3.テーマ「有識者との意見交換」の実施

3.1 計画立案
3.1.1 ねらい
ゴミ問題を中心にした環境問題についてのリアルタイム会議を行う準備を通じて、問題に対する認識を深める。短い時間の集中した会議の中で、相手にどのように自分の意図を伝えるかを工夫する力をつける。
また、ほかの発言者の意見を理解し、それに対する自分の考えを表現する場とすることにより、コミュニケーション能力を高める。
事前準備の中でテーマの問題を調べていくことを通じて、調査方法も身につける。
企画実施の中で、メール・ニュースなどを使った会議からビデオ会議まで、いろいろな形態のネットワーク会議の教育における効果及び課題を探っていく。


3.1.2 計画
(1) 計画概要

実施計画の概要を次に示す。






(2)スケジュール

準備(9月〜1月)
* 研究グループの設置に向けての打ち合わせ
* 意見交換用各種サーバ準備(情報基盤センター)
* 募集案内要項検討
* 研究グループ設置
* ホームページ、メーリングリスト作成
* CU−SeeMeの準備
* 各参加校のマシン、回線状況調査
* 実施日程調整
* 実施内容検討

意見交換(1月〜2月)
* ゴミリスのソフトウェア配布
* 意見交換用各種サーバメンテナンス
* CU−SeeMeを利用したビデオ意見交換会議実施
* メーリングリストを利用した意見交換の実施
* 実施状況をWWWで発信

まとめ・評価(2月〜3月中旬)
* アンケート実施
* アンケート分析
* 研究グループによる評価
* 報告書作成


3.1.3 研究グループとの打ち合わせ

企画のついて、研究グループと事前打ち合わせを含めて3回打ち合わせを行った。また、参加校の先生方を含めた電話会議を1回行った

(1)事前打ち合わせ
1995年10月17日(火)に研究グループリーダ(国立教育研究所 教育ソフト研究開発室 堀口 秀嗣先生)との打ち合わせを行い、主に企画説明、研究グループメンバ及びスケジュールについての検討を行った。
議題
1. 今回の企画に関する説明/理解
2. カンファレンス/「有識者著名人との意見交換」実施計画(案)説明/理解
3. 研究グループメンバー
4. 懸案事項

討議の結果、次のように決定した。
1. 研究グループメンバー
* 南山大学 経営学部情報管理学科 後藤 邦夫先生
* 後藤先生からご紹介いただく先生
* 十文字学園女子短期大学 教養学部 井口 磯夫先生
* 十文字学園女子短期大学 教養学部 安達 一寿先生
2. 第1回研究グループ打ち合わせ開催について
* 十文字学園女子短期大学にて1995年10月21日(土)
(後藤先生 他1名は別途打ち合わせ)
3. テーマ/有識者については研究グループで検討
4. 打ち合わせまでに各先生方に資料送付(NECソフトウェア)
5. 懸案事項
* CU−SeeMeをISDN64で使用できるか
* 学校の授業とどう絡めていくか
* リアルタイム会議により内容が浅くならないよう方策を練る
* テーマについて
* スケジュールについて


(2)第1回打ち合わせ
1995年10月21日に第1回目研究グループの打ち合わせを行った。この時には、企画概要に関しての説明及び検討を行った。

議題
1. 実施スケジュール
2. 役割分担
(CEC,研究グループ、情報基盤センター、参加校、事務局)
3. 実現方法(CU−SeeMe、メール)
4. テーマ
5. その他

討議の結果、次のように決定した。

1. 研究グループメンバー
* 南山大学 経営学部情報管理学科 後藤 邦夫先生(了解済み)
* 南山大学 後藤先生からご紹介いただく先生
* 十文字学園女子短期大学 教養学部 井口 磯夫先生(了解済み)
* 十文字学園女子短期大学 教養学部 安達 一寿先生(了解済み)
2. 有識者は科学技術庁長官を予定しているが、テーマによって変更有り
3. Mboneなどで討論状況を発信してはどうか
4. 懸案事項
* CU−SeeMeをISDN64で使用するのは難
* キーボード入力する方法はどうか?
* 学校の授業とどう絡めていくか
* リアルタイム会議により、内容が浅くならないよう方策を練る
* Cu−SeeMeでは議事が消えてしまう。
* リアルタイムにアンケート集計ができないか?
5. あらかじめ電子メールで、議論を深めておきCU−SeeMeで実際に討論
最終的に電子メールでまとめる
6. 「ゴミリス」というソフトを使用し、討論者の体験を合わせ、各地での違いも
認識してから、討論を行う。
→テーマ:「ゴミ問題」
→ソフト使用承諾は堀口先生に取っていただく
→ソフトは中学生仕様/内容はテキストファイルで、変更可能
→「ゴミ問題」を扱うなら、有識者は島根大学のヒガ先生なども有望

(3)第2回打ち合わせ
1995年11月22日に第2回目研究グループの打ち合わせを行った。この時には、企画テーマ及びシステムに関しての説明及び検討を行った。

議題
1. 自己紹介
2. 事務局より企画現状説明
3. テーマについて検討(下記参照)
4. システムについて検討(下記参照)

討議の結果、次のように決定した。
1. 全体の流れ
(事務局でまとめて研究Gのメンバの方に詳細を検討していただく)
* 第1回CU−SeeMe/各校でゴミリス使用(標準)。
* 自分の地域のゴミリステキスト作成。
* 各地のゴミリステキストを使ってみる。
* 第2回CU−SeeMe/有識者との意見交換全体の流れ
2. リフレクターなどの設定
3. 接続先NOCの決定。
4. 配置のコーディネート。(接続先NOCの決定や配置のコーディネートなどに
ついては後藤先生と中山先生にご協力いただく)
5. 12月末に実験(参加できる先生に協力をお願いする)。
6. 基盤センター窓口は久保田氏(三菱総合研究所)。
7. 企画の情報発信
* WWWサーバで情報発信できるように準備する(事務局)
8. 懸案事項
* 画像は途切れても何とかなるが、音声が途切れるとリアルタイムに話
ができない。
* NTTパーティラインのサポートを受けられないか事務局から働きかける。
* チャットの併用を考える。
* ゴミリスが参加校で使えるか。
* 参加校の設備状況、参加可能時間帯について調査を行う(事務局)。
9. その他
* 意見交換状況を何らかの方法でレコードしておく。

(4) 第1回各参加校および研究グループ打ち合わせ
1996年2月2日に第1回目各参加校および研究グループの打ち合わせを電話会議で行った。この時には、自己紹介および企画の進め方と質問に関しての説明及び検討を行った。

議題
1. 自己紹介
2. インターネットCU−SeeMe関連で困っていること
3. ゴミリスをやってみての印象
4. 進め方についてのご意見
5. 実施日時の件

