「小規模校におけるインターネット活用の現状」
【教科の部屋】の立ち上げと今後への期待
葛尾村立葛尾中学校
渡部 昌邦
葛尾中学校は生徒数97名、教員12名の小規模校である。インターネットに接続するための機材が平成7年6月に設置されたが、サーバ関連のトラブルが頻発したため教育機器として信頼して授業に活用することはできなかった。そこで、前期は選択教科を中心にインターネットの可能性と活用の方向を模索することにした。いくつもの試行錯誤の中から、インターネットの高度な情報サービスを教育で活用するための3つの視点が浮かび上がってきた。
(1) 情報を収集する道具としてのインターネットの活用
(2) 自分たちの情報を発信する手段としてのインターネット活用
(3) コミュニケーション能力を養う環境としてのインターネット活用
後期になり、サポートの方々の献身的な努力によって機器が安定稼働してくると、さまざまな授業で積極的にインターネットを活用した実践が行われるようになった。現在までにすべての教科でインターネットを活用した授業が行われ、授業のコンテンツをまとめた【教科の部屋】が立ち上がった。
【研究の成果】
従来のコンピュータを使った教育では、学習者とコンピュータが閉じた世界で活動していたが、インターネットは入り口であり、その向こうには血の通った人の営みと無限の情報の世界が広がっている事に気づくことができた。
生徒たちは自然体でインターネットと向き合い、あたかも図書館で資料を探し出したり、文房具を扱うようにインターネットと接している。
- サーチエンジン等を使った情報収集が身に付き、授業の課題解決に利用したり、興味や関心のある事柄についても情報を自ら探し出そうという意欲が育ってきた。(情報収集)
- メールによる交流が定着し、距離や時間を超えてコミュニケーションする楽しさを知り 積極的に交流を広げようとしている。(情報収集/情報発信)
- 自分たちが創り上げた作品をWWWへ発信することによって、表現しようとする意欲が喚起されるとともに、ネットワークを通して多くの人々から感想や励ましのメールを頂くことで成就感を味わうことができた。(情報収集/コミュニケーション)
- インターネットでは日常的に外国語と接するため、外国語に対する抵抗が少なくなった。むしろ、自分を表現したいという内発的な意欲が高まり、表現の手段として英語を学習するという本質的な取り組みを見せるようになった。(コミュニケーション)
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【今後の課題】
- 中学生としての自覚とモラルの高揚
- 道徳や特別活動の時間を活用して、ネットワークを利用する際のモラルを育成するとともに、ネットワークでは中学生であろうとも、一人の人格として見なされることを意識させる指導を行うようにしたい。
また、中学生としての自覚を促すことのによって、有害情報に対する自制的な態度を育てていかなければならない。
- 教科の枠組みを越えた授業の創造
- 英語科との連携、インターネット担当教師とのTTなど、お互いの長所を増幅し合うための柔軟な授業の運営。
- 授業実践の累積と公開
- インターネットを活用した授業のコンテンツをホームページ化(【教科の部屋】)することによって実践記録を蓄積する。また、全国の実践記録とリンクを張ることで壮大な授業のデータベース網が構築することが期待される。
- ネットワークマネージャの必要性
生徒が主体的に取り組む学習を積み重ねることにより、教師が「教える」から、生徒が「学ぶ」へと授業が変化している。知的好奇心をもって「学ぼう」とする生徒をいかに支援するか、これからの教師に課せられた重要な役割であると認識している。