4 テーマ「ネットワーク講演会」の実施

4.1 計画の立案
4.1.1 ねらい
専門家、有識者の発言をきっかけにその問題の本質をつかむための専門的知識と理解力を養う。専門家には可能な限り具体的な事実(データ)を提供してもらい、その分析の方法や、もののとらえ方、見方などのモデルを示してもらうことで、情報活用の基礎となる分析力を養う。また、講演者に対して質問、意見を言う場に臨むことで、その問題により深く関心を持たせ調べる意欲を高める。質問、発言のための準備として関連事項を調べる活動でもインターネットを利用するなど、物事を追究する手段としてのインターネット利用方法も身につける。
企画実施の中で、メール・ニュースなどを使った会議からビデオ会議まで、いろいろな形態のネットワーク会議の教育における効果及び課題を探っていく。



4.1.2 計画
(1)計画概要

実施計画の概要を次に示す。









(2) スケジュール
準備(9月〜1月)
* 研究グループの設置に向けての打ち合わせ
* ネットワーク講演会用各種サーバ準備(情報基盤センター)
* 募集案内要項検討
* 研究グループ設置
* ホームページ、メーリングリスト作成
* 講演の撮影および講演ページの作成
* 各参加校のマシン、回線状況調査
* 実施日程調整
* 実施内容検討

講演会実施(2月〜3月)
* 総合学科講演ページの公開
* 講演用各種サーバメンテナンス
* WWWページを利用した講演会の実施
* メーリングリストを利用した意見交換の実施
* 実施状況をWWWで発信

まとめ・評価(3月初旬〜3月中旬)
* アンケート実施
* アンケート分析
* 研究グループによる評価
* 報告書作成



4.2 実施
4.2.1 実施内容・方法
(1) 第1回研究グループ打ち合わせ

1995年12月11日に第1回目研究グループの打ち合わせを行った。この時には、企画概要に関しての説明及び検討を行った。

* 議題
1. 進捗報告
2. 共同利用企画の組織及び運営について説明
3. 企画内容についての議論

討議の結果、次のように決定した。

1. 講演会内容
「今後の高等学校のあり方」(総合学校を中心に)
2. 講演方法
WWWサーバを利用したテキスト及び音声、ビデオによる講演を行う
3. 講演対象
高校・中学の生徒(先生)
4. 講演者
* 川崎市立川崎総合科学高等学校など
* 文部省の岩本視学官に相談する
5. 進め方
6. 今後
・講演者のアサイン(事務局)
・正式な参加募集案内をだす(事務局)

1/11文部省岩本視学官との打ち合わせ
* 講演者として静岡県立小笠高等学校長 岡田 修二氏を紹介
された
* 企画実施でのご支援を依頼した
(インターネット環境は用意されているが使っていないそうです)
総合学校の現状の資料をもとに説明を受けた

(2)第2回研究グループ打ち合わせ

1996年2月8日に第2回目研究グループの打ち合わせを行った。この時には、企画内容および今後の予定に関しての検討を行った。

* 議題
<自己紹介>
<ホームページについて>
<報告書>
<意見交換システムについて>
<参加校との協力>
<質問>
<電話会議について>
<今後の予定>

討議の結果、次のように決定した。

* 講演ページ修正(事務局)
* 講演ページチェック(研究グループ)
* 講演ビデオを研究グループの先生に送る(事務局)
* 企画概要をMLに流す(事務局)
* スケジュールをMLに流す(事務局)
* 研究Gより挨拶(研究グループ)←MLアドレス連絡(事務局)
* 講演ページ公開
* 報告書作成:原稿(研究グループ:分担)
:まとめ(事務局)
* アンケート草案(事務局)
チェック(研究グループ)
集計(事務局)
分析(研究グループ)
* 3/9CEC報告会
* 3/13報告書提出日

(3)第1回各参加校および研究グループ打ち合わせ
1996年2月14日に第1回目参加校および研究グループの打ち合わせを行った。この時には、企画概要に関しての説明及び検討を行った。

* 議題
<自己紹介>
<企画趣旨>
<スケジュール>
<質問・疑問>

討議の結果、次のように決定した。

<宿題>
→事務局でまとめた概要を生徒MLに流す
→事務局は学校の都合を考慮してスケジュール練り直す
→画像ファイルが遅いようなので情報基盤センターにおいた時点で再テストを
行う


