今後の高等学校（総合学科を中心に）

講演者：岡田　修二　先生（静岡県立小笠高等学校　校長）

＜冒頭挨拶＞

ただ今ご紹介いただきました静岡県立小笠高等学校校長の岡田でございます。みなさんに一人一人が輝けるように、いろいろな個性をあるいは希望をもつみなさんに総合学科のメッセージをお送りしたいと思います。

＜１．基本編＞

総合学科とは？
ところでみなさんは総合学科の内容についてご存知でしょうか。これまでの高等学校は大きく普通科と農業・工業・商業などの専門学科から大きく二つに分けられておりました。しかしともすると普通科は進学、専門学科は就職といったような固定的な観念が植え付けられていたような気もいたします。普通科の生徒諸君の中にも進学する生徒就職する生徒もおりますし、専門学科の生徒の中にも就職ばかりではなくてもっと専門的な学習を深めて進学したいという生徒も大勢いるわけです。そこで誕生したのが総合学科です。またみなさんの学校の時間割を少し思い浮かべてみてください。一年生から三年生まで月曜日の一時間目は国語、二時間目は数学などといったように時間割がすでに決められて、みなさんはその時間割にしたがって学校で決められた科目を学習しています。ところが、総合学科は高等学校で必ず学習しなければならない必修科目、あるいは総合学科で学習しなければならないいくつかの科目以外は全て自分で選択しそして自分の都合のいい時間割を選び自分で時間割を作っていく、こういう学校が総合学科の学校でございます。
単位制とは？
ところで総合学科の学校は単位制をとるところが多いわけですが、単位とは一週間に一時間学習することを一単位と呼びます。普通の学校では月曜日から金曜日六時間目まで全て学習したとして三十時間三十単位ですね。三年間で九十単位の学習をするところが一般的です。ところが総合学科ではもちろん九十単位以上の学習をすることもできますが八十単位分とれば卒業が可能です。学年制と違って一年次目はたくさん科目をとり、二年次目は少し控えめにといったようなこともできます。三年間で八十単位とれば卒業できるという単位制をとっているのも総合学科の大きな特色の一つです。

＜２．学習編－１＞

小笠高校は２学期制。
さて本校ではこれまで普通の学校で一学期二学期三学期という三学期制から、前期後期という二学期制に切り替えました。前期は四月から九月まで、後期は十月から三月までとなっています。したがって中間テスト期末テストは合計年四回になります。
自分で作る時間割－－－どのくらい自由に選択できるのか？
さて先ほど少しお話しましたが、総合学科では自分で時間割を作るのが特徴の一つになっています。どのくらい自由に選択できるのでしょうか。たとえば高等学校で必ずどこの生徒も学習しなければならない科目これを必修科目と呼びますが国語Ⅰ・数学Ⅰ・世界史などが必修科目です。そのほかに総合学科では総合学科特有の原則履修科目として産業社会と人間・情報基礎科目・課題研究などを総合学科原則履修科目として全ての生徒が学習します。また本校の設置されている静岡県菊川町は全国有数のお茶所でもあります。ですから本校に入学した生徒諸君にはお茶にまつわる文化歴史なども学習してもらいたいと思いますし、これからの国際社会では話せる英語を非常に大切です。したがってオーラルコミュニケーションあるいは茶文化といった特色ある科目を本校の推奨科目としております。それ以外には一年次から三年次にわたって自分の学習したい科目を自分で選んでいくことができます。ただし一年次はどうしても必修科目の割合が多くなりますので選択の範囲は少ししかありません。これは二年次三年次と学習を深めるため、あるいは全ての教科の基礎となるという意味から一年次に必修科目を学習させようというねらいのもとであるからです。しかし二年次になりますと約十六時間、一週間のほぼ半分に相当します。また三年次は約二十四時間分選択科目で自分の時間割を埋めることができます。

