3. テーマ「インターネット利用におけるアクセシビリティ」の実施

3.1 計画の立案

 障害の種別に対応した、ネットワークの利用方法を検討するために、メーリングリストを利用し、個々の児童・生徒の利用状態や利用の可能性に関する情報交換を行い、さらには対象校へのアクセシビリティ機器の導入を待ち、利用に関る具体的な課題等を検討することとした。

3.2 実施

3.2.1 東京都立光明養護学校におけるアクセシビリティ機器の導入事例

1)導入のねらい

 100校プロジェクトの実施に伴い,インターネットへの接続のため,東京都立光明養護学校にもサーバ1台,クライアント1台が他の学校と同様に標準で導入された.

 インターネットを利用する目的は2つある.

  1)広く世界中から情報を集め,教育現場に反映させる.

  2)広く世界に情報を発信する.特に閉鎖的と言われる教育現場を公開すること.

 また,インターネット上を流れる情報は一部の人間のものではなく,万人に公平であることが前提である.つまり,健常者のみが情報にアクセスするのではなく障害の有無に関わらず,情報にアクセスする必要がある.

 100校プロジェクトにより導入された機器は一般的なものであり,障害の有る者にとってはそのままでは利用できない.そこで,各種周辺機器,つまりアクセシビリティ機器が必要になる.これらの機器を利用することにより,障害の有る者でも等しくインターネット上の情報を享受することが可能になる.

 そこで,ここでは実際に導入された標準的機器及び,アクセシビリティ機器を明らかにし,また,それぞれのアクセシビリティ機器の利用のされ方を説明する.ただし,障害の種別等により,利用すべきアクセシビリティ機器が異なってくるので,本論では後に紹介のあるI君の事例に沿って説明する.

2)導入機器及びソフト

 ・100校プロジェクトによる配備機器(初期分)

  <サーバーマシン>

   本体:NEC PC-9821 Xn/CPW

   ディスプレー:NEC PC-KM141

   ディスク:NEC PC-HD540EB2

   イーサーネットボード:コンテック CNET(98)E-12

   主ソフト:OS:NEC IP45/421 ソフトウェアセット(SVR-4)

        日本DEC DEC BROUTER

        エーアイソフト PANIX ver.4(CD)

        エーアイソフト PANIX マルチユーザーキット

        エーアイソフトICP/IPキット

  <クラアントマシン>

   本体:Apple Macintosh LC630

   キーボード:Apple キーボード II

   ディスプレー:Apple マルリスキャン15ディスプレー

   イーサーネットボード:Apple EthernetCS Twisted-Pair カード

   ビデオ入力:Apple ビデオシステム

   主ソフト:OS:Apple 漢字TALK7.5

        WWW プラウザ:CSS MacWeb

        InterCon TCP/connect II

 ・100校プロジェクトによる配備機器(追加分)

  <サーバマシン用(関東ブロック)>

   3.5インチ光磁気ディスクユニット:PC-OD302

   3.5インチ光磁気ディスクカートリッジ:PC-OD302-02 ×2

   SCSI機器接続ケーブル:PC-CA502

   増設RAMサブボード(16MB):PC9821A-B04L

  <クライアント用(関東ブロック)>

   ビデオコンバータ:XVGA-1V

   ビデオコンバータオプション(MAC のみ) XVGA MAC-KIT

   デジタルカメラ:QV-10

   ソフトケーブル:LK-1

   フルカラーイメージスキャナ:PC-IN700/4C

   SCSI機器接続ケーブル:PC-CA504

   ASPIマネージャ(WIN のみ) PS98-1223-W1

   増設RAMサブボード(16MB):PC9821A-B04L

   メモリ(32MB/MAC用):JEB122

   PHOTOSHOP:

   FINE ARTIST(WIN):

   SUPER PAINT(MAC):

   CANVAS 3.5:

   EXCEL 5.0:

   ATOK:

  <HTML用ソフト(全国共通)>

   WordtoWeb:

   Microsoft Word 6.0J:

  <入力補助機器(肢体不自由校)>

   【ターボマウス】

   【インテリキー】

   【タッチウィンドウ】

   【キネックス】

   【キネックスオンボード】

   【ヘッドマウス】

   スリムアームストロングシステム

   ユニバーサルマウンティングシステム

・東京都の予算による配備機器

  ※上記の機器とは別に,都内の肢体不自由校には,情報処理機器整備事業の一環としてパソコン及びその周辺機器が導入された.光明養護が導入したものは,以下のものである.

  パソコンA

   Apple PowerMacintosh8100 100AV 16MB/HD1G/CD

   Mac ディスプレイ NANAO-68T 20 インチモニター        1

   画面フィルター TORAYE (20 インチ用)

   Mac-NANAO 接続用 M60  1

   MacMO YANO J230MO+I/F(230MB)

   Printer EPSON LP-9000PS2F2

   Mac 8100AV 用増設メモリ16(16M SIMM)

   Apple キーボードII JIS カナ                 1

   タブレット WACOM ArtPad ADP+ARTダブラー同梱        1

  パソコンB

   Apple MacintoshPerforma630

   *20MB/*HD540M/CD * 増設/ 差し替え              3

   画面フィルター TORAYE (15 インチ用)

   Printer CANON BJC 400J

   ケーブル+ プリンタドライバ CANON PixelColor400J

  パソコンA&B周辺機器/ソフト

   イメージスキャナ EPSON GT 9000ART

   タブレット ミノルタペンすけくん+ ペイントイット同梱     1

   トラックボール ケンジントン ターボマウス4.0       2

   MIDI YAMAHA HelloMusic!300 ( 音源+ソフト)

   MIDIケーブル 接続ケーブル                  1

   スピーカー SONY CSS B100 2.5W

   キネックス                          1

   キネックス オンボードボード                 1

   キネックスキーガード                     1

   プレート スイッチ                      1

   エリプス3 スイッチ(L)

   バススイッチ4セット                     1

   マウンティングスイッチ                    1

   ビッグスイッチ                        1

   ジェリビーンスイッチ                     1

   ストリングスイッチ                      1

   レフト/ライトロッカースイッチ                1

   センサー・スイッチ                      1

   ライトタッチ・スイッチ                    1

   ベーシック・スイッチキット                  1

   キーガード Apple キーボードII JIS カナ用          4

   タッチスクリーン エドマーク・タッチウインドウ        1

   ビデオデッキ SONY CVD-1000                 1

   オーサリングソフト Media Vision *教育機関向け

    Macromedia Director 4.0J forMac             1

   システムソフト ノートンユーティリティ V3.0日本語版     4

   ジャストシステム ATOK8 forMAC V1.1            4

   MAC Software to アドビーフォトショップV3.0J

   ハイパーカード V2.2J                    1

  パソコンC

   IBM PC750(6885-JOM システム装置)

    Pentium-90MHz/4MB ×2/HDD728MB/CD

   IBM 増設 4MBメモリキット (84G7533)  2

   IBM 15 インチディスプレイ  (5574S15)

   画面フィルタ                         1

   キーガード IBM PC750用                   1

  パソコンD

   IBM Think Pad 230Cs (2432FBW)