4.2.2 実施経過
実施経過を以下に示す。
参加校募集 95年11月 6日〜96年 1月29日
講演会実施 96年 1月29日〜96年 3月 8日
運営日付内容対象
参加校募集11/6企画案内(概要)
mado-kouennkai@cec.or.jp
aimiteno
PC-VAN
NiftyServe
11/23ホームページ公開
12/11第1回研究グループとの打ち合わせ研究グループ
事務局
1/11文部省岩本視学官と打ち合わせ、講演者を紹介してもらう
1/16講演者の岡田先生に講演のお願いと企画についての説明を行う
1/18企画案内(詳細)
講演準備1/29講演ページのもととなる岡田先生の講演をビデオ撮影
講演ページ
チェック
2/6講演ページのチェック開始研究グループ
事務局
2/8第2回研究グループとの打ち合わせ研究グループ
事務局
2/14第1回参加校および研究グループの打ち合わせ参加校
研究グループ
事務局
講演開始2/22岡田先生の講演ページ公開
2/29講演内容についてMLでの意見交換開始各参加校
講演終了3/8MLでの意見交換終了各参加校
アンケート送付各参加校
アンケート回収各参加校
まとめ3/13報告書の提出事務局

4.2.3 実施経緯
(1) 参加校の募集

<窓口の設置>

参加申し込み窓口と問い合わせ用窓口の設置を行った。窓口は電子メールのみとし、参加申込みと問い合わせはメールのサブジェクトで分けた。

mado-kouennkai@cec.or.jp
参加申込み Subject:sanka-kouennkai
問い合わせ Subject:Q-kouennkai

窓口はメーリングリストとし、事務局メンバに転送される仕組みとした。
事務局から参加校宛に返信メールを出す場合は、写しメールを窓口宛てに出すようにした。









<概要案内>
11月6日に企画案内を掲載し、企画への参加校を募集した。この時点では企画の詳細が決定していなかったが、参加校の応募準備期間をなるべく長く取り応募しやすくするために、概要案内とした。参加を希望した学校には後日詳細を送るという方法をとった。案内は次のところに掲載した。講演テーマ決定後、1月18日付けで詳細な内容を記載した募集案内文を再度掲載した。


* 100校プロジェクトメーリングリストaimiteno@woo.mir.co.jp
* Nifty Serve(FCAI/7番電子会議室)
* PC-VAN(STS/職員室)
* CECホームページ(http://www.cec.or.jp/CEC/)

案内掲載後に次の5校より参加希望があった。
学校名
1.熊本県立小川工業高等学校
2.群馬県前橋市立第四中学校
3.熊本国府高等学校
4.奈良県立高取高等学校
5.埼玉県立越谷総合技術高等学校
(総合学科の講演なので直接メールで参加をお願いした)

(2)メーリングリスト
企画の事務連絡、意見交換、情報交換を行うため、メーリングリストを設置する必要があり、研究グループと参加校を登録した3つのメーリングリストを用意した。
kenkyu-kouennkai@cec.or.jp
研究グループおよび事務局連絡用
kentou-kouennkai@cec.or.jp
各参加校の先生方+上記MLメンバ
kankyou-kouennkai@cec.or.jp
各参加校の生徒+上記MLメンバ

各メーリングリストの説明
以下のメーリングリストは研究グループと事務局の連絡に利用した。
WWW化して過去のメールを参照できるように設定した。

kenkyu-kouennkai@cec.or.jp
http://www.cec.or.jp/~list/kenkyu-kouennkai/maillist.html
(過去のメール参照用アドレス)
登録メンバ
* 研究グループ
* 「ネットワーク講演会」事務局


以下のメーリングリストでは、主に事務局から参加校への連絡を行った。全参加校が加入することを前提とし、企画への参加希望のメールが届いた際に、事務局からの返信メールで、メーリングリストに登録していただくように依頼した。

kentou-kouennkai@cec.or.jp
http://www.cec.or.jp/~list/kouennkai-ikenkoukan/maillist.html
(過去のメール参照用アドレス)
登録メンバ
* 参加校
* 研究グループ
* 「ネットワーク講演会」事務局

参加校用メーリングリストへのメンバ登録は自動処理を行った。

kentou-kouennkai-request@cec.or.jp
自動登録 Subject:subscribe
自動脱退 Subject:unsubscribe


以下のメーリングリストでは、主に参加校生徒の意見交換を行った。全参加校から、登録する生徒アドレスを募集して事務局側で一括登録した。

kankyou-kouennkai@cec.or.jp
http://www.cec.or.jp/~list/kankyou-kouennkai/maillist.html
(過去のメール参照用アドレス)
登録メンバ
* 参加校の生徒
* 参加校
* 研究グループ
* 「ネットワーク講演会」事務局

(3)テーマ決定
講演会テーマを決定するにあたり、テーマについての簡単なアンケートを企画参加募集時に参加校に対して行った。その回答を参考に、最終的には研究グループ側で下記の事項に留意し、テーマを検討を行った。

テーマ検討では以下の点などに留意して検討を進めた。
* 参加校の希望
* 研究グループの意見
* 興味関心の高さ

検討の結果以下のテーマに決定した。

* 意見交換テーマ
「今後の高等学校」(総合学科を中心に)
* 有識者
岡田 修二 先生(静岡県立小笠高等学校 校長)
* 内容
「今後の高等学校」(総合学科を中心に)というタイトルでの講演の内容を、ネットワーク上で問題提起、話題提供を行う。これを受けた各参加校が、講演者への質疑応答や参加校間、校内での意見交換を、ネットワーク上や校内で行う。講演はWWWサーバやメーリングリストの利用する。
企画実施の中で、ネットワークを利用した講演会の教育における効果及び課題について探っていく。

