4.テーマ「教材・教育素材の交換」の実施

4.1  計画立案

    本企画では、情報交換型のインターネット利用として、「教材・教育素材
  の交換」をテーマとしている。インターネットの教育利用に関しては、電子
  メール等を利用したコミュニケーションでの活用や、学校からの情報発信、
  さらには教育情報の入手利用等が実践されるようになってきている。コミュ
  ニケーションや情報発信の活動では、学校が主体となり活動目的に応じた情
  報創造、伝達を実現することで学習利用が可能となる。

    しかし、教材・教育素材の交換では、一時的な目的に対応させた活動では
  なく、今後も継続的に収集・提供可能な手法を検討する必要がある。つまり、
  今後、インターネットへ教育センターや研究所等が接続されるようになるこ
  とを予測すれば、系統的な情報提供のありかたについて検討する必要がある
  と考えられる。

    学校がインターネットに接続できる環境が整備されても、それは情報流通
  の一手段を得るだけであり、具体的な内容を入手可能とするためには、その
  提供情報についての整備を進めなくてはならない。残念ながら、現状ではこ
  れらの学校での利用を目的とした教育情報の整備は充分ではなく、今回の企
  画を通して、教育情報の流通についての可能性を具体的な実践を進めながら
  調査し、整備の枠組みを作成する必要があると考える。

  1)  素材の蓄積と流通の必要性

    教育情報の蓄積と流通は、これまでにも大学等の研究機関、教育センター、
  研究所などで進められてきた。そこでは、地域の教育センターを核にして、
  学校等から通信回線を利用して現場の教師等が教材や文献等の教育資料を検
  索利用できるシステムも開発されてきている。このような通信システムを持
  つ教育センターをはじめとして、幾つかのセンターがインターネットへの接
  続を具体的に検討するようになってきており、インターネットを利用して教
  育情報データベースが利用できるようになるのも時間の問題であろう。

    この点に関して、国立大学教育実践研究関連センター協議会でも、2年ほ
  ど前からこの問題に取り組み、教育情報の流通と利用に関する調査、試行等
  を進めている。

    また、学校教育においてもマルチメディアを活用した実践が積極的に進め
  られるようになり、流通すべき情報も画像や音声等の情報へと変化してきて
  いる。マルチメディア教材開発のためには、写真や動画等の素材が必要とさ
  れるようになってきており、この素材を活用した容易な教材開発が期待され
  るようになっている。たとえば、1993年の教師らに対する調査では、素材情
  報の流通に対して高い期待感を抱いており、全国の地域に関する映像等の素
  材を活用できることを望んでいることが明かになっている。

    教育情報として映像等の素材情報を含めた全国的な流通方法の検討が必要
  となってきているといえる。このために必要となる通信ネットワークのモデ
  ルはインターネットであろう。そこで、今回、教材・教育素材の交換に関す
  る企画を進めるにあたり、参加学校間での交換のみにとどまらず、広く各学
  校で利用可能な情報提供という立場からも実践を進める必要があると考えた。

    とくに今回の100校プロジェクトを対象とした企画では、各学校からのボ
  トムアップ的な情報提供の可能性とそのあり方について実践を通して検討す
  ることとした。

    2)  現状の流通実態

    教材・教育素材に関する情報流通について、国立大学教育実践研究関連セ
  ンター協議会(以下センター協議会という)を参考に現状について検討する。

      【参照  図4-1-1  国立大学教育実践研究関連センター協議会のHP】

   センター協議会等で提供される教育情報については、以下の視点で分類さ
 れてきている。

(1)案内型の教育情報

    教育で活用できる情報の所在を収集し,それへの案内(リンク)を提供す
  る。この特徴として,教育利用を目的とした情報のほか,専門家や専門機関
  が提供している専門的情報かつ最新の情報で教育実践で活用できるものの紹
  介がある。教育利用を目的とした情報のページへのリンクは,情報を共同利
  用することで,重複した情報提供を避けられるという利点があげられる。

(2)こと実(ファクト)型の教育情報

    学習指導で利用できる情報そのものを収集・整備し,ネットワーク上で提
  供する。文字による情報のほかマルチメディア教材作成のための映像・音声
  情報等を提供する。

    本企画では、テーマを定めて関連する映像情報を収集、提供することを検
  討しており、こと実型の教育情報の流通について調査する。

    センター協議会では、こと実型教育情報の提供に関して、映像を中心とした
  素材データベースをインターネットで提供している。これらの情報は、教育
  利用のためには自由に入手でき、OHP資料として利用したり、マルチメディ
  ア教材の開発に利用することができるようにしている。各素材情報には、二
  次情報が付加されており、キーワード検索も可能としている。とくに、映像
  資料を教育利用する際には、その映像が表わす内容等について把握できるよ
  うにしておくことが必要であり、定型的なフォーマットにより情報を提供し
  ている。

    情報の掲載者にとっては、著作権等に充分に配慮する必要があり、本企画
  においても、基本的に参加者が撮影したものを掲載するように配慮すべきで
  あろう。

      【参照  図4-1-2  和傘づくりの素材情報の提供】

      【参照  図4-1-3  和傘づくりの一映像の入手】

    素材データベースには、情報を提供し、素材の配列にはあまり意図をもた
  ないタイプのものに対して、素材の配列により学習を支援できる資料を提供
  しているタイプのものもある。