    SLエンハンスド 486DX250MHz/4MB/HDD540MB         1

   IBM 増設 8MB メモリキット                  1

   SCSIアダプターキット (66G0831)               1

   PCMCIAプッシュポップモデム (DATA/FAX14.4K)         1

   IBM 外付けMO(230MB) (UM323D)  1

   タブレット EasyPainter(+水彩forWin)DOS/V版         1

   IBM トラックボール( 東海理化)                1

   ビデオ出力ボード ThePresenterPlus              1

   キーガード IBM Think Pad 230Cs用             1

  パソコンC&D周辺機器/ソフト

   漢字Pワード                         2

   Acces Dos (GB88-0040)               2

  パソコンE

   NEC PC-9821AP3/C9W

    IntelDX4(100MHz)/7.6MB/HDD540MB/CD             1

   増設RAMボード NEC PC-9821A-BO4L

   SCSIボード NEC PC-9821A E10

   NEC ディスプレイ NEC PC-KM173  1

   TVフィルター                         1

   Printer CANON BJC 400J

   プリンタ切り替え器 JWP 1000T

   ビデオキャプチャーボード NEC PC-9821A E08

   光ディスクユニット NEC PC OD302

   光ディスクカートリッジ NEC PC-OD302-01

   NEC タブレット ART pad *ワイヤレスペン添付         1

   トラックボール TR-01N                    1

   NEC キーガード                      1

   NEC ソフトパートナー(キーボード入力支援装置)

   教材提示装置 NEC EV 368

   モールスキーボード                      1

  スイッチ/センサー

   スイッチ・センサー類(パシフィックサプライ社)

   触覚スイッチキャップ型       (E980-46)        1

   フィンガースイッチ         (E980-15)        1

   握り押しボタンスイッチ       (E980-22)        1

   プッシュスイッチ          (E980-25)        1

   プッシュスイッチ1ボタン      (E980-28)        1

   プッシュスイッチ2ボタン      (E980-29)        1

   プッシュスイッチ5点型       (E980-30)        1

   プッシュスイッチ(ロング型)    (E980-26)        1

   プッシュスイッチ(ワイド型)    (E980-27)        1

   タッチスイッチA          (E980-38)        1

   タッチスイッチB          (E980-40)        1

   テープスイッチ           (E980-21)        1

   光電タッチスイッチ         (E810-1)         1

   押しボタン式センサB        (E981-2)         1

   マウスピーススイッチ        (E980-36)        1

   マイクスイッチ           (E980-19)        1

   プレートスイッチ          (E980-14)        1

   ミニロッカースイッチ        (E980-24)        1

   舌タッチスイッチ          (E980-16)        1

   呼気スイッチ            (E980-23)        1

   触覚スイッチワイヤー型       (E980-47)        1

   ブロアスイッチ           (E980-17)        1

   フレキシブルスイッチ        (E980-37)        1

   1ボタンジョイスティック      (E980-33)        1

   ブレスコールスイッチ        (E980-31)        1

   まばたきスイッチ          (E980-39)        1

   変換ケーブル            (E980V-6)        1

   マウススイッチアダプタ       (E987-1)         1

   こねこの手             (E988)          1

   トーキングエイドαII        (E982N)         1

   トーキングエイド用大型キーボード  (E982-3)         1

  ソフトウェア

   オーサリングソフト MediaVision *教育機関向け

   Macromedia Director 4 0 forWin  2

   VIDEO for WINDOWS              2

   Windows Sound System

   一太郎 for Windows

   三四郎 for Windows

   Lotus 1-2-3 for Windows

   アシストカード for Windows

   花子 for Windows

   子辞書「広辞苑」  CD-ROM版                 2

   EC スーパーYUKI 教師用                 1

   EC スーパーYUKI 児童用                 1

   脳波測定装置(能力開発研究所)PC98用             1

   可動式デスク(平机型3,一体型3)              6

3)主な入力補助用機器解説(参考文献:こころリソースブック1995年版)

  ・1ボタンジョイスティック

    ジョイスティック部分の作動圧を高め,ボタン部分の作動圧を下げて

    あるジョイスティック.

  ・エリプス3スイッチ(L)

    丸型プッシュスイッチ.サイズにより3種類あり,当品はLサイズ.

  ・キネックス

    AppleMacintoshをスイッチやマウスエミュレータ,代替キーボードな

    どで利用するためのインターフェース.キーボードの割りつけや,音

    声割りつけの機能を持ち,マクロ機能の利用も可能.

  ・キネックスオンボード

    AppleMacintosh用のパネル型代替キーボード.最大128のキー割り

    つけが可能.

  ・こねこの手

    マウス操作が困難な人向けの代替マウス装置.モード切替えにより

    クリック,ドラッグ,ダブルクリックの操作が可能.

  ・ジェリービーンスイッチ

    円形の押しボタンスイッチ.スイッチ上のどの部分を押しても,動作

    可能.また,別売りのフォルダを利用することにより複数のボタンを

    纏めることが可能.

  ・ストリングスイッチ

    スイッチ本体から紐が出ており,この紐を引くだけで動作する.

  ・スリムアームストロングシステム

    ジェリービーンスイッチなどを固定して,操作することを目的とした

  ・センサースイッチ

    筋肉の動きにより反応するスイッチ.皮膚表面にセンサーを貼り利用

    する.

  ・ターボマウス

    大型のボールを利用したトラックボール.細かな運動制御が困難な人

    にも利用可能.また,附属のソフトによりボタンに機能を張りつける

    ことも可能.

  ・タッチウィンドウ

    AppleMacintosh用タッチウィンドウ.12インチから14インチまで

    対応している.キネックスと組み合わせることによりAppleMacintosh

    のすべての機能をスクリーンにタッチすることで利用可能.

  ・タッチスイッチA

    スイッチに皮膚が触れただけで反応するスイッチ.

  ・テープスイッチ

    手などで折り曲げることにより反応するスイッチ.

  ・トーキングエイドαII

    キーボード上の50音のキーを押すことで,押した文字が発声する.

    発声する声は男性声/女性声の切替えやスピードの調節も可能.また

    同時にディスプレイにも表示する.また,1800文字までの文書保

    存機能があるので,登録しておけば簡単に呼び出せる.

  ・トーキングエイド用大型キーボード

    トーキングエイドαにおいて,手による入力が困難な人の為に足による

    入力が可能になるように大型化したもの.ただし,既にトーキングエイ

    ドαを持っている場合は,接続に際して改造が必要になる.

  ・ビッグスイッチ

    粉々にならないプラスチックで作られた円形の押しボタンスイッチ.大

    きめだが,軽いタッチで動作する.また,スイッチのどの部分を押して

    も反応する.

  ・フィンガースイッチ

    ベルト等で固定して利用する小型サイズのスイッチ.

  ・プッシュスイッチ

    円形の押しボタンスイッチ.作動圧が大きいので,大きな動きで押さえ

    るのに適している.

  ・プッシュスイッチ(ロング型)

    レバーを押すことにより動作する角形スイッチ.作動圧はやや高め.

  ・プッシュスイッチ(ワイド型)

    広い操作面の何処を押しても動作する角形スイッチ.

  ・プッシュスイッチ1ボタン

    ケースの上面の小さな円形の押しボタンを,指先等で軽く押すことによ

    り動作する.

  ・プッシュスイッチ2ボタン

    ケース上面に小さな円形の押しボタンが2つあるので,そのボタンを指

    先等で軽く押すことにより動作する.

  ・プッシュスイッチ5点型

    丸型押しボタンを5つ並べ,上下左右の移動とトリガーボタンに割り当

    てたもの.

  ・プレートスイッチ(パシフィックサプライ製)

    薄型のプラスチック製のスイッチ.防水構造になっている.

