1.2.1.2 プロキシ型フィルタリングソフトの要件調査とその結果(要望と回答)

                                           宇佐美東男    愛媛県立新居浜工業高等学校

 平成9年度には、クライアント型のフィルタリングソフト(IFS)が開発され、学校現場で運用実験が行われた。その結果、各端末パソコンにフィルタリングソフトをインストールし、校種・学年別のプロファイルを設定しなければならないが、この作業は教師にとって大きな負担となる、といったことが明らかになった。こういったフィルタリングソフトに関する課題を研究グループにおいて調査し、プロキシ型フィルタリングソフトへの要望とした。
 要件調査の結果として、第1回および第2回研究グループ会議において利用者側からあげられた要望とそれに対する開発側からの回答を、上記7つの特徴に沿って整理し、以下に
1.2-1で示す。

 

1.2-1 利用者からの要望と開発からの回答

特徴No

見出し

要望/回答

内容

1、3、6)

一括した導入、設定/管理

要望

ネットワークで接続されたパソコンが複数台数ある学校現場において効率がよい、一括した導入、設定/管理を行いたい。

回答

プロキシサーバで動作し、フィルタリング環境を一括して導入、設定/管理ができる。

1、3、6)

ユーザ識別

要望

・個々の端末パソコンをIPアドレスで識別できるとよい。

DHCPサーバ利用に対応して、ユーザ識別はIPアドレスではなくIDを利用できるとよい。

回答

ユーザはIPアドレスやユーザIDで識別できる。

2)

対応OS

要望

OSはLinuxやFreeBSDなどフリー系のものを対象としてほしい。

OSはSolarisを対象としてほしい。

Solarisで開発し、Linux、FreeBSDで動作確認をしてほしい。

・小中学校等で普及するオールインワン型のサーバにおいても利用したい。

CPUやメモリのスペックなど作動環境を低くおさえてほしい。

回答

OSはSolarisで開発する。その後Linux、FreeBSDについても動作確認をする。

2)

処理能力

要望

・ラベルリストの数が多くなってもフィルタリング処理時間を実用範囲にしてほしい。

・同時に80端末パソコン程度のアクセスに耐えられるシステムとしてほしい。

回答

ラベルキャッシュを持つことで、ラベルビューロへのアクセス回数を低減する。

3)、6)

プロファイルの設定・管理のユーザインターフェース

要望

・プロファイルの設定等はブラウザ上で操作できるとよい。

・ブラウザ上のボタンで、プロファイルの設定や管理者レイティングができるとよい。

・プロファイル設定作業等が校内のどこからでもリモートでできるとよい。

回答

アクセス管理者、SFS管理者共にブラウザ上で設定、管理を行うことができる。

3)

プロファイル参考値

要望

プロファイルは校種・学年等に対する参考値を用意してほしい。

回答

校種・学年といった教育的なプロファイルの参考値については、CEC等教育機関で検討されるとよい。

3、4)

プロファイルの設定

要望

プロファイルを簡単に授業単位等で設定できてほしい。

回答

アクセス管理者は参考値等を元にして授業毎等の単位でプロファイルを作成でき、その設定はスケジューリングできる。

3)

基準/サービスとレベルの設定者

要望

使用するレイティング基準/サービスの選択と、レベルの設定を別の人ができるとよい。

回答

レイティング基準/サービスの選択者(SFS管理者)とレベルの設定者(アクセス管理者)を別々にしている。

3)

ラベルのダウンロードのスケジューリング

要望

フィルタリングソフトへのラベルのダウンロードはスケジューリングできるとよい。

回答

ラベルのダウンロードはフィルタリングソフトで指定したスケジュールに従って自動的に行われる。

4)

複数レイティングサービスの使用

要望

複数レイティング基準に基づいた複数レイティングサービスを同時に使用したい。

回答

複数レイティングサービスを同時に利用できるようプロファイルに記述できる。

4)