* 実施の方法
講演内容発信用のWWWサーバを構築し、講演内容をテキスト・音声・ビデオなどで発信する。このページを各参加校がブラウザを利用して参照し理解した上で質問や意見をメーリングリストを使いやりとりする。メーリングリストの内容は、WWW化して参照できるようにする。
また、実施の状況はホームページを作成し、発信していく。

(4)ホームページ開設
11月23日に情報基盤センターにホームページを開設した。情報としては下記のものを掲載し、講演の情報公開および講演実施の際のホームグラウンドとした。
http://www.cec.or.jp/es/kyouiku/100/project/prjlist/conference/kouenkai.html

* 講演のページへのリンク
* 意見交換メール参照へのリンク
* 参加校の一覧
* テーマ概略
* 研究グループメンバの一覧
* 参加募集案内文
* その他

(5)講演の準備
1. 講演撮影
講演テーマ決定後、静岡県立小笠高等学校 校長 岡田 修二先生に企画概要を説明し、講演者としての参加をお願いした。講演内容についての打ち合わせを行い、1月29日に小笠高等学校の放送室をお借りして講演の撮影を行った。撮影機材などが学校に新しく設置されたため、機材について情報があまりなく準備がうまくできず高品質な映像での撮影ができなかった。しかし、撮影自体については、講演者の岡田先生のご協力もあり順調に行うことができた。

2. 講演ページ作成
講演を撮影してきたビデオをWWW化するために以下の3種類の方法でデジタル化した。
* 講演内容のテキスト化
* 講演ビデオのデジタルビデオ化
* 講演ビデオの静止画+音声のデジタルビデオ化

テキスト化については、講演者が講演した内容を全てテキストにした。
これは、回線の細い学校でも見ることができるように考慮したもので、WWWページに記載し読んで講演に参加することができる
デジタルビデオ化は、講演者が講演しているそのままの姿を動画+音声で見せることにより、講演内容をより一層理解できるように考慮したものである。しかし、データ量が多いため回線の細い学校では見ることが難しい。また、デジタル化では各学校により、マシン、OSなどが違うため、2種類の形式のデジタルデータを用意した。MPEG化できればよかったが、今回は時間や機材などの点で問題がありAVI形式およびMOV形式のデータを用意した。
静止画+音声のデジタルビデオ化は、できるだけデータ量を減らすため用意した形式である。音声だけのデータも用意する予定だったが、音声だけのデータにしてもあまり、データ量的に静止画+音声と差がないため今回は用意しなかった。
講演ページについては、区切りのよい箇所で分けて1つのデータ量をあまり大きくしないように配慮した。
また、講演に際しての資料もテキスト化して随時参照できるようにした。

(6)講演の実施
講演は96年2月22日〜3月8日までの間実施した。

* 2月22日 岡田先生の講演ページ公開
* 2月29日 講演内容についてMLでの意見交換開始
* 3月 8日 MLでの意見交換一旦終了

講演については、WWW化してあるため各参加校で都合のいい時間に実施でき、リアルタイム会議のような日程の調整も必要なく、時間的には、比較的楽に実施できた。
司会役として、研究グループの黒田先生が参加し、意見交換をまとめた。講演内容について活発な意見交換が行われた。残念ながら講演者の岡田先生の学校にはメールの環境がないので事務局がMLの内容をFAXで送り、それに対してFAXで回答してもらい事務局がまとめて代理投稿する形をとった。

メール発信数としては以下のような成果を挙げることができた。

熊本県立小川工業高等学校 9通
群馬県前橋市立第四中学校 26通
奈良県立高取高等学校 8通
埼玉県立越谷総合技術高等学校 1通
(手違いでMLへの送付はなし)
研究グループ 15通
講演者 3通
(メール環境がないので事務局がまとめて代理投稿)
事務局 14通

(7)アンケート
<発信>
企画実施後、メールでアンケートを各参加校宛に送信した。アンケートは記入者に会わせて2種類作成した。

* 教師用 :担当教官が記入
* 参加者用 :参加者(生徒)が記入

<回収状況>



* 教師用


熊本県立小川工業高等学校 1通
奈良県立高取高等学校 1通
合計 2通





* 生徒用


群馬県前橋市立第四中学校 1通
合計 1通




4.3 教育面での効果・課題に関する調査
4.3.1 実施結果分析
(1) はじめに
今回のネットワーク講演会は、「高校の総合学科」をテーマにして行われた。2月22日に講演ホームページが公開され、参加校はそこから講演のムービーをダウンロードして視聴し、関連資料を同じくホームページで参照しながら、メーリングリストで討論を行うという企画であった。この討論は、2月29日から3月8日までの期間で実施された。
従って、実質討論期間は9日間ということになる。この項では、講演会に参加した学校に対するアンケートと、メーリングリストでの討論の模様について、考察する。