  ・プレートスイッチ(アップルディスアビリティセンター製)

    角型の押しボタンスイッチ.片方がヒンジになっていて,その反対を押

    すことによって動作する.

  ・フレキシブルスイッチ

    細長い針金をわずかでも偏立させれば動作する.

  ・ブレスコールスイッチ

    息を吹きかけたり,声を発することにより動作する.

  ・ブロアスイッチ

    ブロアを軽く押すか握るだけで動作する.設置位置を自由に選択できる.

  ・マウスピーススイッチ

    マウスピースを口にくわえ,噛むか舌で押すことにより動作する.

  ・マウンティングスイッチ

    長いアームを持った押しボタンスイッチ.

  ・まばたきスイッチ

    専用の眼鏡をかけることで,まばたきを認識して動作する.

  ・ミニロッカースイッチ

    手のひらにのるコンパクトなロッカースイッチ.

  ・レフト/ライトロッカースイッチ

    2つのスイッチを持つ,プレート状のスイッチ.

  ・握り押しボタンスイッチ

    握ることにより動作するボタン.

  ・押しボタン式センサB

    押す,ひねる,折り曲げる等の動作で反応させる.

  ・呼気スイッチ

    スイッチ部を口にくわえ,息を吸うか吐くことにより動作する.ス

    イッチ部は位置の調整が可能.

  ・触覚スイッチキャップ型

    指のわずかな動きや力で押すことで動作することが可能.

  ・触覚スイッチワイヤー型

    触覚スイッチキャップ型と同様だが,キャップの代わりにワイヤー

    を採用している.

  ・舌タッチスイッチ

    タッチ面に舌先を軽く当てるだけで動作する.タッチ面は位置の調

    整可能.

4)I君が利用する際の機器解説

  ・キネックス及び呼気スイッチ

    パソコン及び,ソフトを利用する際にはマウス及びキーボードが利用できることが前提となっており,I君の場合そのどちらも利用することが困難であった.

    そこで,その代替機器として,キネックス及び呼気スイッチを選択した.呼気スイッチは人間の呼気に反応してスイッチングをしてくれる機器で,これはI君にとっても利用可能な機器であった.また,呼気スイッチを接続するために必要となったものがキネックスである.このキネックスを経由することにより,呼気スイッチの利用が可能になる.

    このキネックスにはソフトが添付されているが,現場の教師がそのソフトに変更を加えることが可能なので,子ども達が利用するために最適な状態に変更して利用できる.

3.2.2 東京都立光明養護学校におけるI君の利用事例について

1)はじめに

 肢体不自由児を対象とする養護学校では,従来から児童生徒のコミュニケーションの表出手段として,パソコンなどの情報処理機器の積極的な活用がなされてきた.パソコン通信についても,肢体不自由児の移動の困難という社会的ハンディキャップを補う手段として様々な活用が試みられて来たが,それが主にテキストレベルでのコミュニケーションを主にしている事から来る制約もあった.インターネットでは,それに比較して画像とか音声が容易に扱えるという利点がある.

 この稿では,三年間担任して来たI君とのかかわりの中から,インターネットの持つ利用効果・教育的課題・技術的課題などを考えてみたい.

2)入力方法の決定まで

 私が光明養護に勤務するようになって三年目になる.最初に出会ったのが,私の赴任と同時期に高等部に入学して来たI君であった.中学部時代は国語の先生が担任していたという事もあってか短歌を趣味とするということであり,クラブの時間には少しパソコンを学習していたとの事であった.

 美術の時間の事である.課題は確か「自画像」だったと思う.肢体不自由の養護学校といっても様々な児童生徒がいる.I君の所属する学習グループは,教科学習が可能な生徒達が所属するグループで,東京の肢体不自由の養護学校の中では比較的障害が軽い生徒達である.I君以外の生徒達は,介助の先生に少し手助けしてもらえば,なんとか自分で絵が描ける.I君もベッド状の【電動車椅子】にうつぶせの状態で乗り,それを自分で上手に運転出来る位であるから,なんとか介助者の手を借りずに自分の意志で絵を描けないものか・・・そんな問題意識から,自助具としてのパソコンの活用を試みてみた.

 家にはお父さんのパソコン(PC9801)があり,その利用も可能だというので,学校の授業時間内に描けなければ,フロッピーを持ち帰りさえすれば,体調のいい時に自宅でも描く事が可能である(確か,週に一回程度は登校しないで自宅で休養する日を設けていたと思う).

 問題は入力方法である.たまたま,同僚の佐野先生(以前から私達と一緒に,肢体不自由児教育へのワープロ・パソコンなどの活用のための研究・実践をすすめてきた先生.この分野での先駆者のお一人)【手作りの入力装置】などがたくさんあったので,佐野先生にお願いして試させて頂いた.ソフトはKid98というお絵かきソフトを使ったのであるが入力装置については,なかなかフィットするものがなかった.I君は,電動車椅子のレバーを上手に操作出来る位であるから,マウスについても,もちろん考えてみたが,握力の関係でうまく操作するのが難しかった.

 そんな時である.お父さんが街のパソコンショップで【光学式マウス】を見つけて来て下さった.マウスは金属板の上を移動させるので,比較的楽に操作出来るし,ボタンもタッチが軽いものを選らんだので大丈夫であった.

 入力装置が決まればあとは作品の完成は早かった.最初に本格的に描いたI君の【作品(パズル)】が,パソコンの絵だった事が,I君のパソコンに対する気持ちをあらわしているように思われる.

3)パソコン通信の活用

 I君に最適な入力装置が決まったので,今度は文字入力の自助具として・・・つまりワープロの利用に挑戦した.これはさほど苦労する事なく,一太郎+【HAライブラリー】(マウスモード)を使う事により,入力が可能になった.最初に入力したのが,I君が中学部時代に創作した小説【「ウサギとカメ」】であった.

 本校では,大体秋に光明祭という文化祭が行われる事になっており,I君が所属していた学年では,上述のI君作「ウサギとカメ」を原作とした劇を上演する事になった.夏休みをはさんで,文化祭のシナリオを書かなければならない.結果的に,I君とパソコン通信を使って検討を重ねる事にした.

モデムは,学校のものを貸し出し,ネットは,当時,東京都立府中養護学校に勤務していた金森先生(現在,光明養護に勤務)が,府中養護ネット用にオートパイロット用のマクロを書いていてくれたので,それを使わせて頂く事にした.結果的に,I君のお母さんからも「長い夏休みに,<パソコン通信を使ったシナリオの検討>という芯が一本出来,体調を崩さずに暑い夏を乗り切る事が出来ました」というような評価を頂く事が出来た.

4)入院と入力方法の再検討

 そんなこんなで順調な学校生活を送っていたI君であるが,その学年の冬,風邪をこじらせて入院する事になってしまった.幸い,快復し元気になったのであるが,気管切開したという事もあって,うつぶせになるのが難しく,それまでの操作でのパソコンの利用

は不可能になってしまった.

 そこで,【HAライブラリー】のワンスイッチモードで一太郎などを使う事にしたが,HAライブラリーはソフトによっては相性の悪いものがあるのが難点であった.(本人は仰向けの状態で,手で軽いスイッチを操作.)