    たとえば、「ゆきぐに十日町」に関する資料をもとに教材として利用でき
  るように構成して提供しているものがある。これは、教師の強い指導意図が
  含まれているものというより、指導の補助資料的な利用を想定した提供であ
  る。このような提供は、いわば「学習図鑑」とも呼べるもので、学校教育で
  の利用を考えてリンクをたどりながらブラウジングができるようにしたもの
  である。

    学習者の指導に携わる教師らが積極的に提供可能な教育資料は、このよう
  な図鑑のタイプのものになるであろう。開発する図鑑は、自らが指導する子
  どもたちに直接利用されることを前提に開発できるのである。さらに、開発
  された図鑑は、インターネットにより他の地域でも即座に利用可能となるよ
  うに提供されることになる。

    このような開発手法によって、教育利用の視点を明確にした素材収集が可
  能となる。素材のみを収集しようとすると、利用意図が不明な資料も掲載さ
  れて情報が繁雑になったり、逆に必要な情報が掲載されていないということ
  が起こりやすい。このため、教育素材の収集は、学習図鑑の開発と並行して
  進められる必要があろう。

    共同利用を目的とした教材の提供では、一般的にはこのような補助資料と
  して活用可能なものが適していると考える。いわゆるCAIに代表される指導
  解説型の教材は、作成教師の指導意図が強く盛り込まれ、授業展開をも規定
  することとなりやすく、広く流通利用を進めるためには検討しなくてはなら
  ない点が多いと考える。

      【参照  図4-1-4  ゆきぐに十日町の資料】

      【参照  図4-1-5  豪雪にうもれる町の資料】


    また、学習図鑑の開発は、教師らによって行われるだけではない。情報教
  育の立場からは、教師よりも児童・生徒の活動として資料を収集し整理・加
  工して伝達する活動が必要となる。本企画は、この視点で進められるもので
  はないが、発展的な活動として児童・生徒による情報収集を位置付けるよう
  な配慮をする必要がある。

    この点については、教師らが開発した学習図鑑を学習の導入段階で活用す
  ることにより、学習者の問題意識を喚起し、課題を焦点化することができる
  と考える。そこで、素材の収集にあたっては、このような点に配慮する必要
  があると考える。

    これらの検討から、本企画である教材・教育素材の交換では、情報の収集
  と流通、利用についての基本構想を図4-1-6のように考え、とくに学習資料
  と教育素材の収集と開発に重点をおくこととした。

       【参照  図4-1-6  教材・教育素材の交換の基本構想】

  3)  日本のお正月の目的

    本企画では、日本のお正月を1つのテーマとして、参加地域の食べ物・習
  慣・気候・行こと等に関する情報を収集、蓄積して相互に利用可能な教育素材・
  教材を開発し、可能であれば授業実践することを目的とした。テーマ毎に集
  められた情報は、写真なら1枚毎の素材としてデータベース化するとともに、
  その素材を用いて教材化して利用できるようにする。当初の素材の収集等の
  活動等は教師が中心になって進める。

    蓄積資料の利用は、教育素材の面からは他校の教師らに写真を主とした素
  材を提供し、必要に応じて教材化可能となるようにする。また、収集資料を
  利用して学習図鑑などを開発し、児童・生徒が直接参照できるようにする。

    学習活動での具体的利用については、例えば、

    (1) 雑煮に入っている材料から地域の特産物との関わりに目を向ける
    (2) 行こと等を参照して、国語科の歳時記の学習で活用する
    (3) 大晦日に売られる品物の値段などから地域の産業との関わりに目を向
        ける
    (4) 正月の遊びの場面を参照して、生活科での学習に活用する

  などが考えられる。


    そこで、素材収集にあたってはこれらの点に配慮し、学習資料として構成
  できるようにする。


4.2  実施
4.2.1  実施概要

  1)  素材収集と提供

    本企画では、実際に参加教師らが写真撮影を行う必要があり、正月をテー
  マとした取材活動により収集された画像をWWWで提供し、教材開発や授業で
  利用できるようにした。

(1)素材の収集

    素材の収集は、「正月」をテーマとしており、各参加校ごとにテーマに関
  する写真撮影を進めた。参加校によっては、担当教師だけでなく、全職員に
  趣旨を連絡し協力体制が得られたところもみられた。

    

(2)素材の提供

    収集された写真をWWWで公開するために、写真のディジタル化、加工処理、
  HTML記述などの作業を行った。写真のディジタル化については、早急に提供
  が必要な資料はスキャナーで処理し、画質を優先するものについては、
  PhotoCDのサービスを利用することとした。


(3)素材の活用方法

    素材の提供は、教師向けの教材開発のための資料と、学習者向けの図鑑等
  に相当する資料の二面から進めるようにしたが、時間等の関係から学習資料
  の開発を優先した。