(2) アンケートから
回答があったのは、奈良県高取高等学校、熊本県小川工業高等学校の2校であった。量的分析は意味がないが、アンケートの設問に従って、一応の結果のまとめと考察をしていく。
* 企画は両校ともaimitnoで知った。
* 参加は2校とも教師が決めた。
* 企画参加には制約はなかった。
* 参加の形態は学校によって違い、一部の生徒のみ参加した学校と、参加を学年に呼びかけた学校があった。
* 参加は両校とも放課後に行われた。
* 参加した時間数は片方はわからず、片方は6時間であった。
* 参加は両校とも生徒の自主性に任せた。
* 参加に当たって内容に関する助言を行った学校が1校であった。
* 両校ともこれまでにWWWブラウザとメールを扱ってきた。
以上のことから、今回の講演会への参加は、教師が参加決定した後は、かなりフリーな形式で行われたことが分かる。特に、高取高校は生徒の参加は1名だけだったが、かなりの時間を積極的な参加に割いてくれた。彼が、討論に広がりそうな話の糸口をいくつもつくってくれたのは事実である。しかし、残念ながら、それが広がる時間的余裕が、今の所ない。

指導上の留意事項として、以下2点があげられた。
* 時期的に1・2年生の参加は無理と判断された(期末考査の期間と重なるため)ので3年生のなかから希望者を募った。
* 時期的に学年末考査、入試と重なり十分な時間がとれませんでした。
この後の質問項目でも再三出てくるのだが、講演会の実施時期が良くなかったのは否定できない事実である。

* 参加前後で1校はパソコン利用が増え、もう1校でも少し増えた。
* 参加前後でパソコンに対する姿勢が1校で意欲的になり、もう1校でかわらなかった。
後者はすでに意欲的であった。前者は、「返事や質問を出さねばならないと言う意欲が感じられ」たという報告があるが、これは意欲なのか義務感なのかがはっきりしない。義務感のままだと、自己学習能力のようなものにつながらないかもしれない。

* 講演内容は1校で理解でき、1校でどちらともいえないという回答であった。
* 講演の形式は有効かどうか分からない。
自由記述からは、「講演会をネットワークで見られるようにするのみでなく、講演会の内容をさらに深めていける情報や教材、さらに電子メールを使って討論していく場合は適当なリーダーなりコーディネータが必要」という意見が上がっている。また、「時間的にフォローができなかったのでどちらともいえない、もし十分な時間があれば有効だと思います」という意見もある。前者に関しては、企画の意図と重なっていて、まさしくそのような環境を準備しようとしたのだが、十分な運用ができる前にこのアンケートに回答することになったということだろう。

* 両校とも、ホームページを使った討論は教育的に有効だと回答している。その理由は「途中からの参加が容易なことなどの利点がある」ということだが、ただし「現行のブラウザでは本人の認証などの点で不安がある」との指摘もある。確かに、本人が意見を述べているとは限らないという問題もある。

* 実施期間は短いが1校、やや短いが1校である。
* 実施時期は2校とも不適切だと回答している。
適切な時期としては、2学期あるいは、年度末、学期末を避けるべきだとの回答がある。

* 教師の負担はあまりない所と、やや大きかったところがあった。
これはそれまでのネットワーク利用形態によるだろう。基本的に使ったものはwwwブラウザとメールソフトだけで、そんなに準備は必要ない。企画側とのやりとり(メーリングリストと電話会議)、それに各学校での参加者の組織が必要であったが、その他は参加者に任せることは可能である。
ただ、回答からは、そのようなことでも、やはり実施時期との関係で、負担に感じたとのことであった。

* 講演会のホームページについては、あまり有効でないとする回答もあったが、それなりに有効であるとの回答もある。
しかし、本来見るに耐えるものの(内容とともに見栄えも)作成には、TV番組などのプロの参加が必要だろうという指摘があった。これに関しては、ホームページデザインだけの問題ではなく、取材の際の画像・音声の撮り方や、関連情報の整理の仕方や量など、さまざまな問題が絡んでくる。かならずしもプロの参加が必要だとは思わないが、コンテンツ制作の水準を検討する必要はあっただろう。先の講演会の形式についての回答と考えあわせると、ホームページ形式の講演会はそれなりに評価できるが、ページの質と関連情報の置き方についての不備が指摘されたという事であろう。

* 講演会に参加するに当たっての技術上の問題は両校とも無かったとしている。
* 講演会の開催方法については、「今回の内容であれば動画は不必要だったし、現在の100校のネットワーク環境では無理と思う。むしろ講演内容をサポートする豊富な資料(参考文献の紹介も含め)が大量に必要と考えられる」という指摘がある。
現在のインフラでは動画の転送にはかなりの時間が必要で、確かに同じ内容をテキストで流しても問題はなかったかも知れない。動画での講演会形式をとるならば、動画でなければ表せない内容(今回の場合は学校生活の様子など)をふんだんに盛り込んで編集をかけたものを用意するべきであった。ただ、この点は企画段階で十分予想はしていたが、企画との関連で修正不能であったという事情もある。また、サポート資料に関しては、大量の資料を用意したにも関わらず、準備時間不足でwwwに掲載することができなかった。企画側の責任であるが、反省すべき点である。

