「世界の学校教育におけるインターネット活用」
新100校プロジェクト 国際シンポジウム'98
国内の事例発表 高等学校
インターネットを活用した姉妹校交流
Sister School Interchange Using Internet

川崎市立商業高等学校 教諭 吉野 勉
Kawasaki City High School of Commerce:Mr. Tsutomu Yoshino (Teacher)

概要
 本校は,「日本人として主体性を持ちながら相互理解のできる国際感覚を身につけた人材の育成」を目指し国際ビジネス科を設置した。
その目的を達成するために有効な手段として,川崎市の姉妹都市であるオーストラリアのウーロンゴン市にあるレイク・イラワラ・ハイスクールと姉妹校を提携し,インターネットによる電子メールの交換や相互のホームステイを行っている。

Abstract
We formed an international business department in 1994.
The department is designed to foster internation sense of our students, so that they can aquire mutual understanding without losing their identity as Japanese.
To fulfill these objectives, our school started a sister school interchange program with Lake Illawarra High School in Kawasaki's sister city, Wollongong, Australia.
The two schools exchange their students on homestay programs and correspond with each other using Internet.

1 交流のねらい
 本校では,1994年に国際ビジネス科の一期生が入学し,その国際理解教育の一環として,当初は海外と手紙やビデオレターなどによる交流を考えていた。
 そして,検討していくうち,パソコン通信に関する本や先進校を視察させていただき,郵便よりパソコン通信の方がすぐ返事が返ってきたり,生徒が交流をダイレクト受け止められることを知り,パソコン通信を利用しようと考えていた。
 1993年,インターネットが開放されることを知り,パソコン通信より国際的広がりがあり,ホームページを利用することでメールのような文字だけの交流ではなく,画像を取り入れることができるのではないかと思い,パソコン通信ではなくインターネットを活用しようとドメインを取得した。

2 相手校を見つけた経緯
 1993年川崎市教育委員会より姉妹都市のオーストラリア・ウーロンゴン市の高校との姉妹校の募集があり,本校では,国際ビジネス科の設置予定があったので,申し込み,レイク・イラワラ・ハイスクールと提携することになった。
 電子メールの交換や相互ホームステイが始まるまでは,学校長挨拶文・学校紹介のビデオ・校舎施設および授業の様子の写真・書道部の生徒作品などを送付したり,簡単な自己紹介の手紙などの交流を行って
いた。

3 交流内容の設定
こちらから漢字を含んだ日本語でメールを送り,相手から英文を送ってもらうことを考えたが,相手校に日本語のFEPがないことからローマ字で送ってもらうことにした。また,ホームページを利用してメールの相手の顔写真を見ることができ,より身近に感じることができた。
(本校では,個人情報保護条例からこのホームページを非公開としている)
 今後は,CU-SeeMeを導入し,より効果的な交流ができるよう検討している。

4 テーマ内容
内容は,自己紹介から始めるが細かい指示はあまりせず,個々の生徒がメールの内容によって話を進めている。
 特に英文のスペルチェックなども生徒が質問しない限り,そのままメールを送らせている。

5 活動領域
 本校では,商業科・国際ビジネス科の2年生の商業科目としての「課題研究」(2単位)の授業でインターネットを選択した生徒が姉妹校とメール交換を行っている。

6 交流実践
 まずは,電子メールの使い方を指導し,校内でメールをやりとりする。その間に相手校とメール相手を決め,自己紹介のメールから交流を始める。
 しかし,メールによる交流だけでは授業時間が余ってしまうので,自己紹介のホームページを作らせている。(簡単なホームページなのでホームページ作成ソフトは使わず,タグを教えて作らせている)
 また,本校では姉妹校との相互のホームステイも実施しており,一部の生徒はメール交換をした相手に直接会えることができ,より交流を深めることができた。

7 児童・生徒の変容
 生徒は最初の自己紹介文を英文で書くのだが全員が簡単に書ける状態ではなかった。 そこで何種類かの例文をプリントで配布して参考にさせた。そして,その後は生徒が書きたい内容を定型文で示すことなく自由に書かせた。生徒の書いた英文を教員がチェックしないでどうしてもわからない場合のみ指導するかたちである。
 回を重ねる毎にメールが与えられた教材でなく自分宛てにきた内容なので生徒にとって興味・関心の深いものである。辞書をひく場合も単語を覚えるというよりも文の中で覚えていくので生きた英語が学習でき,自分の伝えたい内容を英文に変えようとする努力の姿勢がみられるようになった。

8 先生の立場での成果,課題
英文メールを訳したりすることは当然英語の力をつけるのに有効であるが生徒はコミュニケーションをとる一つの手段として英語に触れているわけであり語学学習をしている意識はない。メールを書くこと事態が自己表現なのだが,自分自身をまた日本のことを見つめるよい契機になるようである。
 これは国際化が進展する社会の中にあって一つの手段として有効に思われる。
 課題としては,姉妹校が授業の中で取り組んでいるわけではないので定期的にメールを交換できないことである。送信した後になかなか返事がもらえない場合には学習意欲が低下してしまう。相手高校の担当教諭と密に連絡を取ることや複数のメール相手を見つけることが必要になってくると考えられる。

9 ワンポイント・アドバイス
 インターネットは時間的・地理的制約にとらわれることなく国際交流ができ,豊かな国際性を身につけることができる非常に有効なツールである。
 個人メールの交換からはじまり,国を越えた共同企画などに参加することによりさらに相互理解が深められると思われる。
 環境問題・人口問題などをグローバルな視点で問題を考える必要がある場合など是非活用したいものである。

10 その他
  • レイク・イラワラ・ハイスクール
  • 川崎市立商業高等学校
  • 交流時期  毎年 9月〜3月まで    期間 7ヶ月 
  • ネットワーク環境
  • 川崎市立商業高等学校 吉野 勉
  • E−Mail アドレス名  yoshino@kawasaki.kch.ac.jp

  • 1998.6.17 Update