 丁度そんな時,特殊教育学会の<肢体不自由教育とコンピュータ>というワークショップの中で,CEC(財団法人 コンピュータ教育開発センター)の「肢体不自由児を対象とした試作システムの概要」が報告された.これは,DOS/V機を使ってPC9801を制御する方法(キーボードからの信号の入力の代りに,DOS/V機からRS−232Cを経由してPC−9801に信号を送る)なので,ソフトの相性の問題は解決する.この【試作機】を,CECにお願いして,しばらく試用させて頂く事が可能になった.(CEC「平成6年度 研究開発事業成果報告書」参照)

 翌年,都内の肢体不自由校でパソコンを導入することになり,本校でも,「様々な障害を持つ児童生徒がいるので,出来るだけ多様な障害に対応しうる機器を導入しよう」という観点から,マッキントッシュ3台・ウィンドウズ機2台を導入した.障害者用周辺機器・ソフト・スイッチ類も可能な限りリストの中に加えた.

 これまで使って来た機器との互換性などを考え,【ソフトパートナー】などの検討も含めて色々試してみたが,最終的には,【マッキントッシュ+キネックス+呼気スイッチ】の組み合わせが,本人にとって一番いいようであった.

5)パソコン通信からインターネットへ

 こういった技術的な課題への対応とは別に,学校の授業とかホームルームの様子などを細めに府中養護ネットに書き込むようにしてきた.I君は気管切開しているのでお母さんかお父さんに付き添って頂いての登校と言う事もあり,どうしても登校日数が限られてしまうので,<在宅学習支援>という見地からパソコン通信の活用を試みて来たのである.しかし,この稿の最初にも述べたように,パソコン通信というのは主に文字レベルでの情報しか扱えないので自ずと限界があった.

 また,NHKの「ティーンズねっとわーく」という番組があり,それに参加した事もあった.「ティーンズねっとわーく」という番組は,高校生を対象にパソコン通信の双方向性という特徴を使って,高校生同士の意見交換を元に番組を作っていこうという意欲的な番組である.I君など,日頃から自宅からパソコン通信している生徒には,養護学校の中だけでなく,他の高校生達と広くコミュニケーション出来るチャンスだと思われたので個人的な参加を薦めてみたのであるが,一日に書き込まれる量があまりにも多く,また話される内容にも少しずれがあったようで,結果として,個人的な参加は一年間だけで辞退する事になった.

 そういった状況の中で,100校プロジェクトの募集があった.申し込みの時点で私自身,インターネットを経験していたわけではないが,少し考えただけで,以下のメリットが予想された.

 ・パソコン通信より,画像とか音声などが比較的容易に扱えるため,文字情報だけではなかなかのりきれなかった生徒もコミュニケーションに参加しやすくなる.

 ・パソコン通信を使った実践では,公衆電話を利用するなど,回線の確保には苦労させられた.今回のプロジェクトでは,回線も敷設して下さるという事が大きな魅力であった.

 ・それまで,パソコン通信を使った実践では,上記の府中養護ネット・ティーンズねっとわーく(実質的には,Nifty-Serve 内のCUGを利用)の他,学区域の中にある障害者関連の草の根BBS・・・トーコロBBS・世田谷ストリート・杉並ここと・みんなのねがいネットなどを利用して来たが,それぞれホストが採用しているシステムが違うため,それぞれのシステム毎にアクセシビリティを考える必要があった.具体的には,それぞれのネット毎にマクロを書かねばならず,仮にマクロが書けたとしても,ネット毎にいちいちアクセスせねばならず,I君のようにアクセシビリティに問題のある生徒には大きな負担になる.もし本校がインターネットに接続され,本校を通して地域の草の根BBSが「統合」されれば,結果として,世界に開かれた地域ネットワークが実現出来る.

 結果的に,三つ目の「世界に開かれた地域ネットワーク」の実現は,現時点ではセキュリティの問題等から,直接の形では実現出来ていないが,将来的には大きな可能性を秘めていると思われる.

6)I君にとってのインターネット

 さて,いくつかの紆余曲折を経て,幸い,100校プロジェクトの中の一校に加えて頂く事が出来,昨年の夏からインターネットに接続する事が出来た.10月には,学校のホームページを暫定的に作成し,I君の作品も公開するようにした.I君の作品を見た人達からは,好意的なメールなどが多数届くようになった.ある時には,I君がパソコン操作している最中に,四国の高校生からメールが届くという事もあった.

 ・ある会社員の方からのメール

  こんにちは.

  さっそくホームページ,会社で拝見させて頂きました.

  みなさんいい顔してますね.写真を取ったときの様子が思い浮かぶようです.

  迷路,絵,物語,詩,とてもすばらしい作品ばかりですね.

  (途中,省略)

  でも,みんな,なんかしら手段があれば,あれだけのこと出来るんですよね

  (わたしゃどれも出来ない).

  それを世の中の人たちに知って頂けるだけでも,意味あるホームページだと

  思います.

  まもるさん,そしてホームページに載っていたみなさん,次の作品を

   期待しています!!!

 ・ある高校生へのI君からの返信

  > 迷路や詩やグラフィックを見てたいへん関心しました.人にはそ

  > れぞれ困難があり,またそれを乗り越えて人は成長して行くもの

  > だと思います.みなさんもこれからさらに頑張ってください.

  > よろしければ,またメールを下さい.

   すぐに感想を頂けてうれしいです.ちょっとはずかしいです.

   また見て下さい.

                  都立光明養護学校高等部三年

 また,ある学校の先生を通じて,こんなメールも頂いた.

  :いま,生徒と一緒に拝見しました.

  :彼の感想は

  :呼気スイッチにびっくりした.

  :同じようにインターネットにさんかしていると思うと,すごいなと思った.

 人は,「評価され,励まされる」事によって,自らの出来ることの中で社会的に参加し貢献していこうとするものだと思う.重度の障害を持っていようと,そうではなかろうといろんな立場の人たちがインターネットなどを使って,相互に知り合い,社会参加を果たし,相互啓発をし・・・・・・夢は広がる.

7)在宅学習支援システム構築の可能性について

 また,ティーンズねっとわーくの「インターネットって何?」という特集に参加する中で,インターネットを使ったテレビ会議機能をテストするチャンスにも恵まれた.電話とかパソコン通信などでは難しかった<在宅学習支援システムの構築>の可能性を調べてみたかったのである.

 具体的には,QTCとCU−SeeMeを使った実験をした.

 QTCについては,もともと「LANか専用線(128kbps 以上)を使用したインターネットで接続しないと使用出来ない.」という事ではあったが,少しは・・・という期待から実験してみたのであるが,結果的には,やはり無理であった.QTCの方が,カラーで共有ボードがあり,そのボードを使って共同作業が出来るなど,メリットが大きいのだが土台,専用回線とはいえ,28.8kのモデムで接続しようというのが無理のようだ.

(本校の回線は,アナログの28.8k)

 【CU−SeeMe】については,実験・リハーサル段階ではそれなりに相互に見る事は出来たが,番組の収録の時は,悲惨であった.【静止画像】を送るのに10分以上かかる有り様だった.土曜日の午後の収録だったので,お昼過ぎから徐々に回線が混みだしただろうか.

 その後,学校とI君の自宅をつなぐことを想定して,お互いにアドレスを直接入力する方法でつなげてみたら,14400のモデムでもなんとかつながった.学校のサーバーにつながっている方が,6から7fps ,プロバイダにppp接続している方が,0.0 から

0.5fpsなので,お世辞にも快適とは言えないが,静止画像+画面に文字を書き込むなどの工夫をすれば,現状でも,なんとか使えるかな・・・というか,パソコン通信の文字情報だけ・・・という状況に比べれば,「少しは使えるかな」という感じだと思う.

