学校ネットワーク構築の実際
標茶町立標茶中学校
教諭 村田 城司
1.はじめに
町営のプロバイダの設立を設立してインフラを整え、町教育委員会とともに町内全学校への導入を行った標茶町の事例を紹介する。各種問題・これから導入する地域への提言も含めて報告する。
2.sip(標茶インターネットプロジェクト)の設立
1996年から町運営の情報化組織sipを立ち上げる
→ 活動母体として組織を立ち上げ
インフラとしてISPを運営
http://www.sip.or.jp/sip/opening.html
2-1.目的
行政・教育機関・民間企業などが所属している超党派的な組織
町民に対する情報サービスの提供
(行政からの情報提供、ネットワーク・コンピュータに関する支援)
イベント・セミナー・講習会の開催
なんだかんだ言っても地元の情報が必要
2-2.sip設立後
インフラを自分たちでもっていることの優位性
やりたいことができる
地域内のトラフィックは地域内で
教委にも地下ケーブルでひく
図書館・各学校に町からMacの導入(ダイアルアップで)
sip-mailng listのスタート → 町の情報化について立場を越えて検討
※「行政プロトコルで話せる人間」の必要性→貴重な人材
3.学校へのネットワークの導入
1997年が町内小中学校にコンピュータ導入 → 校内LANの構築とInternet接続
資金の不足・技術ノウハウの蓄積などの観点から、自分たちでできるところは自分たちでやる
→後々問題が出てくることになる
3-1.町教委との交渉
sipというインフラがある
文部省のコンピュータ導入方針
Internetブーム
一部学校のマスコミへの露出
分割導入には反対→各学校で格差ができる
3-2.現場の意見の吸い上げ
SEC(標茶町コンピュータ教育研究特別委員会)という先生たちの組織が教育委員会の相談役となる → 一部の者が導入を仕切っているという批判 → 各学校代表で構成されるコンピュータ導入検討委員会の発足
順番が逆
4.システムのコンセプト
全学校にメールサーバーを配置する
メールアドレスやMLを自由に設定できるようにする
将来の専用線化の準備
管理の分散化(自分の学校は自分で面倒を見る)
NTとUNIXの併置
NTはファイルサーバーとして、UNIXはInternet系のサーバーとして。
不特定多数の人間が不特定の端末を使える
校内の全教室にネットワークの口
小学校は各教室に端末を設置
各学校に一定の割合でノート型 → 1クラスが班活動で使える台数
提示用のディスプレィは大型TVで(ノートにNTSC出力)
CAIソフトは最小限に
なるべく自分たちの手で作る
マシンパワーはofficeがとりあえず動けばいい、という程度
→ 性能を追求しても意味がない(そういうところでコストを削れるなら...
5.導入の準備
大学などのネットワークを参考にする
不特定多数の人間が不特定の端末をハードに使う
導入環境と同じものを作って実験
入札については教委の担当 → 教委と連絡をとりあう
入札業者が決まったら連絡用のMLをつくる
ソフトの導入について
検討しようにも対応できない学校の存在
環境の統一
データの互換性
トラブルの防止
→ 検討委員会で検討して全体で統一
freewareはokだが、シェアウェアはアウト
コンピュータに関するルールの設定
→ 個人保護条例との絡みで
6.導入
6-1.2-3人NerDayの開始
→ コストや時間を考えて...しかし、できればNetDay方式(父母・先生・ボランティア)がよい
6-2.Netday形式の利点と欠点
低コスト
先生たちに技術
地域に対する啓蒙
ボランティアに対する依存度が高くなりすぎるとダメ
→ 行政の支援
(「ここは何もしなくてもいい」ではなく、率先して取り組む地域にこそ支援)
7.教委のネットワーク(全体のネットワーク)
ダイアルアップ接続校はsipにダイアルアップする
→ 昼間は空いている
メールは教委からuucpで
webは自動的にftp
教委に近い学校については無線LAN
proxyでトラフィックを軽減する
proxyレベルでレイティング
PC-UNIXで手作りサーバー
フリーウェアの利用(行政からは全く問題なし→むしろシェアウェアに強い抵抗)
高専とweb cacheの共有&メール&NetNewsの配送実験
8.各学校のネットワーク
端末もNTWSを採用
書き込み制限をかける
頑健なシステム
プロファイル管理
→ ユーザー固有のデスクトップ
ドライブなどに使用制限
ファイル共有
プリンタ共有
全教室にネットワークの口
無線LANによる常時接続
各学校に管理者をおく
リモート管理のためのシステムを構築する
各学校にダイアルアップできるシステム(NT severにtelnetd)
トラブル通知用のポケベル
Mailing Listによるサポート
運用のための講習会
教委主催の先生向け講習会
管理者講習会
管理職講習会
9.地域の情報HUBとしての学校
9-1.なぜ学校か
学校は町内各地域に分散 → 各地域に平等な環境
学校教育にネットワークを導入する時代の流れ
9-2.情報HUBとは
ソフト
社会教育(パソコン講習会、相談室など)
→ 標茶町では今年度3地域で10回以上実施
ハード
学校から各地域の施設(公民館、農協など)に接続する(みんなで相乗り)
10.問題点
10-1.ISDNが通らない地域がある
衛星Internet
アカデミックプライスということで学校は優遇されているようだが、このままでは都市部にのみサービスが集中する。全国に平均してサービスを提供することも考えてほしい。しかし、営利企業として利益が望めない場所にサービスを展開できない立場もわかる...
10-2.全体を管理するスタッフの立場が微妙なものに(ボランティアvs本職)
とにかく動ける人が動く必要があった試行錯誤の時期だった
きちんとした導入が必要だが、そのためのスタンダードなシステムの在り方は?
10-3.学校へコンピュータを導入する際の障害
地方交付税交付金
教育委員会の権力のなさ
行政の単位が大きすぎて動けない地域
廃棄した機材の優遇措置も必要
現場の意見を聞きすぎるのも問題
10-4.学校ネットワークと地域ネットワークのかかわり
地域のトラフイックは地域内でさばく
道教委の仕切りにある道立高校が、独自で環境を整備すると地域ネットワークから離れる可能性がある
10-5.道立高校の接続に関する問題
高校に入ってからの学習内容に落差
→ 小中にはあったネットワーク環境が高校にはない
ネットワークのトポロジーに関する問題
10-6.セキュリティ
不正侵入
他のサイトへの踏み台
SPAMに利用される
セキュリティ対策のマニュアルが必要
11.標茶町ががんばってこれた理由
現場ががんばって実績を示す
行政プロトコルを話せる人材
多くの仲間を作る