「世界の学校教育におけるインターネット活用」
新100校プロジェクト 国際シンポジウム'98
国内の事例発表 中学校
EMAILで友達をつくろう
LET'S MAKE EMAIL FRIENDS! SUB-TITLE: We want to be your friends and to know you more.

長野市立篠ノ井西中学校 教諭 松下設吉 遠藤正徳
Setsuyoshi Matsushita/,Masanori Endo

概要
 本校では主に英語科の授業の中でEmailを利用した国際交流を行っている。Emailは、国際交流を行う上で障害となりやすい距離や時差の問題を解消する最適な手段の一つであり、外国に友人を作りたいという生徒の夢を簡単にかなえることができる。また教科書という固定した英文から解き放たれ、生きた英語に触れる格好の機会でもある。

An outline
Students have communicated with students in foreign countries by Email for several years ago at our school. English teachers are eager to use it. When you send letters by postal mail, it sometimes takes time, because of its distance. Email resolves this problem. It helps students to have pen friends in other countries easily. In English classes students usually use textbooks and their activities are mainly connected with the textbooks. Email give students to have a chance to learn native English through using Email.

キーワード(key word)
To be friends(友好的) Respect others and their culture(相手と文化の尊重)Broadminded(広い視野) daily usage(日常的) easiness(気軽)

1.交流の準備
1.1 交流のねらい
 本校では、国際交流のねらいを次の3視点からとらえている。

1.2 相手校を見つけた経緯
1.2.1 国際交流プロジェクトへの参加
 オーストラリアの高校との交流では、両校がアトランタオリンピック開催に伴って企画されたプロジェクトに参加したことがきっかけとなり、Emailを交換するようになった。
 本年度は、新たに「こねっと・プラン」事務局が推進しているJapan-U.S.Common Agenda Projectに参加する予定である。

1.2.2 学校訪問者や友人の紹介
 アメリカの小学校との交流は、本校を訪れているAETの紹介によって始まった。もう1校も、AETの知人から紹介を受けたものである。このように特に海外からの訪問者がある場合には、直接交流先を紹介してもらえる場合がある。

1.2.3 webの活用
 ホームページを持つ学校では、英語版のホームページを用意することにより、海外の学校から意見や感想が寄せられることがあり、交流のきっかけになる。現在ではホームページを持つ学校が多く、意見感想を期待するためには、単なる学校紹介にとどまらないコンテンツの充実が必要である。

1.3 交流の体制づくり
1.3.1 メールアカウント
 本校では、生徒用のメールアカウントは発行していない。それぞれ担当教師が生徒の書いたメッセージを集めて目を通した上で、教師個人のメールアカウントで行っている。

1.3.2 交流相手校の分担
 複数の教師で1校を相手にすると、話の筋道が見えなくなる可能性があるので、1人の教師が1校を担当することを原則と考えている。従って、英語科の教師数だけ交流相手校を確保したい。

1.3.3 コンピュータ操作の学習
 中学校で、生徒がコンピュータの操作法を学ぶのは3学年技術科の情報基礎領域であるが、他教科での活用もあるので、技術科にお願いして、1学年の早い時期に全学級でコンピュータの基礎操作の授業を行っている。

2. 交流の様子
図1 いよいよメールを打ち込みます
2.1 単元への位置づけ
 相手からの返信がいつ届くかはっきりしないので、単元計画の中に交流を位置づけることは行っていない。国によって年度の開始時期が異なったり、学校行事などとの関係があり、無理な計画は双方の教師負担を増加させ、交流の停滞を招くと考えている。従って、相手からのメールが届いた時点で、それまでに学習した構文を生かすことを意識しながらメッセージを作らせている。

2.2 授業の様子
2.2.1 単元展開の一例
以下は今年度、3年生のクラスで行われた授業の概要である。
BOOK: NEW HORIZON ENGLISH COURSE BOOK 3 (TOKYO SHOSEKI) 東京書籍 英語3年
ACTIVITY: LET'S TRY AND WRITE (PAGE 8)
THEM: MY FUTURE JOB
1時
2時
・ TO THINK ABOUT MY JOB (将来の夢を考える)
・ TO WRITE ON A PIECE OF PAPER (紙に書く)
・ TO HAVE STUDENTS' COMPOSITION CORECTED BY A TEACHER (添削指導)
3時 ・ STUDENTS WRITE EMAIL WITH A COMPUTER (タイピング)
・ PRESERVATION OF STUDENTS WRITING INTO A FLOPPY DISK (保存)
・ EDITING EACH WRITING TOGETHER (TEACHER'S WORK)
・ SENDING EMAIL (TEACHER'S WORK)
4時 ・ SPEECH IN A CLASSROOM (自分の書いた文を発表する)
・ RECEIVING A REPLY (TEACHER'S WORK)
・ READING REPLY ALOUD (返事を発表する)

