============================================================ ガイドライン見本草案へのご意見募集(転載可)  わかなプロジェクト(*)では、 「学校ネットワーク管理者のガイドライン」見本 の作成にむけて議論を進めており、このたび草案がまとまりました ので、広く一般からのご意見を伺いたいと思います。なお、ご意見 をもとにした改良などの議論は、わかなプロジェクトメイリングリ ストで専ら行い、完成したものを後日正式版として公開します。  ご意見やご提案のある方は、下記のわかなプロジェクトMLアドレ スまで電子メールで直接(あるいはCc:で)お寄せください。  e-mail: wakana@edu.ipa.go.jp (なお、寄せられたご意見はわかなプロジェクトホームページで 意見交換ログとして公開されます) *:わかなプロジェクト  学校教育関係者および一般社会人によるオープンな合議体で、学 校教育現場で見本として利用できるインターネット利用のモデルガ イドラインを作成する企画です。  ホームページ:http://www.edu.ipa.go.jp/wakana/ (サービスを開設していただいているサーバは好意で場所を提供し ていただいているものであり、本企画との直接の関連はありません) Document IDの意味は、わかな発 文書1 バージョン0 リビジョン3 (正式版はV1R0として出す予定) ====-====+====-====+====-====+====-====+====-====+====-====+ [DocumentID:WAKANA1V0R3] 学校ネットワーク管理者のガイドライン 草案 rev.3  学校ネットワークの管理にあたって、校長は総括責任者として学 校ネットワークを経由する情報の発信・受信の形態、およびその内 容に関して方針をたて監督を行うとともに、職務を補佐または委任 するための管理体制を組織する。  学校ネットワーク管理組織としては、運用管理者、情報管理者、 技術管理者の配置が必要となる。運用管理者は学校ネットワーク全 般の運用を管理し、情報管理者は運用管理者の監督のもとに特に受 発信する情報の在り方を管理する。技術管理者は運用管理者、情報 管理者の監督のもとにコンピュータシステムや記憶された情報の技 術的管理を行う。運用管理者、情報管理者、技術管理者は兼任でも よいし、個人に限らずグループでもよい。 1 総括責任者のガイドライン 1-1  総括責任者は、学校に対する社会的要請、学校設置機関からの要 請、保護者、生徒、教員からの要請などを考慮して、学校ネットワ ークの運営に関する方針を決め、利用規定やガイドラインなどの形 で利用者に示すべきである。 1-1-1  学校ネットワーク運営に関する方針や規定などは、社会情勢の変 化や技術環境の変化に対応するように常に見直しを行わなければな らない。 1-1-2  学校ネットワーク運営に関する方針や規定などの設定にあたって は、インターネットに接続することで広く一般と交流することにな る点に留意して、広く一般に合意されている事項や慣習を反映すべ きである。 1-1-3  学校ネットワーク運営に関する方針や規定などは、当該学校内で のみ通用するものであり、外部組織に適用を強制することはできな い。 1-1-4  学校ネットワーク運営に関する方針や規定などは、国連「児童の 権利に関する条約」に掲げられた条項に配慮して設定されるべきで ある。 1-1-4-1 参考:「児童の権利に関する条約」第十二条の1  締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影 響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利 を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及 び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。 1-1-4-2 参考:「児童の権利に関する条約」第十三条の1  児童は、表現の自由についての権利を有する。この権利には口頭、 手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、 国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け 及び伝える自由を含む。         1-1-4-3 参考:「児童の権利に関する条約」第十三条の2  1の権利の行使については、一定の制限を課することができる。 ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のた めに必要とされるものに限る。   (a) 他の者の権利又は信用の尊重 (b) 国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護 1-1-4-4 参考:「児童の権利に関する条約」第十四条 1 締約国は、思想、良心及び宗教の自由についての児童の権利を 尊重する。 2 締約国は、児童が1の権利を行使するに当たり、父母及び場合 により法定保護者が児童に対しその発達しつつある能力に適合する 方法で指示を与える権利及び義務を尊重する。 3 宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限で あって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者 の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課する ことができる。 