55 CU-SeeMe を利用した国際交流
 
               茨城県立岩井高等学校 為貝  祐一
  中村   保子
  白仁田 満美
   野村 由美子

インターネット利用の意図
 
 岩井高校においては,平成7年よりインターネットが接続され,生徒が自由にコンピュータを使える環境が整っている。当初は国際交流クラブの生徒が中心となって活動し,海外との電子メールのやりとりやホームページ作りなどに取り組んだ。教科においては,主に英語,理科において実践し,一昨年度は英語の授業でカナダとの電子メールによる文通活動を行った。その他,3ヶ国が1つのチームとなり,共同で1つのプロジェクトに取り組むという バーチャルクラスルームなどにも参加している。
 今回の研究では,昨年度実施したCU-SeeMeを利用したコミュニケション能力育成の研究をさらに追求し,昨年度の問題点をどう克服するかに焦点を当て,研究をした。CU-SeeMeとはコンピュータ上で小型カメラを通して直接相手の顔を見ながら会話できるというものだが,昨年度はオーストラリアの学校と実践をし,生徒同士英語でコミュニケーションを図ることができた。お互いの国についての質問を,相手の顔を見ながら話すことによって,より親近感のある交流ができた。しかし,昨年度は,相手の画像が完全にこちらに送られてきたというわけではなく,音声も通らなかった。よって,本研究では,よりすぐれた画像で相手を見ることができ,また音声もマイクを通してつながることができる交流を実現し,より生徒がスムーズにコミュニケーションを図ることができる授業の実践を目的としたい。

1 単元名 
(1) 実施対象
  1年6組の英語Tにおいて実施
    
   交流校  Daejin High School
        Korea
 
2 指導計画
(1) 交流相手の選定
 今回の研究では,相手校の選定には前回に比べ時間がかからなかった。なぜなら韓国の高校から,CU-SeeMeで交流をしないかという申し出があったためである。韓国とは今まで交流したことがなかったが,時差もほとんどなく,相手校の学生が日本語を勉強中で,日本語での交流も可能だという点に興味がわき,交流を行うこととなった。また,韓国も英語を母国語としないので,英語の交流も日本の学校と近いレベルで話すことができるという点にも興味を引かれた。
 
3 利用場面
(1) 授業実践までの経過
 交流校を決定後,実際にお互いの画像が届くか,音声が通るかの実験を数回試みた。昨年度のオーストラリアとの交流では,最初は相手の画像が届かず,音声も通らないという状態が続いた。前回の反省を生かし,お互いのCU-SeeMeのバージョンの設定などを綿密に話し合い,トラブルをいかに解消するかに努めた。何度も事前に調整するにつれて,お互いの画像が見えない原因の一つは,やはりバージョンの違いにあることがわかってきた。お互いできるだけ近いバージョンを使うことによって,画像が届かない,カラーで見えないなどのトラブルがなくなってきた。韓国の学校とは,実際の授業実践までの間に,週1回から2回のペースで,教師,生徒数人を含めて交流の実験を重ねた。以下に事前に練習で行った韓国との会話の様子を記す。韓国の生徒は日本語を勉強中な為,日本語を時々使用している。(stu09,15,39と書いてあるのは,韓国の生徒を指し,yumikoは日本の生徒を指す。heidi というのは,韓国側の先生である。)
 
stu09: hi yumiko
Yumiko Nomura: Hi all!
heidi: hi Yumiko?
Yumiko Nomura: How are you all?
heidi: Please turn on your camera, yumiko.
stu15: it is the school event to held world cup game japan and korea together~~~~
heidi: I can't see you. Yumiko ? please change your cam focues
Yumiko Nomura: O.K I reconnect
heidi: Yumiko now is good
stu15: the relationship between korea and japan is getting better~~~~
Yumiko Nomura: Yes, I think so.
stu15: let me introduce my friend su-gin lee~~~~
Yumiko Nomura: O.K please. Hi, su-gin lee! Nice to meet you.
stu15: Nice to meet you, too. Hajimemashite.
Yumiko Nomura: Hajimemashite.
stu09: watashitachiha "Five star and North star"ha rokuninde tsukurareta utsukushii kumidesu.
Yumiko Nomura: Wakarimashita. Yoi namae desune.
stu09: Doumo arigatou gozaimasu.
stu09: wagakumiha nisenninenno worldcupni tsuiteminasanto hanashinagara ironna kotoo hanashiaitaidesu.
stu03: watashino namaeha cho jaeho des
Yumiko Nomura: world cup ni tuite desuka. Omoshiro soudesune.
Yumiko Nomura: konnichiwa cho jaeho !
stu09: ninennisenno worldcupo kankokuto nihonni kaisaisurukoto tsuite doamoimasu?
Yumiko Nomura: totemo subarashii kotodato omoimasu
stu03: watashitachiha nihongo circle no member des
Yumiko Nomura: students, world cup ni tuite doomoimasuka?
stu09: Totemo tanoshimi desu.
Yumiko Nomura: what is your hobby?
stu39: My hobby is listening music and play basketball but i like tennis better.
stu09: i'm like soccer and you..?
stu09: i like nakata..
Yumiko Nomura: I like nakata, too.
stu09: i like gawaguchi....too
Yumiko Nomura: Yes I like him too.
stu09: who do you like korean soccer player..?
Yumiko Nomura: che- yong su, but i don't know how to spell him
stu09: i like very very love him....
stu09: do you know S.E.S
Yumiko Nomura: musician?
stu09: yes...sure.
Yumiko Nomura: yes, a little
stu09: Do you like speed..?
Yumiko Nomura: so-so. You like?
stu09: Yes!!...sure.. Sorry, I have to go today.
Yumiko: O.K. I see. See you.
stu09: sayounara
Yumiko Nomura: sayonara
 
