新100校プロジェクト成果発表会
小学校部会

山梨子ども風土記の作成

山梨大学教育学部附属小学校 石川 等

1.はじめに 
 本発表は,新100校プロジェクト(高度ネットワーク利用教育実証事業)の重点企画のひとつである「B 地域展開企画 1 教育センター型地域展開」の対象地域として山梨県が選ばれ,山梨県総合教育センターが中心となって展開されたプロジェクトのうち,「山梨子ども風土記」の作成にかかわるものである。本実践では,子どもたちの手で収集されたデータを活用してホームページを構成していくことで,県内の他の地域に居住する子どもが,より興味・関心をもってデータに向かうことができるようになることをねらい,小学校において,児童らが容易に操作することが可能なWeb教材の作成を念頭においた。

2.作成に関わる経緯
(1)山梨県内の小学校のネットワーク接続環境
 山梨県内においてもインターネット接続を果たす学校が増えてきている。しかし,小学校においてはまだかなり少なく,ホームページを開設している学校は全体の10%にも満たないのが現状である。
(2)「地域展開」のキーワード
 上記のような状況においては,ネットワークを利用した活動への参加校数は限られてしまい,「地域展開」というキーワードを十分に生かし切ることはできない。そこで,将来的な環境整備を意識した活動を展開することとした。具体的には,県内218の小学校すべてに参加を呼びかけ,全県的な活動としての位置づけのもと企画を実施することとした。

3.作成経過・作業体制
(1)作成経過
 作成にあたっては,山梨スクールネット教育研究会のメンバーと内容・枠組み・アンケートの中身などについてメーリングリストを活用して検討を重ねた。アンケートは97年10月に実施し,10月末を目途に回収した。ここで得たデータをもとに,約1カ月間でWeb化する作業を行った。
(2)作業体制
 ・アンケートの実施(送信・回収)・・・・山梨県総合教育センター情報教育部
 ・データ編集作業(Web化)・・・・・・山梨大学教育学部附属小学校

4.Web教材「山梨子ども風土記」の特徴
(1)掲載データ
 各学校のページには,以下のような質問項目に対する回答と,各学校の写真が添えてある。
 ◎文字データ
 学校の正式名称と創立時期及び創立からの経過年数・学校のある場所の高さ(海抜で表示)・桜が見頃になる時期・初雪が降る時期・平成9年度の夏休み・冬休みの予定・子どもたちが楽しみにしている学校行事・学校の自慢・子どもたちに人気のある遊び・学校近くにある観光地・学校の近くで毎年行われるお祭り・学校のある地区で多く作られている作物。
 この他,学校の住所・電話番号および,ホームページを開設している学校には,そのホームページへのリンクボタンを設定。
 ◎画像データ・・各小学校から送られた写真をスキャナで取り込み,JPEG画像にて表示した。
(2)操作に関わる配慮
 ・「ユーザサイド・クリッカブルマップ」の採用。 ・ホットテキストによるリンクボタンの用意。
 ・ホットテキストとクリッカブルマップ上のポイントとの番号による関係づけ。
(3)ページの階層構造
  全県の図のページ→県内8つの地区のページ→64市町村のページ→各学校のページ


(4)利用者への配慮
 子ども向け・教師(大人)向けに,利用の仕方や作成の経緯を知らせるためのページを用意した。子ども向けには,各学校のページに掲載してある文字データの内容・クリッカブルマップの使用法・活用例などを記載した。また,教師(大人)向けには,各学校のページに掲載してある文字データの内容・作成の経緯を記載した。これに加えて,大人用には県内218校の校名をテキストデータとして収録したページも用意している。指導者は,これをワープロソフトやデータベースソフト,表計算ソフトなどに取り込むことにより,子どもたちに「山梨子ども風土記」を利用させる際に持たせる学習シートの作成に役立ることが可能となっている。

5.利用方法
(1)ネットワーク上での利用
 「山梨子ども風土記」は山梨県総合教育センターのホームページに取り込まれネットワーク上で利用することが可能となっている。(http://www.ypec.misaka.yamanashi.jp/fudoki/zenken.html)
(2)オフラインでの利用
 ネットワーク接続を実現していない学校での利用を考慮し,山梨県総合教育センターでは,CD−ROMに全  データを焼き付け配布した。これにより,ネットワーク接続を果たしていない学校においても,Web教材を扱うことが可能となった。

6.「山梨子ども風土記」の利用実践例
 「山梨子ども風土記」がほぼ完成した平成9年12月に,中学年である3年生の子どもたちを対象に授業を実施。
 指導時数は4時間(慣れる→調べる→知らせるの順)。指導にあたっては,調べ学習におけるインターネット上のホームページ利用の可能性について知らせることを念頭においた。

7.まとめ
 データ回収率は98%(2月16日現在)を越え,子どもたちの声の他,学校の沿革や地域の様子に関わることなど,先生方に協力いただきながら内容の充実を図ることができた。利用実践例として行った授業でも子どもたちは短時間のうちに操作に慣れ,同じ県内に住む子どもたちの学校生活に興味を持って調べ学習を行っていた。今後県内の学校で利用が図られ,子どもたちどうしの交流に役立てることができればと考えている。今後の課題としては,データ編集作業上生じた入力ミスなどの訂正・データ未提出校への提出要請などといったデータ整備と,実際の活用に役立つための更なる仕様変更などを考えている。