討議の結果、次のように決定した。

1. CU-SeeMe 関連で困っていること。
* 機器を借りたがまだネットワークに接続できない状態である。
事務局側で対応する。
2. 接続テスト
3校済み
3. 今後のスケジュールにおいて行なって欲しいこと。
* ゴミリスの練習を行なうこと。各地域でのゴミの収集状況について調査を終
っていてほしい。
* ゴミ処理場での処理の方法を対象として作られているが、家庭でどのように
処理するかという方法も考えられる。
* どういうゴミを落すかということを来週の火曜日までには電子メールで連
絡するので調査をして頂きたい。



3.2 実施
3.2.1 実施経過

実施経過を以下に示す。

運営日付内容対象
準備10/17研究グループリーダとの事前打ち合わせリーダ
事務局
計画10/21第1回研究グループとの打ち合わせ研究グループ
事務局
参加校募集10/31企画案内(概要)
mado-ikenkoukan@cec.or.jp
aimiteno
PC-VAN
NiftyServe
実施11/22第2回研究グループとの打ち合わせ研究グループ
事務局
11/23ホームページ公開
11/29三菱総研との打ち合わせ
(他企画との調整)
CEC
事務局
12/5各参加校の環境アンケート実施各参加校
意見交換
準備
1/31ゴミリスの送付
ビデオ会議
テスト
2/1CU−SeeMeテスト開始各参加校
2/2各参加校および研究グループとの打ち合わせ
(電話会議)
各参加校
研究グループ
事務局
2/6意見交換会議に向けての事前調査のお願い各参加校
意見交換
実施
2/15第1回有識者との意見交換ビデオ会議
開催
各参加校
研究グループ
事務局
意見交換
まとめ
2/28第2回有識者との意見交換ビデオ会議各参加校
研究グループ
事務局
評価3/2アンケート送付各参加校
3/8アンケート回収各参加校
まとめ3/13報告書の提出事務局


3.2.2 実施経緯
(1)参加校の募集
<窓口の設置>

参加申し込み窓口と問い合わせ用窓口の設置を行った。窓口は電子メールのみとし、参加申込みと問い合わせはメールのサブジェクトで分けた。

mado-ikenkoukan@cec.or.jp
参加申込み Subject:sanka-ikenkoukan
問い合わせ Subject:Q-ikenkoukan

窓口はメーリングリストとし、事務局メンバに転送される仕組みとした。
事務局から参加校宛に返信メールを出す場合は、写しメールを窓口宛てに出すようにした。



<概要案内>

10月31日に企画案内を掲載し、企画への参加校を募集した。この時点では企画の詳細が決定していなかったが、参加校の応募準備期間をなるべく長く取り応募しやすくするために、概要案内とした。参加を希望した学校には後日詳細を送るという方法をとった。案内は次のところに掲載した。

* 100校プロジェクトメーリングリストaimiteno@woo.mir.co.jp
* Nifty Serve(FCAI/7番電子会議室)
* PC-VAN(STS/職員室)
* CECホームページ(http://www.cec.or.jp/CEC/)

案内掲載後に次の15校より参加希望があった。
学校名
1.北海道旭川凌雲高等学校
2.北海道札幌新川高等学校
3.千葉県東金女子高等学校
4.東京都立新宿山吹高等学校
5.石川県小松工業高校
6.愛知県名古屋市立西陵商業高校
7.愛媛県立新居浜工業高等学校
8.愛媛県松山東雲中・高等学校
9.奈良県立高取高等学校
10.三重大学教育学部附属中学校
11.兵庫県神戸市立摩耶兵庫高等学校
12.広島大学附属福山中・高等学校
13.島根県簸川郡大社町立大社中学校
14.熊本県立小川工業高等学校
15.宮崎県宮崎大学教育学部附属小学校


(2)メーリングリスト
企画の事務連絡、意見交換、情報交換を行うため、メーリングリストを設置する必要があり、研究グループと参加校を登録した3つのメーリングリストを用意した。
kenkyu-ikenkoukan@cec.or.jp
研究グループおよび事務局連絡用
kentou-ikenkoukan@cec.or.jp
各参加校の先生方+上記MLメンバ
kankyou-ikenkoukan@cec.or.jp
各参加校の生徒+上記MLメンバ

各メーリングリストの説明
以下のメーリングリストは研究グループと事務局の連絡に利用した。
WWW化して過去のメールを参照できるように設定した。

kenkyu-ikenkoukan@cec.or.jp
http://www.cec.or.jp/~list/kenkyu-ikenkoukan/maillist.html
(過去のメール参照用アドレス)
登録メンバ
* 研究グループ
* 「有識者との意見交換」事務局


以下のメーリングリストでは、主に事務局から参加校への連絡を行った。全参加校が加入することを前提とし、企画への参加希望のメールが届いた際に、事務局からの返信メールで、メーリングリストに登録していただくように依頼した。

kentou-ikenkoukan@cec.or.jp
http://www.cec.or.jp/~list/kentou-ikenkoukan/maillist.html
(過去のメール参照用アドレス)
登録メンバ
* 参加校
* 研究グループ
* 「有識者との意見交換」事務局(NECソフトウェア)

参加校用メーリングリストへのメンバ登録は自動処理を行った。

kentou-ikenkoukan-request@cec.or.jp
自動登録 Subject:subscribe
自動脱退 Subject:unsubscribe


以下のメーリングリストでは、主に参加校生徒の意見交換を行った。全参加校から、登録する生徒アドレスを募集して事務局側で一括登録した。

kankyou-ikenkoukan@cec.or.jp
http://www.cec.or.jp/~list/kankyou-ikenkoukan/maillist.html
(過去のメール参照用アドレス)
登録メンバ
* 参加校の生徒
* 参加校
* 研究グループ
* 「有識者との意見交換」事務局

(3)アンケートの実施
意見交換テーマを決定するにあたり、テーマについての簡単なアンケートを企画参加募集時に参加校に対して行った。その回答を参考に、最終的には研究グループ側で下記の事項に留意し、テーマを検討を行った。
テーマ検討では以下の点などに留意して検討を進めた。
* 参加校の希望
* 参加のしやすさ
* 興味関心の高さ
検討の結果以下のテーマに決定した。
* 意見交換テーマ
「ゴミ問題を中心にした環境問題について」
* 有識者
市川 智史先生(鳴門教育大学 学校教育研究センター)
* 内容
自作ゲームソフト・ゴミリスを使い、各地域のゴミの分別方法を考える。各学校で事前に分別方法を調査し、ゲームに仕立てて競い合う。その後、各地域の分別方法の違いを明らかにして、ゴミ問題についての意見交換を進める。
意見交換では、CU−SeeMeを使ったビデオ会議を行い、本格的な質問や意見のやりとりはメーリングリストを使用する。メーリングリストのやりとりはWWWサーバで過去のメールを参照できるようにする。