2.2.2 生徒作品
Hello my friend.
My name is ….I'm shinonoinishi junior high school student.I'm 14 years old.Nice to meet you. I want to be a fisherman.Because,I love sea.I like fish.For example,lobster,bream,tuna,and so on.Japan is an island country.So we catch many fish in the sea.Those are very fresh.I want to study at a university.I want to be a NO.1 fisherman in the world.

2.2.3 今後の構想
 将来の夢を語り合う中から、お互いの職業観の違いや、進路決定の方法などの情報交換を行い、進路学習にも関連づけていきたいと考えている。

2.3 他教科との連携
図2 ホームページに掲載されている「HAIKU」と切り絵
 オーストラリアの高校との交流では、美術科と連携で授業が行われた。
 一昨年度、お互いの民話を紹介し合う内に、先方から生徒の創作した物語が送られてきた。本校では、それを3年生が日本語に訳し、その日本語訳を1年生が絵画で表現した。絵画作品はオーストラリアに送られ同校のランチルームに飾っていただいた。
 昨年度は同校から英語の「HAIKU」が送られてきた。本校ではそれを2年生が日本語の俳句に訳し、更に切り絵で表現した。この作品は本校のホームページにも掲載されている。

3. 交流の成果
3.1 生徒の変容
 「海外の友達」という相手があることで、生徒は大変意欲的に取り組み、英文で自己表現できるようになる。初めはあらゆる面で教師の援助が必要となるが、経験を経るうちに生徒自身の力で学習を進めることができるようになる。そして、このような経験を重ねていくことにより、自然に世界に目が向き、多様な価値観を認めることができるようになっていく。


 今日は、E-mailを送りました。私はパソコンで英文を打つのは初めてだったので、最初は手こずっていたけど、慣れてきたら、すらすらできるようになったし、日本人以外の友達をE-mailで作るなんて、なんかとても嬉しかったです。返事がとても楽しみです。

 今日は、5時間目にE-mailを書きました。私はこういうの大好きです。文通とかをすると、世界の幅が縮まったような気がして楽しいです。どんどん続くといいです。

 今日、5時間目にE-mailについてやりました。外国の友達からmailが届いていて、それをもらって、自分の自己紹介をしたり、相手の子はどんなことが好きなのか尋ねたりしました。外国の友達と手紙を交換できること事体、自分の世界が広がった気がして、とてもいいと思います。

3.2 交流テーマ
 生徒一人一人がメッセージを書くので、初めは自己紹介(個人的な話題)を行うことが多い。そのため、双方が話の合いそうな相手を見つけて、1対1のメッセージの交換になってしまうことがある。これを継続することは、英語の苦手な生徒にとって、かなり苦痛な作業になりかねない。また、こちらは英語学習の一環として行っているが、相手は何を求めて交流を行うかといった立場の違いもある。
 そこでなるべく早い時期に、共通の交流テーマを設定し、個人対個人ではなく、グループ対グループの情報交換にしていくことがよい。交流テーマは、できるだけ文化や価値観の違いが表れるようなものを選ぶと、生徒には新鮮な刺激となる。本校が今まで行ってきた交流テーマは、「故郷の民話」「校則」「物の値段」などである。

3.3 交流を定着させるために
 本校の国際交流は、「気軽に」「日常的に」行うことを目指している。大げさな装置や準備が必要となる取り組みは、その教師だけのものになったり、その時限りのものになりやすいからである。Emailは、普通にインターネットに接続できる環境さえあれば、誰でもいつでも簡単に実践でき、相手の都合に左右されることも少ないので、国際交流には最適な手段の一つであると考えている。

長野市立篠ノ井西中学校 http://www.shinonoinishi-jhs.nagano.nagano.jp/
松下設吉        matsu@shinonoinishi-jhs.nagano.nagano.jp
遠藤正徳        m-endo@shinonoinishi-jhs.nagano.nagano.jp


1998.6.16 Update