    学習資料を活用した授業実践は、教材開発に手間取ったため実施が困難な
  状況であったが、一部の参加校では行われた。


  2)  実施計画

  本企画の実施にあたり、以下のような実施計画を提示した。

(1)教育利用の視点の相談


    交換する素材・教材のテーマは「お正月」についてだが、収集する視点は
  参加者間で相談できるように配慮する。たとえば食べ物の視点からは「雑煮」
  「おせち」等の収集が考えられ、社会科での各地域の理解や、家庭科での調
  理方法の教材に仕上げることができ、理科では元旦の日の出時刻や気温等を
  調べることも可能であることを提示する。

    このような視点を参加者間で相談する。

(2)教育素材のWWW化

    収集した情報(文字・図・写真・音声・動画など)を参加校でディジタル
  化して素材データベースとしてWWWで公開する。公開された情報は、他の学
  校でも転送して利用可能とする。

(3)教材のWWW化

    素材をもとにして教材を開発する。これは教師でも児童・生徒でも良いこ
  ととする。また教材化にあたり、比較のために他の参加校が提供する素材を
  利用することも可能とする。

(4)素材や教材を利用した授業実践

    参加校で提供されている素材や教材を利用して、授業を実施する。(3)
  の活動を児童・生徒が行った場合は、(3),(4)が一緒となる。

(5)評価

    実践の紹介や活動状況を評価、記述して報告書を作成する。
    各内容の具体的な実施時期の計画は以下のようである。
    実施期間:1995年11月後半〜1996年2月中旬(実践期間)

    (1)視点の相談    11月後半〜12月初旬
    (2)収集の検討    12月初旬〜1月初旬
    (3)WWW作成    1月初旬〜1月下旬
    (4)授業の実践    1月初旬〜2月中旬
    (5)報告書作成    2月中旬〜3月中旬

  3)  研究グループの活動経過

    期間中の活動の概要は、以下のようであった。

    11月下旬    本企画の概要を決定し、参加校の募集を開始
    12月下旬    参加校がほぼまとまり活動できる体制が整う
    12月下旬    視点の相談をMLで実施(時間の余裕がなく充分な検討が困難)
                冬休みに入ってしまうために、正月の写真を撮影しておくこ
                とを確認
    1月初旬     写真撮影後の映像のディジタル化とWWWへの登録作業
    1月中旬     ディジタル化の作業を進め、一部の参加校でWWWでの公開を開始
    1月下旬     写真撮影後の映像のディジタル化とWWWへの登録についての
                技術的な相談(参加校の教師らの技術面が障害となる)
    2月         授業実践など
    3月上旬     評価の実施

    本企画の連絡などは、基本的にメーリングリストのみで実施した。これは、
  年末からのスタートであり、各参加校とも忙しい中での活動であったため、
  対面での会合を開くことが難しいと判断したことにもよる。

    各校とも忙しい時期での実施となってしまったため、短期間で授業実践ま
  で進めることは教師らにとってかなりの負担であった。

  本研究活動に参加した学校を以下に示す。

    斎藤等      東京都神応小学校
    岩田諦慧    岐阜県輪之内町立大薮小学校
    松田義行    北九州市立小森江西小学校
    矢口一男    長野県美麻小・中学校
    井柳強      静岡県清水国際学園中学     
    辻慎一郎    鹿児島県鷹巣中学校
    前田賢治    鹿児島大学教育学部附属小学校


4.2.2  実施内容

    本企画の実施結果について、教師らの活動を中心とした素材の収集と、学
  習者の活動を中心とした授業実践について述べる。

  1)  輪之内町立大藪小学校での素材収集の取り組み

(1)全職員での取り組みに向けて

    先進的教育システムの開発における「教育素材・教材の交換」実施企画
  「日本のお正月」の協力依頼を11月に受け連絡を受け,この企画について
  大藪小学校としてどう対応するか,学校長・教頭・教務主任・情報教育主任
  で話し合いを持った。

    その結果,12月の職員会に企画の内容を提案し,全職員の理解と協力を
  得て,この企画に参加していくことにした。

    全校職員で取り組もうと考えた背景には,以下の理由が挙げられる。

    (a) 100校プロジェクトのいろいろな企画に参加する中で,担当者及び
        該当学級のみが参加するばよいという考え方が見受けられた。そのた
        め,今回の企画参加を契機に全職員の理解を得たいと考えた。
    (b) マルチメディア教材を扱っていく上で必要になると考える素材収集の
        技術の習得,また素材収集を自らが体験することで,教材化するため
        の素材の扱い等視点の育成したいと考えた。
    (c) インターネットの利用に多くの教師が興味・関心を持ち,来年度への
        ステップにしていきたいと考えた。
    (d) 身近な素材・地域の素材に着目して,教材化し学校教育の中で利用し
        ていくこと。

(2)素材収集について


    教職員に冬期休業中の課題として,24枚撮りのフィルムを1人1本ずつわ
  たして,お正月に関する素材収集を始めた。今回の素材収集「日本のお正月」
  は,児童にとって興味・関心を引き起こすものだと考える。例えば「どのよ
  うに作られているのだろうか?。」「どうして,ぼくたち(わたしたち)の
  地域とは,材料が違うのだろうか?。」という疑問に対しての情報提供をす
  ることが教材化につながると考える。

    素材収集においては,身近な素材でお正月を感じさせるものを考えるなか
  で,職員14名中9名が女性であることから,各家庭の「雑煮」「お節料理」
  を中心にしていくことにした。