(4)ホームページ開設
11月23日に情報基盤センターにホームページを開設した。情報としては下記のものを掲載し、意見交換中のホームグラウンドとした。
http://www.cec.or.jp/es/kyouiku/100/project/prjlist/conference/ikenkouk.html
* 討論メール参照へのリンク
* 参加校の一覧
* 参加校ホームページへのリンク
* 研究グループメンバの一覧
* 研究グループメンバホームページへのリンク
* 参加募集案内文
* その他

(5)CU−SeeMeによる意見交換の準備およびテスト
1. 準備
各参加校のマシンや回線環境の簡単なアンケートを行い、参加校の現状を把握した。環境的に機材不足などの問題がある学校があったため、マシンを含めた機材の貸し出しを行った。また、マシンによる問題のため、画像の送信を断念し、受信のみで参加する学校もあった。
現状をふまえて意見交換をビデオ会議(CU−SeeMe)で行うため、研究グループの後藤先生、中山先生にご助力を願い、参加校にとって最適なリフレクター接続実現した。
今回は、参加校数が多く全国に散らばっていたため、リフレクターを多段接続した。技術的な問題などにより、今回は親リフレクターと複数の子リフレクターを用意し受信時は子
リフレクターに接続し、送信時には親リフレクターに繋ぎ変えるという方法を採った。ビデオ画像、音声、テキスト(チャット)を利用して行うこととした。
また音声については、CU−SeeMeだけでは現状では無理なことがわかっていたのでNTTの電話会議サービスをバックアップとして利用することとした。

=======================================
Reflector配置プラン
--------------------------------------
利用リフレクタリスト(相互接続は省略)
--------------------------------
番号 IPアドレス FQDN 地域 接続学校
リフレクタ担当者
-------------------------------------------------------------------------
R0: 192.50.56.1 nugw.gw.nagoya-u.ac.jp 全国 (送信時)
中山 雅哉 (nakayama@nc.u-tokyo.ac.jp) 東海 10
R1: 192.31.121.94 k12.jain.ad.jp 北海道 1,2
中山 雅哉 (nakayama@nc.u-tokyo.ac.jp) 東京(TRAIN) 3,4
石川 5
R2: 133.29.1.112 x-ray.iq.nanzan-u.ac.jp 東海(TCP-NET) 6
後藤 邦夫 (goto@iq.nanzan-u.ac.jp)
R3: 192.50.15.21 reflector.karrn.ad.jp 九州(KARRN) 14,15
河北 隆生 (tkawakit@kmt-iri.go.jp)
R4: 202.15.112.50 aki.csi.ad.jp 中国四国(CSI) 7,8,12,13
染岡慎一 (someoka@yasuda-u.ac.jp)
R5: 133.42.48.3 ns.wakayama-u.ac.jp 関西(ORIONS) 9,11
渡辺 健次 (watanabe@eco.wakayama-u.ac.jp)
=======================================================参加校
* 数字は、最後に添付する参加学校に対応しています。
* WNOC-XXX は、WIDE の Network Operation Center の略です。
* KARRN, CSI, ORIONS, TRAIN, TCP-NET は地域ネットワークの略称です。
* IIJ, SPIN, BEKKOAME, SINET は広域のサービスプロバイダだと思って下さい。
* JAIST は大学名です。
===================================
1.北海道旭川凌雲高等学校
2.北海道札幌新川高等学校
3.千葉県東金女子高等学校
4.東京都立新宿山吹高等学校
5.石川県小松工業高校
6.愛知県名古屋市立西陵商業高校
7.愛媛県立新居浜工業高等学校
8.愛媛県松山東雲中・高等学校
9.奈良県立高取高等学校
10.三重大学教育学部附属中学校
11.兵庫県神戸市立摩耶兵庫高等学校
12.広島大学附属福山中・高等学校
13.島根県簸川郡大社町立大社中学校
14.熊本県立小川工業高等学校
15.宮崎県宮崎大学教育学部附属小学校
============

2. テスト
CU−SeeMeの準備後、2月1日〜8日までの間各参加校に実際にテストを行ってもらった。本番がスムーズに行えるように、リフレクターのCU−SeeMeの操作に慣れる目的も合わせていた。テスト結果はレポートとしてメールで送付してもらい問題がないかチェックした。

(6)CU−SeeMeによる意見交換の実施
意見交換は事前調査を含め96年1月31日〜2月28日までの間実施した。
* 1月31日 ゴミリスを送付
* 2月 2日 各参加校および研究グループの打ち合わせ
* 2月 6日 環境事前調査をお願い
* 2月15日 第1回有識者との意見交換ビデオ会議開催
メーリングリストでの意見交換開始
* 2月28日 第2回有識者との意見交換ビデオ会議開催
1. 第1回有識者との意見交換ビデオ会議
CU−SeeMe会議詳細計画
* 概略
考慮すべきこと、考慮したこと:
@有識者であることをどのようにPRするか?
A全国であることをどのように生かすか?
Bオンラインであることの意味は何か?
C有識者が各分野の専門家であることをどのように生かすか?
D有識者であることをどのようにPRするか?
ショートレクチャの時間を用意しましたので、その時間を使ってください。
ただし、児童生徒にわかりやすいように話をしてください。
E全国であることをどのように生かすか?
ゴミ問題、環境問題で、地域の違いを話したり、いろいろな考え方があることを話す。
Fオンラインであることの意味は何か?
ショートレクチャを聞いて、それに応答する。
児童生徒が直接全国の人に話をする。
意見の往復がある。
G有識者が各分野の専門家であることをどのように生かすか?
ショートレクチャで、少し広い角度から話をしてもらう。
その場で出る質問に答えてもらう。
H児童生徒にはどのように見えるのか?
いろいろな専門家の話を緊張感を持って聞いたり、全国の児童生徒の話を聞いて自分たちとの考え方やアイデアの違いを意識したり、そのような人たちに自分の考えをわかりやすく発言する。

------------------------------------------------------------------------------
2月15日(木)16:30〜17:37
------------------------------------------------------------------------------
柱1:ゴミリスコンテスト
柱2:ゴミ問題+環境問題の意見交換 自分の考えを述べる 人の考えを聞く
柱4:ゴミリスとアイデア募集 楽しいアイデアを紹介する
柱3:ネットワークと学習 現在と未来 話を聞いて考えを持つ
------------------------------------------------------------------------------
学校:
CUSMで参加の学校: 6校予定
受信と音声での参加校: 8校予定
------------------------------------------------------------------------------
有識者:
後藤先生 → 南山大学(Cu−SeeMe担当)
中山先生 → 東大 ( 〃 )
堀口先生 → 東大 (有識者、司会)
安達先生 → 〃 (司会補助、有識者役)
市川先生 → 鳴門教育大(有識者役)
村松先生 → 電話で参加

CU−SeeMe会議議事概要

96.2.15(木)16:30〜
<参加>
有識者 :市川先生(鳴門教育大)
ゴミリス作者:村松先生(長野県原村原中学校)