* 企画実施過程での校内の調整については、ほとんど無かった学校が1、非常に多かったという回答が1であった。後者の場合、「実施時期との関係で、十分な論議が可能なのは卒業式をすぎた3年生以外考えられなかった」と回答している。

* 企画に対する満足度は、不満が1校、どちらともいえないが1校である。
講演のテーマはどちらともいえないが1校であるが、もう1校は自由記述で下記のように述べている。「このようなテーマも必要かと思う。ただし授業や学校行事などでの利用を考えると、興味を持てないあるいは持たせるのに非常に時間がかかるテーマである。何も知らない生徒たちに、いきなり、総合学科について論じさせた点が難しかったと思います。もっと現実の問題(あなたの学校はどんな学校、服装は、校則は、など)から、 徐々にMLで話を誘導したあと、実は総合学科というのがあるけれど、ということで講演をしてもらったら良かったかなと思いました。そうすれば、もっと盛り上がったかな?と思いました。」これも実施期間や時期と絡んでくるが、指摘のように、総合学科と言うものの存在すら知らない子どもたちが、積極的に参加できる下地作りは必要だったかも知れない。が、逆に講演をきっかけにし、時間をかけて掘り下げていくというようなアプローチも不可能ではないだろう。

* 講演会のテーマについての要望は、
* おしゃれについて(制服問題も含めて)
* いじめについて
* サイバースペースとのつきあい
* 時事問題を考える
* 在日外国人問題や差別問題・世界の高校生(中学生・小学生)
* ネットワークのモラル
があがっているが、前設問と関連づけると、どのテーマにしても討論まで持って行くには、やはり下地作りを欠くことはできないだろう。それに、講演会を前提にすると、ある程度「情報の提供」→「討論」という順序は想定する必要が在ろう。そうなると、それにあったテーマが必要になる。

* もう一度参加したいかという問いには、両校ともyesとの回答で、テーマや時期などはともかく、ネットワークでの講演会そのものを、もう少し追求してみる価値はありそうだ。

その他の意見としては、
* 企画・立案・運営にあたった皆様方の苦労は身にしみます。ご努力ありがとうございました。
* プロジェクタの無い学校でパソコンのような小さい画面に多数の人数を集めて動画を見せるのは、とても無理があったようです。音声も悪かったし。ファイルの大きさが大きくダウンロードにとても時間がかかってしまいました。しかも、複数台にftpしようとしたらこれまた大変であきらめました。やはり、ビデオテープの方がより効果的だと思いました。あまり動きのない人物の講演を動画として張り付ける時は、はじめの挨拶の部分だけで十分のような気がしました。なお、CU-SeeMeを上回るような会議システムが利用できれば別ですよ。せめて、先日の成果発表会で中継があったPicture Telのようなものでもあればと思いました。
という2項目が寄せられている。

講演会の運営については、
* 企画の当初から現場の教員も参加する、あるいは企画段階からオープンにしてほしい。今回は年度末ぎりぎりまで連絡がなく、メーリングリストに未登録だったのでは、と本当に途中で心配になって確認したほどだった。
* 学校側の行事日程の調整との意見があった。確かに企画のたちあげから実際の実施にはいるまで、多少の時間があり、かつ終了点が決まっていたために不安はあっただろう。企画を支援する側のメーリングリストをアクティブにする必要があった。

ネットワーク環境についての一般的な意見としては、
* ネットワーク環境そのものとは異なりますが、まだまだ一般の生徒(中学生・高校生)の多くはタイピングや電子メールには慣れていません。最初から議論ではなく、とにかく入力するのも精一杯でしょう。そんななかでメールの書き方やガイドラインなども教えていただけるようなサポートがあれば(私がしゃしゃりでて説明した、メールの引用のマナーとか*注)、非常に教育的です。
* 常に、最善の環境および最新の情報の提供をお願いします。
ということであった。情報機器などは、参加校に完全に依存するが、通信環境についての情報は提供することができる。最新のメーラーやブラウザの所在情報などである。メールのマナーなどは、ネットワーク討論の中で相互作用で培われる側面もあるが、書き方の初歩などのガイドを用意することも可能である。必要がなければ読まなければいいのだから、講演会のページに置いておくことも検討してはどうだろうか。