    写真記録については,素材をいろいろな角度から記録にとどめていくこと
  にした。例えば,「雑煮」などは,材料・料理段階・できあがった料理を撮
  影することで,情報として単に「雑煮」の映像があるだけでなく,材料に使
  われてるものから撮影することで,その地域の生活・風土などに合った材料
  が使われていることが分かるのではという考えからである。

    説明文については,各自が調理過程において,写真等に記録していくこと
  で,素材についての説明などもっともわかりやすく解説できることがあげら
  れる。

    教材としての視点を考えた具体的な例としては,「黒豆」「雑煮」などが
  あげられる。「黒豆」では,調理前の各材料・出来上がった「黒豆」・「黒
  豆」のレシピが収集されている。「黒豆」の調理材料に「鉄釘」「重曹」な
  どが含まれている点は,児童が自然に疑問をもつものであると考える。

    また,「おもち」では,餅米の段階・自動餅つき器で餅をついている段階・
  のし板の上で丸めている段階・鏡餅として飾られている段階というように,
  餅の作られる行程が収集されており,3年社会科「変わってきた人々のくら
  し」の学習において,杵・臼での餅つきの様子を素材収集し,比較すること
  ができれば,今後の教材としての価値を高めることができると考える。

    このようにして,単に素材収集するのでなく,教材としての視点を考えた
  素材収集ができるようになったと考える。

(3)収集した素材の記録・公開

    今回は,収集された素材は,フィルムからプリントアウトして,スキャナー
  で読み込むという方法でデジタル化を行った。

    動作環境
    CPU      Pentium 90MHZ(FMV-590P)(富士通)
    メモリー    24Mbytes
    スキャナー  600dpi(GT-9000WIN) TWAIN対応(EPSON)
    使用ソフト  Microsoft Windows Ver3.1(富士通)
                Photo Shop Ver.3.0J(Adobe)


    100校プロジェクト参加校では,これに類似またこれ以上の環境が,整備
  されていると考える。しかしながら,一般的な学校においては,ほど遠い環
  境であるともいえるかもしれない。

    データのマスターとして,BMP(640*480*16M)ファイルを作成し,このファ
  イルからGIF(80*60*256)とJPEG(640*480*16M)を作成しました。このよ
  うな作業は,Photo Shop上で容易に行える作業であると考える。BMP形式の
  ファイルを一括してGIF,JPEGに変換可能なコンバートソフトもある。

    他の画像の処理の方法として,Photo CDという方法もある。これは,フィ
  ルムに記録された映像をライトワンスのCD-ROMに書き込んでくれるというサー
  ビスである。1枚のCD-ROMに約100枚まで記録することができ,その映像の画
  質は大変に優れたものだといえる。

    またPhoto CDの映像はデジタル化された映像であることから,CDの取り扱
  いに気を付ければ,他の映像情報に比較し,データの劣化という点では優れ
  ている。このことからも,Photo CDデータはデジタルライブラリとしても活
  用できる。

    今回は,素材収集したデータが十分整理等行われていないため,Photo CD
  での保存には,至っていないが,整理でき次第,約100枚の映像をPhoto
  CDに記録する。

    デジタル化された画像に対しての説明は,ワープロソフトでTXTファイル
  として納めて,HTMLのなかに組み込んでいくという方法とった。

    これらの活動の結果,全職員から素材収集したフィルム1本とTXTファイル
  が納められたフロッピーディスクが提出され,これを上記の方法で加工処理
  し,公開していくという作業が行ってきた。

(4)公開する素材

    ・素材の内容
    ・正月料理
        お節料理
        黒豆
        栗きんとん
        たつくり
        生なます
        煮なます
        煮物
        お雑煮
        鏡餅
        ぜんざい
    ・おもちができるまで
        餅米を一晩水に漬けた後,水気を切っている様子
        餅米を蒸すためのガスコンロ
        餅米を蒸す器に入れる様子
        餅米を蒸している様子
        蒸した餅米を自動餅つき器に入れる様子
        簀の子をとっている様子
        自動餅つき器でついている様子
        つき終わった様子
        餅つき器から出している様子
        のし板の上で丸めている様子
        とりこ(米の粉)をまぶして,丸める様子
        とりこ(米の粉)をまぶして,丸める様子
        床の間に飾られた鏡餅
        のし餅を作り始める様子
        のし棒でまんべんに広げる様子
        のし餅ができ上がった様子(一枚あたり3升)
    ・しめ飾り
        いろいろなしめ飾り

  2)  神応小学校での生活科授業実践

(1)目的

    「日本のお正月」をテーマとして、各地域の食べ物・風習・気候・行こと
   等に関する情報を収集、蓄積して相互に利用可能なデータ集とする。

(2)児童の学習活動

  ・2年生児童が、生活科の学習として、冬休み中及び3学期に、お正月や冬
    のくらしについての写真を撮影したり、話を聞いて調べたりした。また、
    昔のお正月遊びをして遊んだ。
  ・教師もお正月の特徴的な写真を撮影し、子供たちに資料として提示した。
  ・調べた結果は、神応小のホームページに公開した。
    URLは、 http://shinno1.shinno-es.minato.tokyo.jp/syogatsu.html
    である。
  ・他地域の学校に、その地域の冬の行ことや暮らしの様子を電子メールで尋ね
    た。

