59 EメールやWebページで海外交流
 
高等学校第2学年・英語
岡山県立岡山芳泉高等学校 英語科 沼本 竜哉

インターネット利用の意図
 普通科高校での英作文授業は,ともすれば日本語から英語への翻訳作業に多くの時間を費やすことになり,効果的な動機付けの機会も十分ではない。生徒が意欲をもって英語を書くという面では困難である。また表現力を広げる面でも教科書等の教材だけでは単調な活動になりやすい。そこで,コンピュータを利用し,電子メールやWebページを通して海外と交流することで,言語を実際にコミュニケーションのツールとして役立て,自分の伝えたいこと,表現したいことをメールやWebページに表し,生きた言語活動として英語を使う体験を生徒に与える。

 
1 コンピュータを利用した海外交流
(1) ねらい
 海外の学生とのメール交換やWebページ上での情報交換を通して,自国や他国,他民族の文化の相違点,共通点の発見,及びその探求を行わせる。その結果として各々の文化の良さを理解させ,相互理解のための判断力を身に付けさせる。
 
(2) 指導目標
 英語をメールや情報交換の手段とすることにより,英語学習に対する意欲と英語による自己表現力の向上を目指す。メール交換やメーリングリストの活用,またWebページ製作のための操作手順を学び,情報に対応できる基本的な態度を身に付けさせる。さらに,共通の目的を設定して,その達成に向けて双方で協力して取り組むことにより,より深い相互理解を目指す。
 
(3) 利用場面
 全活動を通してコンピュータを活用する。
 
(4) 利用環境
 @使用機種 NEC MateServerNX SV26D(サーバ)1台
       Compaq DeskproEP 6350/10.0/CDS/W(サーバ)1台
       NEC VersaProNX PC-VP13WSBA1(クライアント)21台
 A周辺機器 EPSON LP-1800(プリンタ)4台
 B稼働環境 WindowsNT環境でLAN接続
 Cその他の利用ソフト  AL-Mail32(電子メール)
             Microsoft FrontPage 98(Webページ製作)
 
2 指導計画
 芳泉高校の第2学年では授業日となる土曜日を活用して教員各自の得意分野を生かした独自の講座を設定し,生徒は自由に選択して希望講座を受ける。今回の海外交流プロジェクトは「パソコン英語講座」という名称で生徒に紹介した。今年度は93名の生徒が希望し,70分間×2講座,各41,42名受け入れ,2名の教員でティームティーチングを行うという形で開始した。

第1回
5/30
 

ネットワークコンピュータの基礎
 ネットワークにつながることによって,どのようなことが可能になるのか,WWWと電子メールを中心に概略を理解させる。

第2回
6/20
 

WindowsNT操作の基礎
 WindowsNTの立ち上げと終了の仕方,Windowの操作,日本語入力とタイピング,タッチタイプへの挑戦,ブラウザ操作の基礎等について習得させる。

第3回
6/27

 

電子メールの設定とAL-Mail32操作の基礎
 あらかじめ規定のユーザ名で設定したフロッピーディスクを生徒数分用意し,それぞれのユーザ名,パスワードを使って初期設定を行わせる。さらにAL-Mail32の基本的な操作の仕方を理解させる。

第4回
7/4

 

インターネットを利用して,英文メール(自己紹介)を送ろう
 英文メール作成を支援するWebページをいくつか紹介し,ブラウジングの練習をしながら,自己紹介のメールを作成させる。最初のメールは担当者へ送信させ,正常に操作が行われているかどうか,チェックを行う。

第5回
9/5

 

リクエストメールの交換
 それぞれの学校で「こういうことが知りたい」というリクエストを交換し,それに応えて,学校生活紹介,学校行事紹介,日本の伝統行事紹介といったメールを作成し送信する。

第6回
10/3





 

