学校におけるインターネットの導入から運用までの実際
 
神奈川県大和市立林間小学校
教諭  島崎 勇
 
1.はじめに
 1994年8月25日、私はCECのセミナーで発表させてもらっていた。ちょうどその日、新聞発表があって、昼食時に担当の方々に、「こんなものがあるが、どうか」と教えられたのが、100校計画であった。それは願ってもないプロジェクトであり、「公立の学校にインターネットが入る。」、思っても見ない急展開に胸を驚かせたものであった。
しかし入っては見たが、みんなが同じ事をやらないといけない公立の学校では活用もなかなか難しいものがあった。今回、公立の一小学校にインターネットが入っての4年間がどうだったのかを概観し、私自身が実際に担当している国際教室の事例を紹介させてもらう。
 また、この11月にコンピュータがWin95に入れ替わったので、その活用も含めて、「メディアセンターのデザイン」という私案を考えてみた。それは今後インターネットを学校現場で活用する際に必要な事、課題となる事、また実際の運用面でのヒントになるような事等々がお話しできれば幸いである。
 
2.一公立の小学校にインターネットが入った。
 1995年5月連休明けに機械は届けられた。しかし実際に動き出したのは、6月も半ばになってからであった。とにかくインターネットの専用線につながったコンピュータが学校に入った。そして動いている。それだけで大ニュースであった。さて、その年は、「とにかくインターネットを探検してみよう、触ってみよう」という事で、何回かの実習をした。インターネットのアウトラインをつかんでもらうのが目的であった。
 翌、1996年には、もう少し色々な教員が関わろうという事で、課題プロジェクトという分掌が100校計画の対応を考えていく事になった。
 更に、1997年には、もっと広げて、校内研で取り組んでみようという事になった。 1997年、1998年と、学校としてのインターネットの取り組みは、「各学年のホームページを作ってみよう」というものであった。ただ反省として、「誰に見てもらいたいのかが明確ではなかった」という事があった。
 一方で、「できる所から、できる事をやってみよう」というモットーも当初からの取り組みの方法論であり、理科、家庭科での実践、国際教室での実践も続けられて行った。
 
3.国際教室とインターネット
 国際教室の子どもたちの学習は、
 (1) 外国語としての日本語学習
 (2) 生活適応?日本の学校に慣れる日本の生活に慣れる
 (3) 母語保持、母国の文化理解
 (4) 教育方法の現代化としてのコンピュータ活用、インターネット活用
が考えられる。
 いずれの項目もインターネットを積極的に活用するためのきっかけを与えてくれるものである。実際、国際教室では、テキストを使った日本語の学習をした後で、まとめとしてコンピュータを使っている。また、日常的にも作文を書いたり、インターネットのメッセージを書いたりしている。その時、マッキントッシュのKIDPIXというソフトを使っている。このおかげで、国際教室の学習が、インターネットを通して、日本語を学んでいるブラジルやオーストラリアの学校にも役立つようになる。また、逆にペルーやブラジルの学校からは、翻訳のヘルプをしてくれたり、ペルーやブラジルの様子を知らせてくれるなど、お互いにインターネットを活用している。最近では、KIDLINKに日本語の掲示板もできたので、国際教室では常時その掲示板につないで、何時でも書き込める体制を作っている。英語版の掲示板もあり、そこでは、アメリカのデルマー小学校を中心にした交流を続けている。お互いの日常生活、学校生活からの話題でにぎやかな交流が進んでいる。国際教室のある棟は、南棟と言って西棟の隣に立っている。西棟にはコンピュータ室があり、インターネットの端末も設置出きる。残念ながら南棟は、渡り廊下を通らなければならず、戸締まりの関係でインターネットのケーブルを引き込む事ができなかった。そのため、まずは国際教室内でLANを組み、サーバーを立ちあげた。サーバーアプリケーションとしてwebサーバー、メールサーバー、ftpサーバー等を動かしている。ファーストクラスという電子掲示板のシステムも取り入れ、子ども達にとって簡単で易しいシステムを導入してきた。これは、イントラネットの構築ということになります。今後の学校教育でのインターネット活用を考えたら、学校に、教室に、自前のサーバーが動いていて、ローカルでセットができ、随時コンテンツを取り替えられるシステムがどうしたも必要になると思う。これは、また、HTML文書にして記録していけばNetscape等でも確認できる。昨今、OSレベルでHTMLをサポートされるようになってきている。esay & simpleな方法で、HTML文書を作り、お互いの交流に、学習に役立てたいと思う。夏休みに校内の工事の関係で西棟の真ん中まで10baseTのケーブルがひっぱられた。そこから更に国際教室まで20メートルくらい10BaseTのケーブルを延長してつないでみたら、なんとインターネットにつながってしまった。この発見で国際教室から直接インターネットに出ていけるようになったのが、やっと10月であった。毎朝、8時50分頃、ケーブルをひっぱっていき、午後4時にはそのケーブルを片づける日課が始まった。国際教室からインターネットに直接出ていかれない時にも、イントラネットは動かしていたから、子どもたちにとまどいはなかった。インターネットに直接つながってからは、KIDLINKのWeb掲示板を常にセットし、アメリカ、日本の学校との交流に使っている。もう一つ、KIDPIXも常に使えるようにしてあり、子どもたちは、これで絵を書き、お手紙を書き、更には、録音もして声のお便りまで作っている。テレビ会議用のシステムも常時動かしている。これを使って日本語の勉強の録画に活かしている。近いうちにこのシステムを使って外部とのテレビ会議も計画している。
 