(3)児童の感想

  ・お父さんの田舎と私たちの町では、お正月の様子が違うことが分かった。
  ・昔のお正月と今のお正月も違いがあるようだ。昔からある遊びも面白かっ
    た。
  ・日本のいろいろな場所では、どんなお正月なのか知りたい。

(4)まとめと今後の課題

    今後より多くの地域データが集まれば有効なデータベースとなるだろう。
  また、児童が電子メールを活用することで、4年生の「日本各地のくらし」
  など学習に直結するものも期待できる。インターネット環境ならではの利点
  を生かし、日本各地は勿論、世界の桜や世界のお正月の様子調べにも発展さ
  せたい。

4.2.3  成果物

    本企画により得られた成果物は各校のホームページに掲載されている。ま
  た、現在未整備の情報もあり、今後も継続して活動する予定である。

     【参照  図4-1-7  活動により提供される情報の例】

  1)各学校での成果物の出力(WWW)

    東京都神応小学校
    URL  http://shinno1.shinno-es.minato.tokyo.jp/syogatsu.html
    岐阜県輪之内町立大薮小学校
    URL  http://www.ohyabu-es.wanouchi.gifu.jp/100pro/newyear/newyearp.html
    鹿児島大学教育学部附属小学校
    URL  http://www-cn.edu.kagoshima-u.ac.jp/fusyo/syogatsu.html
    鹿児島県鷹巣中学校
    URL  http://www-cn.edu.kagoshima-u.ac.jp/Tjhs/index.HTML

  2)撮影された写真のうち、未公開の内容リスト

   岐阜県輪之内町立大薮小学校
   a)しめ飾りに関する写真
         
  長野県美麻小・中学校
   a)「マキマキ」というある家に伝わる行こと(ホームページに載せよう
       と制作中のものです。)
   b)神社への2年参りの風景、正月用の神棚等の飾りなど


4.2.4  評価方法

    本企画を参加者らによってアンケート調査し、評価を行った。

  1)  評価の視点

 (1)情報蓄積の意義を感じているか
    ・今回のテーマについて
    ・一般的に情報の蓄積、交換を進めることについて
    ・授業での活用の可能性

 (2)蓄積情報の開発についての見通し
    ・学校の教師らで今後も可能か(今回の体験を踏まえて)
    ・子どもたちの情報収集の可能性
    ・専門の提供者の必要性
    ・教師らによる地域の組織的な収集は検討可能か

 (3)今後のテーマについて
    ・どのようなテーマの収集するとよいか(具体的に列挙)
    ・収集テーマ,目的,利用方法案

 (4)既存の提供情報についての意見
    ・既存の「素材」に対する意見
    ・既存の「学習資料」に対する意見
    ・一般に提供される情報に対する意見

  2)  調査結果

    アンケートに寄せられた意見を以下に示す。

(1)インターネットを利用した教材、素材交換の意義と可能性について、ど
      のようにお考えでしょうか。

(1−1)
    インターネットの教育的利用については、現在はほんの一握りの学校(小
  学校では(80から90校)が、実験的に行っていますが、今後もっと多く
  の学校が利用できる環境が整えば、教材化されたデータが各大学・研究機関・
  県の教育センター等にプールされていけば、十分活用できると考えます。
    すでに、ネットワークの利用した学習教材を学研のホストコンピュータが
  提供するという話を雑誌か何かで読みました。
    このことは、将来の学校のあり方を問うものだと思います。私自身2児の
  父親ですが、インターネット等のネットワークを個人的に利用すれば、ある
  程度の子どもの自由な学習環境を整えることができると考えます。
    企業(教材・ソフト関連)・大手学習塾に対抗して、公立の学校が父兄と
  の協力を得て生き残ろうと考えていくならば、教師としてプロ、専門家とし
  てのノウハウお互いに交換し、自由に利用できる教材・素材は、必要等だと
  考えます。
    現場の雰囲気は、まだとても危機感は感じられませんが(?)、あと5年
  から10年もすれば、学校とは・・・と問われる時代がくると考えるとこの
  ような交流は、学校が生き残る最低条件になるのではと思います。ただ、児
  童向けの情報提供が十分ではないという点が残念です。

(1−2)
    インターネットをデータベースとしてとらえたとき、他のパッケージ型の
  それと比較したとき、最大の特徴は、データをすぐに更新できるところにあ
  る。そう考えると、時こと変化していくデータを教材や素材として取り扱って
  いくことが、学校の授業やその他の活動に有効にはたらくと思う。
    例えば、今、鹿児島大学で試みようとしている企画にコンピュータで気温
  を自動的に測定させ、そのデータを自動的にインターネット上にリアルタイ
  ム(現在のところ30分おき)で公開しようというものがある。これが、全
  国に広がれば、今までにないデータベースができあがり、理科や社会といっ
  た分野で教材、素材として幅広く利用していけると考える。