 上記の会話は,数回練習したうちのごく一部の会話だが,キーボードを利用したチャットによる会話は,多少会話の流れにずれが生じたものの,ほぼ満足にできた。相手の画像も,練習の回数を増やすにつれ,きれいに見えるようになった。マイクを利用した音声での会話は,簡単な会話はできたものの,長い文章になると,途切れることが多くなり,満足にはつながらなかった。
 
(2) 実施内容
  授業は10月の下旬に行った。まず,1クラス40名を6つのグループに分け,それぞれのグループで韓国の生徒への質問を考えた。韓国の学校が,2002年に日本と韓国共同で開催されるサッカーワールドカップについて話し合いたいという希望のため,スポーツの話題が多くなっている。質問内容は以下の通りである。
 Group 1 How is the weather today?
     Do you have much snow in winter?
     What season do you like best?  
 Group 2 What subjects do you study?
     What kinds of clubs are there in your school?
     What do you want to be in the future?
 Group 3 What sports is the most popular in your school?
     How many soocer team are there in Korea?
     Who is the popular soccer player in Korea?
 Group 4 Is it hard for you to learn Japanese?
     What do you think of soccer team in Japan
     Do you know Nakata Hidetoshi?
 Group 5 Have you tried Japanese food?
     Are there any Japanese restaurants in Korea?
     What is your favorite food? 
 Group 6 We'll teach you some Japanese.
     Do you know how to say "thank you" in Japanese?
     Please teach us some Korean.
 
 グループごとに質問を考えた後,グループ内で一人一人役割分担を決めた。CU-SeeMeのカメラにうつる生徒,チャットの時にキーボードを打つ生徒,交流の内容をまとめる生徒など,一人一人が参加できるように配慮した。その中でもキーボードを担当する生徒は,チャット時になるべく早く打てるように事前にタイピングの練習をした。
 
  上記の質問が全て行うことができたわけではない。こちらの質問に対して,相手側も質問をしてくるので,臨機応変に応対していかなければならない。咄嗟の相手側の質問に答えられるかが求められたが,生徒達は自分たちの答えられる範囲でなんとか応対した。
 授業当日は韓国との接続が割合うまくできた。向こうの画像もきれいに届き,チャットもスムーズに行うことができた。チャットの場合,質問をした後に相手の答えを待つ間に多少時間がかかったが,ほぼリアルタイムで交流を行うことができた。音声に関しては,事前の練習時には,相手の声も何とか聞き取れるほどになり,本番でもほんの少し意志疎通ができる場面もあった。しかし,まだまだ不安定であり,途中途切れることも多く,お互いスムーズに会話できるというわけにはいかなかった。従って,主な会話は,前回同様チャットによるものが多くなっている。以下に大まかな交流の記録をまとめる。
 
<Korea> Hello, Japan!
<Iwai High School>Hello, Korea!
 
音声にて試す
Hello, Korea!
韓国からの返事が届く
Hello, Japan! Konnichiwa!
<Japan> Konnichiwa!
 
再びチャットによる会話
<Iwai High School>How is the weather today?
<Korea> It is cloudy. How about Japan?
<Iwai High School> Fine, today. What season do you like best?
<Korea> I like spring.
 
音声による会話
<Korea 生徒数名で> I like spring! I like summer!
<Iwai High School> I like summer, too!
少しとぎれるような感じはあるが,だいたいの意味は把握できる程度につながった。
 
チャットによる会話
<Iwai High school> What subject do you study?
<Korea> English, science, language, Japanese and so on. We study Japanese.
    Konnichiwa. Genki desuka?
 
<韓国からの音声による会話> Genki desuka? Watashi ha Genki ........
音声はあまり鮮明ではなく,途中で途切れてしまった。
 
<Iwai High School> Hai, Genki desu. 
        What kinds of clubs are there in your school?
<Korea> Soccer, basketball, volleyball, computer club ....
<Iwai High School> What sports is the most popular in your school?
<Korea> Soccer!!.
<Iwai High School>Do you know Hidetoshi Nakata?
<Korea> Of course. I like him.
<Korea>In 2002, soccer world cup will be co-held in Korea and Japan. What do you think of it?
<Iwai-high school> It's great!
 
<音声による会話>
<Iwai High School> It's great! What do you think?
<Korea> The world is ...........  (途切れる)
<Iwai High School> Sorry??
 
<再びチャットによる会話>
<Korea> The world is getting closer.
<Korea> Please tell us some names of soccer teams in Japan.
<Iwai High School> Kashima Antlers, Yomiuri Verdys, Yokohama Frugels and so on.
 
<授業時間終了のため,今回の交流はここまでとなった>
 
4 実践を終えて
  生徒の反応は,自分達の顔も写しだし,相手の画面も見ながらコミュニケーションを図るということに興味を覚えたようだ。話題がサッカーということもあり,生徒たちも興味をもって交流していたようだ。ややキーボードを使ってチャットを行うことは,慣れていないため難しかったようだが,韓国へ出した質問が,1分前後で返事が返ってくるということに驚きを表していた。また,相手の生徒が日本語を使ったこともあって,より親近感がわいたようである。問題点はやはり音声面において,十分満足のいく結果が得られなかったことである。今後も,いかに音声を通しての交流ができるかを深く研究していきたい。
 
ワンポイントアドバイス
 CU-SeeMeを行う上で,大変なことは相手校を探すことである。素早く探すためには,インターネット上のCU-SeeMe に関するメーリングリストに参加すると良い。また,画像が届かないというトラブル解消のためには,相手とCU-SeeMe のバージョンをあわせるとうまくいく。