＜２．学習編－２＞

科目選択をすべて自分で考える？－－－９つの科目選択モデル
さて科目を自分で選ぶ場合にはどんな手順で選んでいくかということが総合学科では非常に迷うところです。本校では自分の興味・関心あるいは進路希望などに応じてまとまりのある学習をできるように九つの系列を用意しております。たとえばエコロジー環境についての学習系列、また芸術、国際教養、自然科学、社会科学、茶と文化、スポーツ健康、ビジネス、情報といった九つの系列を用意しているのが本校の特色でもあります。エコロジーではよりよい生活環境やバイオテクノロジーを学習します。芸術系列では好きな芸術分野を中心に選んで創作活動を行います。国際教養系列では日本や世界の文化を学び外国語の能力も身につけます。自然科学系列では数学や理科を中心に科学的思考を身につけ、社会科学系列では日本や世界の社会歴史文化について理解します。さらに本県はお茶所ですので茶業の知識と技術を身につけお茶の文化について広く理解を深めることのできるように茶と文化という系列も用意いたしました。これは全国の総合学科に見られない大きな学習分野です。またスポーツが得意であるという諸君にたいしてスポーツと健康という系列を用意してスポーツを実践し健康についても理解してもらうことができます。ビジネスの系列では流通や販売事務などの知識と技術を修得します。また情報系列では近年の情報化に対応してコンピュータの基本的な知識や技術を身につけコンピュータを利用する態度を養います。このように九つの系列とそれに関連した科目を用意してあります。しかし系列はあくまでも学習の目安でこの系列で学習する科目が制約されるということはありません。あるＡ君はいくつかの系列にまたがって科目を選択し、Ｂさんは国際教養と情報の系列から選択しているという例もあります。

＜２．学習編－３＞

「産業社会と人間」で何を学ぶか？
さて総合学科特有の科目に産業社会と人間という科目があります。この科目は現代の社会の仕組・産業の特徴などを体験や講話などで実際に学習し職業について深く理解をし、そして自分の進路適性といったものを自分で発見するそういったために設けられた科目です。本校ではいろいろな分野から講師をお招きして生徒諸君に生でその体験を話してもらいました。昨年はコンピュータのシステムエンジニア、あるいは大手百貨店の店長さん、また地元の産業界の第一線で活躍されている方々を講師としてお招きし生徒諸君の前でいろいろな体験そしてこれからの社会の動きについてお話をいただきました。またこの産業社会と人間という科目の中で本校生徒は静岡県内のいろいろな企業も見学に参りました。たとえば大手自動車メーカー、またテレビ会社、新聞社、あるいは化粧品会社など産業のいろいろな分野をそれぞれ生徒の希望によって各会社を訪ね自分でその企業の活動状況を体験しました。このような産業社会と人間という科目の学習を通して自分がどんな仕事に向いているのか、自分はどんな分野の進学を目指したらいいのか、あるいは自分は将来こんな分野で社会に貢献したい、こういった考えを身につけていくようになります。一方一年次ではこの産業社会と人間という科目の学習を通して二年次以降の選択科目のガイダンスも受けます。一年次に学習した科目の内容をもとに私は二年次でこういう科目を選択しよう、そして三年次にはこういう科目を選択していこうという構想をそれぞれの生徒がたてその生徒の希望にあわせて選択科目を決めていく、そのためのガイダンスもこの産業社会と人間という科目の中で行っています。さて本校では先ほど申し上げましたいくつかの系列に基づいて、そして産業社会と人間の学習をふまえてこれから学習する時間割を自分の手で作り上げていくそういう楽しみがある、これも総合学科の大きな魅力の一つです。

＜２．学習編－４＞

進学の対応はどうしているのか？
ところで進学したい生徒の対応はどのようになっているかといいますと産業社会と人間でどんな分野に適しているか自分で学習することも大切ですが、進学したい場合にはたとえばセンター試験をクリアしなければならない、あるいは自分の希望する大学の入学試験をクリアしなければなりません。したがって早くから計画をたて昨年は希望者が朝霧高原で勉強合宿を行いました。また学校には自習室を設けてストーブを持ち込んで生徒が先生方を相手に自分で学習したり、そして質問したりという光景もみられます。
英・数・国は習熟度別の学習集団編成を予定。
さらに科目によって得意な科目不得意な科目があるのはだれしもですが、本校ではそれぞれが勉強したい科目のグレードにあわせて習熟度に応じたクラス編成をして学習効果を高めているのも特色の一つです。