(1−3)
    やはり,従来のパッケージ型より,機動力があっていいように思います。
  より手軽に新鮮な情報が入る可能性があります。鹿児島大学附属小学校の前
  田先生の書かれている,「自動温度測定システム」ですが,私の学校も測定
  協力校をしています。30分ごとの気温データを県内各地(今の所4カ所)
  で,自動的に測定し,1日に1回ホスト局に自動的に送るシステムになって
  います。このデータをインターネット上に自動的に配信できるとか,,そう
  なってくるとよりおもしろい授業展開につながるのではないかと思います。

(2)今回の「お正月」というテーマの教材、素材交換に参加され、感じてい
      らっしゃる問題点とその解決方法についてのお考えについて述べてくだ
      さい。

(2−1)
    「お正月」というのは、トップダウン的にテーマが決定されたという点が
  問題だと思います。このことは、100校プロジェクトでいろいろな企画が
  行われていますが、すべてに共通することだと考えます。
    学校現場は、大きな過渡期にあり、今までの教科中心の学習から次の何か
  へ移行しなければという考えが少しずつ芽生えつつある時期ではないでしょ
  うか。
    本校でもネットワークの教育的利用を考えると今までの研究は、国語科を
  通してのコンピュータ利用でしたが、総合学習もという意見が聞こえるよう
  になってきました。
    しかしながら、学習指導要領は現在も同じものであり、教科書・カリキュ
  ラムは、何らかわっていないの現状です。
    ですから、今現在は、教科のカリキュラムの中で素材・教材として、ネッ
  トワークを有効利用できるものは何かという観点から考えるべきだと思いま
  す。それも、現場の意見を吸い上げるようなボトムアップ方式が適当だと思
  います。

(2−2)
    まず、私をはじめとして、お正月のデータが、3月にならないとできない
  というところに問題があると考える。3月では、おそらく子供たちの意識も
  「お正月」という雰囲気ではないし、生活科の授業でも使えなかったのでは
  ないだろうか。(少なくともうちのものはだめだったでしょう。)
    そして、自分が、まだhtmlの作成に慣れていないせいもあるが、自分がイ
  メージしたものを簡単に作れるツールがないところにも問題があると思う。
    また、素材提供の数の少なさもあると思う。
    解決法として、一つは、私自身にいえることだが、「情報を取り扱うもの
  としての責任感」をもつこと。(このデータはいつまでにインターネットに
  のせないといけないとか、どういうデータがなければいけないとかいった情
  報に対する姿勢。)もう一つは、「誰にでも簡単にhtmlがつくれるツール」
  の開発等といった方策があると思う。

(2−3)
    「お正月」の写真を撮ろうと思って,実は何を撮ればいいのか大変迷いま
  した。「お正月の」「,,,,」について撮ろうとかの方が,やりやすかっ
  たかなと考えます。それと,載せるまでに時間がかかりすぎてしまいました。
  やはり,インターネットの場合,即時性を大ことにしないとなと自分で思って
  います。

(3)今後、どのようなテーマで教材、素材の収集を進めるとよいとお考えで
      しょうか。具体的に、幾つかのテーマと授業での活用について述べてく
      ださい。

(3−1)
    (1)4年社会科       いろいろな土地の人々のくらし 
    (2)5年理科         天気(1年間を通して) 
    (3)5年社会科       伝統工業
    (4)4年国語科       方言と共通語(音声情報)
    (5)5年社会科       日本の農業(各地の農産物など)

(3−2)
    (1) 5年理科        「天気」/全国のリアルタイムの気温と湿度のデータ 
    (2) 4,5年社会科  いろいろな地方のくらし

(3−3)
    (1) 5年理科        日本各地の温度や湿度のデータ

(4)今回の企画が目指す一つの姿として、岐阜大で提供している「素材デー
      タベース」「図鑑」、「WebREC」などが考えられると思いますが、この
      ような試みを先生方の目から評価してください。

(4−1)
    私は、教育系大学は設立段階からある程度地域というものを考え設立され
  たと考えます。そのような意味からも、各県1つは教育系大学・教育学部が
  あり、地域の学校に対して情報提供をして行くべきであると考えます。
    その1方法として、「素材データベース」「図鑑」「WebREC」は、意義あ
  るものであると考えます。すでに、「WebREC」のソースからいろいろなホス
  トコンピュータにリンクをしていこうと考えています。
    今後も現在提供されている情報を質・量ともに高めていただきたいと思い
  ます。また、学校現場と提携して行かれることが大切であると考えます。

(4−2)
    インターネットをデータベース的に使うとき、どこにどんな情報があるの
  かをすぐに検索できるのが必須条件になってくると思う。しかし、現在はあ
  ちこちのホームページの中の情報を直接に検索できるところまでは環境が整っ
  ていないと考える。その環境を整備していくとデータベースとしての活用が
  さらに広がるものと考える。

(4−3)
    これは,とてもいいと思います。ただ,現状ではインターネットを使える
  学校が少ないのがネックかと思います。しだいに,インターネットが普通の
  学校に行き渡れば,この試みの重要性は一段と高まると思います。

(5)その他、このような企画を進める上でのご意見などがありましたら、お
      願いいたします。

(5−1)
    検討期間を十分置いて、素材収集・教材化・授業実践していくことが最後
  に実を結ぶと考えます。
    今後ともこの企画には参加していく考えでおりますので、よろしくお願い
  いたします。