 結果的には,<現状の28.8Kのアナログ回線では厳しいものがある>という事を再認識する結果とはなってしまったが,問題点とその打開の方策がより明確になった事も確かではある.

8)WWWの操作性について

 今年に入って,I君に,実際にインターネットの操作をしてもらった.WWWについては,本人のスタート用ホームページを工夫してみたが,それだけでは最初はいいが,他のページに飛んだとき,使いにくいので,I君などの1点入力の場合,ポインタの設定の工夫の余地があると思われる.

 I君は,上述した通り,キネックス+呼気スイッチを使っており,それはそれで,パソコン操作自体は,本人への身体的な負荷はあまり大きくはないようであるが,横で見ていて,あまり効率的ではないようにも思われる.マウスポインタの動きをもう少し効率的に出来ないか・・・そんな問題意識から,府中養護学校のヘッドマスターをお借りしてそれも試してみた.

 結果は,受光部分の位置の設定と,I君の顔の位置からして,ヘッドマスターの耳の部分がじゃまになって,ポインタを動かすのが難しいようあった.受光部分についてはスリム・アームストロング・システムないしは,ユニバーサル・マウンティング・システムなどを使うことで解決できる.後者の問題については,ヘッドマウスないしトラッカーを使うことで解決出来るかも知れない.

9)インターネット上でのメールの送受信

 自宅でのインターネットの利用と言うことで,昨年から,具体的な機種と接続の方法などを検討してきたが,機種については,上述の通りMac+キネックス+呼気スイッチ接続方法については,学校のサーバーに直接アクセスする状況は作れなかったので,商用プロバイダを利用する事の検討に入った.

 実際に,個人が家庭からアクセスするとなると,電話代とか利用料など,お金の問題がからんでくるので,慎重にならざるを得ない.そこで,まず私自身が商用プロバイダの実状について何も分からなかったので,昨年の暮れに,あるプロバイダと契約し,実験的に始めてみたが,なかなかつながらないとかスピードも遅いとか,色々問題が出てきた.

 ちょうどその頃,商用パソコン通信のネット局もインターネットのPPP接続サービスを始めたので,結局はそれを利用することにした.インターネットのメールは,商用ネットのメールサービスを使って,WWWサービスは,そのPPP接続サービスを使う事に

したのである.

 現在,Comnifty・めーるめーぼ・茄子Rなどのソフトを使って,いかにしたら身体的・金銭的な負担を少なくしながら,メール機能を利用出来るか,オートパイロットの設定の検討中である.

10)今後について

 I君は,この3月に卒業ではあるが,東京都の意志伝達装置の給付枠を利用して現在学校で使用しているシステムと,ほぼ同じ内容のものを購入する事にしている.また卒業後通所する進路先の施設でも,同様のものを購入してくれた.現在は,それらを使って自宅から,商用ネットのメール機能とか,インターネットの利用に挑戦中である.

 最後に,この報告を,I君とそのご両親からのコメントで終わろうと思う.

   あらためて考えてみると,ぼくの生活にはパソコンが大きくかかわっています.

  作文や絵を描くのもパソコンだし,学校を休むことが多いぼくでも,先生や友達と

  パソコンで話をすることができます.今ではぼくの生活にはなくてはならないもの

  です.パソコンを始めなかったら,今のように楽しくなかったし,ずいぶん不便な

  生活をしていたと思います.  I君

   高校に進み,充実した生活を送っていましたが,一年生の三月につらい三ヶ月の

  入院生活を送ることになってしまいました.健康面,生活面で本人はもちろん親も

  不安で暗い気持ちに落ち込む時期がありました.そんな時に,先生がしばしばメー

  ルを持ってお見舞いに来てくださいました.会ったこともないかたがたからの暖か

  いメールにとても励まされました.その後体調も安定し先生方のおかげで,パソコ

  ンも操作できるようになりました.卒業後もパソコンを通じて自分の生活を創って

  いって欲しいと願っています.  ご両親

                【電動車椅子】

                【手作りの入力装置】

                【光学式マウス】

                【作品(パズル)】

                【HAライブラリ】

                【ウサギとカメ】

                【試作機】

                【ソフトパートナー】

           【マッキントッシュ+キネックス+呼気スイッチ】

                【CU−SeeMee】

                【静止画像】

3.2.3 視覚障害におけるインターネット利用のアクセシビリティ

1)いわゆるアクセシビリティの問題

 アクセシビリティにはいくつかのレベルがあり,そのそれぞれに解決すべき点がある.いくつかのレベルとは,ハードウェアのレベル,OSのレベル,クライアント・ソフトウェアのレベル,サーバ・ソフトウェア(コンテンツ)のレベルである.視覚に障害のあるユーザがインターネット上でサービスされている情報を利用しようとする場合,通常のキーボード+マウス+ビデオディスプレイ以外に特殊な入出力用周辺装置が必要であることは,比較的想像・理解しやすい点である.しかし,点字ディスプレイや音声合成装置を接続するだけでは,インターネット上の情報サービスへのアクセシビリティは解決しない. 以下にそれぞれに解決すべき問題点を述べる.インターネットに固有のアクセシビリティの問題も存在するのである.

1.ハードウェア・レベルのアクセシビリティ

 これはインターネットに特殊な問題ではなく,パーソナルコンピュータなどの情報端末一般の問題であるし,他のところでも述べられることも多いのでここでは,後の部分の理解を助けるために紹介する程度にとどめる.視覚障害者用のハードウェアとしては,視覚を利用できるユーザの場合(弱視ユーザ)と,視覚を利用できないユーザ(全盲ユーザ)の場合に分けて論じる必要がある.両者には全く質の異なるニーズがあるからである.視力を活用できるユーザの場合には,通常のディスプレイにハードウェアズーム機能の付いたフレームバッファを利用したり,ソフトウェアで拡大するOSの拡張ソフトが有効な場合が多く,特殊なハードを必要としないこともしばしばである.これに対して視覚を利用できないユーザの場合は,ディスプレイに表示された情報を,視覚以外の感覚モダリティに変換して表示する音声合成装置や点字ディスプレイが必要になる.入力も点字キーボードの方がユーザインターフェースとしては優れているが,QWERTYキーボードを利用できることも多い.

 ただし,ユーザインターフェースから言うと,点字ディスプレイが未だに1行分の文字情報しか表示できないで,ディスプレイ上のレイアウトなどの情報を触覚的に利用できるような2次元的な広がりがない点,音声合成装置の発音速度が英語のものに比べるとずっと遅い点など改良の余地は多い.しかし,前述したように,これはインターネットに固有の問題ではないのでここでは触れない.

 インターネットとの関連で問題になるのは,通信に使うハードウェアと視覚障害者のための特殊な入出力装置がバッティングを起こす場合である.公衆回線経由でのインターネットの利用にはモデムが必要になるが,音声合成装置や点字ディスプレイにはシリアルインターフェースを必要とするものがあり,標準で提供されているインターフェースでは足りなくて,シリアルインターフェースを増設しなければならない場合が生じる.このような場合は,サービスプログラムが提供されないことがあるので問題がある.

 最後になるが,強度弱視,あるいは,準盲と呼ばれる視覚障害の状態や,進行性の視力低下がある場合には,弱視用の道具建てと,全盲用のハードウェアの両者を必要とすることが多いことを付け加えておきたい.