事務局・研究グループへの要望としては
* こんな点はうまくいかなかった、というのも「成果のひとつ」だと思います。そのような「成果」も気軽に発表できるオープンな雰囲気で進められるような配慮をいただきたい。
* 生徒たちは、まだまだインターネットにおけるメールやMLについて十分な理解ができていません。また、生徒たちは、いつもパソコンの前に座れる環境にはありません。そんな生徒からメールが出されたら、どんなにつまらないものに対してでもできるだけ速やかに何らかのリアクションをしていただければ 、彼らも意欲が出てくるのではないでしょうか。
* MLにあまりにもメールが流れすぎるのも大変ですので、各学校あたり10通までにするなどしないと収拾がつかなくなるのではと心配しています。対応される先生方も大変かな!
の3点があがっていた。2項目目に関しては、子どもたち同士の討論を期待しすぎたために介入することを遠慮したのと、途中メーリングリストにトラブルがあったため、リアルタイムでメールを読めなかったことが原因である。研究グループと子どもたちの位置づけを初めに規定しておくべきであった。

(3) メーリングリストによる討論から
討論は、参加校の生徒、参加校の教員、研究グループ、事務局と、多元的な参加者によって行われる予定であった。しかし、上のアンケートでも考察したように、必ずしもそれぞれの役割がうまく割り振られた形のものではなかった。それでも、一部に今後を期待させるやりとりがあった。以下で簡単にまとめてみる。

前橋第四中学校からは、多くの質問が寄せられた。整理してみると、@学校生活のこと、A学習のこと、B学校の特徴のことに分けられる。

学校生活に関しては、部活の数や種類、強さについての質問が多かった。これから進学しようとする子どもたちにとっては大きな関心事であることが推測される。
その他には、校則についての質問があり、そこから制服にも選択の余地があることが知らされた。その後、「あなた達の学校は、制服が女子が3種類、男子は2種類ありしかも女子はキュロットがあるというのにはビックリしました。とてもうらやましいです。」「私達の学校では、昨日から2年だけルーズソックスが禁止になり、全校でもスカートの丈がひざよりちょっとでも、短いと、とてもおこられます。最悪です。
とてもその考えには、感動しました。」という意見が寄せられた。

学習について多かった質問は、科目選択の詳細についてで、例えば、必須科目が苦手な場合選択しなくても良いか、何をしたら分からない人はどうやって選択するか、すきな教科だけ選択しても良いか、というような質問であった。当然出てくる疑問だが、それに対しては、講演者からの追加情報がメールされた。教師を選べるのかという質問も2件あったが、これも中学生にとっては理想かも知れない。また、テストの回数についての質問と、があった。テストは講演者の学校が2学期制をとっていることによる質問である。

学校の特徴については、生徒や教員の構成についてと、そもそも総合学科はレベルが高いのかという質問があった。学校のレベルについての質問は、企画側が本来意図したこととははずれないでもないが、やはり中学生にとっては重大な関心事であることがうかがえる。

その他に、「私のことを知っていますか」という意味不明の質問があったが、文脈が推し量れず処理に困った。このあたりは、指導する教員の指導があったようだが、アンケートでも考察したように、メーリングリストのリテラシー育成ということを必要と感じさせる一件であった。

総合学科についての理解は概ね良好で、その印象も、講演会後のメーリングリストで次第に変わっていった様子がうかがえる。そのような生徒の意見を以下に抜粋する。
* 特に自分で作る時間割という所が気に入りました。
* 小、中、学校にもいっこくも早くお願いします。
* 総合学科の学校について詳しく書かれていたので、とても分かりやすかったです。私が特に興味を持ったのは「自分で時間割を決める」ということです。自分で都合のいい時間割が作れるので、とてもいいと思います。
* 総合学科の内容が少しずつわかってきました。このような、学校が全国にひろがってくれたらいいとおもいます。有り難うございました。
* 今まで総合学科を知らなかったけど、このメールを読んでわかりました。小笠高校では自分の興味や関心や進路希望などで教科を選べるそうですね。私が総合学科がある高校にはいったら、やはり自分の興味や関心をもっている教科を学習していきたいと思います。だから私にとっていい高校だと思います。

また、現在奈良県高取高校の生徒が核になって、総合学科と学歴社会における大学受験の関わりが論議されそうな状況である。まさに、そのようなジレンマの中でこそ、総合学科の持つ意味が大きく問われると思われるので、是非ともこの議論は発展させたいが、ここに当たって、この生徒が敢えて総合学科に対する反対意見を投じていることは見逃せない。このようなディベートのような形で討論が行われる方がおそらく活性化するが、そのことが良いことか悪いことか、あるいはその意味を参加者全員が理解できるかということは、今後検討されねばならないだろう。

