「世界の学校教育におけるインターネット活用」
新100校プロジェクト 国際シンポジウム'98
国内の事例発表 中学校
インターネットで異文化理解
To Deepen the Understanding of Cross-cultural Communication with Using Internet
〜E-mail,WWWを利用した国際理解教育〜
The Teacing of World Awareness" with using E-mail and World Wide Web

笠間市立笠間中学校 教諭 吉田行博
Yukihiro Yoshida:,Kasama junior high school,Kasama City,Ibaraki Prefecture

概要
 中学校3年生の英語科授業の中で,「異文化理解」の発展学習としてインターネットを活用し,スロベニアの中学生と英語による交流を行いながらそれぞれの文化について理解を深めた。また,その授業をきっかけとして交流を続け,国際理解の意識を高めていった。

Abstract
As a developing studies of English learning, we have used the Internet. Precisely, exchanging E-mails with the junior high school students who are Slovenes in Europe.
Then, the students have deepened the cross-cultural communication with each other.

キーワード、Keywords
文化,E-mail,WWW(ワールドワイドウェブ)
Cross-Cultural communication, E-mail and WWW(World Wide Web)

1 交流のねらい
 英語科の授業で,日本とイギリスの国花,コイン,ジェスチャーなどの比較文化を扱った対話文の学習がある。発想の差異と同時に,類似点を知ることによって,現れ方は 文化によって異なるが,人類は皆同じような欲求を持つことを理解させていくのが目的 である。しかし,国際交流が盛んになったとはいえ,大部分の生徒にとって異文化について知るチャンスは少なく,テレビや新聞,雑誌類に限られている。
 そこで,国外の異文化を知る手段としてインターネットを活用し,イギリス以外の国の文化はどうなのか,その国に住む人とE-mailによる英語でのコミュニケーション活動 をしながら直接情報を得たり,WWWで情報を探したりすることにより,英語力を高めるとともに異文化についての理解を深めることを交流のねらいとした。さらに,そこから国際理解の意識も高め,そこで得た知識を今後の生活に生かしていくことができるようにすることもねらいとした。

2 相手校を見つけた経緯
 本校藤枝美智江教諭が,個人的にペンパルとして交流していた方がスロベニアにおら れた。以前にも,国際交流に興味のある生徒に彼らのmail addressを紹介していただき,E-mailによる交流の実績があった。今回は,授業の中で多くの生徒が交流を望んだので,ペンパルの娘が通う小学校(Osnova sola Primoza Trubarja Velike Lasce)の校長先生にE-mailでの情報交換を依頼し,computer science class(13歳)との交流が実現した。

3 交流内容の設定
 相手校では,個人でmail addressを持っている生徒もいたが,基本的に担当してくださる先生にE-mailを送り,生徒に渡してもらう形を取った。
 交流については,お互いの文化について英語で情報を交換し,異文化について理解を深めることが目的であるが,相手はこちらに比べてやや年齢が小さい(13歳)上に,互いに英語を母国語としていないということもあったので,最初に簡単な自己紹介から交流を始め,意識を高めながら互いの文化について交流していくことにした。
 また,E-mailによる情報交換だけでなく,お互いのホームページに学校の情報をのせ,WWWによる画像を含めた情報交換も行っていくこととした。

4 テーマ内容
 日本とスロベニアの文化のちがいについてお互いの情報を交換し,異文化理解の意識を高める。

5 活動領域
 中学校英語科「異文化理解」

6 授業実践

6.1 指導者
  • 藤枝 美智江,Ray Stahl(Assistant English Teacher)によるTeam Teaching
  • 6.2 本時の目標
  • 選択した学習活動に興味をもって取り組むことができる。(関心・意欲・態度)
  • インターネット(WWW,E-mail)を使い,外国の友達と情報交換することができる。(表現)
  • 6.3 展開
    (1) あいさつをする。
    (2) 本時の学習課題を確認する
    「文化について,積極的に英語で表現しよう」
    (3) 活動の内容を確認する

    図1. E-mailの確認

    図2. E-mailを作成

    図3. E-mailで評価
    (4) グループに分かれて活動する
    @Assistant English Teacherと情報交換するグループ
    国花やジェスチャーについて,積極的に英語で対話する。
    AE-mailを交換するグループ
  • 送られてきたE-mailを開き,内容を読み取る。
    (互いの名前の意味や性別についての疑問点,ホームページを見ての感想等)
  • 自分たちの文化について,英文にまとめる。
  • 英文をE-mailにして送信する。
  • BWWWで情報検索するグループ
    相手校や,その他のホームページからスロベニアの文化についての情報を収集する。
    (5) 本時のまとめをする

    7 児童・生徒の変容
     英語で表現することに抵抗を持っていた生徒たちも,辞書を使ったり友達と相談しながら意欲的に表現活動に取り組む姿が見られた。E-mailの場合,相手からの英文を辞書で調べたりしながらじっくりと読みとったり,こちらのE-mailの英文も内容を訂正したり,付け加えたりすることができるので,抵抗なく取り組めたようである。
     また,アメリカやイギリスとはまた違ったスロベニアという国やそこに住む人たちと交流することにより,世界の広さや各国への興味・関心が高まり,国際理解が深まった。
     特に関心の高かった生徒は,授業後もE-mailやWWWによる情報交換を続け,クリスマスカードを交換するなど国際交流を積極的に行った。

    8 先生の立場での成果,課題
    8.1 成果
  • インターネットを使うことにより,普段では交流が困難な国の先生や生徒たちと情報や意見の交換を積極的に行うことができた。
  • スロベニアの生徒は,日本の中学生が制服で生活していることに大変興味を持ち,話題が盛り上がった。生徒は自分たちが当たり前と思っている身近なことから異文化への意識が高まり,国際理解教育に役だった。
  • 生徒の国際交流意識が高まり,アメリカやカナダの中学生とE-mailの交換をする生徒も現れた。
  • 8.2 課題
  • 交流相手を探す,また決めることに困難が伴う。お互いに意欲や興味があり,進んで交流を行うのでなければ長続きしない。
  • 授業に取り入れるための事前準備に時間がかかった。コンピュータの操作を生徒に指導するため,多くの先生方に援助してもらわなければならなかった。
  • 限られた授業時数の中に,交流のための時間を確保していくことが難しい。
  • Cu-SeeMe等を利用すれば,リアルタイムでの交流が可能である。条件を整えることにより,インターネットを利用してより多くの可能性を見つけていきたい。
  • 9 苦労したこと又は失敗談
  • 生徒の英文作成能力に個人差が大きく,自分の意見や考えを十分に相手に伝えることができない生徒が多く,その援助指導が必要だった。
  • 生徒へのコンピュータの機器操作の指導では,英語部だけでなくインターネット担当の先生方にも協力していただかなければならず,ご迷惑をおかけした。
  • E-mailによる交流を始めてすぐに,相手校が学年末休業に入ってしまったため,交流が3ヶ月間も中断してしまった。
  • 10 ワンポイント・アドバイス
    興味本位で中途半端にならないよう,交流相手校との事前打ち合わせ,生徒への指導を十分に行い,目的意識を高めてから計画的に交流を進めるようにする。

    11 その他


    1998.6.17 Update