63 工業専門科目におけるインターネットの活用

高等学校全学年・工業
石川県立小松工業高等学校


インターネット利用の意図
本校では,全ての工業学科が授業の中でインターネットを活用している。各学科の特色を活かした取り組みによって,生徒が機器の活用法,技術的な知識,マナー,表現力等を身につけ,積極的に授業に取り組んでいけるように実践していきたいと考えている。 


EVネット 機械システム科 古場田 良之 川辺 克彦 純一郎 辰巳
(1) ねらい

 ソーラーカー,ソーラーラジコンカーや省エネカー(マイレッジカー)の製作技術の向上と,学校間での交流をめざす。全国の工業高校で取り組んでいるソーラーカー,ソーラーラジコンカーや省エネカー(マイレッジカー)の製作技術や知識を共有することによって技術の向上をはかる。また,それに伴い生徒間の交流を進めていく。一方,外部有識者の助言・指導も生徒に対する教育の一環として取り入れていく。
 

(2) 実践の準備
@省エネカー(マイレッジカー)

 本校として,省エネカーの製作を開始したのは平成6 年度であり,本年度で5 年目となる。燃費を争うこの競技で,昨年度「スタイル賞」は受賞したものの,燃費は1 リットルで280kmとトップチームの4 分の1 程度に留まっている。そこで,本校の車両データなどを公開することで他のチームの様子を知り,互いに切磋琢磨することで燃費や技術の向上を目指している。図1 および図2 に今年度の車両と大会の様子を示す。
 


     図1 平成10年度の車両            図2 決勝スタート(鈴鹿にて)

Aソーラーラジコンカー

 全国ソーラーラジコンカー大会において準優勝という成績を修めた車両の駆動部および電気回路図を紹介する(図3 ,図4 参照)。
 同時に,カウントおよびメーリングリストを開設し,生徒からの質問や解答などを電子メールを利用し意見の交換の場とし,ソーラーラジコンカーの技術の向上をはかる。


図3 駆動部                      図4 回路図

(3) 企画の実践
@省エネカー

 この省エネカーを製作することに殆どの時間を費やしたので,まだ目的には達していないが,徐々にホームページの更新作業を進めている段階である。これにより生徒たちは,他のチームのデータを研究することに対しても興味関心を示し,一層活気づいた。

Aソーラーラジコンカー

 駆動部の詳細図および部品図の問い合わせが2,3校からあり紹介した。それと同時に他校の駆動部の紹介もあり大変参考になった。この企画を通して,生徒たちはホームページの作成やインターネットに大変興味を持つようになった。
 

(4) 実践の評価

 昨年に比べソーラーカー,省エネカー,ソーラーラジコンカーの問い合わせがあり意見の交換の場にできて,製作技術を得ることができよい結果を修めることができた。しかし,他校の生徒たちがもっと気軽に問い合わせができるように掲示板の充実を図りたい。
 

(5) 実践を終えて

 ソーラーカーやソーラーラジコンカーの製作過程や,生徒の実習風景,車の仕様等を具体的に表し,各校が参考にし,意見の交換ができるようにする。同時にメーリングリストの環境の改善をはかり,生徒からの質問や解答などを電子メールを利用し問題解決の手段とする。
 一方,ソーラーエネルギーに携わっている企業で,第一線で活躍している技術者から,インターネットを通じて助言・指導を行ってもらう。このことにより生徒レベルでの学校間交流をネットワーク上で進めていく。
 

知っているかいサロン 電気科 山岸 澄江 電子情報科 平木 外二
(1) ねらい

 教室の中での閉じた授業ではなく,地域に根ざした開かれた授業を行うことにより,新たに高校生として相応しい知識や技術が体得できる授業をめざす。
 高校生であれば,これくらいのことは知っているだろう,または知っていてほしいという内容を簡単な質問形式にして,企業等の学校外の方々から生徒へ電子メールで送信してもらう。生徒は自分自身でその内容の解答を見いだし学校外の発信者へ返信する。発信者の納得のいく内容が得られるまで繰り返す。その間,WWWにより自分の解答や質問内容等を発信し,広く外部に情報や感想を求める。

 

(2) 実践の準備
学習活動
教師の働きかけと予想される生徒の反応
指導上の留意点

および準備

企業等の学外参加者の活動
事前準備 いやなメールが届いたらどう思うか?
ネチケットの学習
企業等から内諾を得る 講師の承諾
メールの送信 メールアドレスとは何か?
どのように相手に届くのか?
送信マナーに重点を置く 紹介文の受信
メールの受信 外からのメールはどのような構造だろう? メールの書き方を参考にさせる 自己紹介の発信
メールの返信 初めて学外からメールを受信しての感想,近況を返信 返信内容の点検 生徒のメール受信
質問の受信と解答 どんな質問だろう?難しすぎる!
何処で調べたらいいのか?
教室外の人々に広く意見を問うことで予想外の進展が望める
他の人へのメールも受信できるようにして活発なやりとりを意識させる 質問文の発信
質問の返信 解答を返信 解答内容の点検 生徒解答の受信
OKの受信 達成感を得る
OKの発信
 
