新100校プロジェクト成果発表会
テーマ部会

山梨での地域展開の実践

山梨県総合教育センター 初鹿 義彦

1.はじめに
 山梨県総合教育センターでは、平成5年から情報ネットワークの環境を整備し、教育に役に立つ情報の交流を盛んにすることで、山梨の教育の活性化に取り組んできた。平成7年度にはインターネットを導入し、学校を当センター経由でインターネットに接続する試みも開始した。平成8年度には新100校プロジェクトの「教育センターを核とした地域展開」の指定を受けた。学校にネットワークを利用しうる環境を提供し、教育での有効活用を推進する取り組みも開始した。これらの現状と課題等について報告する。

2.山梨県教育情報ネットワークシスデム「Hi-Use Net」
(1) パソコン通信システムとしてスタート
 平成5年度に当センターにホストコンピュータを置くパソコン通信の「Hi-Use Net」がスタートした。「教育情報ネットワークシステム」と呼ぶにはやや非力ではあったが、安価な設備で情報交流を行える基盤を構築できた点では有効であった。当初から公務で活用されることを目指し、学校との連絡を中心に次のような公務でも活用した。
・総合教育センターの研修の申し込み ・研究発表会の参加申し込み ・高校入試処理結果の統計資料収集
・高校入試処理に関する担当者との事務連絡 ・当センターの開発ソフトの更新情報及びファイルの配布
(2) アイオワプロジェクト
 平成8年度からアイオワ州との姉妹州県締結35周年を記念して、教育レベルでの交流をインターネットを利用して行う国際交流事業を県独自の事業として開始た。将来に備えて、総合教育センターをネットワーク拠点として整備し、ここに実験校を接続してインターネットと結んだ。この事業により、学校を総合教育センター経由でインターネットに接続するための基盤は整備された。しかし、民間の接続業者でなく、学術ネットに実験プロジェクトとして特別に接続を認てもらったので、現在は実験校以外の学校を接続できない状況となっている。

3.地域展開のためのシステムの整備(イントラネット版「Hi-Use Net」)
 教育センターを核として学校や教職員にネットワーク環境を提供するために、当センターのネットワークを整備して、インターネットの通信手順を使用したイントラネット版「Hi-Use Net」を平成9年7月よりスタートした。
当センターの上位回線は山梨大学経由のTRAIN県庁経由のInfoWebである。県庁ルートでは「こねっとプラン」の指定校18校をインターネットに接続し、山梨大学ルートでは「アイオワプロジェクト」の実験校と、当センターをインターネットに接続している。
 一般の学校及び「Hi-Use Net」のユーザーは当センターにダイアルアップで接続すると、県庁のサーバー及び生涯学習課の「まなびネット」に接続しているサーバーまでアクセスできる。また、「まなびネット」のアクセスポイントに接続すると、「まなびネット」に接続しているサーバーの他、当センターのサーバーまでアクセス可能である。このどちらの場合も、県庁からも総合教育センターからもインターネットには出でられないが、電子メールについてはインターネットと通信可能となっている。

4.県立学校に導入予定のシステム
 平成10年度の事業として山梨県教育委員会は「情報教育センターを核としたインターネット網の整備事業」の予算要求を行った。それは概ね以下のような内容である。
・総合教育センターの上位回線を学術ネットから民間プロバイダーに移行し、回線容量も増強する。
・総合教育センターのダイアルアップ受信用の回線を増強して、39校からの同時接続まで可能とする。
・谷村工業高校を総合教育センターに専用線で接続し、ここを周辺の学校の接続拠点とする。
・総合教育センターのインターネットサーバーを増強し、有害情報のフィルタリングを行う。
・県立学校全てにインターネット接続用のINS64回線を設置する。(すでに県費で設置済みの学校をのぞく)
・県立高校にLAN型ダイアルアップに対応したルーター及び端末用コンピュータ1台を設置する。
・新設のパソコン教室を設置済みの学校及び平成10年度設に置予定の学校にはインターネットサーバーを設置する。それ以外の学校もパソコン教室の整備に合わせて設置する。
 まだ、現時点では予算の通過は未定であるが、以下のような今後学校に導入を考えているシステムの構想が伺える。
・学校を総合教育センター経由でインターネットに接続する。
・接続形態は基本的にLAN型ダイアルアップで行う。
・当面は端末1台を設置するが、パソコン教室の更新とともにこれらのパソコンもインターネットに接続する。

5.地域展開の実践
(1) 教育情報拠点としての環境整備
 当センターは教育情報の拠点となるために次のような情報を整備し、学校にネットワークを通して提供した。
a.教育情報データベースをWWWサーバーで公開
b.「学校で役に立つリンク集」の作成
c.日本語サーチエンジン集の作成
d.山梨県総合教育センターのウェッブサイトの検索エンジンの設置
e.ウェッブページの代理公開
f.メーリングリストの提供
(2) 山梨県総合教育センターのインターネット研修
 山梨県総合教育センターでは平成9年度から本格的にインターネットの教育での活用に関する研修を開始した。インターネットの活用を本来の目的とした研修会は「ネットワーク研修会」だけであるがそれ以外のいくつもの研修会インターネットの活用に関しても内容として取り入れた。その結果延べ900人近くの教員がインターネットを何らかの形で活用した研修を受けたことになる。
(3) 山梨スクールネット研究会
 山梨大学の教育学部教育実践研究指導センターの共同研究プロジェクト「教育へのインターネット活用に関する研究」が平成6年4月から動き出し,教育機関へのさまざまな支援を行ってきた。このプロジェクトをもとに、平成9年2月1日から,原則として毎月1回,山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センターを会場,事務局とする「山梨県ネットワーク活用教育研究会」を開催することとした。この会は山梨県内の方なら誰でも参加できる自主的な研究会として組織され、日常的には当センターに開設した「ysn-ml」というメーリングリストを使用して情報交流する形でスタートした。第5回からは当センターの特設研修会と兼ねる形で研究会を持つようにし、公務として参加できる体制も整えた。CECから講師を派遣してもらい、新しい技術や知識の研修も行った。会の名称も「山梨スクールネット研究会」として正式に決めた。この会の活動として、以下のようなウェッブ教材の作成にも取り組んだ。
(4) ウェッブで利用できる教材の作成
 山梨スクールネット研究会のメンバー及び当センターの情報教育部を中心に、ウェッブで利用できる教材の作成に取り組み以下のものを作成した。これらは当センターのウェッブサイト(URL: http://www.ypec.misaka.yamanashi.jp/)で閲覧できるほか、当センターで作成したCD-ROMに収録され希望者に配布されたので、これを使用することでネットワーク環境でなくても、利用可能である。
a.「山梨子ども風土記」 b.「山梨の地質」 c.「山梨の伝統工芸」 d.防災教育指導資料
e.'97山梨ハイスクールガイド f.環境教育に視点をおいた地域教材『山梨の河川』

6.まとめ
 インターネットの教育利用を地域に広めていくためには以下のような内容を一層推進していく必要がある。
・ネットワーク環境の整備
 厳しい財政状況ではあるが、県教育委員会、市町村教育委員会等の理解を得て、予算化していくことが大切である。
・教育で活用できる情報や教材の整備 ・インターネットの活用研修の増強と研究組織の整備 
 当センターの研修を充実させ教師の活用能力を育成していくことと、現場の先生方の協力を得る中で、ネットワークを活用して利用可能な教材や、情報の整備を一層進めていくことが必要である。また、「山梨スクールネット研究会」のような自主的な研究組織が活発に活動できる環境づくりにも取り組んでいきたい。