個人対個人のメール交流開始
 交流相手校に生徒の電子メールアドレスのリストを送り,1対1のメール交流を開始する。できるだけ個性的なメールが書けるよう助言する。この講座以降は定期的に放課後コンピュータ教室を生徒に開放し,自由にメールチェック,返信ができるように配慮する。自宅にパソコンがない生徒については,海外からのメールをプリントして持ち帰り,返事を英語で下書きさせて,講座の時間中,または放課後を利用して入力させ,返信させる。

第7回
11/7
 

各自で工夫したトピックやテーマでメール交流を楽しむ
 できるだけ多種多様なトピックやテーマを設定させ,お互いの文化や習慣の違いに身近に触れられるようなやりとりができるよう支援する。

第8回
11/21


 

Webページづくりに挑戦
 Microsoft FrontPageの基本的な操作法について習得させる。生徒が失敗を恐れることなくWebページづくりができるよう,外部からは閉じられた講座専用WWWサーバを用いて,交流相手校の生徒が見て興味をもってもらえるようなWebページ製作を試みる。メールの返信を希望する生徒にはそのための時間を確保する。

第9回
1/16
 

Webページ製作開始
 それぞれの設定したテーマに従って,Webページの製作を開始する。利用する写真や資料の収集にもあたらせる。

第10回
1/30
 

Webページを改善する
 ある程度のWebページが出来上がった時点で,交流相手校からアクセスできるようにして意見や助言を求め,それに基づいてページの改善を図る。

第11回
2/6
 

Webページ完成へ向けて
芳泉高校のWebページとして公開に足る内容となるよう仕上げを試みる。完成できなかった生徒は春期休業中も継続して製作に当たる。

第12回
2/20
 

総括・まとめ

 
 
3 利用場面
(1) 目標
 講座の全場面でインターネットを利用しているが,ここでは教員にとっても生徒にとっても最初の関門となった第3回の講座,「電子メールの設定とAL-Mail32操作の基礎」を取り上げて紹介する。目標となるのは,各自でメールボックスの設定を行わせることにより,パスワードに対する責任感や,ネチケットに対する自覚などを深めるとともに,自分でメールを管理する基礎的な技術を身に付けさせ,一人一人が自信をもって送受信ができるようにさせることである。
 
(2) 展開
  電子メールソフト(AL-Mail32)の初期設定をして友人とメール交換してみよう

指導計画(6/27)

留意点

@電子メールの概要を説明する。
 

 電子メールがどのような仕組みでやりとりされているのか,概略を理解させる。

A生徒にフロッピーディスクを配布し,指示に従って各自設定を行わせる。


 

@フロッピーをセットする。
AAL-Mailアイコンをダブルクリックして立ち上げる。
B上のメニューから「ツール」→「オプション」と選択させ,自分のユーザ名とパスワードを入力させる。その際,大文字・小文字の区別等にも十分留意させる。
C「送信」タグを選択させ,署名も適切に書き換えさせる。

B動作を確認する。

「メール取り込み」で設定を確認させる。

C友人同士でメールをやりとりしてみる。
 

「メール」→「新規に送信する」から任意の友人のアドレスを使ってテストメールをやりとりさせる。その際「返信」の仕方を合わせて説明する。

D交流相手校のWebページを紹介する。
 

 今後交流していく相手校がどのような学校かを理解するために,シルバークリーク校のホームページにアクセスしてみる。

E英文メールを書く上で参考となるWebページを紹介する。
 

 英文メールについての知識がまったくない生徒のために有益なページを紹介する。
 
 
 
 
 