参加校:北海道:旭川陵雲高校(奥村先生 CUSM)
参加校:北海道:札幌新川高校(吉岡先生 CUSM/TEL 先生のみ)
参加校:千葉 :東金女子高校(高橋先生 CUSM/TEL 先生のみ)
参加校:東京 :新宿山吹高校(榎本先生 CUSM/TEL)
参加校:石川 :小松工業高校(平木先生 CUSM見るだけ/TEL)
参加校:愛知 :西陵商業高校(影戸先生 CUSM/TEL)
参加校:愛媛 :新居浜高校 (宇佐見先生CUSM/TEL)
参加校:奈良 :高取高校 (杉崎先生 CUSM/TEL)
参加校:三重 :三重大付属中(長谷川先生CUSM/TEL)
参加校:広島 :福山中・高校(平賀先生 CUSM/TEL)
参加校:兵庫 :摩耶兵庫高校(佐竹先生 CUSM/TEL 先生のみ)
参加校:熊本 :小川工業高校(岩永先生 CUSM/TEL)

研究G:堀口先生 (国教研)
研究G:後藤先生 (愛知:南山大 CUSM/TEL)
研究G:中山先生 (東京:東大 CUSM/TEL)
研究G:安達先生 (十文字短大)
○堀口先生と安達先生は東大で参加


−−−−−−−−−−−−−16:40開始
司会:堀口先生

(1)ゴミリスコンテスト(土浦版)
参加校:熊本 :小川工業高校340点 ←1位

(2)ゴミ問題について−−市川先生のお話−−

(3)ゴミリスについて−−制作者村松氏のお話−−
家庭科で使うため作成した。衛生センター所長としてのゲームをつくる構想だった。データをなおすといろんなものに使える。

(4)インターネットについて−−後藤先生のお話−−
今回は2つのリフレクター切り替えが難しい
CUSM+音声はセンが細いため送りすぎると渋滞する
将来後1〜2年で解消されそうである
インターネットは使い方が大切である


(5)まとめ−−堀口先生−−
○各地のゴミ処理を調べてゲームにしてください。
○もう少しMLで議論を深めましょう。
○もう1度CUSMで話し合いをしましょう
−−−−−−−−−−−−−17:47終了

2.第2回有識者との意見交換ビデオ会議 CU−SeeMe会議詳細計画
* 概略
考慮すべきこと,考慮したこと:
(1)前回からの続き(MLも含む)で環境問題の議論を深める。
(2)地域差のあるごみ収集の状況をゴミリスで交換する。
(できたら事前に各地域版ゴミリスを交換できればいいのですが,
時間的に厳しいかもしれません−>まず難しい)
(3)インターネットへの関心を高める。
(いろいろなものを道具として活用できればいいのですが...)
------------------------------------------------------------------------------
2月28日(水)16:30〜17:30
------------------------------------------------------------------------------
柱1:いろいろなゴミリスをやってみて
柱2:ゴミ問題,環境問題の意見交換 自分で調べたこと,新たな議論を深める
柱3:インターネット 話を聞いて考えを持つ
------------------------------------------------------------------------------
学校:(2/21現在)
先生・生徒 6校
先生のみ 3校
------------------------------------------------------------------------------
有識者:
後藤先生 → 南山大学(Cu−SeeMe担当,有識者役)
中山先生 → 東大 ( 〃 ,有識者役)
堀口先生 → 東大 (有識者役)
井口先生 → 〃 (司会,有識者役)
安達先生 → 〃 (司会補助,有識者役)
市川先生 → 鳴門教育大(有識者役)
村松先生 → 電話で参加してもらう(可能かどうか、未確認)

CU−SeeMe会議議事概要

96.2.28(水)16:30〜
<参加>
有識者 :市川先生(鳴門教育大)

参加校:北海道:旭川陵雲高校(奥村先生 CUSM/TEL)
参加校:北海道:札幌新川高校(吉岡先生 CUSM/TEL 先生のみ)
参加校:千葉 :東金女子高校(高橋先生 CUSM/TEL)
参加校:東京 :新宿山吹高校(榎本先生 CUSM/TEL)
参加校:石川 :小松工業高校(平木先生 CUSM見るだけ/TEL)
参加校:愛媛 :新居浜高校 (宇佐見先生CUSM/TEL)
参加校:奈良 :高取高校 (杉崎先生 CUSM/TEL)
参加校:広島 :福山中・高校(平賀先生 CUSM/TEL)
参加校:島根 :大社中学校 (矢田先生 CUSM見るだけ/TEL)
参加校:熊本 :小川工業高校(岩永先生 CUSM/TEL)

研究G:堀口先生 (国教研)
研究G:後藤先生 (愛知:南山大 CUSM/TEL)
研究G:中山先生 (東京:東大 CUSM/TEL)
研究G:井口先生 (十文字短大)
研究G:安達先生 (十文字短大)
○堀口先生と井口先生と安達先生は東大で参加
−−−−−−−−−−−−−16:30開始
司会:井口先生

(1)カメラを通して学校紹介(送信できる学校のみ)

(2)ゴミリスの感想
<市川先生のお話>

(3)安達先生からクイズ−−回答はTALK WINDOWSにて
<安達先生のお話>
<市川先生のお話>
<質問>
<市川先生のお話>
<質問>
<市川先生のお話>

(4)インターネットについて
<後藤先生のお話>
<市川先生のお話>

(5)まとめ−−井口先生−−

−−−−−−−−−−−−−17:50終了

(7) アンケート

<発信>
企画実施後、メールでアンケートを各参加校宛に送信した。
* アンケートメール発送 96年3月2日
* アンケート回収締め切り 96年3月8日

アンケートは記入者に会わせて2種類作成した。

* 教師用 :担当教官が記入
* 参加者用 :参加者(生徒)が記入

<回収状況>



* 教師用


北海道旭川凌雲高等学校 1通
北海道札幌新川高等学校 1通
千葉県東金女子高等学校 1通
東京都立新宿山吹高等学校 1通
(遅れてきたため集計はしていない)
石川県小松工業高校 1通
(遅れてきたため集計はしていない)
奈良県立高取高等学校 1通
三重大学教育学部附属中学校 1通
広島大学附属福山中・高等学校 1通
島根県簸川郡大社町立大社中学校 1通
合計 9通


(集計したのものは7通)



* 生徒用


千葉県東金女子高等学校 4通
石川県小松工業高校 8通
奈良県立高取高等学校 4通
三重大学教育学部附属中学校 1通
広島大学附属福山中・高等学校 4通
島根県簸川郡大社町立大社中学校 3通
合計 24通






