新100校プロジェクト成果発表会
テーマ部会

学校間ネットワークにおける教育センターの役割

兵庫県尼崎市立教育総合センター 米田 浩
1.はじめに
 尼崎市立教育総合センター(以下、センターとする)では、平成7年度から「100校プロジェクト」に参加し、平成8年度から文部省「地域情報ネットワーク活用推進地域指定事業」を受けたことにより、市内の一部の小学校を結ぶ学校間ネットワークを実験的に導入することができ、これからの学校間ネットワークの拠点としてのセンターの役割について研究を行うこととした。

2.学校間ネットワークについて
【図1 学校間ネットワークの概要】

 学校間ネットワークは、実験協力校にある学習用コンピュータのサーバーとセンターのサーバーを公衆電話回線で接続し、データのやり取りを行うようになっている。ソフトウェアは、ロータス社のグループウェアである「ノーツ」を利用し、センターには「ノーツ・サーバー」を、学習用コンピュータには「ノーツ・クライアント」が導入されている。
 学校間ネットワークを利用した学習として、4年生社会科の「消防しせつ調べ」と、生活科の「あきみつけた」を実施した。
 「火事をふせぐ」の学習は、市内の数校で校区内の消防施設を調べる共同学習である。校区の白地図に消防施設の位置をプロットし、お互いの校区を比較しながら情報交換を行ったり、消防署に対する質問をメールで送って回答を得ながら学習を進めた。
 「あきみつけた」の学習は、校区や校内の身近な場所で発見した「あき」を掲示板に貼ることで情報交換を行いながら進めていく低学年の学習である。

3.地域ネットワークの拠点としてのセンターの役割
【図2「火事をふせぐ」の学習イメージ図】

 地域ネットワークの拠点としてのセンターの役割として、以下のようなことが考えられる。

○地域学習情報の提供
 インターネットを利用すると、グローバルな情報は収集できるが、地域の教育センターが地域の情報の拠点として、学習に必要な地域情報を提供していく必要がある。そこで、センターでは子ども用画像データベースの構築を行ってきた。(現在、データの一部約600点をホームページ上で公開)尼崎の自然等の理科に関する画像、尼崎の公共施設、駅周辺の商店街等の社会科に関する画像、尼崎の歴史に関する画像等を公開した。著作権の関係上、情報の二次利用については市内の学校に限定しているが、閲覧は市外からでも可能である。

○カリキュラムの作成
 学校にとって、ネットワークを利用した学習は新しい試みであり、慣れない教員が具体的イメージをもつことは困難である。そこで、ネットワークを利用した共同学習のカリキュラム例をセンターで作成し、具体的イメージ  を示す必要がある。さらに、共同学習を行う上で、他の学校との調整や内容の打ち合わせを密に行うためにも、適切なカリキュラムが必要である。
○利用環境の整備
 学校がインターネットに接続するためには、次のような2つの方法が考えられる。
【図3 Aタイプの接続形態】
Aタイプ:
 教育センター等がサーバーを管理し、各学校は教育センター等を介しインターネットに接続する。有害情報の対策などの管理面では有効であるが、ホームページの管理等での教育センターの負担が重くなる。
【図4 Bタイプの接続形態】
Bタイプ:
各学校が個別にプロバイダーと契約してインターネットに接続する。サーバーの管理はプロバイダ側になるので、学校、教育センターともに管理に対する負担は軽くなる。しかし、有害情報の対策の面になると信頼度はAタイプに1歩譲ることになる。また、学校ごとに個別の運営をされるので、地域全体の統一を図りにくい欠点がある。

 今回センターが選択したのはAタイプの接続形式である。現在は実験段階のため接続校が少ないが、今回の実験で得られた結果をもとに、すべての学校がインターネットに接続し本格的に稼働するまでに、課題を解決できるノウハウを蓄積しておく必要がある。

4.今後の課題
 本年度は、「学校情報通信ネットワーク」を利用した社会科と生活科の授業を通して、学校間ネットワークにおけるセンターの役割について研究を進めてきた。そこで、次のような課題や問題点が明らかになった。
・ネットワーク環境を整備する
 学校間ネットワークが本当の意味で機能するためには、環境を整備してすべての学校でネットワークに接続できる ようにする必要がある。また、市内イントラではなく、広く情報交換ができるインターネットが利用でき、適切な学習情報を提供できるようになれば各学校で大いに活用されるはずである。
・遠隔共同学習において、中心となる人や機関を明確にする。
 遠隔共同学習を行うためには、学校間での実施期間の調整や内容の打ち合わせが必要である。本年度の研究では、 数校だけで実験的に授業を行ったので、比較的楽に学校の調整を図れたが、すべての学校が参加できるような学習 活動であれば、その調整は大変困難となるであろう。そこで、遠隔共同学習を実施するためには、しっかりとした 学習計画を立てた上で、全体を調整していく機関としてセンターの役割が重要になると考えられる。さらに、各学 校で中心的に活動していく教員を育成するための研修もセンターの大きな役割の一つである。
・専門家や関係諸機関などとの協力体制を作る
 今回の授業の中で、消防署等のメールのやり取りを行うことによって、専門的な立場からの解説や地域の実状にあ った内容、関係者以外では知ることができないような内容も知ることができた。しかも教科書などのように一般的 なものではなく、実際に自分に向けて書かれていることが、児童の学習意欲をさらに高めることになった。
 
5.まとめ
 今後、センターとしては、機器等の環境整備はもちろんのこと、すべての教科や学習活動にわたった総合的なカリキュラムを作ることや、学校以外の専門家や関係諸機関との連携が円滑に進むようなマネージメントを行っていくことが大切である。さらに、ネットワークを学習に有効に利用できるように研究を進めていくとともに、教員がネットワークを有効に活用できるようにするための研修を進めていくことが必要となる。