100校プロジェクト成果発表会 分科会第1会場

情報の多様な表現をもとにした授業をめざして
−高等学校普通科における試み−

富山県立大門高等学校

藤井 修二


1 はじめに

 研究の目的は,「教育とインターネット」の関係を研究し,「教育では何ができるか.」「これからの学校教育とりわけ高等学校普通科の充実,発展の方向性」を見いだすところにある. 研究テーマは、情報教育の必要性をどのような形で授業に反映させればよいかを考えた。情報教育では、従来の知識中心主義、技能中心主義、知識内容をまとめる学習よりも、課題研究授業を情報教育活動の中心にするほうが情報教育のよさが出せる。この課題研究授業は、生徒の自主的な探究活動と研究成果の具体的表現力を高めるのに有効であり、情報の入手と処理だけではなく、情報の発信者としての主体的な活動が求められる。しかし、生徒の発信する情報は多様なので受け手に正確に伝えられるような技術の修得も大事である。そこで研究は、情報の発信者として学ぶべきものを実際の情報発信・情報受容者としての実体験を通して学習させることをめざした。
 尚,実践に当たって「高等学校段階における情報教育カリキュラムの開発と大学教育の連続性に関する研究(平成7年3月 研究代表者 西之園晴夫 鳴門教育大学教授)」を参考にした.

2 インターネット実践授業教科,科目(主なもの)

1年 情報科学・英語(オーラルコミュニュケーション)・HR
2年 地理A・総合数学・情報化学・英語(ライティング)・HR
3年 情報化学(有機化学)・HR
その他 国際高校環境サミット

3 成果

  (主なもの,http://www.daimon-hs.daimon.toyama.jpに掲載)
1学年
【情報科学(化学分野)】
生徒全員が,調査をしレポートをHTML化できた.
1)化学に題材を求め、高校生が使えるデータベース作成をする。さらにハイパーテキストによる作品を評価する目を養った.
2)課題数 35テーマについて180本のレポートがHTMLで記述されている.
【英語(オーラルコミュニュケーション)】
テーマを決め国外の多数の生徒とメール交換をし,テーマに関することをまとめプレゼンテーションをする.
2学年
〔情報コース〕【情報化学】【総合数学】
 化学では,酸塩基,数学はプログラミングやデータ分析手法を実施した.その成果はホームページに掲載(約50本)されている.
 情報教育は,「教える・学ぶ」姿勢では実効をあげることはできない.そこで,一斉授業では,課題研究の進め方,討論などをし,個々の生徒の課題研究は放課後や夏・冬休み等を利用させた.このことにより,コンピュータ室・実験室・実験機材の有効な運用が図れた.
 また,数学の試みのように外部の講師による助言が生徒の意欲を高めることも確認された.
 上記を理系の生徒と授業の進度の差を作ることなく,新たに課題研究を付加することめざして,「オープン化,TT,外部からの助言」を基本コンセプトとしてクロスカリキュラム的に柔軟に運用した.
3学年
〔情報コース〕【情報化学】
1)E-Mail,NetNews,の各サービスを使い、情報の収集と発信実習
2)Telnetを用いてOPAC(オンライン図書館目録)にアクセスして図書目録を使う実習
3)有機化合物をテーマに情報の構造化表現とモデル化
以上についてプレゼンテーション・ディベートが実施できた.

4 最後に

 ネットワーク環境下におけるひとつの座標軸として「オープン化」「TT」「外部からの助言」がある.Internetと課題研究の導入を進める中で,必然的これらの要素は必要となった. さらに,今後の進め方にはとして,1)一斉授業と課題研究の併用 2)授業結果・作品の公開の2点を考えている.そのためには,生徒のための多様な視点での「評価」の検討と実施が必要である.そこでは,知識注入量測定から多様な知的表現の評価への転換が必要なことは当然である.
 また,学校の情報環境として,local,community,globalの各層で情報の交換が必要になってきた.現在構築中である.
 インターネットの活用を通じて,情報教育を多数の教科の中で埋め込むことを試みながら,教育に対する発想の転換が求められている.

5 参考文献

「平成7年度大門高等学校授業研究会資料集・大門高等学校」