4.メディアセンターのデザイン(私案)
 コンピュータ室のコンピュータが入れ替わった。win95である。児童用として40台、NTサーバーが1台そして教師用が1台である。それらは、100BaseTでネットワ―クされている。今後の活用にも関わってメディアセンターのデザインを考えてみた。
(1)もともとパソコンは、ネットワークの端末であった。
 なぜか日本ではコンピュータがネットワーク抜きで学校現場に導入されてしまった。今、そのつけが回ってきている。つまり、コンピュータもネットワークもインタ―ネットも同時に導入されようとして現場は混乱ぎみである。それも、まだ話しだけの所、実際に動き出した所、日本各地色々である。子どもたちがクライアントから自分のIDとパスワードでサーバーにアクセスし、メニューから選んで学習を進める。そんなシステムが最初からコンピュータと同時に導入されていれば、インターネットが入っても、戸惑うことはなかったはずである。
(2)ローカルでサーバーを立ちあげる事の意義
 インターネットのシステムを活用しようにも、実際に試してみないとなかなか理解できないものである。そのためにも、校内でLANを組みサーバーを立ちあげ、子どもたちに自由に使ってもらう必要がある。その中から、外部に発信していてコンテンツが決まっていけばいいと思う。また、交流型のコンテンツの場合には、参加校しかアクセスできないクローズトな場所も用意する事で交流を進めていきたい。
(3)色々な迷信まがいの言葉が行き交っている。
 曰く、「今は、一人の百歩より、百人の一歩が尊い」等と訳の分からない事を言う人がいる。また、週刊誌で仕入れてきた知識を振りかざしてさも重要そうに借り物の話をする人もいるが、概して信用ならない。実際にインターネットを教育の場で活用している人々とのコンタクトをしてほしい。その中で、色々と実際的な研修をしてほしい。
 まだまだ、日本の場合には、「学校現場でのインターネット活用は、始まったばかり」と言うか、「今、やっと始まろうとしている」段階である。まだまだ、これからの実践に関して、一人ひとりがパイオニアなのである。
(4)子ども達が使うには、easy & simpleで。
 「何でもかんでも一太郎」という人がいる。また、導入されたコンピュータに入っているソフトは使わなければならないと思っている人もいる。
 コンピュータは、使わないより、使った方が、教師にとっても子ども達にとっても、「楽にならなければ意味がない」と思う。しかし、現実には、導入された市販ソフトを使わなければコンピュータを利用できないと考える人が多い。そうではなく、もっともっと自由にコンピュータを活用して新しい使い方を見つけてほしい。そのためにも、子どもたちの発想を活かす事ができる子ども用のインターフェースを開発していくべきである。コンピュータは学習の道具、コミュニケーションの道具である。道具は、人間が便利になるために存在するはずだ。
(5)そのためには、メディアセンターが必要である。
 これまでのようなコンピュータ室で、コンピュータを使った授業の時しか使えないのでは活用はおぼつかない。使いたいときに使えるためにも、コンピュータ室ではなく、メディアセンターにコンピュータを置き、子どもたちが学校にいる時間帯は鍵をかけないようにする必要がある。もちろん、各教室から常時インターネットにアクセスできれば最高である。
 
5.まとめ
 インターネットは入ったが、なかなか全校レベルで活用するのは難しい。だが、最初から足並みをそろえて、ここまでというのではなく、「できる所から、できる事」と取り組んで、お互いが発表しあい、情報を共有していく。そんな方法がいいと思う。そんな中から、教員一人ひとりの必然性を展開し、その分野のパイオニアになってほしい。それが結局、日本の学校教育におけるインターネット活用の礎になるのだから。
 まだまだ始まったばかり、いや、始まろうとしているのだから。あなた自身の参加を待っています。