「世界の学校教育におけるインターネット活用」
新100校プロジェクト 国際シンポジウム'98

国内の事例発表 小学校
インターネットを利用した小学校の国際交流
Cultural Exchanges of Elementary-School with Internet
…ドイツと日本の生活習慣の違いを発信…
Transmit to internet about the differences of customs between Japan and Germany.

大津市立平野小学校 教諭 石原一彦
Otsu-municipal Hirano-Elementary-School : Kazuhiko Ishihara


概要
 大津市立平野小学校は「100校プロジェクト」に参加し、95年の6月にインターネットに64kの専用線で接続された。本校では接続2年目に、大津市の国際交流課を通じて、姉妹都市であるドイツ・ヴュルツブルグ市の学校と交流をおこなった。ドイツ人である大津市の国際交流員「レギーネさん」が仲介してくださって、翻訳等の支援をいただき、本校6年生の児童がヴュルツブルグ市の「シェーンボルン・ギムナジウム」と電子メールなどで交流し、互いの生活習慣を教えあった。本校児童は、手に入れた情報をもとにして、本校のWEBページに「ドイツと日本の生活習慣の違い」をまとめ、発信した。

An outline
Otsu municipal Hirano-elementary school participated in "100 schools network projects" and was connected with the exclusive line of 64k-bps to the Internet in June in 95. Now we have 45 computers connected with internet and we were building LAN inside of our school by our hands.
Two years after when we connected with internet, we were trying to make cultural exchange with Wuerzburg city in Germany (Wuerzburg city is our sisters city).
Fortunately, there was a German-staff at international exchange department of Otsu-city.So,we could get her helping. She translated our student's questions from Japanese to Germany,and she also translated answers of German students to Japanese. So,the sixth-grade students of our school could exchange with "Schoenborn- Gymnasium"(http://www.wuerzburg.de/wue/bildung/schoenborn/start.htm) by e-mail. Our school's children transmitted "differences of life customs between Germany and Japan" in WEB page of our school, on the basis of information that they got.

1、大津市立平野小学校、システム構築への道 システム図
 大津市立平野小学校は、100校プロジェクトに参加し、1995年にインターネットに接続された。校内にインターネットのサーバーが設置し、校内LANも順次構築されていった。
 現在では、約45台のコンピュータがインターネットに接続され、校内のいたるところで自由に子供たちがインターネットを利用している。
 本校の校内LANは,すべて職員の手作りで敷設され、「メディアセンター」と呼ばれるコンピュータ室に約25台、そして普通教室にもそれぞれ1台ずつインターネットの端末が設置されている。

2、平野小学校のインターネット利用
 本校では、3年前よりインターネットの教育利用の研究を学校全体で取り組んできた。小学校の場合、WEBの利用が特に重要であると考えられるが、WEBの利用の仕方に関して「情報収集系」、「情報発信系」、「情報交流系」に3系統に分類している。また、このうちの「情報収集系」の授業は、さらに@イントラネット、Aリンク集、Bサーチエンジンの3種に分けてそれぞれのタイプで研究授業をおこなった。
 「情報収集系」の授業は、主にインターネットから自分に必要な情報を選択し、収集し、再構成する活動が中心となる。具体的には、低学年では、教師が作成した身近なWEBページを開いて、子供たちが見たいと思ったページを選んで見るような学習である。中学年では、教師が用意したリンク集の中から、自分の学習テーマに関係しそうなページを調べる学習が中心となる。高学年では、ブラウザーと同時にワープロも起動し、サーチエンジンを使って自分の探したい情報を検索すると同時に、必要な部分をコピーしてワープロに張り付け、「自分なりのドキュメント」を作成する活動が中心になる。 平野小ホームページ
 「情報発信系」の授業は、子供たちが調べたり考えたりした事柄を、読んでくれる相手の立場を考えながら発信することをめざした授業である。 「情報交流系」の授業は、BBSなどのグループウェアーを活用して、子供同士が意見の交流をおこなったり、疑問を投げかけて、それに答えるような相互の活動が顕在化するような取り組みである。

WEBの利用
情報収集系
@イントラネット「がっこうたんけん」
Aリンク集 「学習資料マップ」
Bサーチエンジン「がっこうけんさく」
情報発信系 「課題研究」
情報交流系「ごんぎつね遠隔共同学習」


