新100校プロジェクト成果発表会
小学校部会

学校を開き、結ぶ、遠隔授業の試み

唐津市立志道小学校 浦郷 孝一

1.はじめに
 本事業自主企画「地域に学ぶ学習材の開発とネットワークの構築」支援とテレビ会議システム機器の貸与、市教育委員会によるISDN回線の設置により、本格的に共同学習・遠隔授業の試みに取り組める環境ができつつあります。
 本校にコンピュータが導入されて4年、通信機器が導入されて1年半。この間コンピュータリテラシーの育成、学習の道具として活用する取り組みを行ってきました。
また、本校を含めた唐津市内の小中学校に通信機器が同時配置されたのを機に、教科部会・研究会を中心として、各小学校のホームページ作り、各学校・地域のデータを集積・リンクさせる「わたしたちの唐津市」を作り、地域ネットワークとして運用しながら、児童がリアルタイムに調べ学習や交流ができ、学習を深めることができる授業実践に向けて現在取り組んでいるところです。

(1) ホームページの作成。調べ学習用データの収集とともに、市内小学校のホームページ閲覧・情報検索を行う。
(2) 電子メールの交換。授業の中で生じた疑問の解決。学校間の質疑・情報交換。行政への質問、提案等に活用。
(3) 情報の取得と資料的活用提示への活用。社会科・理科におけるホームページ上の情報の取得と教材化(HTML教材)に活用。
(4) インターネットテレビ会議システムによる交流。社会科調べ学習での活用と、シカゴの日本フェスタへの参加。
(5) 本事業による支援とISDN回線の設置により、地域情報を活用した遠隔授業への取り組みを試みる。
(6) 簡易校内LANの構築。職員室のファイル共有化とともに、図書室を学習情報センター化し、図書や新聞と同じく、インターネット情報の取得ができる環境づくりに取り組む。

2.テレビ会議システムを使った学習
 5年社会科伝統工芸学習の中で、伝統工芸を地域で守り育てていくため、行政に対して提案できる内容は何かを調べ、さらに他地域での取り組みを知る上で、インターネットのテレビ会議システムを使って調べるとともに、相互交流を図り、さまざまな角度から提案することができました。

3.ホームページの活用と遠隔授業
 11月16日の佐賀県教育委員会主催「教育フェスタ」において、同一地域である唐松地区の山間地と離島、平地にある3小学校(厳木町立厳木小学校平之分校・鎮西町立加唐小中学校・唐津市立志道小学校)の子どもたちが、それぞれの生活ぶりや地域の様子・違いを理解するため、テレビ会議システム(フェニックス)を利用して3地点遠隔授業を行いました。
 3・4年社会科地域の特色についての調べ学習を進めていく中で、各校のホームページの情報を検索学習し、志道小学校のコンピュータクラブの子どもたちと、加唐小学校の子どもたちが、「商店街で工夫されていること、夢の商店街作りについて」、「加唐パンフレット作りと、漁師さんのくらしについて」について調べ、電子メール・FAX・ホームページ等の情報手段を使って返信。交流を進めていく中で、会って直接話をしてみたいということで、遠隔授業の実施となりました。
 加唐島の漁師さんからは、漁の道具等、実物を見せながらの説明。商店街の方からは、商店街の取り組みや工夫について話され、子どもたちの意見を活動にいかしていきたい等の交流を行ないました。授業を終えた子どもたちから、「山と島が身近になった。実際に遊びにいきたい。」「よく知っている人から話してもらいよく分かった。」等の感想がありました。

 12月16・18日には、4年社会科「各地のくらしと私たちの国土・山地の人々のくらし」の学習において、ホームページの検索、情報取得、情報交換の最後にCU−SeeMeテレビ会議システムを活用し、それぞれの地域の抱える問題点等について交流授業を実施しました。
 また、12月17日、同一地域内の学級交流を図るため、CU−SeeMeテレビ会議システムを活用して、同時合唱、校区自慢ゲームなどの交流授業を実施しました。

・ 市内小学校の地域情報をデータベース 化することで、地域学習の土俵ができました。
・ 調べ学習において、従来の書籍、新聞、周囲の人々に聞く情報だけではなく、その地域でしかわからないことは、直接ホームページや電子メールを活用しながら、当事者の生の声を聞いて情報取得ができるようになりました。
・ 学校ホームページの地域情報から、さらに知りたいことわかったことを直接交流する手段として、テレビ会議システムの活用は、直接相手を見ながら話し合うことができるだけでなく、その場で生じた疑問や意見の交流で児童の思考を揺さぶり、さらに深めることができる有効な手段であることがわかりました。
・ 佐賀県北部という同一地域の中でのテレビ会議システムを使った交流でしたが、児童は離島山間地とも一度も訪れたことがなく、この交流を通してお互いの特色を知るとともに、自分達の住んでいる地域を知り身近に感じることができました。

4.まとめ
 離れた子どもたちどうしが、リアルタイムに質問し、ともに考える手立てとしての遠隔授業は、その地域でしかわからないことは、通信を使って直接他の学校に問い合わせる学習形態であり、学習をより深め、児童が興味関心を持って取り組むという点でも有効であったと思います。
 今後、図書室に導入されたコンピュータにLAN回線を設置することにより、簡易校内LANを構築し、図書室を読書センターとしてだけではなく、世界に広がる情報センターとしての活用が出来るよう施設改善を図っていくことで、子ども自ら情報の入手・選択・加工・発信などの経験を積むことができ、学習のまとめや表現活動に活かしてくれると思います。
 さらに、本校及び地域内の小学校においては、地域情報データベース「わたしたちの唐津市」と市内小学校のホームページを生かして、地域学習の交流に活用したり、地域の学習材の開発を行っていきたいと考えています。

 子どもたちが主体的に学習を進め、自己を表現し、広く交流しながら自分の考えを深めていく有効な手段「インターネット」。遠隔授業の取り組みとともに、教育活動の中で活用・育てていく方策を今後も探っていきたいと考えています。