3.2.3 実施結果と考察
(1)実施結果分析
1) メーリングリスト利用結果
本企画では,参加校(教師,生徒),研究グループ,事務局間の調整・情報交換にメーリングリストを活用した。
研究グループ,事務局,教師用メーリングリストでは,主として企画の調整や事務連絡事項がやりとりされた。意見交換実施に向けては,その準備から事後に至るまで様々な情報が飛び交う。メーリングリスト参加者間でコンセンサスが得られていれば,非常に有効な手段として利用できる。今回の問題点としては,到着するメールの時間差が大きく(最大で48時間程度),メーリングリスト内での議論がかみ合わない部分があったことがあげられる。これには時間的な余裕が必要であるが,技術的な問題が解決されれば,より一層の効果が期待できる。
生徒用メーリングリストでは,意見交換前の交流や事前学習,及び事後の発展を主な目的とした。生徒の側から自主的に利用することが望ましいが,メールアカウント(生徒個人のIDを持てない場合がある),電子メールに対する理解や習熟度(慣れ),及び学校での利用環境などの問題があり,十分には機能できなかった部分もある。しかし,やりとりされていた内容に関しては目的を満足させるものも多く,利用機会を保証することによって有効に利用できる可能性を得た。

2)教師用アンケートの分析
本企画での教師は,各学校でのコーディネータ的な役割を担っていた。その中では,学習に関する事項と技術的な事項への役割があり,ティームティーチング的な形態が取れると効果が期待できるという感想があった。
企画への参加は教師が主導となり関わる場合が多く,選択授業や有志を募って参加している。そのため事前調査などの実施にも時間的なばらつきが見られる。本企画自体が短期間で,しかも学校行事など日程的に厳しい時期でもあり,調整の難しさを垣間見ることができる。また本企画は同時刻に参加者が集う必要があり,結果として授業時間外の実施になっている。ただし,教科の中に位置づけて実施できた学校もあり,この場合は授業の流れも阻害することなく,効果的に実施ができたと思われる。
生徒の参加の様子に関しては,実施前後での明確な変容は見られないが,意欲を増す生徒もでてきている。単発的な企画ではあったので,継続的に実施できたときの生徒の変容を見ていく必要がある。また,生徒が意見を表現し発表する場面では,なかなか難しい場面も見られた。
教育的効果に関しては,ビデオ会議は映像・音声のリアルタイム性については肯定する意見が多いが,現状ではその品質が満足できる水準とは言い難い側面もあり,改善の余地を残している。有識者との意見交換については,専門家の話が聞けたり,日頃接することができないなどの理由から,生徒は真剣な態度で取り組むことができ,学習への意欲づけや視野が広がるなどの効果が指摘される。ただし,そのためにも事前事後の学習指導が重要になってくる。
企画の流れとしては,ただその場に集まって有識者の話を聞いて意見交換をするだけでなく,環境問題をテーマに各地域の違いを認識し,参加者同士の仲間意識や意欲を高揚させるため,ゲーム性のあるソフトを用い事前指導に活用した。こうしたエデュテイメント的な発想を取り込むことにより,より効果が上がったという感想が多い。
企画の実施については,時期的・時間的な問題が指摘されている。テーマの持ち方にもよるが,学校の実状にあわせて検討する必要がある。また開催方法についても,準備期間の確保や適切な参加校数規模について考慮すべき事項が指摘された。
企画全体としては,おおむね満足という回答が多いが,テーマの絞り込みに関して明確な方針が周知される必要がある。これは,学校種別によっても違いがあり,ある程度絞り込んだ方がより突っ込んだ議論が期待できる。

3)生徒用アンケートの分析
今回の企画は,特に学校種について制限を設けなかったため,中学・高校からの参加があった。参加校数は高校の方が多くなっていたが,異なる校種間で同じテーマについて意見交換をすることは,なかなか難しい側面を持ち合わせている。
参加した生徒には,自分の考えや意見を持ち,相手に対して主張をきちんと伝えることやお互いの意見の類似点や相違点を見いだし,より発展的に意見交換がされることなどが期待された。参加校数が多かったため,議事の進行は司会者(研究グループ)が行い,各校は順番に発言や意見を発表する形態をとった。
実際生徒のアンケートを見てみると,「自分の考えや意見をうまく説明できたか」という問いに関しては,大多数があまりできなかったとしている。その理由として,話す相手が見えないこと(生徒からは司会者,有識者,現在発言している学校のみが見える),話題の流れについていくことの難しさなどがあるとしている。実際初めての経験である生徒がほとんどで,慣れていないことや事前の準備が時間的に難しく,テーマに関して十分な検討ができなかったことが原因として考えられる。
ただし,再度このような企画に参加したいという要求は高く,こうした学習活動の機会を保証することが教育課題の1つになると考えられる。その時生徒の話題にしたい内容としては,お互いの学校に関すること(生徒会,行事),身の回りの話題,環境,宇宙,歴史,海外の生徒との交流などがあり,多岐に渡っている。生徒の自発的な活動から,このような企画が実現されることを期待したい。



3.3 教育面の効果・課題に関する調査
3.3.1 広域ネットワークを利用した意見交換の教育的面の成果と課題及び展望
(1)有識者との意見交換を実施してみて(環境分野からの分析)
今回の有識者との意見交換プロジェクトの内容がごみ問題,環境問題であったので,環境教育・学習を主たる研究分野としている私は,有識者という立場で参加した。
途中からプロジェクトに参加する形となったため,十分な役割を果たせなかったと思うが,簡単に感想を記しておきたい。
まず,率直な感想は,「時間が短かった」ということである。生徒に何らかの課題(話題)を提供してから,その問いかけに対して,生徒が自分(達)の意見を準備する時間が非常に短かった。
ゴミリスというゲームを共通の土台として出発したという点は評価に値する。
また,ゴミリスをやってみた感想や,ごみの分別の仕方や資源ごみの回収の仕方などが「土浦版ゴミリス」とどう異なっているかを述べあうところまでは,計画どおりでまずまずの成功であったと思う。問題はそこから先の話の展開である。
例えば,ラジオ番組で「子ども電話相談室」というのがある。子どもたちが放送局に電話をかけて,素朴な疑問を投げかけ,専門家が回答するという番組である。正確に計ったことはないが,1人の質問に対して,数分〜10分程度の時間を要している。
生徒の質問に有識者役の人が回答する,あるいは逆に有識者役や司会役の人からの問いかけに生徒が回答するためには,それ相応の時間が必要であろう。今回の実践では,こうした時間的ゆとりがほとんどなかったのではないだろうか。
時間的なゆとりをうまく作れなかった要因は,意見交換会を「事前に提供された課題(話題)に対する学習成果や意見を発表する場」と位置づけるのか,「その場で提供される課題(話題)について話し合う場」と位置づけるのかが,明確でなかったためではないかという印象を持つ。有識者の役割が,課題(話題)提供に主眼があるのか,学習成果等へのコメントや情報提供に主眼があるのかが不明瞭であったように感じる。
意見交換会を2回企画したのであるから,1回目は「ゴミリス」について,生徒が意見を述べあうだけに終始し,有識者は最後に若干のコメントと,次にむけた活動(学習)課題を提供する程度に留めた方が良かったのではなかろうか。そして,1回目と2回目の間に,何らかの生徒の学習活動を促し,2回目は,その成果を発表するとともに,生徒から他校の生徒に対して質問をさせるように仕向けた方がよかったのではなかろうか。
有識者役の当日の役割は,2〜3分の簡単なレクチャー程度にして,あとは黒子的に,チャット・ウインドウを活用して,その場で答えられる質問には回答するとか,情報を提供するという程度にした方がやりやすかったように感じる。
私自身がCUSMを使ったコミュニケーションになれていないせいかも知れないが,生徒の反応が十分に見えない中で,今回有識者役に与えられた役回りは,自分の話が,生徒の興味関心や疑問からはずれて上滑りしているのではないかという不安感を払拭し得ないものであった。

