100校プロジェクト成果発表会 分科会第3会場

共同利用企画に関する児童の調べ学習
〜「一本の樹」と「日本のお正月」〜

東京都港区立神応小学校

斎藤 等

E-mail:saito@shinno-es.minato.tokyo.jp

1.はじめに

 100校プロジェクトを推進するIPAとCECは、インターネット環境を利用した共同学習や情報交換を目的とするいくつかの「共同利用企画」を提案している。本校では、今年度、共同学習型利用企画の「生物生息調査:一本の樹」(以下、一本の樹)と情報交換型利用企画の「教育素材・教材の交換:日本のお正月」(以下、お正月)の2つに参加した。
共同利用企画とは、本来、複数の学校や教育研究機関等が協力しあい、そのテーマに関して、インターネットを活用した授業を展開し、子供たちの学習に役立てていこうと考えた企画である。しかし、今年度はこの企画の初年度であったため、準備・運用面で手間取ったり、また、実質的なスタートが2学期中旬以降になったことなどもあって、各校とも当初の計画通りに進まず、十分な活用ができなかったというのが正直な感想であろう。
 そこで、今回は、「共同利用企画の活用事例」というより、共同利用企画に関係した「本校の事例」を報告させていただくことにする。

2.一本の樹

 ア.目的
○各学校の「一本の樹(桜)」の観察を通して、自分たちの住む地域の自然を見つめ直す。
○他地域の子ども同士が協力して自然観察を行い、他地域と自校の情報を比較することや日本全国の情報から、桜・紅葉などの季節前線や動植物・昆虫などの生息情報を調べる。
 イ.児童の学習活動
○6年生児童が、毎朝校庭の桜を観察した。(全体の写真・葉の写真・気温・一言観察日記)
○観察結果は、神応小のホームページ(図1)及び、「一本の樹」共同のホームページとして、情報基盤センターに各地のデータを公開し、地域ごとの比較を可能にした。
URLアドレスは、神応小が( http://shinno1.shinno-es.minato.tokyo.jp/ippon.html )で、共同ページは、( http://www.cec.or.jp/es/kyouiku/100/project/prjlist/joint/tree/index.html )である。
 ウ.児童の感想
○今までは、紅葉や落葉が終わると何も変化がない毎日のように感じていたが、定点観測を続けることで、冬の樹にも様々な変化があることに気づき、生命体としての止まることない活動を知ることができた。
○自然の変容には、外界との関係(自然環境・社会環境)の中で、必然があることに気づいた。
○他地域の様子をもっと知りたかった。知識として知っている季節前線の変化が、実際にどうなっているのか調べてみたい。
○桜は世界中にあるというので、他国の情報も調べてみたい。

3.お正月

 ア.目的
○「日本のお正月」をテーマとして、各地域の食べ物・風習・気候・行事等に関する情報を収集、蓄積して相互に利用可能なデータ集とする。
 イ.児童の学習活動
○2年生児童が、生活科の学習として、冬休み中及び3学期に、お正月や冬のくらしについての写真を撮影したり、話を聞いて調べたりした。また、昔のお正月遊びをして遊んだ。
○教師もお正月の特徴的な写真を撮影し、子供たちに資料として提示した。
○調べた結果は、神応小のホームページに公開した。
URLは、( http://shinno1.shinno-es.minato.tokyo.jp/syogatsu.html )である。
○他地域の学校に、その地域の冬の行事や暮らしの様子を電子メールで尋ねた。
 ウ.児童の感想
○お父さんの田舎と私たちの町では、お正月の様子が違うことが分かった。
○昔のお正月と今のお正月も違いがあるようだ。昔からある遊びも面白かった。
○日本のいろいろな場所では、どんなお正月なのか知りたい。

4.まとめと今後の課題

 「一本の樹」の活動は、現状のまま(毎日定時に観察し、写真を撮る)では負担が大きいとの意見があり、参加校が少なかった。不定期でも良いことにするなどして、参加校を増やして、今年は季節前線を調べさせたい。「お正月」も、今後より多くの地域データが集まれば有効なデータベースとなるだろう。また、児童が電子メールを活用することで、4年生の「日本各地のくらし」など学習に直結するものも期待できる。インターネット環境ならではの利点を生かし、日本各地は勿論、世界の桜や世界のお正月の様子調べにも発展させたい。