新100校プロジェクト成果発表会
小学校部会

発信する児童をめざして

大津市立平野小学校 石原 一彦

1.はじめに
大津市立平野小学校は100校プロジェクト参加以来、一貫して「発信型」の授業実践をおこなってきている。97年度は新100校プロジェクトの重点企画、自主企画等さまざまなインターネットの教育利用に取り組んできた。以下、今年度の取り組みを発表する。

2.新100校プロジェクト重点企画への取り組み
(1) 「全国ライブカメラMAP」(CEC新100校プロジェクト重点企画「高度化教育企画」)
 CECの新100校プロジェクト重点企画に「定点観測データの共同利用研究」があるが、その一つの分野として今年度、本校がまとめ役となって取り組んでいる企画である。これは、全国各地の天気の様子をライブカメラを使って、ほぼリアルタイムに近い形でインターネット上に発信し、これらのライブカメラを全国に広めてマップを作成し、居ながらにして全国のリアルな空模様を提供しようと考えている。気象衛星「ひまわり」の雲の画像などと併せて、理科の気象の学習に役立てる基本的なリソースを提供できればと願っている。

(2) 「全国発芽マップ’97」(CEC新100校プロジェクト重点企画「高度化教育企画」)
 100校プロジェクトが始まった年から宮崎大学付属小学校が中心となって取り組まれている企画で、今年で3年目を迎える。今年は「ケナフ」を全国で育てている。ケナフは木材に代わってパルプを作ることができる1年草で、森林資源の保護という観点から環境教育の分野でも注目されている。11月にはケナフを収穫し、紙にすいてはがきを作り、参加校同士で年賀状を交換した。また、清水国際中高等学校で取り組んでいる「絵本の共同製作」にも参加している。

(3)ハンディキャップのある児童のアクセシビリティー改善(CEC新100校プロジェクト重点企画「高度化教育企画」)
 本校には障害児学級が2クラスある。ハンディキャップを持っているこれらの子ども達は、障害児学級間の専用ネットワーク(チャレンジキッズ)にも参加し、電子メールで交流をおこなっている。これらの子ども達がより積極的にネットワークに参画できるように、CECよりタッチパネルモニターを貸与していただき、タッチパネルのよさを生かした各種ソフトの利用や、タッチパネル版のホームページなどを作成し、ハンディキャップのある児童のためのインターフェイスの研究をおこなった。

(4)フィルタリングソフト(IFS)の運用実験(CEC新100校プロジェクト重点企画「高度化技術」)
 本校では、普通教室にもインターネットの端末を設置し、子ども達は自由にインターネットにアクセスできる環境にある。朝、一番に登校した児童が電源を入れ、放課後、最後に教室を出る者が電源を切ることになっている。休み時間も様々なサイトにアクセスしたり、メールを書いたりしている。
とりわけ、サーチエンジンによる情報収集の方法を4年生から指導しているため、児童が突発的に教育上不適切な画面を閲覧する危険もある。このような環境を補う目的で、本校の各教室のコンピュータにフィルタリングソフト(IFS)をインストールし、運用実験を行っている。

3.自主企画
(1) 国際調査隊http://www.hirano-es.otsu.shiga.jp/kokusai/
文部省の国際子女教育課では昨年度より、海外の日本人学校をインターネットで結ぶ計画を進めてきた。本校では日本教育振興協会(JAPET)の研究委託を受け、この国際ネットワークを活用した教育プロジェクトを企画した。それがこの「国際調査隊」である。本校のサーバー内に「会議室」を設定し、世界各地の日本人学校から共有のページに書き込みをおこなって、「地球規模の調べ学習」をおこなっている。
最初に調べたのが「世界のものの値段」、次に調べたのが「同じ日に地球上で月はどのように見えるか」と「世界各地の南中高度」である。来年もこのような活動を通じて、国際理解教育の一次資料を提供したいと考えている。

(2)「ごんぎつね」遠隔共同学習http://www.hirano-es.otsu.shiga.jp/gon/gon.html
このプロジェクトは、今まであまり試みられなかった、インターネットを既存の教科そのものへの切り込んで活用し、実際の授業で共同学習がおこなえるかどうか実証してみたいと考えて計画したものである。インターネットを用いることで子どもたちの多様な考えを引き出し、個々の児童の読みを広げ深めることをねらいの一つに置いている。と同時に、教師間で「設問」を事前に話し合う活動を通して、教材研究を協同でおこない、教師間のコラボレーションをインターネットで向上することもねらいとして考えている。

(3)6年総合学習「課題研究」http://www.hirano-es.otsu.shiga.jp/kadaikenkyu.html
この授業は、97年度の6年生が週1時間(年間35時間)の計画で取り組んだもので、それぞれの児童が課題を設定し、1年間をかけてその課題に取り組み、研究した結果を自分のホームページから発信していくという学習である。子どもたちの課題は千差万別でそれぞれ思い思いに設定されているが、研究のまとめ方もそれぞれの持ち味が表されている。右のページを作成したA君は、スポーツと絵が好きである。彼はアトランタオリンピックの結果をまとめ、またオリンピックの競技の様子を版画や水彩画に描いて発信している。作品は大きな画用紙に描かれているため、この作品を一度写真に撮ってからその写真をスキャナーで読み込んで発信している

(4) 平成9年度に実施した校内での研究授業の一覧
学年教科単元名URL
1年生活科がっこうたんけんhttp://www.hirano-s.otsu.shiga.jp/class97/1tanken1.html
2年生活科乗り物に乗りたいねhttp://www.hirano-es.otsu.shiga.jp/2s/2s-homea.html
3年理科昆虫の体を調べようhttp://www.hirano-es.otsu.shiga.jp/3r/31r/31r-home.html
4年国語科ごんぎつねhttp://www.hirano-es.otsu.shiga.jp /gon/gon.html
5年環境地球環境クイズhttp://www.hirano-es.otsu.shiga.jp /kannkyou/kannkyou.html
6年社会科戦争と人々の暮らしhttp://www.hirano-es.otsu.shiga.jp /kadaikenkyu.html

4.まとめ
 97年度の本校の取り組みは発信型の授業を実施し、すべての子どもたちに発信の能力を身につけさせることであった。子どもたちは、臆することなくネットワークに向かい、自分の意見や思いを発信することができたように思う。今後、児童ひとり一人に携帯端末を持たせて、本校のLAN環境の中で自分の学習経過を関連づけながら蓄積する研究を行いたいと考えている。