平成7年5月16日 情報処理振興事業協会 (財)コンピュータ教育開発センター 100校プロジェクトの運用・保守体制(暫定運用段階編) ニューズレター第1号では、「100校プロジェクトの運用・保守体制」として回 線、機器が設置され、とりあえず使えるようになるまでの導入作業段階につい て御説明しました。 回線の開通状況等にもよりますが、現在皆様の学校でも徐々に機器の導入が進 んでいることと思います。そこで本号では、とりあえず各校が接続され、徐々 に利用が始まる段階(この期間を暫定運用段階と呼びます)の運用・保守体制に ついて、主に学校サイドからの観点に立ち、その概要を説明することに致しま す。 第1号で御説明しましたように、本格運用は9月中旬からを予定していますが、 それまでの間はメールやニュースを配送するための仮のサーバマシン(パイロッ トサーバと呼びます)を立ち上げて運用を行います。暫定運用段階では、ネッ トワークやサーバの運用方法等を、想定される利用形態に合わせて段階的に改 善し、本格運用に備えることとなります。そのため、この期間は学校に設置し てあるサーバマシンや、パイロットサーバ等に対し設定内容の変更が何回か必 要になり、皆様のお手を煩わせたり、利用を一時的に控えて頂く必要が生ずる こともあるかと思いますが、御協力の程お願い致します。 0. ネットワークの接続形態 本題に入る前に、今回の100校プロジェクトにおけるネットワークの接続形態 について簡単に説明しておきます。既に御承知の方は読み飛ばして頂いて結構 です。なお、説明を分かりやすくするために、図等で若干厳密性に欠ける点が あるかもしれませんが、御容赦下さい。 インターネットに接続するためには、最近雑誌等でも解説があるように、専用 線接続とダイアルアップ接続があります。100校プロジェクトでは、このうち 専用線接続を採用しています。専用線接続とダイアルアップ接続の差は次のよ うに考えることができます。 ダイアルアップ接続では、使いたい時に必要に応じてNOCを呼び出し回線を接 続するもので、どちらかといえばパソコン通信に似ているといえます。メール やニュースは基本的にNOC側のサーバに保存され、利用者側のマシンは端末と して機能します。 一方、専用線接続では利用者側にサーバマシンが置かれ、メールやニュースは ここに配送された後、ユーザ側のクライアントマシンから参照されます。また WWWサーバ等も立ち上げることができ、世界に向けて情報提供が可能となりま す。今回、各校(附属学校等でサブドメインとなっているところを除き)は独立 したドメイン名を取得し、サーバを24時間運転することとしています。このこ とは、マシンの処理能力の差異こそあれ、各校が国内、あるいは国外の有名な インターネットのサイトと機能的には同等のものを持った、独立したサイトで あることを意味しています。学校側サーバを、学校内のクライアントに対する サーバ機能と考えていらっしゃる方がいるようですが、実際には学校内だけで なく外部に向けてのサーバの役割を果たすものなのです。 これは、今回のプロジェクトにおける非常に重要なポイントです。マシンの設 置、ネットワークの接続、あるいは運用にあたって、場合によっては様々な障 害に出会うこともあると思われますが、一つの独立したサイトを全世界に向け て立ち上げているのだと考えれば、その苦労も御理解頂けると思います。専用 線接続はパソコン通信とは一段違った技術的難しさがあるということを認識し て頂ければ幸いです。 次ページの図1は、ネットワークの接続方法の概念図です。 図1 ネットワーク接続方法の概要 (別紙) 各学校には、サーバマシンとクライアントPC、及びルータが設置され、そのルー タが64K高速デジタル、あるいは3.4Kアナログ専用線によってNOCのルータに接 続されます。1つのNOCには複数の学校が接続されている場合もあります。 図1をもう少し論理的に書いたものが以下の図2です。 図2 ネットワーク接続の論理的な構成 (別紙) 各学校はまず地域ネットワークのNOCに接続されます。通常、各地域ネットワー クはいくつかのNOCから構成されています。続いて、各地域ネットワークは WIDE, SINET等のインターネットバックボーンに接続され、地域ネットワーク 間、あるいは海外のサイトとの通信が可能となります。これらのバックボーン は日本を縦断するネットワークの大動脈と考えれば良いでしょう。 JPNICは各サイトに関するドメイン名やその他ネットワーク管理に必要な情報 を管理している組織です。 そして、パイロットサーバは、本格運用が始まるまでの間、暫定的に100校プ ロジェクトの運用に必要な種々のサービスを提供する仮のサーバマシンです。 1. ネットワーク利用にあたって必要となる主な作業項目 ネットワークを実際に利用するにあたって発生する主な作業には、以下のよう なものがあります。