2.OS・レベルのアクセシビリティ

 OSに特殊な拡張機能を付加することによって,画面の拡大をしたり,画面に表示されている文字情報を音声合成装置や点字ディスプレイに表示したりする「画面読みソフト」の方法は,現在最も良く用いられている方法である.これも,直接インターネットとは関係しない.視覚障害ユーザがパーソナルコンピュータなどの情報端末を利用する際に一般的に関係してくることである.

 ただし,インターネットを利用する際に必要となるイーサネット・アダプタなどのインターフェース・カードや,そのサービス・プログラムは,この2年くらいの間に広まったものであり,視覚障害ユーザのためのOSの拡張機能の部分と相性が良いとはいえない.特に,現時点で圧倒的多数の盲人ユーザが利用しているMS−DOSベースのシステムでは,イーサネット・アダプタのサービスプログラムがメインメモリを大量に消費すると,音声や点字の拡張機能が機能しないとか,あるいは,インターネットのクライアント・ソフトがメモリ不足で起動しないとかいった問題が生じる可能性は高い.また,ただでさえ残り少ない割り込みリクエスト番号にもバッティングの問題が生じる可能性がある.

 OSの問題としては,ここ数年でOSがテキストベースから,GUIベースに大きく転換した問題を指摘しておくべきであろう.しかし,技術の転換に障害者対応するアクセス技術が追いつくには時間がかかることが普通で,ユーザに浸透するには,さらにずっと時間がかかる.

 Windows95では,障害者のアクセシビリティを向上させたと言われているが,弱視ユーザへの対応1つにしてもそれほど大きな改善があったとは思われない.サードパーティの作っている画面拡大ソフトには有効なものがあるし,盲人ユーザのための画面読みソフトも何種類が出ており,日本語のソフトも障害者職業総合センターが開発したものがある.MacintoshにはCloseViewという画面拡大のシステム拡張機能があるが,日本語の画面読みソフトは未だにない.このような状況で,弱視のユーザは,次第に拡大のしやすいGUIベースの環境へ移ってきている一方,大半の盲人ユーザは,視覚障害者用の資源の抱負なDOSのテキストベースの世界にとどまっている.

3.クライアント・ソフトウェア・レベルのアクセシビリティ

 画面拡大が有効な弱視ユーザの場合,クライアント・ソフトには,大きな問題はない.ここでは,もっぱら視覚を利用できないユーザのアクセシビリティの問題を論じる.インターネット上の情報サービスを利用するクライアント・ソフトウェアの多くは,視覚障害者の利用を全く想定していない.もっともテキストベースのクライアント・ソフトであれば, 2で述べた画面読みソフトで利用できることが多い.たとえば,VT100エミュレータ・ソフトで,インターネット経由でホストコンピュータにtelnet接続し,UNIX環境の提供するNemacsと,mh−eやgnusなどのメーラ,ニュースリーダを利用している場合には,ローカルマシンの画面読み機能が,Nemacsのキー操作とバッティングすることさえなければ,特にアクセシビリティの問題は大きくないと言えるであろう.

 しかし,WindowsなどのGUIベースのOSで動作するクライアント・アプリケーションでは問題は少なくない. 2で述べたようにOSレベルでの画面読みをサポートしない場合はもちろんのことであるが,仮にOSレベルで画面読み機能を実現していたとしても,それがクライアント・ソフトの重要な表示をすべて読み上げるとは限らないのである.これは,1つには,GUIベースのアプリケーションが,文字などもグラフィカルに処理しているからである.

 特に,インターネット上のマルチメディア情報サービスであるWWWを利用するブラウザには,全盲ユーザのアクセシビリティの問題がある.ただ,カンザス州立大学が開発したLynxというテキストベースのブラウザがUNIXとDOS環境で提供されており,全盲ユーザは,使いなれたDOS環境で,テキストベースのブラウザが利用できる状態にはなっている.日本語対応したLynxも,大阪大学の金島さんがインターネットで提供している(ftp://ftp.semi.ee.es.osaka-u.ac.jp/pub/os2/communication/lynx2-4-1jp.os2.tar.gz ).

 しかし,この画期的なLynxも初期のWWWの仕様には対応していたが,新たに続々と追加されてくるHTMLの機能や,マルチメディアplug−inなどの機能には,まったく対応していない.この部分のアクセシビリティをどうするかは,今後次第に大きな問題になるであろう.このことは,サーバのところで詳しく触れる.

 一方,弱視ユーザに対しては,WWWブラウザとして,ほとんど標準とみなされつつあるNetscapeNavigatorは,表示文字の大きさ,色や背景色の設定を細かくでき,かつ,コンテンツに指定してある文字の大きさや表地色を上書きしてしまえるようになっているので,アクセシビリティは全盲ユーザに比べて格段に良くなった.

4.サーバ・ソフトウェア(コンテンツ)・レベルのアクセシビリティ

 クライアントの問題はサーバ側の問題と切り放して考えられない部分がある.そこで,サーバの問題を取り上げる必要があるわけだが,アクセシビリティで問題になってくるのは,インターネットが次第にマルチメディア的な様相を帯びてきたからである.マルチメディアも,画像や音声の規格が共通化されHTML言語のようなテキストベースの枠組みの中に,外部ファイルとしてはめこまれているうちは,視覚障害者にはかえって都合が良い.それでも,情報がグラフィカルにだけ提供されていて,同等の内容が文字になっていないような場合には,内容にアクセスできない.

 アメリカ連邦政府のPaul Fontaine は,すべての人にアクセスできるHTML文書の書き方のガイドラインを公開している(http://www.gsa.gov/coca/WWWcode.htm ).ウィスコンシン大学のトレースセンタも,もっと詳細な文書を公開している(gopher://trace.wisc.edu:70/0/ftp/PUB/TEXT/CURBCUT/WORKING/HTML_DSN.TXT ).その多くは,テキストベースのブラウザでWWWへアクセスしている視覚障害のユーザを考慮したものである.Paul Fontaine に許可をとり,彼のガイドラインの日本語訳を公開(http://www.twcu.ac.jp/persons/mure/odalab/k-oda/AccessBlind/AccessibleHTML.html )したが,ここではそのガイドラインの部分だけを引用する.

・画像部分には,それに関連したテキストを付記するべきである.

・画像によるクリッカブル・マップを使う場合,それ以外の方法を選択できるようにする べきである.

・JPEG画像には,その画像の内容を記述した「コメント」を付加する.

・オーディオ・クリップ全部に文書に起こしたものを付ける.

・リンク部分のテキストはできるだけ中身が分かるように,しかし,冗長にならないよう にする.

・HTML以外のファイルフォーマットを使う場合にも,かならずHTMLファイルを用 意し,HTML以外のファイルしかないということにならないようにする.

・オンラインフォーム(FORM)を使う場合,それ以外の機構も提供すること.

・すべてのページをいくつかのブラウザでテストすること.

・特定の製品に限定されたタグを使わないこと.

・箇条書きの最初に書く中点などのような単純な画像について,テキストで説明するとき は,単純なALTを使うこと.

 これらの配慮がWWWをもっとアクセシブルなものに変えていくであろうし,このような情報をもっとインターネット全体に普及していく必要があるであろう.

 このような努力が行われている一方で,単なる画像や音声を越えたグラフィカルでかつインターラクティブなサービスがサーバ側に増えてきており,アクセシビリティにかなり陰がさしてきた以下に2つの例をあげる.

