的な活用の仕方を考えていくことを思い立った。あらかじめ対象を明確にしておくことで、参加者相互の互助的活動や情報交換を安心して進められることをねらいとしている。


2 実践の準備

 初心者対象、女性対象のメーリングリストという着想のもとに、まず、どのような形態がふさわしいかの検討を行った。

(1)想定される質問とそれに答える的確な支援
 参加対象者には、機械の操作や設定を苦手と感じたり、わからない場合でも同僚の男性教員には何となく聞きづらいといった消極的な反応が予想された。特に、ネットワーク利用上の技術的な疑問やネットワーク上の慣習についての質問、インターネットを利用した授業実践上の質問の3種類が課題として想定される。これらの質問事項について、十分な経験を積んだ教員等がわかりやすく回答していくことで、電子メールによるコミュニケーションの有効性や仕組み、マナー等について体験的に身につけられるものと考えた。そこで、100校プロジェクト参加校で優れた実践を展開されている先生方を中心に、サポートスタッフとなっていただくようお願いし、企画の進め方全般について相談に乗っていただくこととした。

(2)メーリングリストの仕組みの準備
 メーリングリストの構築にあたっては、新100校プロジェクトを支援しているコンピュータ教育開発センターにお願いして、情報処理振興事業協会の情報基盤センターのサーバで構築することにした。メインの参加者用のメーリングリストwakaba@cec.or.jpと、サポートスタッフの打ち合わせ用のメーリングリストwakaba-support@cec.or.jpの2つを構築し、使い分けることとした。
 また、企画の事務局(高橋、浅野)のメールアドレスとして、参加者にわかりやすく担当が転勤しても継続的に利用できるアドレスが好適と考え、無料の電子メール転送アドレス発行サービスを利用して、wakabanet@iname.comという電子メールアドレスを取得した。


3 企画の実践

(1)サポートスタッフ(顧問グループ)

 サポートスタッフには、以下の方々をお願いした。

 大津市立平野小学校教諭  石原一彦

 大和市立林間小学校教諭  島崎 勇

 園田学園女子大学講師   高橋 純

 東金女子高等学校     高橋 邦夫(事務局)

 大和市立林間小学校    浅野 智子(事務局)

 

(2) 呼びかけ文の作成と配布
  参加の呼びかけは2度にわけて行った。
  8月上旬に、既存のメーリングリストで発言をされている女性の方にメーリングリスト開設の案内を個別に電子メールで発送した。

Subject: メーリングリスト「わかばネット」へのお誘い

………
さてこのたび、女性を活動の中心とする、インターネット初心者を
対象としたメーリングリストを開設することにいたしました。

私自身も教育目的のメーリングリストにいくつか入っていますが、
女性の発言が大変少ないと、ずうっと感じてきました。実際の参加
者も少ないのでしょうが、参加はしていても発言の機会を得られぬ
まま、だまっておられる方も多いのでしょう。
文部省もすべての地域にインターネットを導入することを明らかに
しました。また総合的学習の柱には「情報」が含まれております。
もうすぐ、教員ならば誰でも、初心者でも、女性でも、学習の中に
インターネットを使う時代がくるのだなと思っています。

 

 ☆インターネットが入ってきたから、有効に使ってみたい、

 ☆でもどうしたらよいのかわからない、

 ☆メーリングリストをのぞいてみたけれど、こわそうな感じ

  で入っていけない。 

 ☆職場の同僚に頼ってばかりいるのはどうか

 

こんな人々を対象としたメーリングリストで、活動内容にもの足り
なさを感じた時には、現在すでに動いている各種の教育用メーリン
グリストにも参加していただきたいと思っています。

 

その結果、参加の返事を頂いた7人とサポートの12名を初期メンバーとして登録し、「わかばねっと」はスタートすることになった。
 初期メンバーが確定したところで、既存のメーリングリストを使い広く参加者の募集を行った。
呼びかけ文の配布先は、全国的な教育関係のメーリングリストと一部の地域のメーリングリストであった。

 

「わかばねっと」〜初心者向けメーリングリスト〜へのお誘い

このたび、先生のためのインターネット教習所「わかばねっと」メ
ーリングリストがスタートいたしました。

インターネットを教育に積極的に利用してみたいと思ってはみても、
むずかしそうに感じられたり、メールを出すのはなんとなく気後れ
がして、WWWの利用等で留まっている先生も女性教師を中心とし
て数多くいると思われます。

そこで女性を活動の中心とする、インターネット初心者を対象とし
たメーリングリストを開設し、ゆっくりとした活動の中で教育にお
けるインターネットの効果的な活用の仕方を考えていくことをねら
いとしてメーリングリスト「わかばねっと」は、はじまりました。