＜３．生活編＞

学校指定の制服について。
ところで本校では総合学科をスタートさせるにあたり生徒からあるいは保護者から意見を聞いて制服を決めました。制服は男子は二種類、女子は三種類、夏用冬用とありますが特に女子のキュロットには人気が高いようです。
シャツは白が基調ならＯＫ？
制服の下は基本的に白地のシャツであればいいことにしてあります。
ホームルーム編成はどうなっているのか？
ところで、ホームルームの編成はどうなっているかと言いますと、本校は一学年八学級の規模ですが、一つのクラス四十人規模を二つのグループに分けて、ひとつひとつに先生が付いてホームルームを進めていくシステムをとっています。つまり、一クラスを二つに分けて八クラスを十六集団に分けた指導を計画しました。

＜４．その他＞

新しい施設が続々完成！
ところで本校に平成八年三月から新しい実習棟ができあがります。また八月には教室棟が完成します。実習棟には流通実践室、情報処理実習室、情報応用実習室など多くの実習ができる部屋が用意されますし、教室棟には英会話のための教室、また美術・音楽・書道の芸術のための科目の教室も用意されます。
ユニークな入試！
さて本校に入学する諸君の一大関心事は入学試験です。本校では推薦入学制度を取り入れておりまして推薦入学と一般選抜と二つで入学してくる生徒がいます。本校ではユニークな入試を取り入れています。まず学力検査ですが一般選抜の学力検査では五教科五科目国語・社会・数学・理科・英語の五科目を受けてもらいますが、そのうち点数のいい三科目だけを対照にします。それぞれの生徒がそれぞれの特色を十分現せるように三科目で勝負をしてみました。また推薦入学一般選抜ともに面接を行いますが、その面接では自己表現という方式を取り入れております。これは自分が最も得意とする技術を試験官に披露してその内容をもとに面接をすすめていくというやり方です。昨年は自分の海外旅行体験をいかした英語でのスピーチもありました。自分の得意な楽器フルートやギターの独奏もありました。またスポーツの面でも自分の得意なジャンルのスポーツの演技を行ってそれをもとに面接官と質疑を繰り返すこういったことも行われました。自己表現ではあなたの光る部分を披露し、それをもとに面接官と質問を繰り返していくやり方です。
修学旅行はどこへ行く？
その他本校の総合学科では修学旅行にも工夫をこらしました。生徒諸君から希望を募り全部で六コースを作りました。そのうちの一つは韓国への修学旅行です。外国での異文化も是非体験してもらいたいと思っています。

＜耳より情報＞

本校は東海道線の菊川駅からバスで十分ほど入りますが、嬉しいことに今年四月からそのバスの本数が増えることになり学校への直通バスも通ることになりました。多くの生徒諸君がますます通いやすくなることでしょう。

＜まとめ＞

さてみなさんは一人一人がきらりと光る素晴らしい個性をもっているはずです。今輝いている人、これから少しずつ輝こうとする人、それぞれいろんな光を光らせると思います。総合学科はそんなあなた方のために、あなた方の個性をさらに輝かせるための学科です。総合学科は平成八年度は全国で四十五の学校で開設されていることになるでしょう。あなた方の近くに総合学科があったら是非のぞいてみてください。そしてあなたしかもっていない個性をきらっと輝かせてください。

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今後の高等学校（総合学科を中心に）

＜冒頭挨拶＞

＜１．基本編＞

総合学科とは？

単位制とは？

＜２．学習編－１＞

小笠高校は２学期制。

自分で作る時間割－－－どのくらい自由に選択できるのか？

＜２．学習編－２＞

科目選択をすべて自分で考える？－－－９つの科目選択モデル

＜２．学習編－３＞

「産業社会と人間」で何を学ぶか？

＜２．学習編－４＞

進学の対応はどうしているのか？

英・数・国は習熟度別の学習集団編成を予定。

＜３．生活編＞

学校指定の制服について。

シャツは白が基調ならＯＫ？

ホームルーム編成はどうなっているのか？

＜４．その他＞

新しい施設が続々完成！

ユニークな入試！

修学旅行はどこへ行く？

＜耳より情報＞

＜まとめ＞