これらの作業の中には、皆様自身で行って頂く必要のある ものと、機器などを提供しているベンダ、さらには事務局サイドで対応すべき ものなどがありますが、暫定運用段階では皆様を可能な限りサポート出来るよ う多面的な検討を行い、本格的な運用に向けて段階的な整備を行ってゆく予定 です。なお、「・」で示す各項目は一例として示したものです。 (1) 障害発生時の処置 利用時に発生するソフトウェア、あるいはハードウェアによる障害に対する対 応です。 ・障害の切り分け  障害発生時に一番重要なのが、障害の発生している部分を特定することです。  すなわち、障害がクライアント、サーバ、通信関連機器、回線、NOC等のど  の部分にあるのかを明確にする必要があります。 ・障害原因の調査  障害の箇所が特定できたら、その原因を調べることとなります。まずハード  ウェア的なものとソフトウェア的なものに大別し、続いてより詳細な原因を  調査します。 ・障害原因の解決  障害原因が分かれば、その内容に応じて例えばハードウェアの修理を行うと  か、ファイルの修復を行う等の対応を取ることとなります。 (2) 日常の運用 日常の利用に際し、主にシステム運用の観点から定期的に、あるいは必要に応 じて実施する必要のある作業です。 ・バックアップ  不幸にしてディスクの内容が損傷した場合に備え、重要なファイルを他の媒  体にバックアップする必要があります。 ・ログ情報の取得  利用状況等を把握するため、ユーザの利用時間やWWWサーバの外部からのア  クセス状況等に関する情報を収集し、出力することができます。 ・不要なファイルの削除  ログ情報や一時ファイル、過去のニュース等、不要になったファイルを削除  する必要があります。 (3) 設定内容の変更 ・ユーザ登録  学校内での利用者の新規登録、あるいは変更に伴って必要となる作業です。  これは基本的には学校側で行って頂いた方が柔軟、かつ迅速な対応が可能と  思われます。 ・OS、ネットワーク関連の設定  ネットワークの運用方法等の変更に伴い、必要なパラメータの設定等を行い ます。 (4) ソフトウェアのバージョンアップ等 ソフトウェアのバージョンアップやバグ修正に伴い、プログラムの入れ替えや、 必要な環境設定を行います。 ・OS ・アプリケーション ・PDS (5) 疑問点に関する問い合わせ ネットワークの利用に伴って様々な疑問が起こってくると思われます。それら は、ネットワークに関する技術面だけでなく、利用方法や企画内容等に関する ものまで多岐にわたることが予想されます。内容によって適切な問い合わせ窓 口を設定すると共に、電話だけでなくネットワークを活用した問い合わせ対応 を充実させる予定です。 ・技術面 ・技術面以外 (6) ネットワーク活用のための環境整備 ネットワークの利用環境をより充実させるために、パイロットサーバ上に以下 のような仕組みを構築したり、様々な企画の実現のために必要とされるネット ワーク上の仕組み作りの支援を行います。 ・メーリングリスト ・WWWサーバ(100校プロジェクトに対する全体的な窓口的位置づけ) ・ニュースサーバ ・コンテンツ(情報)の充実 2. 主な役割分担  具体的な対応窓口等は、詳細が決定次第別途お知らせ致しますが、主な役割 分担は以下のようになると考えています。 (1) 学校 基本的には、サーバ、クライアントマシンの主体的な管理者となって頂きます。 管理の範囲としては御担当者の技術レベルに依存する部分も大きいのですが、 必ずやっていただかなければならないことは最小限に留める予定です。反対に、 積極的にやって頂ける部分は可能な限り広くし自由度を持たせる予定です。 (2) 情報処理振興事業協会(IPA)・(財)コンピュータ教育開発センター(CEC) ●学校へのネットワーク利用環境の提供 機器の貸し出し、回線料金、地域ネットワーク参加料、及び機器保守料の負担 等を行います。 ●学校でのネットワーク利用促進のためのサポート  ・各種連絡業務  ・研修等の実施、企画運営の支援  ・各種マニュアル等の提供、等 ●全体的事項に関わる調整 個別の問題ではなく、本プロジェクト全体に関わる事項について必要な調整、対 応等を行います。 (3) 地域ネットワーク 原則的にはインターネットへの接続性を提供して頂くことを中心としてお願い してありますが、必要に応じ障害対応等に御協力頂くことがあり得ると考えて います。 (4) 回線・機器納入担当ベンダ企業 障害対応、関連部分の問い合わせ対応、ソフトのバージョンアップ対応等を行 います。障害対応の一次窓口は学校側機器の提供ベンダであり、まず障害箇所 の切り分けを行います。その結果に応じ、学校側機器、回線、あるいはNOC側 機器の各ベンダが問題解決にあたります。障害対応については、ネットワーク を活用し、NOC側機器、回線、学校側ルータ等のように段階的に動作確認を実 施し、迅速な問題解決が可能なよう配慮する予定です。 (5) 設計SI担当企業 以下のような作業を行います。 ・各担当ベンダで対応が困難な複合的な障害の対応 ・パイロットサーバの運用 ・全体的な問い合わせ窓口 暫定運用段階における作業の流れの概念図を図3に示します。