(2)学習ツール「ゴミリス」の使用に対する考察
ゴミリスは元々中学校の家庭科で、ゴミの出し方の授業のために開発したツールである。テレビゲームのテトリス風に、上から落ちてくるゴミを処理先に誘導して得点を競い合う中で、自然とその地域であったゴミの分別方法に気が付いていく仕組みになっている。
各参加校のアンケート結果を見ても、楽しかった、面白かったという意見が多く、概ね好評であり、ゴミリスの持つゲーム性が受け入れられたようである。ゴミの問題に楽しく入っていくことができた、ということは環境教育への興味付け、意識付けの意味でも重要なのではないかと考えられる。また同一のデータで一斉に行うコンテスト形式もビデオ会議と併用されたことにより、全国各地の参加校が話題を共通化したり、仲間意識を持たせることがある程度できたといえる。不十分な面は多いにせよ、今回のようなビデオ会議でなければできにくい方法であった。これは大きな成果であると考えられる。
またゴミリスではデータがテキスト形式で記述されており、ワープロ等で地域ごとの分別の仕方、あるいは栄養素、経済、単語などゴミと全く違った分野でも利用が可能になってくる。しかし今回オリジナルのデータ作成まではできなかった。まだワープロでデータを変更するのは手間がかかり、手軽にできるという段階になっていない。今後データ作成ツールを改良し、生徒がオリジナルデータを簡単に作成できるようにする必要があると考えられる。こうしたツールができればより利用範囲、活用法も広がるであろう。
ツール開発の面から考えると第1回の会議の中では参加校の生徒より文字でなく絵が落ちてくるものとか対戦型にしてほしいなどユニークなアイデアも引き出すことができた。時間の関係で作者と生徒の対話のみになり、十分掘り下げられなかったが、ビデオ会議の中で各校のアイデア交換などができれば、さらに深められたと考えられる。今後の学習ソフトの開発方法としても面白い方向ではないだろうか。今回出されたアイデアや要望などを取り入れながら、ゴミリスを有効な学習ツールに発展させ、学校教育に役立てることも考えていきたい。その際もネットワーク上での意見交換、共同開発などが有効な手段になりえるであろうと考えられる。
全体的には、参加校から指摘もあったが、短時間の中で環境問題とネットワークと2つの話題があったために、1つ1つを深めきれなかった面もある。議論を絞りこめば環境問題についてももっと深められ、活発な意見交換ができたように感じる。しかしお互いに遠く離れている学校同士がネットワークで同時に接続され、共通のツールを体験し、共通の話題で会議ができたことは今回のような企画でなければできないことであった。
その意味では画期的な試みの第一歩といえるのではないだろうか。この試みには多くの可能性があり、今後の発展に大いに期待したい。


(3)教育面の成果
最大の成果は,授業が開始されてから時間が経過するに従って参加者の気持ちが緊密に連結し,同じ教室で議論しているような雰囲気になってくることが分かったことである。北海道から九州まで全国に散らばった参加校の生徒同士が同じテーマを議論し,意見や疑問を出し合うことができる,有識者が適切な応答をすることによってさらに議論に深まりや親密感が増すことが確認できた。
これは,単にテキストファイルの交換(Eメールのやりとり)よりも,音声と画像を使って発言者の顔を見ながら議論することができたからである。一度に議論に参加できる生徒数や学校数などの問題,画面の切り替えのタイミングなどの問題,CU−SeeMeの技術的な問題などが多数あるにしても,参加した生徒のアンケートから,今回の授業の成果を知ることができる。
今回の実施が2回のみであったこと,実施に至る期間が短かったこと,年度末で児童・生徒の参加が少なかったこと,CU−SeeMeのシステムが十分に機能しなかったことなどの悪条件があり,教育的面の成果を期待することに無理があることは確かである。それにしても,実施した結果から,今後の再度の実施に対する成果を大いに期待できる糸口をつかむことができた。これが今回の実施によって得られた教育的成果といえる。
「環境問題」をテーマにして有識者と意見交換をするという目的は,2回の実施でも十分に達成された。「環境問題」というと,児童・生徒にとって身近な問題のようであるが,酸性雨や公害問題などになるとほとんど議論できない難しいテーマになってしまう。そこで「ゴミ分別収集」から環境問題に入っていく方法は成功したといえる。さらに,予め配布しておいたゲーム仕立ての「ゴミリス」を使ってゴミ分別の意味を生徒に把握させておいたことも,授業の実施の流れをスムーズにした。このような導入は,ネット上での初対面の者同士が短時間で同じ話題に入っていける有効な方法であった。
今回の授業後に,参加した生徒達がゴミ収集や分別や処理方法の違いを知識として知るようになっただけでなく,身近な問題として取り組むようになったこと,学校内でのゴミ処理の違いや生徒会の取り組みなどに議論が進み,今後の生徒会活動に参考にするであろうことを確信できた。生徒達にとってネットを通じて同世代の別な地域の生徒との交流が図れたことは,特に印象深いことであったと思う。
参加した各学校のクラスにはそれぞれ担当の先生が居たわけであるが、ふだんの閉塞された授業から,インターネットを介して開かれた授業を体験したことの成果は,計り知れないものがあったと確信することができた。
インターネットを介して学外に飛び出し有識者と意見交換し,質疑応答がリアルタイムででき,生徒同士のコミュニケーションから参加した生徒の意識の高揚がなされたこと,授業後にはゴミ収集活動へと生徒の行動が引き起こされるであろう期待がもてたことなど,多くの成果が得られた。

(4)課題
@企画としての課題
企画から実施までの時間が非常に短くて,参加校の先生方とテーマや授業の指導計画について打ち合わせが十分にできなかった。「環境問題」を取り上げたのは,参加校が小学校から高等学校までという広範囲にわたり,他に共通テーマを探せなかった。参加校の先生方の意見としても述べられていたが,学校種別毎に実施し,それぞれの学校種別でテーマを設定して授業を行う方がよかった。意見にもあったが,中学生や高校生なら「校則問題」などは身近なテーマであろう。有識者としてどのような方を設定するかが難しいかもしれない。
授業計画ができたところで,参加校の担当者に授業展開案を送付し,問題点はないか話し合っておくことが必要であった。特に2回目の実施で,参加校の先生の予想外の話題に不用意に入ってしまって不快感を与えてしまった。このようなことを避けるためには,予め授業内容の打ち合わせを行っておき,その流れからはみ出さないようにすることがお互いの信頼関係を崩さないためにも必要である。

