インターネット活用状況調査アンケート
〜集計結果の全体的傾向〜

大阪大学 人間科学部

山内 祐平

yu@hus.osaka-u.ac.jp

1. はじめに

100校プロジェクト事務局は1995年11月に、インターネット活用の実態調査を行なった。このアンケートの作成は、我々の研究室(教育システム工学講座)も協力させていただき、分析にもかかわっている。

ここでは紙面がかぎられているので、小・中・高・特殊教育諸学校を通じた全体的傾向をトピックを抜き出す形で報告したい。

なお、詳しい集計結果は、教育ソフト開発・利用促進センターのサーバならびに大阪大学人間科学部のサーバ (http://www.hus.osaka-u.ac.jp/esthome/est_home.html) にて、公開する予定である。

2.インターネット環境

グラフ1:クライアントの配置場所

【クライアントについて】

インターネットにアクセスできるクライアントの7割はコンピュータ室に設置されている。ただし、6割の学校はクラアントが5台以下という状態にあり、この状態では活用することが困難であると訴える学校もあった。

【管理体制と研修】

システム管理者の78%は本業との兼任であり、専門の管理者は7%しかいない。また、7%は管理者なしという状態で運用を行なっている。ただし、85%の学校は情報教育委員会などの運用組織によってこの状況をカバーしようとしている。

64%の学校では研修を学校独自で行なっており、27%の学校では研修を実施していない。

【導入・活用の問題点】

導入・活用の際に苦労したことを質問した結果、最も多かったのが、インターネットで用いられる用語(例:FTP,TCP/IP,IRCなど)が難しいという問題であった。(107校中70校)

以下、コンピュータ・その他の機器やソフトなどの使い方が難しい(52)、 得られた情報が英語(その他外国語)なので理解するのに苦労がある(51)、欲しい情報がどこにあるのか分からない・探せない(49)、全般に、活用しようという教師の熱意が乏しい(45)と続く。

逆に、 交流をはかろうにもなかなか相手校が見つけられない(14)、インターネット活用のアイディアがなかなか浮かばない(2)など教育的な問題は少数であったが、これは苦労がなかったというよりも、まだそこまで実践が進んでいないことを表わしていると考えられる。

3.電子メールとWWWの活用

電子メールのアドレスを一人一つ与えている割合は、教師が51%、児童・生徒が23%になっている。また、電子メールをいつでも利用できるかという問に対しては、94%の教師が自由に利用できるのに対し、児童・生徒は44%にとどまっている。

ホームページを立ちあげている学校は87校あり、作成はホームページ管理担当の教師が中心になっている。

表1:ホームページの作成過程と作成主体

107校中81校では教師の中でHTMLが使えるのは一部であり、ホームページを公開した87校中38校はWordtoWebなどのHTML作成補助ツールを利用している。

ホームページの内容として最も多いのは、学校の歴史・所在地などの紹介で、80.5%の学校が行なっている。以下、学校の教育目的の表示 (60%)、他のページへのリンク(59%)、地域紹介(56%)と続いている。各クラス・生徒の自己紹介をのせている学校は52%で、ほぼ半数であった。

グラフ2:教科別に見たインターネット利用(高等学校)

4.授業・授業外でのインターネット活用

グラフ2は、高等学校においてどの授業でインターネットを活用しているかを表わしたものである。通常の教科の利用はあまり多くなく、クラブ活動や特別に設定された時間に行なわれていることがわかる。中学校・小学校でも同様の傾向が見られる。これは、インターネットに慣れるための時間設定が多いのと、国際交流などの時間が既存の教科枠におさまらない結果だと考えられる。

授業の中で利用されているアプリケーションは40%がWWW、34%がE-mailとなっており、この2つが現在の主要な利用形態となっていることがうかがわれる。

5.まとめ

現在の状態は、導入時の技術的困難や組織的困難を乗り越え、教育利用へ進みつつある途上と判断できるだろう。最後になりましたが、アンケートに答えていただいた参加校のみなさまに厚く御礼申し上げます。