1)Javaと言われる言語はHTML言語に付加的に加えることで,WWWの表現力の幅 を一気に広げた.しかし,MPEGやQuickTimeフォーマットで提供された動 画情報と異なり,Javaのアニメーションは複数の静止画ファイルをJava言語で 時間順に編成して表示している.つまり,独立した動画ファイルがなく,どのようなア ニメーションであるかということは,Java言語でしか記録されていないのである. これは,HTML言語で動画ファイルがリンクされていた場合と比べると,全盲ユーザ にとってはかなり意味が異なる.Java言語はC++言語に良く似ており,HTML に比べるとずっと複雑で,ソースプログラムを読んだら分かると簡単にいってのけられ るようなものではない.Javaでかかれたインタラクティブなページに中にも,マウ スでグラフィカルなシンボルをクリックするものがあり,このようなインターフェース ・デザインそのものが,テキストベースのブラウザにはまったく意味をなさないという 問題をつきつけている.

2)Shockwaveというマルチメディア文書がサーバから送られ,Netscape Navigatorのplug−inモジュールを用意すればそれが利用できる.この Shockwaveの文書は,それ自体に,ボタンやリンクを内包することができ,視 覚が使えるユーザには,HTML言語が提供できなかったインタラクティブなものつけ 加えることができる(もちろん,単なるアニメーションを伝えるのにも使えるし,その 場合は,Javaアニメーションよりは全盲ユーザにとって扱いやすいものになる). テキストベースのブラウザでWebを見ている場合,Shockwaveの文書の中身 は見えない.したがって,その文書の中のリンクはテキストブラウザには利用できない のである.

 これらのサーバ側の,あるいは,マルチメディア・コンテンツのアクセシビリティの問題は,インターフェースがコンテンツの一部としてデザインに組み込まれているのであるから,解決はそれほど容易であるとは思われない.ただ,すべての人に公平に情報提供すべき公共サービスでは,少なくとも,視覚障害者が同等の情報を入手できるようにする義務があり,大多数にとって使いやすくなるからという理由で一部のユーザのアクセシビリティを犠牲にすることはできない.

2)海外の事情

 ここでは,インターネット利用の可能性を探る上で,海外,主にアメリカの状況を概観する.1994年にアメリカのインターネット事情を調べたときには,その中で視覚障害に関する資源は決して多くはなかった(小田浩一 1995.視覚障害情報処理技術(1994年)−6.海外の状況. 視覚障害, No. 136, P. 61-68.).それが1995年の1年で,インターネットはすっかり情報メディアとして確立しつつある.以下に具体例を上げると,

1.多くの視覚障害関係の情報機器のメーカー・ベンダーが,インターネットで情報を流 したり,問い合わせを受け付けたりしている.TeleSensory http://www.telesensor y.com/indextxt.htm )などの視覚障害者を顧客として特殊化した会社の情報サービス ではテキストだけのページや,文字を大きくして白黒反転したページなど,視覚障害 者のニ ーズに応じた複数の見せ方を工夫している.

2.アメリカ盲人協会(American Foundtaion for the Blind; AFB)のジャーナルなどで は記事を書いた著者の電子メールアドレスが記載されている.

3.連邦政府などの政府機関のみならず,地方の図書館の視覚障害者サービスや盲学校, 障害者団体など,草の根の団体もインターネットで情報サービスを始めるところが増 えてきた.

4.各地で有志が,ネット上の資源をまとめたホームページを作って,関係者が情報をみ つけやすいようにしている.

5.YahooやLycosといった,ネット上の資源を検索するいわゆるサーチエンジ ンでも,障害関係の資源がどんどんと見つかるようになった.

6.AFBのジャーナルの最新号(199511-12 月号)には,インターネットのコーナー ができて,関連情報に3ページを割いている.

 極端な見方をすると,インターネットというメディアとこれまでの雑誌などのメディアでは,すでに量と質の両方で重要度の逆転が起こっている.もちろん,内容が情報やテクノロジーに関するものに限っての話ではあるのだが,インターネットでは重要な情報が,無償で,タイムリーに,オリジナルのままで得られるのに対して,雑誌では編集者というフィルタを通した情報がかなり遅れて有償で到着するのである.情報の流通経路が大きく変わりつつあることが分かる.

 しかし,インターネットが学校やリハビリテーションの現場で視覚障害者へのサービスの向上に結びついたというような報告はまだない.また,視覚障害児の学習のために何らかの役に立ったという報告も視覚障害の専門誌には現れていない.

 つまり,インターネットという情報の流通メディアが1995年1年でかなり認知されるようになり,現在情報資源がどんどんとインターネットへ移されている最中であるということであろう.現場の教員や指導員,児童・生徒がインターネットを利用して成果を上げていくためには,インターネットがあるだけでは不十分で,そこに十分な資源がなければならないということであろう.

3)国内の資源と展望

 国内のインターネット資源を上述したアメリカの状況と比べると,あまり華々しい状況とは言えない.しかし,視覚障害関係の資源がインターネット上にないかというと,少しずつではあるが増えている.そのどれもがポジティブである.例えば,fj.misc.handicapで活躍した視覚障害者が,視覚に障害があっても音声合成出力のできる特殊な端末でインターネットを利用することができ,漢字の読み分けなども問題なく同じテキスト情報資源にアクセスできることを「証明」した.このことは,多くの人にインターネットがバリアフリーの情報メディアとして活用できることを認識させた(たとえば,琉球新報1996/2/14 19面教育の教育とインターネットの記事).fj. misc.handicap というニュースグループは,ひっきりなしに障害者観や差別の問題を議論しているが,インターネットとそこに参加している障害者の存在それ自体が,障害者に対する世の中の考え方や態度を変えつつある.

 また,慶応大学のアクセス研究会(http://buri.sfc.keio.ac.jp/ kadota/indexj.html)が公開している情報や,IBMが幾分自社製品の宣伝を含めながらもかなり先進的にインターネットと障害者機器を紹介している「こころWeb」(http://www.ibm.co.jp/kokoroweb/ ),東北大学の小林(http://www.dais.is.tohoku.ac.jp/iwan/handicap _res.html),金沢大学大学院の井村(http://133.15.24.1/ imura/http/h-index.html )などによる障害者関連のインターネット資源へのリンクページ,筑波技術短期大学視覚部のホームページ,東京女子大学の小田が公開している視覚障害者用アクセス技術製品データベース(http://www.twcu.ac.jp/persons/mure/odalab/k-oda/AccessBlind/)などはインターネットを利用しようとする視覚障害者にとって有用な情報になっている.PC−VANのあるフォーラムを舞台に視覚障害者のための情報の電子化の運動をしているある盲人ユーザは,データベースの情報をPC−VANに転載してインターネットとパソコン通信の間にある問題を人的に解消しようとしている.

 1996年の1月から東京女子大学の小田が運用を始めた視覚障害教育・リハ関係のメーリングリストは数カ月の実績しかないが一日平均して3通の投稿があり,参加者も盲学校やリハビリ施設関係者だけでなく,自身が視覚障害者であり教育・リハに関心のある人,眼科関係,眼鏡関係,研究関係,大学院の学生と多岐にわたって活発に情報交換が行われている.参加者の地域も,北海道から大阪まで広がっており,地域や職種を問わず情報交換を求める人にはオープンな場所を提供している.加入している人には,Niftyserve,ASAHI−net,PC−VANといったいわゆるパソコン通信のアカウントを利用している人が圧倒的に多い.パソコン通信ではメールの受信数制限のあったりして配信に問題もなくないが,わざわざこのメーリング・リストのためにパソコン通信に加入する人もある.このことは,インターネットが作る資源には明らかにこれまでになかったポジティブな側面があることを示している.