A授業形態としての課題
今回の授業形態としては,参加校と有識者と司会者とが全国に散らばっており,司会者が授業担任の役割を持っていた。授業の初めに参加生徒の紹介をしてもらったが,突然の指名で緊張して発言が思うようにできなかった生徒が何人かいた。
突然の指名というようりも,電話を使ってのコミュニケーションには一種の緊張が伴い,慣れるのに時間を必要とする。今回の授業が2回しかなされなかったので,この慣れに至る時間が持てなかった。司会者の画像と参加校の画像が表示され,マイクに向かって話をするなら幾分緊張も和らいだのではないだろうか。
各学校での授業形態としては,1台のコンピュータを数人の生徒が囲んでながめ,テレホンピックアップから増幅された音声を聞くやり方で進められた。
普通の授業のように30人から40人以上も居るクラスで,1台のパソコン画面を共有して授業を進めるには困難がある。今後同様な授業を行う場合でも参加する生徒の人数をどのようにするかを検討しておく必要がある。

Bメーリングリストの活用上の課題
授業の実施前からのテーマに対する質疑応答をメーリングリストでおこなっておいて,当日の議論の方向性を明確にするのに使えるようにする。先生の意見の中にあったように,メーリングリストで議論されたことを企画者側か,有識者がまとめて,何が議論の対象なのか,何が重要なのかの軽重をつけて,生徒達の考えを引き出せるように支援することが必要である。往々にしていいっぱなしに終わってしまって,議論の深まりに至らなくなることが見られた。

(5)展望
今回の100校プロジェクトの共同学習型利用企画の中に,データベース作成と,酸性雨の調査があった。データベース作成として,全国各地のゴミの収集や処理の仕方の違いについてデータを集めていた。このようなデータベースができてくれば,オンラインで各地のゴミ収集の違いを検索して,議論の資料に活用することができる。将来,地方自治体がホームページを持つようになり,ゴミ処理だけでなく,各種のデータベースを公開するようになれば,今回の有識者役をインターネット上のデータベースに置き換えることも可能であろう。
インターネットの特徴である,同時並列処理や,双方向性,距離の超越などは,教育の閉塞性を打破し,教育のボーダレス化を引き起こす大きな原動力になることは確実と思われる。すでに,ヨーロッパではネットワーク上で公開講座(Open Learning)が開設されており,学習者はどこからでも参加できるようになっている。公開講座を背後から支える部隊として,教材資源を管理する人,チューター(指導者),科目の取り方などの相談役となるカウンセラーなどが準備されている。学習者は自らが学習したい専門領域に関して,カウンセラーに相談しながら教材を選択し学習を開始する。質問があればチューターとやりとりを行う。このように,コンピュータネットワークを介して相互にコミュニケーションをとれるようなシステムをCMCS(Computer-Mediated Communication Systems)という。CMCSを利用したネットワーク上の授業をバーチャルクラスルーム(virtual classroom;S.R.Hiltz(1985,ニュージャージー工科大学)という。
今回のインターネット上の企画「有識者との意見交換」は,日本全国に散らばる学校の先生と生徒と,有識者の大学と,教師兼カウンセラー役(進行役)とがネットワークを介して授業を行ったことになる。ゲーム仕立ての「ゴミリス」という教材を学習者がリソースセンターから引き出して学習し,ゴミ問題や環境問題に興味を持って,居住地域のゴミ分別に興味と関心を持ち,問題解決学習に入っていくことになる。ゴミ収集の違いに気付き,有識者に疑問を投じ,指導を受ける。このような学習が近未来にはネットワーク上でなされるようになるだろう。
今回の企画のもう一つのねらいは,CU−SeeMeの可能性を探ることであった。インターネット上のテレビ会議は必ずや将来に現実のものとなるだろう。今回の生徒のアンケートにもあったように,相手の画像が見えるということはコミュニケーションの原則であるような気がする。現在の通信速度などの問題で,音声と画像を同時に送り合うことが困難であるが,これらのことはいずれ解決されるであろうことは確かである。そのような時代になれば,今回の企画がもっと効果的に活用されるようになるであろうことの確信も得られた。


3.3.2 広域ネットワークを利用した意見交換の技術的面の成果と課題及び展望
(1) 全体的な技術的成果と問題点及び課題
1. 成果
ネットワークを利用して、これだけ多人数の会議を実施したのは、IRC(Internet Relay Chat)を用いるものを除き、日本ではおそらく始めてであり、少なくとも、ほとんどの参加校で、動画像およびChat/Talk Windowでの文字情報が受信できたことは評価できる。全国に5箇所の受信専用リフレクタ(Blind Carbon Copy方式)を配置すること、動画の送信データ率は、1つあたり10kbps以内に絞り、低品質とすることで、国内インターネット幹線(主にSINET)に与える通信トラフィックの増加を軽減することを試みた。
不完全な測定結果によれば、会議時間中の送受信用リフレクタから各受信専用リフレクタへの平均トラフィックは、1回目約18kbps, 2回目約25kbpsで、送受信用リフレクタからは合計して、平均約100から150kbps程度のトラフィックが全国の受信専用リフレクタに送出されたことになる。幹線には、重大な影響を与えていないと言える。

音声による通信が、ビデオ会議で動画より重要であることから、音声の伝送をCU-SeeMeに頼らず、電話会議システムを用いることにしたため、安定した接続が可能であった。ただし、電話料金、電話会議使用料は相当の金額になったと思われる。
2. 問題点
* CU-SeeMeについて
* 計画から実施まで、リフレクタ相互接続の調整などに時間がかかった。技術的検討と実験、練習は早めに始める必要がある。
* 操作方法、接続方法の周知が不十分であったため、受信専用リフレクタと送受信用リフレクタとの切替えを前提とした、電話会議での発言と接続先リフレクタ切替の同期が1回目の会議では全く、2回目も不十分であった。また、指示を理解せず、複数のCU-SeeMeを常時送受信用リフレクタに接続していた学校があった。その理由は、複雑な操作の説明が不十分であったこと、他の連絡を含め電子メイルが多く、その内容を把握しきれなかった参加者があったためであると思われる。