(3) 企画の実践

計画表通り後期より都合3回行う。対象生徒は2年生で選択授業受講者15名である。 解答と並行し校内ホームページの100校欄に貼り付け,広く外部からの意見や情報をメール送信してもらう。
 

(4) 実践の評価

(5) 実践を終えて

 当初は,メール送受信については双方とも不慣れであったが,道具として利用できるようになった。生徒の解答についての動向としては,最初は図書館や教科書等により調べいたが,インターネットの内容およびサーチエンジン等の発達もあり,ほとんどWEB上から解答を導き出す生徒もいた。
 授業の形態としては,あくまでも個人的な進度状況であるため,いかに意欲を高めて学習していくかが問題である。授業時間は限られているためインターネット本来の特徴であるリアルタイムでの送受信は達成しにくい。

 

みんなで探そう五重塔                建築科 古澤 清尚 河ア屋 吉晴
(1) ねらい

 インターネットの一つの特徴として,その場にいながらたくさんの情報や,意見交換などがリアルタイムで行えることや,時間に束縛されずに対応できることが挙げられる。
そこで,調査対象を日本の建築史の中で親しみ深い伝統的建築物である五重塔(三重塔などを含む)とすることで,数多くの意見や情報が得られデータを活用しやすく,たくさんの地域の人たちとの意見交流や情報交換を図る。
 ホームページやメーリングリストなどによって調査してもらった塔の写真やデータを送ってもらい,本校でデータを細分化し空白地帯の調査,宗派,形態,年代による分布の変化などをデータベース化する。また,コメントを付し,意見交流をはかる。地域の多重塔(三重の塔・五重の塔)の写真・建築年代・構造・建築様式・宗派・各種データ・雑記などを本校サーバに送ってもらう。
 

(2) 実践の準備

(3) 実践の評価

(4) 実践を終えて

 建築についての学習などは図書資料などにより,塔の歴史,種類や代表的な塔の建築様式を理解できある程度の成果が得られた。また,近くにある那谷寺三重の塔を見学し,その特徴を理解し,デジタルカメラでホームページに掲載する写真撮影などを行った。
 コンピュータについての学習は,建築科の生徒はコンピュータにかかわる授業が少ないため基礎知識から学習した。インターネットについてもほとんどの生徒が初心者のため,基礎知識を学習させ実際にインターネットを体験させて興味,関心を持たせた。
 ホームページ作成は,WordにてHTML形式で作成した。各ページを生徒に分担させ,生徒間で相談し受け取り手がわかりやすく,見やすいホームページ作成を目指した。那谷寺の写真も貼り付け,おおまかなものはできあがったがさらに見やすくするためにフレーム化に挑戦したが時間が足りず,まずはおおまかなものでホームページを立ち上げることとした。
 10月にホームページ立ち上げの予定だったが多重塔の資料整理,作成に手間取り,また,ホームページ作成に関しても初心者の生徒たちには理解しにくいものもあり,大幅に作成が遅れた。1月に立ち上げて,今後は限られた時間ではあるがホームページの手直しや送られてきた資料の整理などにも挑戦させていきたい。生徒にとっては苦労もあったが,インターネットに興味関心を持つことができ有意義な体験だったと考える。

有機化合物のIRデータとVRMLによる分子模型の表示

マテリアル科 島村 勝彦 新井

(1) ねらい

有機化合物のIR測定データと分子模型といった専門科目の学習内容を題材に,生徒がHTML,VRML,JAVA等ホームページ作成のためのソフトウエア技術を習得することを目的とする。
 

(2) 実践の準備

(3) 実践の評価

 本実践は「マテリアル科ホームページの作成」という課題研究の一環として取り組んだ。マテリアル科の学習内容を紹介する目的で,IR測定実習のデータを分子模型と対比しながら眺めることのできる工夫した画面を作成することができた。生徒は言語の理解に苦労したものの,満足できる画面を完成し充実感の味わえる取り組みができたので非常に有意義であったと思う。
 

(4) 実践を終えて

 IR(赤外分光光度計装置)とそのデータ処理のための端末パソコンは,本年度マテリアル科に新規導入された設備である。本実践を始めるにあたり,パソコンの梱包開き,パソコン本体へのメモリの増設,LANカードの挿入,LANケーブル接続端子の圧着,ハブとの接続,ネットワーク環境の設定等すべての作業を生徒が行った。時間がかかっても,一から手作業することによりいろいろな知識を習得することができると思ったからである。新品のマシンを触るときの生徒のウキウキとした目,初めてインターネットに接続できたときの喜びの表情は今でも忘れることができない。もちろん,生徒たちはHTMLもVRMLも何もわからなところからスタートしている。分子模型作成ソフトを調べるために600件以上のページを検索したり,HTMLの解説書を買って独学したり,好奇心旺盛な生徒に恵まれたお陰で素晴らしい成果をあげることができたと思う。
生徒たちの情熱,課題に取り組む姿勢は立派であり,結果そのものよりも,それに至るプロセスは大いに評価してやりたい。
 今後はさらなるバージョンアップを重ね,いろいろな人がホームページを教材に活用していただけるよう努力していきたい。