(4)まとめ
メールは毎日読むものではないという前提で行わなければならない。社会人でメールを利用しているものは、昼間は常にメールの着信をチェックし、休日以外は必ずメールを読むことが、ほぼ常識になりつつある。しかし、中・高校生の場合はハードウェアの面からも、彼らの主たる関心事からも、そのようなことは望み得ない。そうなると、このような企画を成功させるためには、討論にかける時間が十分に確保されることが必須となる。今回の実験においては何かの事柄について異なる立場の子どもたちが様々な資料をつきつけながら討論を繰り広げるといったようなアクティブなやりとりはおこらなかったが、その理由の一つが、討論期間の短さによるものであることが推測される。
また、討論期間の設定時期にも問題があったようだ。実際に討論に当てられた期間は、3学期の期末テストの期間であった。このようなことは講演会を実施して、メールのやりとりの中で初めて企画者たちに自覚されたものであるが、討論期間の長さと時期をともに勘案して実施しなければいけないという、貴重な教訓になった。
テーマの設定については、中学生からの質問内容や、今後発展しそうな議論を見れば、適切であったように思う。教育を受ける側の子どもたちが、教育の在り方について広い視野で情報を得、他の地域・学年の子どもたちと意見を交換しあう中で見つめ直していくことは、今後の多様化・個性化の時代においては非常に重要なことである。
ただし、それをうまく行うには、まず情報提供の仕組みを洗練させる必要がある。興味を引く形で、自発的に見れるような仕掛けのためには、アクセスしやすい情報形式を考えねばならないだろう。現在のインフラから考えると、メインはテキストで、必要な部分だけ動画にするといった工夫が考えられる。


*注:参加校教員からのメールマナーについての解説
さて、テーマとは別で申し訳ありません。でも電子メール、とくにこのメーリングリストの場合、お願いしたいことがあります。
前の電子メールに対して何か意見を出す場合(コメントをつけるとか、フォローするとかいいます。)、誰のどんな意見に対するコメントなりフォローなりかをはっきりさせないと、議論のつながりがわからなくなります。ですから、たとえば大島未来さんがさきほどポストされたメールを例にとりますと、

---------------
At 5:18 PM 96.3.6 +0900, Miku Oshima wrote:
> はじめまして 前橋市立第四中学校の大島未来です。
>
> 失礼なメールを送ってしみませんでした。
>
> メールを読ませていただきました。今まで総合学科を知らなかったけど、

いえいえ、とんでもないです。
総合学科の内容を知らなかったということですが....
---------------

のようにメールの一部を引用し(その部分には最初に>などのマークを付けるのが一般的)、それについてコメントを書くというマナーがありますので、次回からはこれにチャレンジしてみてください。
手作業で引用していると大変なので、おそらくいまお使いのメーラ(AL-Mail)に自動的に引用する機能があると思います。先生に使い方を聞いてみてくださいね。


4.3.2 広域ネットワークを利用した講演会の教育的面の成果と課題及び展望

インターネットの利用による遠隔地の学校間での共同学習に期待が集まっている。地域性の異なる学校の児童生徒同士が議論したり、調べ学習の成果や観測の結果を提出しあうような事例が報告されている。このような共同学習を支援するにあたって、メーリングリストが有効なのか、WWWを利用することが望ましいのか、あるいは特別な仕組みが必要なのかというような、メディアの特性を踏まえた活用方法については、現在はまだ模索期間である。
今回の実験では、講演会のリソースをWWW上に置いた。転送速度の問題など、現状における技術的な問題はいくつか残しながらも、各校の都合のよい時間にWWW上の講演を体験することができた。また、映像だけではなくテキストを同時に掲示し、講演内容の理解に資することができた。
議論にはメーリングリストを使用し、毎日届くメールを読み返事を書く形で議論を進めていくようにした。さらに、メーリングリストでの議論の成果をWWW上に掲載するという方法を採用し、議論の足跡を振り返ることができるようにした。
これらは、学校間で共同学習を進める際に、学校ごとの都合や時間差を上手に活かした活用方法であると言えるだろう。CU-SeeMeのように、リアルタイムに利用できるツールでなければ不可能な学習形態もあろうが、今回の実験はWWWやメーリングリストがツールとしてふさわしい学習形態であったと言える。インターネットに接続しても適切なサイトがなく学習に利用しにくいという学校現場の声があるが、このような講演サイトが増えることによって授業で利用しやすくなり、通常の講演会と使い分けられる形の学習環境として期待できよう。
今回は時間的制約のために実施できなかったが、講演を体験した側の生徒たちが、自分たちでさらに調べたり考えたりした学習成果をWWW上で公開することができれば、よりいっそう学習の深まりが期待できただろう。今回はメーリングリストで議論した成果をそのままWebに張り付ける方法を採用することで学校側の負荷の軽減を図ったが、本来、学習者自身がこれを再構成する作業を通して自分たちの議論の足跡を振り返り、見つめ直すという活動に意味があるだろう。
また、メーリングリストでの議論そのものを学習として位置づけるならば、やはり十分な時間的保障が必要であったと言えるだろう。多くの実践を見ていると、このような学校間交流においては、まずはお互いを知るという時期がプロジェクトの初期あるいは開始以前に一定期間が必要であり、次にいわゆる表層的な質問と回答の段階に移る。その後、かみ合った議論に移っていくのが通常であろう。今回の実験では、特に中学生から多くの質問が出されたが、この段階にあまり多くの時間がかけられずに本質的な議論を求めた部分があり、この点において多少の無理があった。
WWWに講演を掲載するだけであれば、その利用時期は各学校に任せることができるが、遠隔の学校間で今回のような議論をしようとすれば、時期あわせが必要となる。
これは、共同学習のカリキュラム開発という視点からも重要であり、今後の研究に期待される部分である。