1-1-4-5 参考:「児童の権利に関する条約」第十六条の1  いかなる児童も、その私生活、家族、住居若しくは通信に対して 恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃さ れない。 1-1-4-6 参考:「児童の権利に関する条約」第十七条  締約国は、大衆媒体(マス・メディア)の果たす重要な機能を認 め、児童が国の内外の多様な情報源からの情報及び資料、特に児童 の社会面、精神面及び道徳面の福祉並びに心身の健康の促進を目的 とした情報及び資料を利用することができることを確保する。この ため、締約国は、 (a) 児童にとって社会面及び文化面において有益であり、かつ、第 二十九条の精神に沿う情報及び資料を大衆媒体(マス・メディア) が普及させるよう奨励する。 (b) 国の内外の多様な情報源(文化的にも多様な情報源を含む。) からの情報及び資料の作成、交換及び普及における国際協力を奨励 する。 (c) 児童用書籍の作成及び普及を奨励する。 (d) 少数集団に属し又は原住民である児童の言語上の必要性につい て大衆媒体(マス・メディア)が特に考慮するよう奨励する。 (e) 第十三条及び次条の規定に留意して、児童の福祉に有害な情報 及び資料から児童を保護するための適当な指針を発展させることを 奨励する。 1-1-4-7 参考:「児童の権利に関する条約」第二十九条 1 締約国は、児童の教育が次のことを指向すべきことに同意する。 (a) 児童の人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な 最大限度まで発達させること。 (b) 人権及び基本的自由並びに国際連合憲章にうたう原則の尊重を 育成すること。 (c) 児童の父母、児童の文化的同一性、言語及び価値観、児童の居 住国及び出身国の国民的価値観並びに自己の文明と異なる文明に対 する尊重を育成すること。 (d) すべての人民の間の、種族的、国民的及び宗教的集団の間の並 びに原住民である者の理解、平和、寛容、両性の平等及び友好の精 神に従い、自由な社会における責任ある生活のために児童に準備さ せること。 (e) 自然環境の尊重を育成すること。 2 この条又は前条のいかなる規定も、個人及び団体が教育機関を 設置し及び管理する自由を妨げるものと解してはならない。ただし、 常に1に定める原則が遵守されること及び当該教育機関において行 われる教育が国によって定められる最低限度の基準に適合すること を条件とする。 1-1-4-8  「児童の権利に関する条約」は、日本では1994年(平成6年)5月22 日に発効した。「児童の権利に関する条約」の全文和訳、およびこ れに関する文部次官通知は新潟大学教育学部のWWWサーバに掲載さ れている。条文中の児童とは18歳未満のすべての者を指す。 http://www.ed.niigata-u.ac.jp/kenri_2.html http://www.ed.niigata-u.ac.jp/kenri_1.html 1-1-5  学校ネットワーク運営に関する方針や規定などは、利用者のプラ イバシー保護に配慮して設定しなければならない。 1-1-5-1  学校ネットワークにおいて私信として電子メール等を使えるよう に規定する場合は、内容の検閲等のプライバシー侵害行為がないよ うに配慮すべきである。 1-1-6  学校の公益性に鑑み、学校ネットワークの運営方針には社会的貢 献への積極的な態度を含めるべきである。 1-1-6-1  学校は適切に情報の公開をするべきである。 1-1-6-2  緊急災害時にはネットワーク資源等をすみやかに提供して災害情 報連絡等に協力するべきである。 1-1-7  外部社会と密接に関わる状況に配慮し、学校ネットワーク運営に 関する方針や規定などは、一般に公開して外部からの閲覧に供する べきである。 1-2  利用者が外部に発信する情報に関して、各方面から学校に要請さ れる制約を考慮して方針を掲げるべきだが、その際には言論の自由 および表現の自由が最大限に確保されるよう配慮しなければならな い。 1-3  利用者が外部から受信する情報に関して、各方面から学校に要請 される制約を考慮して方針を掲げるべきだが、常に最小限の制約に とどめるよう配慮しなければならない。 1-3-1  学校の方針において児童生徒の閲覧に不適切と判断される情報に 対し、情報受信のフィルタリング(選択的閲覧規制機能)措置を講 じる場合は、必要最小限にとどめるよう配慮しなければならない。 一律に許可不許可を設定するのではなく、学年や教科学習等の都合 に応じて教師や保護者の監督下で許可できるなど弾力的な運用が可 能なように配慮すべきである。 1-4  学校ネットワーク利用者がネットワーク社会での常識ある振るま い方を身につけられるように適切な指導の方針をたて、実践を監督 しなければならない。 1-4-1  学校内に適用される規則、制約、慣習が、必ずしも一般社会で通 用する普遍的なものではないことを指導すべきである。 1-5  学校ネットワークが教育目的に応じて適切に稼働するようにシス テム機器の維持改善を監督し、必要に応じて技術環境の変化に対応 した設備の更新や補充等を図らなければならない。 1-6  学校ネットワークの運用に関して保安上の問題などが発生した場 合に備えて、迅速に対応できる手順を運用責任者との間で定めてお かなければならない。 1-6-1  問題発生時の状況改善の手順には、システム休止やそれに関わる 機器操作、利用者への告知などが含まれる。緊急時に迅速に対応で きるよう、総括責任者の決定権を臨時に代理できる権限を運用責任 者等に付与しておくことが望ましい。 2 運用管理者のガイドライン 2-1  運用管理者は、総括責任者の方針に基づいて適切に学校ネットワ ークが運営されるよう、システムの設定、保守管理、利用者に対す る指導監督などの運用管理を行わなければならない。 