「世界の学校教育におけるインターネット活用」
新100校プロジェクト 国際シンポジウム'98
国内の事例発表 高等学校
World Class〜体・ネット空間・心で感じる〜
Our students feel the body and Net space and Heart

岐阜県立海津北高等学校 教諭 林 孝美
Takami Hayashi
概要
 本校は、情報処理科・家政科・経理家庭科の3学科から成り立つ専門高校である。よって、各学科の特色を生かした交流や普通教科における交流に努めている。インターネット活用目的(国際交流)は、情報活用能力の向上及び異国文化交流につなげ、一層の情報化・国際化への対応ができる人材育成に心がけている。

キーワード(key words)
サーチエンジン、共通テーマ、情報活用能力、国際人

1 交流のねらい
 インターネットの最大のメリットは、国内外を問わず名前も顔も知らない相手といつでも、どこからでもコミュニケーション・情報(意見)交換ができることだと考えられる。そこで、国内ではなく海外に目を向けることによって、より生徒の国際社会や情報活用に対する興味関心を高めさせ、自らの物事に対する姿勢(自主性)や行動力・判断力の向上につなげていき、同時に、今までに容易に体験できなかった海外の生徒との交流が瞬時にできる点にも着目させ取り組んでいく。
 この国際交流を通して操作方法の容易さ、便利さ、相手の物事への考えや捉え方等を学び、これからの国際化・情報化への対応策として実践していく。

2 相手校を見つけた経緯
2.1 サーチエンジンの活用
 国際交流取り組み当初は、検索キーワードを「国際交流、ペンフレンド等」のキーワードを使って検索し、検索結果の中から、個人のwebページではなく教育関係及び団体に絞り選択した。その検索結果を生徒に配布しメールを発信させてきた。また、すでに国際交流に取り組んでいる教育機関のページを探し、その内容をヒントに発信した。
 しかし、メール発信数が増すにつれて生徒の自主性に任せ、海外のサーチエンジンを直接開き教育機関を検索した。特に日本語を学習している学校等の検索をしたり世界中の学校に目を向け交流を深めてきた。

2.2 各種会議・研修・イベントへの参加
 新100校プロジェクト重点企画へ参加したことによって、先進的にインターネットを国際交流へ結びつけ実践している方々からのご指導を頂いたり、教育関連の国際会議へ出席し、直接海外の教育関係者と交流を持ち深めることができたことが最大の収穫であった。
 やはり、一度でも相手の顔・声等を知っているのと知らないとでは全然異なりこれらの出会いは、常にアンテナを高く立てておく必要がある。この点は、生徒の交流においても言えることであり、文字ばかりの交流でなく相手の顔等を見ながら交流が深められればより成果が上げられると考えられる。
 
3 交流内容の設定
 各生徒からのメール発信に際しては、特に相手校との打ち合わせは行っていない。生徒が自主的に相手校を探し、自己紹介や近況等の話題交換をしている。しかし、共通テーマによる意見交換の場合では、テーマを相手校へ発信し意見をまとめてもらい、後日返信してもらえるよう依頼文を添えて発信した。意見・情報交換が終わったら次のテーマという具合に取り組んでいる。このテーマ設定はこちらからの場合もあれば、相手校からのテーマ設定の場合もある。

4 テーマ内容
 住む地域、環境等が異なっていても、同年代の生徒の考えが同じなのか、それとも違うのかを体験させ、新たな価値観やその国の文化・習慣を学ばせることができる。
 具体的には、経済・社会分野等の話題を投げかけ、自分達の考えと海外の生徒の考えの共通部分や相違に触れ、より海外を身近に感じ海外の文化・習慣に触れさせ、お互いの国際理解への意識を高めさせていく必要がある。