(5−2)
    私の場合、コンピュータはある程度扱えるが、教科の内容についてはあま
  り専門的な知識を持ち合わせていない。従って、今回も自分の判断で資料を
  収集した。例えば、生活科にかなり詳しい先生とチームを組んだらもっと授
  業に効果的な資料を作れたのではないかと考えた。

(5−3)
    やはり,参加校が多い方がおもしろいなと思います。それと,数カ月前に,
  計画がわかると,また取り組みが変わってくるとも思います。
  今回の件はいろいろ勉強になりました。

  3)  調査結果の考察

(1)情報蓄積の意義

    今後のインターネットの学校及び家庭への普及を予測したとき、これらの
  教育利用に対して高い期待を抱いている。しかし、現状で提供される教育情
  報については、その絶対量の不足を指摘している。ハードウェアは整備され
  ても、ソフトウェア(この場合はコンテンツであろう)が不足しており、実
  際の教育利用が進めにくい状況であることが問題となる。

    このため、本企画の教材・教育素材の交換に対する期待は高く、これらの
  データベース化が積極的に進められることを教師らは望んでいるといえる。

    とくに、教師らによる情報交換という視点からは、今までどちらかという
  と閉鎖的であった各教師の指導技術を公開し、相互に交流できることが必要
  とされ始めており、教育の観点から開発、収集された教材・素材の必要性が
  指摘されている。

(2)蓄積情報の開発についての見通し

    学校の教師による教材・素材の開発は、必要であると指摘しつつも、大学
  や教育センター、教育関連の研究機関からの情報提供に対しても強い期待を
  抱いている。

    今回の企画では、各教師が取材・加工・提供の全てを担当しており、現状
  の開発環境(とくにソフトウェア)の貧弱さを指摘した意見もみられた。開
  発環境の向上は、今後のソフトウェアの開発により改善されるようになると
  予測されるが、実際に写真をディジタル化するための作業などは深夜に及ぶ
  こともあったようで、教師にとっては負担の大きな作業だともいえる。

    この負担を乗り越えて活動できる原動力は、具体的な授業での必要性の理
  解であるともいえ、今回のテーマとその決定方法については問題を残したと
  いえる。トップダウン的なテーマの決定と、活動初期の交流の不足が、参加
  者の必要感と見通しを甘くしていたと思われる。

(3)今後のテーマについて

    今後のテーマについては、社会科、理科に関するものが多く、社会・自然
  こと象を扱う教科での素材収集が期待されているといえる。具体的な単元を想
  定した収集活動が目的が明確となる点で活動しやすいといえる。今回のテー
  マでは、校種、学年、教科などが異なる参加校が活動できるように配慮して
  おり、この点においても不明確さを感じさせていたとも考えられる。

    また、テーマに参加する教師は、その学校、あるいは地区で一名ではなく
  身近にグループや組織を構成することが収集内容を検討するためにも必要で
  あるといえる。

(4)既存の提供情報についての意見

    すでに教育関連の情報の幾つかはインターネットで提供されるようになっ
  てきているが、それらの情報を総合的に検索可能な案内データベースの必要
  性について指摘されている。教材・教育素材の交流については特にこの点が
  重要となり、分散的に提供される情報を効率的に検索できるようにするため
  のシステム整備が必要となる。この点については開発、提供した教師自らが
  データベースに登録する方法も考えられ、運用方法の検討も必要となろう。


4.3  教育面での効果・課題に関する調査
4.3.1  日本のお正月の活動

    本企画では、「日本のお正月」をテーマとして写真取材などを進め、WWW
  により教材・教育素材として情報を提供し、授業等で活用可能とすることを
  目的としてきた。実際の活動はほとんどが参加校の教師個人のレベルで進め
  られたが、学校全体の教師らにはたらきかけて組織的に進めらた学校もある。
                          
    活動の結果、
      正月の風習に関して、門松、しめ飾り、初詣、あそび
      正月の料理に関して、おせち料理、雑煮、餅のできるまで
      正月の行ことに関して、小山田の鬼火たき(鹿児島)、伝統的行こと「マキ
                          マキ」(長野)、箱根駅伝
      正月の気候に関して、冬のくらし


    などが収集され、画像で紹介できるようにした。これらの情報は、すでに
  WWWを利用して公開されており、広く学校教育で利用可能となっている。短
  期間の活動ではあったが、各校で精力的な取材活動が進められた。

    授業実践は、学習者による調査活動が行われ、結果をHTML化したが、参加
  他校の資料を活用するまでには至らなかった。ただ、資料閲覧後の課題意識
  をもとに、電子メールでの交流へと発展できたことは、資料の授業活用の有
  効な方法として検討でき、本企画の成果の一つである。

    課題としては、運用に関するものが指摘される。

    本企画では、立ち上がりが遅かったために、活動初期の教師らの意思統一
  が充分に行われなかったことである。このため、充分に活動方針等を練るこ
  とができず、中盤で活動の停滞を引き起こしてしまった。また、対面での会
  合を開催できなかったために、参加者相互の交流が積極的に進めにくかった
  といえる。

