アジア高校生インターネット交流プロジェクト

                   愛知県立中村高等学校 古井雅子

東海、広島、京都の中高生が、韓国、ネパール、タイの高校生とメーリングリストを活用した事前交流の後に三地域にゲストとして招いて交流を行い、その後も交流を継続している。インターネットを、事前の交流、シンポジウムの準備の連絡手段、また事後の交流に活用した。実際に会った交流が、ネットワーク利用だけでは得られない人間関係を深めた。ゲストの帰国後の日本の生徒の第一声、「オレ決めました。ネパールに行きます。」が、生徒へのインパクトをもの語っている。

1 経過: 昨年9月 東海スクールネット研究会(現在の名称 スクールネット研究会)がネパールからホーリーガーデンハイスクールの4名を日本に招待し、東海、大阪、東京、旭川で交流を行った。この経緯は「ここまでやるか!国際交流」(教育家庭新聞社発行)に詳しい。
本年3月 スクールネット研究会が昨年の企画を発展させる形でアジア高校生インターネット交流プロジェクトを開始。7月、CECの新100校プロジェクト重点企画の一つとなる。7月下旬、ゲストの来日、日本滞在。

【参加者の学校】
<ネパール>ホーリーガーデンボーディングハイスクール<韓国>ソウル女子商業高校<タイ>留学生
<日本>◎東海地区14校(・名古屋市立西陵商業・南山国際中高等学校・滝高等学校・愛知県立小牧高校・愛知県立中村高等学校・愛知淑徳高等学校・岡崎城西高等学校・名古屋女子大付属中高等学校・名古屋市立名東高等学校・名古屋市立緑高等学校・三重県立四日市商業高等学校・三重県立名張高等学校・三重大付属中学・三重県立菰野高等学校)
◎広島地区  広島市立基町高等学校、広島市立鈴張小学校

【参加教員及び支援者氏名】
後藤邦夫、奥山徹、影戸誠、藤村昭子、栗本直人、浦田治、森田佳和、近藤直門、田浦武英、西 亮、早川幹弘、森伸子 久賀史恵、清水豊、平山欣孝、西山誠、長谷川元洋、玉井基宏、難波太 中島唯介、三輪吉和、古井雅子

インターネットの各学校の利用環境: 生徒が電子メールを利用でき、東海地域では事前打ち合わせに参加できることという条件に合う学校が参加した。専用線接続の新100校プロジェクト参加校(名古屋市立西稜商業高校、南山国際高校)と国立大学付属校1校、スクールネット研究会の中で有志が独自ドメインをとり、DNSサーバーを管理し、ISDNによるLAN型ダイアルアップ接続を行っているschoolnet.or.jpの参加校5校、コネットプランの参加校1校、教員が代理で送信受信しプリントして生徒に渡す学校まで幅広い参加があった。希望する学校にはschoolnet.or.jpのサーバで、生徒の個人アドレスを提供した。

2 インターネットの活用
3つのメーリングリストの利用 】
1) asia 963通 指導者用(日本語)2) asia-s 374通 生徒用(日本語)
3)asia-e 130通 生徒用(英語)(発言数は9月20日現在)生徒は asia-eとasia-s に登録。大人は生徒の指導のために生徒用のasia-s, asia-eも配信されるが発言はできない構成とした。asia-s は事前アンケート、自己紹介、シンポジウム関連のテーマ決定、会って行う準備会の連絡・報告、進行状況の調整、交流後のアンケート、シンポジウムの準備、生徒同士の対話に利用された。asia-eは海外ゲストへの事前アンケート、自己紹介、シンポジウム関連のゲストへの連絡、シンポジウムに関する事前の質問と回答が出され、さらにシンポジウムの資料や原稿を内容を知っておいてもらうためにあらかじめ流された。生徒の議長役を決めて進行をした。MLの管理は asia, asia-s は南山国際高校のサーバーで asia-eschoolnet.or.jp のサーバーで開始。途中から3つをschoolnet.or.jpのサーバーでCMLで運用した。

【 WWW の利用 】
1)アジア高校生インターネットプロジェクトのホームページ 
  (名古屋市立西稜商業高校 http://202.249.160.2/asia/ )
  ・ゲストの写真など、事前の情報提供、アンケート結果等
2)参加者用、パスワードの認証によりアクセス制限を設けたホームページ
  (http://www.schoolnet.or.jp/~project/ )
  ・Hyper Schedule を利用した交流スケジュールの公開
  ・asia-e のメールを Web で一覧として見られるページ
  ・生徒の写真、感想など、関係者だけに公開

3 シンポジウム開催: 名古屋でのシンポジウムは、生徒がテーマを決め、発表、討論、司会進行等言語は英語ですべて行った。またその後の懇親会の企画、運営、おみやげのオリジナルカンバッチの作成などもすべて生徒が行った。asia-sのメーリングリストの活用とともに、2回の事前打ち合わせと1回のリハーサルを実際に会って実施し、それが日本の生徒間の人間関係を深めるのにも役だった。また各学校からの発表内容の理解を深めるためにレジメを印刷して当日配布した。当日は120名の日本の生徒の参加により、シンポジウムを行い、ゲスト等と意見交換を行った。テーマとして生徒が自発的に選んだのは環境、公害、エネルギーという参加国すべての課題であり、地球に住む者の共通の問題だった。各国の現状の紹介を、パワーポイントや、実物を提示したり、あらかじめホームページにまとめたものを利用した発表もあり、2時間半の時間を英語でやり通した。

4 各地での展開: 広島ではゲストは中国四国インターネット協議会のシンポジウムに参加し、広島平和公園を見学の後、広島市立元町高校他の高校の生徒と交流を行った。京田辺市では京田辺市教育委員会のご協力をいただき交流を行った。

5 指導の経過: 大人のメーリングリスト asiaを利用し、東海、京田辺、広島の3地点を結んだ準備に利用するとともに、東海では事前に参加学校の教員の打ち合わせ会を3回、また生徒の準備会の各校代表者会議の解散後にも教員間で打ち合わせを行った。打ち合わせ会の模様をCU-SeeMeで京田辺と広島で見てもらうことも試験的に行った。各学校の教員が生徒の直接の指導をするとともに、生徒用メーリングリストでは、スーパーバイザー役の教員がアドバイスや連絡をした。

6 生徒の変化: 交流前と交流後の生徒向けアンケート調査から、体験に基づく変化がいくつも見られた。例をあげると交流後に行った生徒のアンケートで、「インターネットへの関心は、どう変化しましたか。」という設問には七割の生徒が高まったと回答した。「インターネットを利用して、これからどのようなことがしたいですか。」という質問への回答は、選択肢「外国や他の地域と電子メールを使って情報交換をしたい」が事前アンケートでは34%だったが事後には78%へ上がった。以下は生徒のコメントの一部である。

生徒
A:今回の一連の交流会を通じて、相手の顔がわからないネット上での交流の面白さと、逆に顔を突き合わせて話し合うことがいかに多くの情報量をもっているかということを学びました。

生徒
B:顔を合わせない電子メールでの交流では、緊張しないし、英語もゆっくり考えることができるので、英語がすぐに出てこない私にとっては助かりますが、やっぱり実際に顔を合わせてお話したほうが、実感がわいてうれしいです。

生徒
C:シンポジウムはすごくいい経験になりました。英語の嵐で頭がこんがらがってしまいましたがなんだかとてもよかったです。

7課題: 各学校のインターネット利用環境の差が大きい。生徒が利用できる環境を整えることが、必須である。