100校プロジェクト成果発表会 分科会第2会場

インターネットを利用した環境教育
−酸性雨調査プロジェクトの実施とその支援体制−

広島大学附属福山中・高等学校

長澤 武


(1)酸性雨調査プロジェクトのねらい

 今回の「酸性雨調査」プロジェクトは幾つかの特筆すべきユニークな視点を持っている。まず、小、中学や高校の生徒が北は北海道、南は沖縄と全国で一体となって環境問題としての酸性雨調査を環境学習の一環として乗り出したことである。しかも、調査方法、調査器具はもちろん、調査手法も統一し、調査精度も専門家にけっして遜色ないものである。さらに、今後情報通信の中心の一つとなると思われるインターネットを利用し、酸性雨の統一的データーベースを独自に作成し、ホームページを開設し、日本のみならず世界公表しようということである。プロジェクトのねらいや目標をまとめると、次のようになる。
  1. 様々な地球レベルから地域レベルの環境問題の中で、未来を担う児童・生徒に眼を向けさせ、その実態を知りその解決の方向を考えさせる上で、「酸性雨」は比較的身近で、扱い易い教材であること。
  2. 酸性雨」調査を生徒の視点で、生徒が自ら行うことによって、生徒の能動的姿勢を引出し、酸性雨など環境問題へ積極的な学習意欲を高めること。
  3. 全国の生徒と共同して調査を行っているとの連帯感を生み、共同学習の重要性や意義を認識させること。
  4. 酸性雨の全国的分布状況を知ることから、酸性雨の発生メカニズムやその地理的、時間的動態を気象学との関連で理解し、リージョナル及びグローバルな視点から酸性雨問題学際的に考える動機を与えること。
  5. インターネットという最新のパソコン・ネットワークシステムに触れ、パソコンやのシステムに対する理解を実際のオペレーションによって深め、それを習熟する機会を得るとともに、マルチメデイア時代に対応する能力を身に付ける機会になること。

(2)プロジェクトの推進体制

  アドバイザー  広島大学総合科学部教授        中根 周歩
          広島大学中央廃液処理施設助教授    正藤 英司 
          広島大学附属福山中・高等学校副校長  長澤  武
  支援体制    コンピューター教育開発センター(CEC)
          情報処理振興事業協会(IPA)   三菱総合研究所(MRI)
  プロジェクト参加校    100校プロジェクト参加校    33校 
               100校プロジェクト以外の参加校  7校

(3)プロジェクト推進の経過

  1995年6月  広島大学の中根教授・正藤助教授とプロジェクトについての基本構
           想をまとめ、CEC,IPA,MRIと100校プロジェクトの共
           同企画として実施する方向で協議し、実施することを決定する。
  1995年8月  電子メールを用いて、100校プロジェクト参加校に参加をよびか
           ける。
  1995年10月 参加校の締切りを予定より延長。全体で40校となる。
           参加校に測定のマニュアルと、観測機器(レインゴーランド・ph
           メーター)を送ることを中根先生に依頼。
  1995年11月 測定の練習のため観測を依頼。データを電子メールによって送って
           もらうよう参加校に依頼。問題点の洗い出しをおこなう。
  1995年12月 三菱総合研究所で作成中のホームページが完成。パスワードを参加
           校におくる。
  1996年1月  ホームページへのデータ入力開始。本格的な運用開始。
           参加校における実施状況の調査。
  1996年2月  プロジェクトのまとめと次年度以降の実施計画の立案。

(4)1995年度の成果

  1. 参加校における観測体制をほぼ整えることが出来た。
  2. ホームページのデータ入力部分、データを一覧表の形でみる部分についてほぼ完成したことにより、運用についての見通しがたった。今後は意見交換や、専門家の評価を参加校にフィードバックする部分の充実をはかりたい。
  3. 環境教育にとつて、インターネットが大きな役割をはたすことが、実証できた。
  4. 学校・大学・CEC・IPA・MRIの協力体制が、インターネットの利用によってみごとに確立し、プロジェクトを効果的に推進することができた。

(5)各校における観測体制について(2月実施のアンケートより一部抜粋)

   参加校にたいするアンケート調査   回答していただいた学校 21校
   各学校におけるプロジェクトの位置づけ観測グループ
   クラブ活動・部活動    12校    選択科目等授業の一貫として   5校
   学科の活動として      3校    希望者             1校

(6)1996年度以降の計画

  1. 現在の観測体制に加えて、導電率の測定や、当初から計画していた雨水の分析を加えたい。  
  2. 酸性雨調査プロジェクトを、今後長期にわたって継続し、データの蓄積をおこなうとともに、学校における環境教育の、中心的な活動として位置づける努力をしたい。