1.特殊教育共同利用企画実施の概要

1.1 概要

 情報処理振興事業協会(IPA)と(財)コンピュータ教育開発センター(CEC)の共同事業として,全国100ケ所程度の小中高校,特殊教育諸学校等において,インターネットを活用した教育・学習・交流を可能とする技術的環境整備を提供し,情報活用の高度化を実現する「100校プロジェクト」が平成6年に発足し,平成7年度より本格的運用が始まった.この「100校プロジェクト」では,児童生徒が主体となった利用を目指し,国内外の学校との交流,学校紹介といった情報発信,世界各地の情報資源の活用等が行われている.

 しかし,特殊教育諸学校での利用を考えた場合,児童生徒の障害の種類や程度に適したハードウェア・ソフトウェアの提供,肖像権をはじめとした児童生徒の実態の公開への配慮,担当教諭の負荷軽減の配慮等が必要となる.児童生徒が主体となった特殊教育におけるインターネットの利用についても,ごく限られた学校において試験的に行われている状況であり,今後,中期・長期的な展望に基づいての利用企画および実施・実証が必要である.

 そこで,本利用企画の実施においては,特殊教育諸学校を対象に障害を持った子どもがインターネットを有効に利用し,障害を乗り越えた学習活動できるように,広域ネットワークの特殊教育利用に関する教育的効果と課題,技術的課題等の調査研究を行った.

1.2 企画実施のためのテーマの選定

 企画を実施するにあたり、昨年度の調査結果および研究者、教員の意見にもとづき、特殊教育諸学校の児童・生徒が、できるだけ自由にネットワーク環境を利用できることを考慮し,以下の2テーマについて,具体的な実施計画を策定し,研究グループにより内容の検討を行った.

1)特殊教育におけるインターネットの有効利用

  障害児がインターネット等の広域ネットワークの利用を通して,障害を乗り越えた交流,主体的な社会や他者とのかかわりを持つことができ,その恩恵を十分享受できる可能性がある.しかし,インターネットを利用する上での教育的課題については,事例がほとんどなく明確化されていないのが現状である.

  そこで,本利用企画では,「特殊教育」におけるインターネットの有効利用を図るため,特定の障害分野に限定するこなく全体的な視点に立ち,インターネット利用上の課題を検討した.

2)インターネット利用におけるアクセシビリティ

  アクセシビリティの観点からインターネットを利用する上で,特に配慮が必要となるのは,視覚障害と肢体不自由である.しかし,障害部分を補うことでパソコンおよび広域ネットワークから得られる恩恵が非常に大きいことが期待されている.

  そこで,本利用企画では,視覚障害と肢体不自由におけるインターネット利用の国内外の現状や事例,技術的課題,今後の可能性,期待される教育的効果等について検討を行った.さらに,100校プロジェクト対象校の盲学校・肢体不自由校におけるインターネット利用のアクセシビリティ機器の導入事例を調査した.