4.3.3 広域ネットワークを利用した講演会の技術面成果と課題及び展望

ネットワーク技術は日々進歩しており,高速な回線へ移行する方向だけでなく,低回線速度でマルチメディア情報を伝送するための情報圧縮技術も様々なものが開発されている.とはいえ,まだどれも開発途上のものであり,決め手となるものは現れてきていない.
通常の講演会の場合,講演者と参加者はface to faceかつリアルタイムの状況で情報が提示される.また補足資料として,OHPやビデオ映像,ハンドアウトなどが利用され,場合によっては,講演終了後,質疑応答が行われる.ネットワークを用いることにより,時間的,空間的制約はある程度取り外すことが可能である.反面,リアルタイム性,参加者の臨場感などはある程度犠牲にされることになり,この部分は今後の技術の進歩に期待しなければならない。
今回の企画では,講演の映像を,文字情報,静止画+音声情報,動画像という3つの形式で提供した.100校プロジェクト参加校を対象に考えた場合,ほとんどの学校が28.8Kbpsという低速回線速度を利用しているため,動画像,音声情報等情報量の多いものは転送しにくい.また,現在,ネットワークで利用可能な動画像圧縮技術では,品質の高い映像情報を提供することは難しい.しかしながら,大学附属校など一部のネットワーク環境の整った学校では,動画像も利用可能であるため,各種の形式での情報提供を試みた.この形式での情報提供は今後しばらくの間,各種回線速度の混在する中では比較的有効な方法であると考えられる。
また,今回は実施しなかったが,これら情報に関しては,CD-ROM等にパッケージ化し,利用することも可能である.パッケージメディアとネットワークを併用することにより,ネットワーク環境の整っていない学校等でもこのような企画に参加し,商用パソコン通信等を介して議論に参加することも可能であると考えられる。
今回の議論に関しては,メーリングリストを利用した.参加者がまだその利用法等に関して慣れていなかったという問題点は残しているものの,議論を行っていくのには有効な手段であろう.また,議論をWWWで公開していくことにより,より広く参加者を募ることも可能であろう.今回は利用できなかったが,議論参加者から情報を提供していただき,それらもWWWで公開していくことも可能であると考えている.これも,情報全てを一ヶ所のサーバーに集めるのではなく,各校のサーバーに情報をおいていただき,リンクを張ることで,ネットワーク自体にそれほど負荷をかけずに情報を提供していくことができるはずである.
ネットワークを教育で利用する場合,とかくリアルタイム性が強調されがちであるが,このような情報コンテンツを蓄積していくことも大変重要な課題である.今回のような蓄積型の情報は今後もかなりの所で繰り返し利用されると思われる.今回の企画を実施することにより,蓄積型データの有効性と,MLを用いた議論の効果を検証した.また,新たな技術の導入による展開の方向性を確認することができた.



4.3.4 ネットワーク講演会のまとめ

* ネットワーク講演会を主催して
「ネットワーク講演会」は,テーマとして高等学校での総合学科をとりあげ,岡田修二先生(静岡県立小笠高等学校校長)による講演「今後の高等学校(総合学科を中心に)」をネットワーク上に文字,静止画,音声情報によって展開してもらった。このネットワーク上での講演を高等学校に公開し,教師や生徒がこれを見,聞きして,質問や意見を提示し,黒田先生(長岡技術大学)の司会の下に参加者による自由な議論を展開することであった。とりあげた「高等学校の総合科」は,現在の学校教育の中で最もその歪みが出ているといわれる高等学校の今後の新生をねらったものであり,情報化社会での多様性と自由な選択による学習の遂行を基本としているからである。このことから,テーマは高等学校の教師や生徒にとって新鮮でかつ問題意識を喚起できるものと考えた。
実際に行ってみると,総合科の自由度を生徒は実施面(カリキュラムから)からも現実に受けとめ各種の質問が為され,またこの自由を上手く享受できるか,自由を享受する各自の責任にまで意見が開陳され,賛成意見反対意見が述べられ,総合科に関わる本質が浮き彫りになったといえる。しかし,時期が時期だけに,参加者が限られてしまったのは残念であった。
このネットワーク講演会は,主テーマの下に参加者が学校や地域,教師と生徒といった壁を一気に飛び越えて自由に討論できることを示すことができ,今後の方向が示されたと言えよう。特に,中心となる「講演」をネットワーク上に公開し,これをもとに議論することで,対象が明確であったこと,司会者など討論をいくらか整理するアンカーマン的存在を位置付けたことなどは,これからのネットワーク講演会のあり方に貴重な示唆を与えるものであった。