本日は、皆様のまわりにおられる方々に、「わかばねっと」を紹介
していただければと、開設のご案内をいたしました。
参加希望の方がございましたら、下記の手順で参加登録する方法を
お教えいただくか、あるいは下記の事務局アドレスまでご連絡くだ
さい。

また、「わかばねっと」は女性を中心とする初心者を対象としてい
ますので、様々な質問等が出てくることも予想されます。そこで、
それらの質問に答えてくださるサポートメンバーもあわせて募集い
たします。ご協力いただける方がおられましたら、ご連絡お待ちし
ております。

わかばねっと事務局(wakabanet@iname.com)
※「わかばねっと」は平成10年度新100校プロジェクト自主企画
として運用しております。

=======================================================
わかばメーリングリスト参加方法
-------------------------------------------------------

(1)自動登録の場合
わかばメーリングリストは、参加希望者自身が申し込みのメールを
送ることで自動登録できます。
  宛先  To: wakaba-request@cec.or.jp
  題名 Subjet: subscribe
  で電子メールを送信してください。
  (脱退の場合、Subject: unsubscribeとします)

(2)手動登録のお申し込み
自動登録に不安のある方は、下記の事務局アドレスに登録のお申し
込みをいただければ、事務局で登録をいたします。

わかばねっと事務局 wakabanet@iname.com
- - - - - - - - - - - - - - -
お申し込み様式
       氏名:
電子メールアドレス:
 備考・連絡事項等:


 この結果、数人のサポートメンバーを含め新規参加者が加入した。

 メーリングリストの登録方法は、参加者の登録申請(subsribe)による自動受付に対応しているが、初心者がこれに敷居を感じることも多いと思われたので、事務局で代行登録も行うことを積極的に広報した。事務局によるメンバーの登録は、cec.or.jpサーバでパスワード保護機能つきのWWWインターフェースを設けていただいたので、これを利用した。

 

(3)メーリングリストの活動

 これまで、約50通ほどのメールが流れている。自己紹介を兼ねて気軽に発言していただくための呼び水として、アンケート形式の呼びかけも行った。
 インターネット利用上の質問やそれに対する回答、参加者間の取組みに関する報告やそれに対する感想など、本格的な交流活動も一部参加者間では始まっている。

4 実践の評価

 最初に個別にメールで参加をお願いした方たちからは、以下のような返事が届いた。


(1)
同感です。ハイレベルな発言に対し、ついていけないことがほとんどでした。
(2)
私も幾つかのメーリングリストに登録させてもらっていますが確かにあまり投稿していません。
私の場合、情報量の多さに対して処理能力が低いのが原因、と思われます。数日間学校をあけると200通近くたまってしまうのに閉口しているところもありますが・・・。
女性の発言が少ない、と淺野先生が感じるのは、中学校職員室におけるネットワークの活用率からも、恐らく前者の「実際の参加者が少ない」だと思います。
(3)
ご連絡ありがとうございました。どういうふうに関われるかまだ、未知の状態ですが、とりあえず、主旨には賛同いたしますので、メーリングリストに加えていただければと思います。よろしくお願いします。
(4)
メールを読ませていただきました。ぜひ参加したいと思います。よろしくお願いします。
(5)
わかばネット、私も興味があります。
自分自身あまりパソコンのことがよくわかっていないので、お話しする場ができるとありがたいです。
もし、今からでも間に合うようでしたら参加の登録をよろしくお願いします。


 

 現在までに登録者は35名を超えたが、メールの内容は自己紹介程度にとどまり活発な活動にはいたっていない。文部省の統計によれば、小学校教員の62%、中学校教員の40.2%、高等学校教員の24.3%が女性教員であるというが、コンピュータやインターネット関係の研究会などでは、出席者の9割以上を男性参加者で占められていることがほとんどである。
 学校へのインターネット導入の完全実施の時期が見えてきた今、インターネットの学校現場での活用について多くの議論が必要であり、今まで活用している様子が見えなかった女性教員でも、必ず活用した学習を行う時期が来ると思っている。インターネット抜きの学校現場では、男性・女性関係なく、児童・生徒の教育にあたり数々のすぐれた実践を積み重ねている女性教員がインターネットの世界に入ってくれば、その活用の幅が多いに広がることが期待できる。

5 実践を終えて
 新100校プロジェクトも3月には終了し実践報告を行う時期がきたが、「わかばねっと」はまだまだ「わかば」のまま、これから大きく育つメーリングリストである。最後に「わかばねっと」スタートのメールを紹介する。


Subject: 「わかばねっと」

限りない可能性を持つ、「わかば」

女性を活動の中心とする「わかばねっと」がスタートいたしました。
太陽の光をあび、栄養をもらい、わかばは育ち、丈夫で美しい大木の
林になれたらいいなと思っております。
本日は、スタートのご挨拶です。