山梨県立谷村工業高等学校 長谷川 準
インターネット利用の意図
本校は,平成6年度に「100校プロジェクト」に選定されて以来,高度情報ネットワークの設備と環境が整ってきた。本年度は,平成9年度の「新100校プロジェクト」の活動をさらに継続・発展させ,今までに蓄積されたノウハウを地域社会に還元し活用できれば,より一層地域に密着し開かれた学校として,地域の方々に親しみを持ってもらえるものと考える。
具体的には,学校設備の開放(学校開放講座)と,生徒たちの地域行事への積極的な参加を実施した。
1 実践の準備
1.1 学校開放講座
(1) 校内に学校開放講座運営委員会を設置
学校開放講座の実施が職員会議で承認されたので,運営委員会を設置した。
(管理職・各学科主任・関係の分掌主任 計12名)
(2) 受講生の募集
地元新聞や広報紙に受講生募集の記事を載せてもらったり,公民館等にパンフレットを置き,募集した。
1.2 生涯学習フェスティバル
(1) 参加申し込み
山梨県企画県民局生涯学習文化振興課に連絡を取り,本年度も生涯学習フェスティバルに参加したい旨を伝えたところ,快諾が得られた。
(2) 交通手段の確保
本年度は単独のフェスティバルではなく,「県民の日記念行事」として他のイベントと合同開催されることになったため,開催場所も甲府市内のスポーツ公園内になった。
本校の場合は,参加生徒を引率したり,コンピュータや机等の機材をすべて学校から持参しなければならないため,マイクロバスを2日間レンタルした。
2 企画の実践
2.1 学校開放講座
昨年度に引き続き,地域住民を対象としたインターネット活用講座を本校のコンピュータ室で実施した。(図1)
本年度の反響は予想以上で,定員の2倍以上の応募があったため,抽選で受講者を決定せざるを得なかった。
(1) 概要
講
座
名 : パソコン入門からインターネット活用
対 象 : 一般成人(パソコン・インターネット初心者)
受講者数 : 37名(男16名,女21名)
実施場所 : 本校第1パソコン室
実施期間 : 平成10年10月2日〜10月30日(計13回)
週3回,午後7時〜9時
講 師 : 本校職員 12名(延人数65名)
補
助
員 : 電子情報科2・3年生(各回2名)(図2)
(2) 学習重点課題
・Windows95の基本操作の理解
・インターネットの基本的機能の理解
・インターネットの効果的活用の方法
・地域参加型の地域紹介ホームページの作成
(3) 学習内容
@開講式・Windows95の基本操作(6時間)
Aインターネットの概要・WWWの使い方(4時間)
B電子メールの使い方(2時間)
Cホームページの作成(20時間)
D発表会・閉講式(2時間)
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図1 学校開放講座
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図2 補助員の生徒
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2.2 生涯学習フェスティバル
(1) 概要
県主催の生涯学習フェスティバルが,本年度は「県民の日記念行事」の一つとして,平成10年11月14〜15日に甲府市の小瀬スポーツ公園で開催された。本校のインターネット同好会の生徒たちも主催者側として参加し,体育館内の展示会場設営やSOHOシステムの構築,来場者へのインターネットの実演・説明を行った。
(2) 内容
「きてみてさわってインターネット」をキャッチフレーズに,インターネットに関する展示や実演を行った。また,今回は展示場所が体育館内だったため,できるだけ多くの人に来てもらおうと,ビラ配りも行った。(図3)
@インターネット体験コーナー (図4,5,6)
ネットサーフィン用のコンピュータを2台用意し,来場者が自由に使えるようにした。
また,生徒が操作方法を説明している画面をプロジェクターでスクリーンにも映し,周りを取り囲んでいる人からも見えるようにした。
A即席ホームページ作成(図7)
来場者をデジタルカメラで撮影し,コメントを書いてもらってその場でホームページ
を作成し,インターネット上に公開した。さらに,デジタルカメラ内蔵のノートパソコ
ンを持ち歩き,会場内の様子を撮影しながらホームページを作成した。
BCU-SeeMeの実演(図8)
CU-SeeMe用のコンピュータを離れた場所に2台設置し,生徒と来場者,もしくは来場者同士で「テレビ会議」を行った。
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図3 ビラ配りの様子
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図4 インターネット体験コーナー
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図5 プロジェクターを使用
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図6 小学生も来場
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図7 即席ホームページ作成
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図8 CU-SeeMeの実演
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3 実践の評価
(1) 学校開放講座の効果
・できるだけ多くの教員からサポートを得るようにしたため,教員同士の啓発に役立った。
・地域の方の,学校の設備に対する認識が改まった。
・補助員として生徒が参加したことにより,工業高校の実習内容についての理解が深まった。また,本校生徒に対する意識が変わった。
・開放講座終了後も,コンピュータやインターネットに関する質問が寄せられるようになり,地域の方と学校との結びつきが強くなった。
(2) 生徒の校外活動による効果
・生徒たちは学校での学習がそのまま実社会で役立つことを経験し,その後の学習活動に積極性が出てきた。
・本年度は「県民の日記念行事」が大規模に開催されたため,幅広い年齢層の来場者が訪れたが,生徒は自分なりに考えて接していた。特に,高齢者が訪れたときには,すぐに椅子を出したり,ゆっくりと丁寧に操作方法を説明するなど,思いやりの心が見られた。
・普段学校では見られない生徒の姿を見ることができ,新たな生徒理解につながった。
・地域の方も地元の高校生が活発に活動している様子に接し、学校に対する認識が改まった。
(3) 今後の課題
・本校がインターネット先進校であるという認識が定着し,地域の方から年に数回開放講座を開いて欲しいなどの要求が増えてきたが,実施時間が勤務時間外であるなど,教員の負担が増えてしまう。また,受講費を無料とした場合,予算をどうするかが問題である。
・生徒の校外活動を継続させるため,複数の教科との連携を考慮したカリキュラムを編成する必要がある。
4 実践を終えて
学校開放講座の補助員をした生徒からは,「開放講座に近所の人が来ていて驚いた。」「質問されたことに答えたら感心されてしまい,少しうれしかった。」「自分がこんなに教えることができるとは意外だった。」「専門的な質問に答えられなかったので,もっと勉強しなければと思った。」などの感想が聞かれた。
また,生涯学習フェスティバルに参加した生徒からは,「一日中インターネットのことばかり考えていて,とても疲れた。」「学校からコンピュータを運ぶだけではなくて,設定を変更してインターネットに接続しなければならなくて,大変だった。」「ビラ配りをして人の冷たさを感じた。」「ビラ配りから戻ったら,小さい子がたくさん来ていたので,とてもうれしかった。」「他の展示やイベントがたくさんあって楽しかったが,つい自分たちの展示と比べてしまった。」「みんなバラバラに行動してしまったので,きちんと割り振りを決めて,協力すれば良かった。」「来てくれたお客さんにインターネットのことを聞かれて,答えられないことがあったのがちょっと残念。」などの感想が聞かれた。
学校開放講座や地域行事への参加を2年間続けてきたが,さらに新たな地域参加型の企画を検討していく必要があると感じた。そうすることにより,その企画をもとに本校が地域ネットワーク社会の中心的存在となり,より一層地域のため機能的に活動できるものと思われる。
このことは,専門高校の置かれている現状に活路を見いだす一つの方法と考える。