3、海外日本人学校との地球規模の調べ学習…「国際調査隊」
 この「国際調査隊」プロジェクトは、いわば「地球規模の調べ学習」をめざしたものである。これは、文部省が、海外の日本人学校にインターネットの端末を設置したのを受け、この国際ネットワークをどのように教育に活用できるか、国内校との交流も交えてその可能性を探る試みである。世界中に点在する海外日本人学校を結ぶこのネットワークは、大変すばらしい学習環境と可能性を備えている。というのも、国内の学校が国際交流を行う際の大きな障害となっている「言語」の壁がこの国際ネットワークにはなく、しかもコンピュータの向こう側には、同じ日本人の子供たちが生活しているのである。まるで隣の学校の児童と交流するように、このネットワークを通じて、地球の裏側で生活している子供たちと交流することができるのである。
ネット図

 「国際調査隊」は本校のサーバーにBBS(会議室)を設置し、参加各国の生活習慣や社会の様子を交流し合うことを活動の中心にしている。 参加各校が話し合って調べるテーマが決められると、各国の子供たちはいっせいに街に出て、調査を行う。そして調べたことがらはこの会議室を使って報告されるのである。 各日本人学校のコンピュータから「国際調査隊」の会議室にアクセスし、調査結果を書き込んで「送信ボタン」を押すと、直ちに書き込まれた内容がWEBページに表示されるようになっている。 グラフ
 このようなシステムを使って、最初に調べたのが「世界のものの値段」である。「マクドナルドハンバーガー」(左図)、「ガソリン1リットル」、「米10kg」、「ファミコンカセット」など、10項目にわたって各国の「ものの値段」が子どもたち自身の手と足で調べられた。
 調査した結果は、本校のWEBページにグラフ化されて発信されている。以後、「ものの値段」に続いて、「同じ日に月は地球上でどのように見えるか」や「同じ日の地球上の南中高度」なども調べられ、報告された。

 4、ドイツと日本の生活習慣の違いをWEBで発信
 一昨年の6年生は「国際理解」と「情報発信」を目標に、「日本とドイツの生活習慣の違いをWEBページに発信」という学習に取り組んだ。 これは、当時、大津市の国際交流員に「レギーネさん」というドイツ人の方がおられたので、彼女の支援を受けて取り組んだ活動である。まず、大津市の姉妹都市であるドイツ・ヴュルツブルグ市の教育委員会と連絡を取り、交流の相手校を推薦していただいた。推薦していただいた学校は、インターネットに接続している「シェーンブルン・ギムナジウム」という学校で、互いに電子メールで交流する環境が整っている。 授業写真
 本校の子どもたちは、グループごとにテーマを決めて、ドイツと日本の違いを調べ、発信することにした。子供たちが選んだテーマは「食べ物」、「芸能人」「スポーツ」、「学校」、「服装」、「歴史」、「遊び」、「生活」、「行事」、「観光」の10項目である。情報を得るために子供たちは電子メールを使って質問するのであるが、レギーネさんが子どもたちの質問をドイツ語に翻訳し、相手校から得られた回答も、今度は日本語に翻訳して下さった。レギーネさんは翻訳だけでなく、本校にも来ていただいて「ドイツの生活習慣」というテーマで授業をおこなって下さった。

ホームページ ホームページ
 情報が十分集まらなかったグループは、まず、ドイツに関するインターネット上の情報をサーチエンジンで検索し、必要な情報を収集するとともに、ドイツに住んでおられる日本人の方に、直接電子メールで質問して情報を得ることもおこなった。このような、調査活動を通して、各テーマごとにドイツに関する情報が集められた。
 ドイツの生活習慣が調べられたら、その結果を各テーマごとにWEBページにまとめる作業に移った。子どもたちは、すでに一人一人が自分のホームページを持ち、平和へのメッセージや「個人研究」を発信しているので、比較的容易に、テキストエディターを用いてタグなどを打ち込みながら、「ドイツと日本の生活習慣の違い」のページを作成していった。また、ここでも、レギーネさんと連絡を取り合って、言葉をドイツ語に翻訳していただいたり、できあがったページのチェックをおこなっていただいたりした。
 子供たちが作成したページは、それぞれのテーマごとに日本とドイツを比較する観点で作られている。このようにして、10項目にわたって、「ドイツと日本の生活習慣の違い」のページが本校のドイツ語版のホームページから発信されていったのである。
 ページが完成し、サーバーから見られるようになると、各種情報をいただいた、「シェーンボルン・ギムナジウム」をはじめ、ドイツ在住の日本人の方にもページが完成したことをお知らせし、感想をいただいた。折りしも、卒業を間近に控えて、子供たちは自分たちの作ったページに好意的な感想が多く寄せられ、小学校生活を締めくくる幸運な思い出になったようだ。


1998.6.15 Update