    そのため、活動期間に余裕をもち、活動初期において必ず対面会議を開き、
  活動方針について充分に練ることが不可欠であると考える。

4.3.2  素材収集について

    収集された素材は、今後の授業での活用が可能なものが多く、社会科、生
  活科、国語科、家庭科での活用が可能であろう。本企画では、実際の授業実
  践を行うには至らなかったため、授業実践を通しての評価は今後の課題であ
  る。

    収集された写真のディジタル化とHTML化、およびデータベース化について
  は幾つかの課題が明かとなった。

  1)提供情報の入力体制

    ディジタル化には殆どの学校がスキャナを利用したが、作業の繁雑さ、画
  像品質の低さ、などの点が問題となり活動意欲を低下させた。HTML化におい
  ても簡便なツールが不足し作業に対する抵抗がみられた。

    写真撮影までは教師らが可能であり、その後の処理については関連機関の
  協力を得るなど組織的な協力が必要であり、このための体制づくりが重要と
  なろう。

  2)教育関連機関の組織化

    また、データベース化については、殆どの参加校で教育素材の提供という
  視点より、図鑑等の教材の提供を重視した。これは、データベース化の期間
  が短かったことにもよるが、授業での活用意識が他の教師らへの情報提供と
  いうボランティア的な意識を上回ることに起因すると考えられる。教師にとっ
  ては目の前の子どもたちのためにと活動することは当然であり、教育素材の
  提供については学校ではなく別の教育関連機関が担当すべき内容であると考
  えられる。

    この点において、教育センターや教育研究所等の位置付けが重要となると
  思われる。100校プロジェクトではこれらの組織の参加が少なく、情報提供
  という視点からの活動が進めにくいのではないだろうか。

4.3.3  素材流通のしくみ

    素材流通に関しては、参加各校による分散型の蓄積を進め、他校からのイ
  ンターネットでの利用を可能としてきており、基本的な流通利用が進められ
  るようになった。

    今後の継続、発展的な利用を想定した場合、以下の点について検討する必
  要がある。

  1)分散型と集中型の蓄積

    今回収集され、提供される教材・教育素材は、基本的に各校のサーバーに
  分散させて蓄積した。このような情報は、今後、作成者らにより改善される
  可能性もあり、改善された結果を流通に即座に反映させるためにも、分散し
  て蓄積しておくことが望ましいと考えられる。とくに、教材として構成され
  る教育資料においてこのような分散配置は重要となろう。教育素材の面から
  は、改善はほとんど行われることがないと予測され、集中管理した方がデー
  タベース化が容易であると考えられる。内容に応じた蓄積方法を選択する必
  要があろう。

  2)総合的な索引

    本企画では、参加グループ内での利用を前提として情報の提供を進めたが、
  このような活動が各地で進められることにより、蓄積された情報の総合的な
  案内情報を構築し、索引を作成する仕組みが提供されることが必要となる。

    すでに100校プロジェクト参加校などでは、インターネットの教材として
  利用可能な情報も提供されるようになっており、今後の増加が予測される。
  このような情報の検索は、一般にインターネットで提供されるWWWのイエロー
  ページやサーチエンジンなどを利用しても可能であるが、学校教育での利用
  を前提に索引語などを付加して案内情報を構築する必要がある。岐阜大学で
  は、すでにこのような利用を想定して利用者からの登録を可能とする
  「WebREC (http://www.crdc.gifu-u.ac.jp/WebREC/)」を用意してきた。教
  材を開発した教師がWebRECに登録作業をすれば、即座に他の教師らが検索可
  能となる。

    教師らの教材開発の結果を広く流通可能とするために、このようなシステ
  ムに登録する習慣をつける必要があろう。

  3)情報提供と利用

    情報の提供とその利用については、著作権や肖像権などの諸問題との関連
  を今後、検討する必要がある。

    教材開発を担当する教師は、その教師が指導する授業においては書籍等の
  資料の複製利用が可能であるが、他の教師らへの提供については問題がある。
  インターネットの学校教育への普及は、教材の共有という側面をもっており、
  本企画のような活動でも問題となるところである。

    また、教育素材の提供は二次的な加工を前提に提供されることとなり、著
  作者の権利をどのように保護するかも重要な課題であろう。当面は、これら
  の活動はいわばボランティアであるが、最低限、著作者の氏名等を明示して
  おくことは重要だと考える。

4.3.4  授業での活用

    本企画では、授業での活用は時間の関係から実施することは難しかったた
  め、充分な検討資料がなく、今後の課題としたい。

    しかし、生活科の実践では、子どもたちが資料の収集活動に参加し、蓄積
  された資料を調べることで問題意識を持たせることができた。さらに、この
  問題を解決するために、電子メールでの質問を行っている。この授業実践か
  ら、本企画で提供された各地の情報を調べることで、学習者の問題意識を明
  確にすることは可能であると考える。この問題意識を解決する手段として電
  子メールを利用でき、各地の様子を尋ねることは可能であろう。さらに、問
  題意識をもとに地元の様子を調査する学習活動も展開できると考える。

    また、学習者が問題意識を持ちやすいように、各地の資料を利用した教材
  開発を教師が行うことも必要となろう。

    おもに、今回の資料は、このような学習の導入段階での利用に適すると考
  えている。問題解決の資料とするとためには、さらに詳細な調査活動が必要
  となると思われる。