4 実践を終えて
 コンピュータを授業に活用して,海外とまったく新しい形で交流できたことで,生徒の反響は予想以上に大きかった。海外からメールが返ってくるのを心待ちにして,熱心にパソコン教室に通い,放課後も残って英文メールに取り組む生徒たちの生き生きとした表情がたいへん印象に残った。今までは辞書を引くことすら面倒がっていた生徒が,自ら進んで和英辞典に親しみ,ブラウザを通して調べたモデルセンテンスを活用してメールを書いている。交流相手校の一つシルバークリーク校が日本語を学ぶコースを持っていることから,たどたどしい日本語のメールも届くこともあり,お互いに言語に対するコンプレックスが速やかに消えていった点もたいへんプラスであった。自分にメールをくれた遠い海外の友達に何としてでも英語で返事を返したいという思いが,生徒たちをこれまでになく積極的にしたようだ。
 生徒からは「海外に友だちができて,本当に国際交流をしているという実感が持てた。」「家族や仕事についての考え方の違いがわかっておもしろかった」「以前から興味があったインターネットが使いこなせるようになってうれしかった。」「自分の書いた英語が通じたことで,自信が持てた。」「3年生になってもぜひ交流を続けていきたい」といった前向きな感想が多く聞かれたが,やはり2人で1台という制約は大きな壁となっていたようで,「1人で1台使いたかった」という声も強かった。
 生徒にとっては実に楽しい充実した講座となった反面,担当者には各講座のための準備や講座中に発生するトラブルの処理に追われる日々となってしまった。受講を希望した生徒を受け入れ可能な限界人数まで無理して受け入れたため,生徒からの質問に,2名の担当者で駆け回ってもとても間に合わない状況であった。また担当者の予測を越えたトラブルにもしばしば悩まされた。最も深刻だったのは,出したはずのメールが届かないといった種類のトラブルで,その原因のほとんどはアドレスの入力ミスによるものであった。幸い双方の担当者で協力して調査にあたり,短期間で解決でき,講座を進めることができた。こういったトラブルに対する処置をしっかり確立していくことの大切さを改めて認識させられた。
 
 
ワンポイント・アドバイス
 今回の交流活動を通して,多くの教訓が得られた。まず何よりもこの種の活動には,大勢の人数を受け入れすぎた。やはり一度に指導できるのは20人程度というところであろうか。また各講座の間が長すぎて,前回学習したことが十分定着しないうちに次の内容に進まなければならないような状況も大きなマイナス要因であった。
 AL-Mail については必要な時にのみ,サーバに接続して送受信する形をとったため,生徒自身はメールを送ったつもりが,送信箱に未送信メールとして残ったままというケースが多く見られた。生徒用のMailBoxはフロッピーディスクに作成したため,容量確保の必要からオプションで「終了時にゴミ箱を空にする」にチェックを入れておく,こまめに不要なメールを削除させる,といった注意が必要である。
 海外から届くメールには,署名欄にホームページアドレスが添付されているものがあり,これを相手のメールアドレスと錯覚した生徒が次々と行き詰まるという場面もあった。また,コンピュータは動作しているのに画面が表れるのを待ちきれず,マウスボタンを連打して数え切れないほどのウィンドウを開いてフリーズした,CAPSやNUMロックキーを知らずに押してしまい,パスワードが通らなくなったなど,同様の海外交流を計画される際も,おそらくこういったトラブルが多かれ少なかれ起きることが予想されるが,予めトラブル対処用のWebページを準備するなどの対策が有効ではないかと思われる。
 交流相手校の担当者と事前に十分に打ち合わせをしておくこともたいへん重要で,途中で双方に原因のあるトラブルに遭遇した際にもスムーズに解決できる。今回はたまたま直接お会いして話し合う機会が持てたことは大きなメリットであった。
 
参考文献
 Eメールの書き方・読み方・送り方 八木重和著 技術評論社
 インターネット英語表現辞典 塩澤 正/スコット・シェフェルバイン編著 三修社
利用したURLなど
 コピーで使えるEメール http://www.natsume.co.jp/kotoba/08kotoba/kotoba01.html
 英語でEメールを書こう http://www.wnn.or.jp/wnn-s/e-mail/
 辞書検索 http://www.hidecnet.ne.jp/~kimkaz/gijyutsu/jisyo.htm