 インターネットが視覚障害教育に今後ポジティブな影響を与えるかもしれないことを予想させる要因は,インターネットの外にもいくつか存在している.

 その1つは,視覚障害者のインターネットへの関心の広がりである.これは多分にマスコミニュケーションの影響であるのだろうが,視覚障害という雑誌がインターネットやWindows95などの情報技術に関する内容を扱う別冊を刊行したり,点字毎日という公称1万人の読者を持つ点字の週間情報誌が,新春の特別記事としてインターネットをとりあげた(小田がWebに転載中,http://www.twcu.ac.jp/persons/mure/odalab/k-oda/AccessBlind/tenmai.html )りした.もう1つは,視覚障害教育・リハビリ関係で最近増えている従来の制度からはずれた形の地域での講演会・研修会の開催である.盲学校が,リハビリの専門家を招聘して研究会を開いたり,地元の医師とリハビリ施設が教育研究者を招聘してみたりというものである.このことは,地域の関係者がよりオープンな形で情報交換することを求めていることを表しているものと思われる.

 ほとんどすべての盲学校では,毎年研究紀要を発行しているが,その配付先は非常に限られている.公費で印刷されたこの貴重な資料も,たいていは校長室同士で交換されて本棚に眠っている.この研究報告書の内容をインターネットで公開したら?その内容について他の地域の盲学校の先生が電子メールで質問できたら?さらに,その内容を視覚障害児自身が覗いて見ることが出来たら?北海道の子供が自分と同じようなタイプの障害を持つ子供の事例を九州の学校のページに見つけて,その先生のすぐれた実践を知ることができたら?先生がこれまで出逢ったこともない障害の子供の担任になって,困っているときに相談できるメーリングリストがあったら?新しい機器や制度,研究成果ができたときに,それを現場の先生たちに知らせるチャンネルがあったら?視覚障害の児童・生徒が,自分がこれからの進路を決めるときに,大学や短期大学リハビリ施設などの社会資源が提供するサービスをあらかじめ好きなときに自由に知ることができて,いざとなればその担当者に直接電子メールで問い合わせができるとしたら?

 インターネットというバリアフリーにより近い情報メディアのインフラが視覚障害教育に及ぼすポジティブな影響は,考え出せば非常に多い.これまでの制度を維持したい,権威や権益を維持したいという人たちには,このインターネットが引き起こすかもしれないリストラクチャリングは恐怖かもしれない.しかし,本気で視覚障害教育・リハの内容を高め,障害児の学習や社会適応生活の質を高めていこうとするなら,これほど都合の良い道具もないのである.

3.2.3 筑波大学附属盲学校・福島県立盲学校における

                       アクセシビリティ機器の導入事例

1)導入のねらい

 視覚障害者がインターネットにアクセスすることについては,コンピュータを使うために目で画面をみる代わりになる機器が導入されなければならない.つまり,音で聞く,手で点字を触って情報を得ることができる機器である.

 本稿では,筑波大学附属盲学校,福島県立盲学校の2校に配備されたアクセシビリティ機器を記述する.

2)導入機器及びソフト

 ・100校プロジェクトによる配備機器(初期分)

  <サーバーマシン>

  本体    :NEC PC-9821 Xn/CPW

  ディスプレー:NEC PC-KM141

  ディスク  :NEC PC-HD540EB2

  イーサーネットボード:コンテック CNET(98)E-12

  主ソフト  :OS:NEC IP45/421 ソフトウェアセット(SVR-4)

            日本DEC DEC BROUTER

            エーアイソフト PANIX ver.4(CD)

            エーアイソフト PANIX マルチユーザーキット

            エーアイソフトICP/IPキット

  <クラアントマシン>

  本体:Apple Macintosh LC630

  キーボード :Apple キーボード II

  ディスプレー:Apple マルリスキャン15ディスプレー

  イーサーネットボード:Apple EthernetCS Twisted-Pair カード

  ビデオ入力 :Apple ビデオシステム

  主ソフト  :OS:Apple 漢字TALK7.5

         WWW プラウザ:CSS MacWeb

         InterCon TCP/connect II

3)弱視の方に配慮した機器

 筑波大学附属盲学校,福島県立盲学校の2校追加分には, 弱視の方と全盲の方に配慮したハードウエアとソフトウエアの構成された機器である.

 サーバマシンも画面全体を大きなディスプレーにしたことによりシステム管理者でもある弱視の先生に配慮した.また,クライアントマシンも画面全体を大きなディスプレーにしたことにより弱視の生徒に配慮した.

 Windowsの中に既に文字を拡大する機能があるが,倍率が少ないのでより拡大できるソフトを配慮した.

 <サーバマシン用>

  S−4/5モデル85                 ×2

  メモリ 32MB ,クロック85MHZ,内蔵ディスク538MB,17インチディスプレイ     ×2

 <クライアント用>

  カラーCRT 21インチディスプレイ    :FMV-DP991        ×2

  画面拡大ソフト ZOOM Text for Windows 東京ソフトウエア   ×2

 <その他>

  FMV−5100D4                 ×2

  CPU:Pentium 100mhz メモリ 16MB ,内蔵ディスク850MB,     ×2

  増設RAMサブボード( 8MB):FMV-RM8S        ×2

  SCSIカード       :FMV-121         ×2

  シリアルパラレルカード   :FMV-101         ×2

  LANカード        :FMV-181A        ×2

  Chameleon     :フォーバルクリエイト       ×2

  InfoMosaic                 ×2

4)全盲の方に配慮した機器

 ・音声による配慮

  DOS上のTYPEコマンドやUNIXのCATコマンドを利用して画面上の表示さ

  れる文字を音声出力により補助するものである.

  【音声合成装置】        :FMVS-101         ×2

  音声合成装置(英語)      :DEC Taik Expressスペース96   ×2

  【音声合成ソフト VDM100 Ver5.0】:アメディア        ×2

  ProTalk for Windows  カナダ バイオリンクコンピュータリサーチ・デベロップメント      ×2

  (英語版であるが,Windows上で動作するソフトである.)

 ・点字による配慮

  点字は,視覚障害者にとって唯一の文字として全世界で広く用いられている.英語・

  ドイツ語といった言語に対応した点字があるようにソフトの組み合わせで視覚障害者

  に文字認識の補助するものである.

  【点字ピンディスプレイ ABT80】    :ジョイ・ティー・アール    ×2

  【点字プリンター JTR ESA 300Pro】 :ジョイ・ティー・アール    ×2

 ・点訳による配慮

  点字と共に点訳により視覚障害者の情報処理能力の向上を補助するものである.つま

  り「早くかける」と「早く読める」.6点式で普及している点訳ソフトを導入した.

  【点訳ソフト(DOS/V) EXTRA 】 :アメディア          ×2

  (日本語英語自動点訳プログラム EXTRA v3.0

            【音声合成装置】

            【音声合成ソフト VDM100 Ver5.0

            【点字ピンディスプレイ ABT80

            【点字プリンター JTR ESA 300Pro

            【点訳ソフト(DOS/V) EXTRA

3.3 教育面での効果・課題に関する調査

 アクセシビリティを必要とする児童・生徒は、個々の障害の内容により、異なる。それぞれに応じた機器の導入と個別の対応が必要となる。今後、前記のような事例の積み重ねが必要であろう。

 また、ネットワークにアクセスすることができたあとの問題については、2.テーマ「特殊教育におけるインターネットの有効利用」の検討結果につながるため、事項にて総合的に考察を行っている。