ラベルビューロの選択方法

要望

識別したユーザ毎に利用するラベルビューロを選択できてほしい。

回答

ラベルビューロの選択はプロファイルに記述するが、識別したユーザとの対応を自由に選択できる。

4)

ラベルビューロの選択範囲

要望

ラベルビューロは国内外を問わず利用できるとよい。

回答

海外ラベルビューロとの連携機能により、できるだけ多くの対象サイトを網羅する。

4)

ブロック理由の作成/変更

要望

ブロッキングされた時のメッセージを選択したり作成できるとよい。

回答

ブロックされた場合のメッセージはプロファイルに記述でき、自由に作成や変更ができる。

アイコンの表示

要望

フィルタリングソフトが機能している印のアイコンは隠すほうがよい。

回答

フィルタリングソフト稼働状態のアイコンは表示しないことになっている。

5)

プロファイルデータの登録・共通利用

要望

独自のフロファイルをプロファイルビューロへ登録し、複数の利用者で共通利用できるとよい。

回答

アクセス管理者がプロファイルをプロファイルビューロに登録できる機能がある。

プロファイルはプロファイルビューロ管理者の設定により公開される。

プロファィルに関する評価はアクセス管理者の“概要”を用いて他者と共有できる。

5)

管理者ラベルの共有

要望

・ラベルビューロに漏れている有害サイトの情報を利用者が登録し共有したい。

・ホワイトリストについても登録制度を設け、ラベルビューロで共有したい。

・管理者ラベルを自動回収して、ラベルビューロに登録できるとよい。

・校内専用のラベルビューロとした場合、管理者ラベルを登録できるとよい。

回答

アクセス管理者からラベルビューロへラベルを申請する機能がある。ラベルビューロ管理者が申請されたラベルを確認した後、ラベルビューロへ登録する。

5)

管理者ラベルの公開

要望

・ロボットによって管理者ラベルを自動回収するのは危険が含まれる。

・ホワイトリストについてもロボットの場合は人間の検証が必要である。

回答

管理者ラベルはラベルビューロ管理者やプロファイルビューロ管理者が確認した後でなければ、ラベルビューロやプロファイルビューロからは公開されない。

登録情報に対するアクセス管理者からのクレーム

要望

ラベルビューロへ登録済みの情報に対するアクセス管理者からのクレームを受付してもらいたい。

回答

ラベル参照機能があり、ラベル情報に対するクレームはメールで受け付ける。

登録情報に対する作成者からのクレーム

要望

ラベルビューロに登録済みのホームページの作成者がクレームできる場を作ってもらいたい。

回答

ラベル参照機能があり、ラベル情報に対するクレームはメールで受け付ける。

7)

フィルタリング状況の把握

要望

・端末パソコン数、ラベル数、フィルタリング処理時間等の監視ができるとよい。

・ブロッキングログが採れるとよい。

回答

ブロックされた時刻、ユーザ名、URL、ブロック理由のログが採れる。また、総アクセスに占めるブロックされたユーザ数の推移も参照できる。

※ラベルビューロでは、ラベル問い合わせに対する返却数、他ラベルビューロへの返却数、返却不可数が採れる。

ブロックの制限1

要望

芸術分野の学習では、ヌード等のカテゴリでブロックされないようにできること。

回答

ブロックの制限2

要望

道徳教育で扱う言葉/暴力のカテゴリでは、ブロックをコントロールできること。

回答

対象サイト1

要望

ショッピング、ギャンブル、チャット等の新しい分野も対象にしたい。

回答

httpメソッドに注目したフィルタリングも可能である。

対象サイト2

要望

チャット、掲示板、アルバイトの募集など、対象にしたい。

回答

新規カテゴリの登録にも柔軟に対応できる機能を持たせる。

対象サイト3

要望

犯罪や不法行為も対象にしたい。

回答

犯罪や不法行為はその他のカテゴリに分類する。

 

特徴にはあげていない要件を示す。


 

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