2-2  情報管理者、技術管理者の協力を得て学校ネットワークの運用状 況を監視し、随時総括責任者に報告しなければならない。 2-3  学校ネットワークの運用に関して問題が発生したときは、総括責 任者に相談の上、迅速に状況改善を図らなければならない。 2-3-1  保安に関連する問題の発生の場合、システムの緊急停止など特に 迅速な対応が必要なことがある。緊急の場合における状況改善のた めの手順、および利用者、総括責任者への告知報告方法等をあらか じめ定めておくべきである。 2-3-1-1 参考:緊急時の一般的な対処手順 問題発生--利用者への告知--システム閉鎖--総括責任者への報告-- --上位ドメインもしくは自サイトの管理局などがある場合にはそち らへの報告と問い合わせ--原因の究明--復旧--ユーザへの告知--記 録および報告書の作成 2-4  ネットワーク技術およびネットワークに関する社会情勢の推移を 常に監視し、学校ネットワーク運営方針に関わる情報を迅速に総括 責任者に報告し、方針や規定などを状況に合わせて見直すよう協力 しなければならない。 3 情報管理者のガイドライン 3-1  情報管理者は、学校ネットワークを経由して受発信される情報が 総括責任者の方針に基づいて適切なものであるように利用者を指導 監督しなければならない。 3-1-1  発信情報については、正確性を確保し、個人情報保護、知的財産 権の尊重、人権の尊重などの見地から適切なものであるように利用 者の指導を行うべきである。 3-1-2  情報発信形態には、外部から自由な閲覧を許す一般公開型とパス ワード保護などによって閲覧者を限定する限定公開型があるので、 発信内容に応じて適宜使い分けることが望ましい。 3-1-2  ネットワーク利用のモラルやエチケット等について利用者の実態 把握を含む調査研究を行い、利用者への指導啓蒙にあたらなくては ならない。 3-2  情報管理者は学校内の利用者の安全確保を第一に考えなくてはな らない。 3-3  情報管理者は利用者および外部からの学校ネットワークに関する 連絡を受け付ける窓口となる。 3-3-1  電子メールの受発信を管理する情報管理者はpostmasterという別 名で電子メールの受発信に伴う諸事に関する連絡を受け取れるよう にしなければならない。 3-3-2  その他のインターネットアプリケーションによる情報受発信サー ビスを管理する情報管理者は、サービスごとに適切な別名で、当該 サービスに伴う諸事に関する連絡を受け取れるようにすべきである。 3-3-2-1 参考:RFC2142で提案される別名メールアドレス(抜粋) INFO 組織や業務に関する連絡先 ABUSE 不適切な行為に関する連絡先 SECURITY セキュリティに関する連絡先 HOSTMASTER DNSサービスに関する連絡先 USENET or NEWS 電子ニュースサービスに関する連絡先 WEBMASTER or WWW WWWサービスに関する連絡先 FTP FTPサービスに関する連絡先 リスト名-REQUEST メイリングリストサービスに関する連絡先 3-4  利用者からの苦情や要望、質問に対して誠意を持って迅速に対応 しなければならない。 3-5  外部からの苦情に対しては誠意を持って迅速に対応すべきである。 ただし、利用者の電子メールアドレスなどは詐称されうることに留 意し、厳正に事実関係を調査した上で利用者に対する対処方法を判 断しなくてはならない。 3-6  利用者に危害を及ぼす外部からの働きかけに対しては、適切な技 術的防御措置の適用を検討するとともに、相手側管理者に連絡をす るなど厳格かつ迅速に対応すべきである。ただし、電子メールアド レスなどは詐称されうることに留意し、アクセス記録の提供など厳 正に事実関係を調査しうる資料を提示して調査を依頼しなければな らない。 3-6-1  あからさまな政治、宗教、商業上の宣伝勧誘など学校教育環境に ふさわしくない情報の流入に対しても、悪質な場合には技術的防御 や相手側管理者に中止を要請するなどの対処を検討すべきである。 4 技術管理者のガイドライン 4-1  技術管理者は、総括責任者の方針にもとづき、情報管理者の監督 のもとに学校ネットワークを構成する機器の管理営繕や記憶された データの保全を行わなければならない。 4-2  利用者の安全と利便を第一に考え、必要な環境の設定保守補充を 行わなければならない。 4-3  不正使用などの問題発生時の調査に役立てるようシステムの動作 記録をとり保管しなければならない。 4-4  利用者からの技術的支援要請には迅速に対応すべきである。 5 この文書の状態 5-1  この文書の複製・再配布は制限しない。 5-2  この文書は学校ネットワーク管理者のガイドラインの見本として 「わかなプロジェクト」が作成したものであり、社会情勢の変化や 各学校の事情に合うように適宜改変して使用されることを想定して いる。 5-3  この文書を適宜改変することなく、そのまま学校ネットワーク管 理者ガイドラインとして採用することはこの文書の目的に反する。 5-4  この文書に改変を加えて新たにガイドラインの見本を作成するこ とは以下の条件のもとに許諾する。 5-4-1  もとになった文書のドキュメントIDを明示した上で、改変である 旨を明記すること。 5-4-2  この文書と同一の条件のもとに第三者が改変することを許諾する こと。 5-5  ドキュメントID:WAKANA1V0R3 (1997年12月5日発行) ====-====+====-====+====-====+====-====+====-====+====-====+ (注)本バージョンは意見聴取のためのプレビュー版であり、配布 にあたって「正式版の公開時には置き換える」ことを要請します。