5 交流実践
 本校の取り組みは、下記の交流内容を中心に取り組んできた。自己紹介から始まり、共通テーマで意見交換を行うところまで交流を深めることができた。
 日本文化紹介
  http://www.kaizukita-hs.hirata.gifu.jp/jyouhoukenkyuu/eigo/eigo-e.htm
 日本語会話学習
  http://www.kaizukita-hs.hirata.gifu.jp/jyouhoukenkyuu/eigo/theme3.htm
 共通テーマによる意見交換
  アメリカ・スウェーデン・本校
  (情報処理科37名で複数の経済・社会面のテーマについて取り組んだ。)
  http://www.kaizukita-hs.hirata.gifu.jp/jyouhoukenkyuu/eigo/kouryu1.html
 食文化の紹介
  日本と海外のパンの作り方について交流
  http://www.kaizukita-hs.hirata.gifu.jp/jyouhoukenkyuu/katei/kateika.html

5.1 生徒個人による自主的なメール発信
 日常的な話題や社会・経済面等について発信しており、授業内で発信できない場合は放課後や次の授業内で発信させている。現在、教室からメールの受発信できるよう検討している。

5.2 共通テーマによる取り組み

6 生徒の変容
 海外が身近に感じられ、インターネットの活用に抵抗感を感じなく取り組むことができ、英語を読んでから理解するまでの時間が短くなったという意見が多かった。また、
国際人になった感じがするという意見も多くあり、全く知らない同年代の人と、しかも海外の生徒と一緒にコミュニケーションが取れることに強い興味と関心を持ち、自主的に取り組む姿勢が身に付いたと考えられる。
 英語への抵抗感が全くなくなったとは言い難いが、英語への恐怖心や抵抗感はなくなっていることは事実である。事実、英語検定へ受験しようとする意欲をもつ生徒もでてきている。

6.1 今後どんなことを取り組んでいきたか。(生徒からの意見)


 自国の経済・社会情勢及び日常生活の習慣の相違について交流する。 
 (核実験について世界の人たちはどう思っているか。)
 一緒に何かを完成させていき、映像による交流も進める。
 取引実践(電子取引)をしたり、誕生日カードや年賀状のような交換していく。

6.2 これからの交流時の課題(生徒からの意見)
 英作文レベルup(英文の翻訳に時間がかかってしまうので、短縮させる。)
 いかに適切に表現していけるか。
 一回一回の交流を大切にし途切れないように自らもっと行動する。
 適切な英語でも通じることは良いことだが、逆に英作文に変な癖をつけていまう恐れがあるので注意する。
 話題がもっと膨らむように心がけたり、何かお互いに同じものを完成させていく。
 単なるメール交換だけでは長続きしないので、何か次へつながるテーマを選定する。

7 先生の立場での成果・反省・課題
 当初、生徒達は、なかなか英語への抵抗感を抜けきれず、和英辞書を片手に持っていても2・3行作るのが精一杯であった。自分の作った英文が正しいのだろうかという不安と自信のなさからくるものだと感じた。しかし、サンプルの英文を配布し作成していく中で、除々に英文にも慣れ文字数が増えてきた。更に、返事が来たときの生徒の喜ぶ笑顔や声には、インターネットを活用して良かったと改めて実感した。「先生、返事来てる!!」と教室内が一瞬沸き上がったことを今でも覚えている。しかし、返信が遅れてしまったり、単発のメール交換ばかりでなかなか軌道に乗らなかったのも事実である。交流の導入に際し、教師が手助けしなければならない部分と生徒自身に任せていく部分を明確にしていく必要がある。
 また、国際交流に限らず、今までの狭義の教室・教材から、生徒に直接触れさせ体験させる授業展開へ発展し、生徒自ら自主的に行動できる姿勢を身につけることができた。
担当教諭のみならず全職員がインターネットへの関心が高まり各授業で検討、導入されている。この点からも、これから求められる人材像や生涯教育につなげていくことができると考えられる。
 一番の収穫は、生徒が自主的に相手校を探し、自己紹介等のメールを発信している点である。これからも、生徒自身の意欲・自主性を大切にし、適切なインターネット活用能力を向上させ、一層の国際交流に触れ共通理解に努めさせていきたいと考えている。


1998.6.18 Update