* 電話会議システムついて
* 人間による電話交換を通す場合、一斉呼び出しが出来なくて、接続に時間がかかる。
* 話す本人が思っている音量に比べ他の参加者が聞く音量が小さい。よほど大きな声で話さないと、皆に聞こえないようである。
* 受話器を持ったまま1時間はつらい。ヘッドセットあるいは、PictureTelなどに見られるVoice ControlやPush to talk方式の電話機が利用できるとよい。
* CU-SeeMeが利用できる教室と電話が利用できる教室が離れているため、電話線の延長やコードレス電話の使用が必要となり、音質の劣化を招いた学校があった。
3. 課題
* 広域インターネット以外の通信手段の検討
* アナログ専用線による接続など、十分な回線容量がない場合、国内の会議であれば、インターネットに頼らず、公衆電話回線、ISDN回線で中央会議システムと接続することにより、より安定した運用が可能となる。最近、発売が発表されたNTT/Picturetel開発のPhoenixなどの使用も検討すべきであるが、学校にISDN回線(INS64)が設置されることをすぐには期待できない。
* 他にはNTTマルチメディア実験などの実験参加者の了承を得て、それらの高速幹線を使用した実験として、この種の企画を位置付け実施できる可能性がある。ただし、その幹線に至るまでのアクセス経路の回線容量に問題が残る。

* リフレクタ相互接続形態の検討
低品質のモノクローム動画像伝送だけでも、相当の通信トラフィックが発生するが、音声(32kbps)を利用すると、十分な音質の配送が得られる保証はないにもかかわらず、合計でさらに、約150kbpsの合計トラフィックが発生することになり、同じ方式では、幹線に負担を与えずに運用することが難しい。接続先リフレクタを変更せずに、CU-SeeMeを利用する方法として、他に、1) IP Multicast網(JP MBONEを利用する)、2) Srefという別のリフレクタを相互接続する、という2つの方法が考えられる。ただし、1)は実験研究が目的であり、日常的な運用が受け入れられる可能性は少ない。2)を用いれば、今回用いたCornell大学製リフレクタソフトウェアの双方向相互接続 (UNICAST-REF)では必要になるリフレクタ間の完全相互結合は不要となるが、使用に当たっては事前に十分に実験を行なう必要がある。

* 司会進行の技術
* 司会者のそばにいる進行係と各会場の進行係が、別のチャネルで打合せを行なえるとよい。
* 司会、進行側で参加校側の動画像や音声送信の切替をリモートコントロールで行なえると理想的である。

(2)技術的な問題や課題およびその解決策
今回の企画では、
電子メイル(メイリングリスト)や WWW サーバを用いた時間非共有型の意見交換+ CU-SeeMe と電話会議による時間共有型の意見交換を組み合わせることで短期間での意見交換を行なうことを試みたが、全国規模での電子会議システムを開催する際の準備・進行・評価に関して、多くの技術的ノウハウ蓄積と課題を知ることができた。ここでは、企画開催に当たって発生した幾つかの問題点について記載し、その解決案についてまとめることにする。

1. 電子メイルによる意見交換について

* ML 名称に関する課題
今回は、企画を実現する際の目的別に3つのメイリングリスト (ML) を事務局で準備してもらった。
[1] 研究グループ内での意見交換や事務連絡のために利用する ML
(kenkyu-ikenkoukan@cec.or.jp)
[2] 研究グループ関係者と参加校の教員の間で意見交換や事務連絡をするための
ML
(kentou-ikenkoukan@cec.or.jp)
[3] 上記に参加校の生徒を加えた、非同期の意見交換を実現するための ML
(kankyou-ikenkoukan@cec.or.jp)

しかし、ML の名称が紛らわしいことから、それぞれの役割が混乱してしまい、必要な事務連絡や情報伝達を適切に行なうことができないという事態が生じることがあった。複数の ML を目的別に設置する場合には、その名称と包含関係について、一般的に規定しておく必要があると思われる。例えば、企画名称をサブドメイン名に用い、(sec < staff < member < all) などといった包含関係を決めて、ML 名称とすることが考えられる。

例: staff@ikenkoukan.edu.ipa.go.jp

2. 電子メイルの配送遅延に関する課題
今回の企画の中で、CU-SeeMe と電話会議に参加可能な学校の状況を研究グループに連絡したり、参加校の教員向けに当日の進行方法について連絡するのに電子メイルを用いて行なったが、特に PC-VAN にアカウントを持つ人達との間で行なわれるやりとりに 12時間以上も delay が生じることがあり、実際には事務連絡の意味をなさない状態となることがあった。現在の電子メイルツールでは、配送した相手が電子メイルを読んだかどうかを確認する有効な手段はないため、重要な事務連絡事項については、次に示す2つの方法で代用して配送遅延を送付側が知る必要があったと考えている。

[1] Reply-To: を用いて読んだ際に簡単な応答を要請すること。
[2] Return-Receipt-To: を用いることで、電子メイルが配送されるホストまで
到達したかどうかを調べる。

いずれの場合も、集計結果を見て未応答の場合は、電子メイルとは異なる手段で連絡を行なうことが必要となる。

3. 電子メイルに重要度を示す指標がないことに関連する問題
特にメイリングリストを用いて情報交換する場合には、質問に対する回答などのように、個人を主な対象にする情報と、全体に対する連絡のための情報が混在することになり、それぞれの情報の重要度も人によって異なることになる。
また、連絡事項に関しても質疑応答などが入り、原案に部分的な修正が入ると全体を把握するためには、全ての情報を注意深く把握しておく必要が生じる。

一般的に、個人宛に送られる電子メイルは特定の内容の情報が連続して送られてくることは少なく、現在は、時間的な流れを追って特定の情報を検索するには個々の利用者が、folder を分けるなどして情報分類を行なう必要がある。この問題は、ML を管理するサイトで archive を作成する際に、References: などを元にして情報を分類する方法を実現したり、password などのアクセス権機構を導入した、WWW サーバにおいて階層的な情報分類を行なうなどの方法が有効な解決策にになると考えられる。また、WWW サーバを併用する方法を用いる場合は、重要な情報や、連絡したいその時点での最新原案を入手できるように準備をすることも可能になることから、その有効性は高いと考えられる。

4. WWW サーバによる意見交換について
* 情報の更新に対する時間とコストに関する問題
今回の企画では、事務局が中心となって意見交換の間の WWW サーバの更新を行なったが、開催期間が短かったことと、事務局で複数の企画を引き受けていたことが重なり、参加者に対して意見交換の内容の予備知識を提供したり、関連した情報を提供することが十分に行なえていなかった。この問題は、運用上は WWWサーバの情報を更新するための人員を確保することで解決を図ることが現実的であろうが、技術的な解決策としては、電子メイルのアーカイブを WWW で提供していたのと同様に、機械的に WWW サーバで提供されている内容を更新するための仕組みを導入することで時間とコストの削減を図る方法もあるだろう。たとえば、Yahoo などの情報源情報の検索システムを利用して得られた情報を登録したり、参加校で個別に行なわれた取り組みのページに link を張っておき、更新された情報を robot などの仕組みで検索しながら、新着情報のページを生成するなどの方法が考えられる。また、form 形式の CGI を用意し、適宜、参加者などの意見を集める方法もある。