1.はじめに
葛尾中学校は阿武隈高地の中央部に位置するへき地小規模校である。100校プロジェクトに参加することを契機として、ネットワーク環境を活用した教育実践に取り組んでいる。これまで、葛尾中では学校外の人々の協力を得てネットワーク環境の構築や検討を行ってきた。
今回は葛尾中を基盤として、あぶくま地域の学校間ネットワーク接続実証実験や地域展開を行う"あぶくま地域展開プロジェクト"の現状と課題等について報告する。
なお、この取り組みは今年度の新100校プロジェクトの重点企画「地域展開」(地域交流型地域展開)の指定を受けている。
2.葛尾中学校のネットワークの環境
2.1.環境の成長と活用の広がり
100校プロジェクトにより導入された機器は,インターネットへの情報発信と受信を行うためのサーバマシンおよびクライアントマシンそれぞれ1台のみであった。いつでも、どこでも使える環境を理想的な学習環境と考え、校内LANの自力構築やクライアントの確保に努めた。その結果、ネットワーク環境の充実と同期して、生徒・教師の活用が活発となっていった。
2.2.ヒューマンネットワークの広がり
活発な活用はネットワーク環境への新たな要望を生みだす。生徒や教師の期待に応えるために,月一回ペースで校内スタッフと外部のボランティア(地域ネットワーク関係者)が集まり、ネットワーク構築・検討会が行われた。一般ユーザーからの要望やトラブルに基づいてシステムの改良を重ねることによって、次第に操作性の高いネットワーク環境が整備されていった.この環境が生徒・教師のネットワークの活用意欲をかき立て,新たな活用を生みだしていった。
3.学びとネットワーク環境
3.1.インターネット環境の評価
インターネット環境の導入による効果について生徒の学習への取組む意欲を比較すると,導入後は自分から必要な情報を収集したり,地域外の人々とコミュニケーションを図ろうとするなど,従来に比べ積極的な態度が見られるようになった.
3.2.地域内イントラネットの必要性
学校内イントラネット同士を隣接した地域間で接続し交流を行うことによって,地域に共通な文化や空間を基にした密度の濃い交流が生まれ,そこに新たな学び合う共同体を作ることが可能になると考えている.
学び合う共同体とは,学びたい目的に応じて学校を越えて生徒たちが結びつきあったグループであり,図に示すように,地域内イントラネットを介して情報の共有を行う。
4.地域展開のためのシステム構成
4.1.システムの要件
学校に導入されるネットワークシステムは,無理なく容易に構築,運用できるものでなくてはならない.したがって,以下の要件を満たすことが出来るシステム構成を検討なければならない.
4.3.校内用サーバの構成
学校では,教師や生徒はWindowsやMacOSが動作する一般的なパーソナルコンピュータ(PC)を用いて教務や教育,学習を行っている.したがって,ユーザが容易にネットワーク環境を利用出来る様にするためには,そのユーザインタフェースがこれらOSが提供するメタファ内で閉じていた方がよい.
また,一般にネットワーク環境を利用するためには,各種の設定など,ユーザが慣れていない困難な事柄が数多く存在する.したがって,校内ネットワーク環境として,以下の様なユーザを支援する機能を実現することが望まれる
5.活用を支援するためのしくみ
前章までに,現在行っている学校を中心としたネットワークの地域展開に関する学校内ネットワークの構築実験について報告を行った.
しかし、地域の学校にEthernetケーブルを張り巡らし物理的なネットワークを造ることだけで、ネットワーク環境を活用した教育活動が定着することは、極めて可能性が低い。
これまでの地域展開プロジェクトを支えてきた重要な鍵は,メーリングリストによる日常的な情報交換・交流と,直接のコミュニケーションの両輪で意志の疎通を図ってきたことにある.
地域展開プロジェクトに参加しているメンバーは福島県内だけではなく近隣県など,広域に散在しており,日常的に直
接会うことが困難な環境にある.
地理的なハンディはメーリングリストを利用することによりカバーすることができる.あわせて,ネットデイや研修会等にメンバーが集い,顔を合わせて各自が抱えているトラブル、問題や疑問について議論や情報交換を行うことも重視した.
様々な試行錯誤から、あぶくま地域展開ネットワーク研究会では、活用を支援するためのしくみを提案する。
6.今後の課題
ネットデイにおけるネットワーク環境の構築といったことは,学校の本来的な活動という視点からは,少々外れる印象を持つ人がいるかもしれない.しかし,従来より外部との壁を作りがちだった学校という場において,ネットワーク環境は厚い壁を取り壊し,人と人とのつながりの拡大や開かれた学校を具現化する契機と位置づけられる.
ネットデイパックが提案され,学校内ネットワークの環境整備に関しては,条件が整いつつある現在,地域展開プロジェクトの次のフェーズとして,子どもたちの学びを広げ,支えるためのネットワーク活用を積極的に探求していくことが求められる。また、ネットワークを普及・定着させるには、人材の育成、地域への技術移転という課題に対して、教育関係者、技術者がそれぞれの役割を果たしながら解決していかなくてはならない。
あぶくま地域展開ネットワーク研究会の課題を以下に示す.
資料
あぶくま地域展開ネットワーク研究会 http://www.abu.ne.jp/
活動経過 http://www.katsurao-jhs.katsurao.fukushima.jp/UGA/
葛尾村立葛尾中学校 http://www.katsurao-jhs.katsurao.fukushima.jp/
葛尾村立葛尾小学校 http://www.katsurao-es.abu.ne.jp/
三春町立御木沢小学校 http://www.ogisawa-es.abu.ne.jp/
三春町立三春中学校 http://www.miharu-jhs.abu.ne.jp/