新100校プロジェクト成果発表会
高等学校部会

普通科高校におけるインターネットの多角的活用
電子メールを用いた異文化交流講座と理科実験観察データベース作成プロジェクト

岡山県立岡山芳泉高等学校 谷本泰正
1. はじめに
岡山芳泉高校の概要
 全日制普通科 岡山市内の五校で総合選抜制 ほとんどの生徒が進学希望
 1学年10クラス 教科の授業については週30時間の教育課程を組んでいる
インターネットの活用に対する考え方
 自ら学ぶ力を育てることに役立てる
 興味を広げていく過程で様々な発見をし,さらに次の活動への動機づけにつなげる
 学校以外の場に評価の場を与えることで意欲を高める
 双方向性を生かして,交流を図ることに活用する
 今回は,授業における生徒の学習活動への活用例として「電子メールを用いた異文化交流講座」と,教材を交流する活用例として「理科実験観察データベース作成プロジ
ェクト」を中心に報告する。

2. 電子メールを用いた異文化交流講座
講座の概要
2年生を対象とした土曜活用選択講座 70分の授業 2講座で63名の受講者
相手校 アメリカ合衆国カリフォルニア州San Jose市Silver Creek High School
使用したコンピュータについて
 インターネットに接続して電子メールが送受信できるもの
 スタンドアローンでFDのみを備えたもの
関連URL http://www.hosen-hs.okayama.okayama.jp/emailexchange/

講座のねらい
1. 海外の学生との電子メール交換を通して,自国や他国,他民族の文化の相違点・共通点の発見及びその背景の探求を行わせる。その結果として,各々の文化の良さを
理解させ,相互理解のための判断力を身につけさせる。
2. 英語を電子メール交換の手段とすることにより,英語学習に対する意欲と英語による自己表現力の向上をめざす。
3. 電子メール交換のためのマナー,操作手順を学び,情報化社会に対応できる基本的な態度を身につけさせる。

授業計画 (70分×7時間)
1. 活動予定,パソコンソフト操作,タイピング練習(1時間)
2. ID登録,メール送受信確認,送信受信時の操作とマナー,教員への送信による練習(1時間)
3. グループ作り,テーマ決定,入力作業(1時間)
4. グループ学習,入力,メール送受信(4時間)
このほか,必要に応じて放課後を利用して各自電子メールの送受信を行う

成果と課題
 「外国の友達ができて,いろいろと話ができた」,「自分で辞書を調べ,間違ってもいいから英作文をした」といった感想を含め,多くの生徒が楽しみながら電子メールの交換を行い,英語を使ったコミュニケーションを体験させることができた。普段の授業時に比べ,英語表現に関する質問などが教員に対して発せられる頻度が高く,英語の学習に対する意欲が高まった。また,相手の高校生と自分の考え方の違いに驚く生徒もあり,異文化に対する理解も増した。
 教科の指導以前に,コンピュータの操作に関する指導を行うための時間を設定しておくと効果的であろう。今回は,選択講座であり,意欲の高い生徒が多かったので,放課後も自発的にメール送信を行っていたが,生徒一人一人が授業時間内に電子メールを送るには,ネットワークに接続されたコンピュータが,生徒数必要である。

3. 理科実験観察データベース作成プロジェクト
概要
この企画は,100校プロジェクト平成8年度共同企画としてスタートし,平成9年度は自主企画として進めてきたものである。この企画では理科教育においてきわめて大切な,実験・観察についてその実施例をネットワーク上に公開し,データベース化することで,それらの交流を図り,授業において,安全で効果的な実験・観察を行うために活用することをめざしている。
 高等学校で学習する理科のうち物理,化学,生物,地学の各分野および小学校,中学校の合計6つの区分に分けてWeb上に公開されている実験事例等のデータベースへの登録と,このデータベースにむけた実験事例の公開を進めてきた。関連URL
http://www.hosen-hs.okayama.okayama.jp/rika/

成果と課題
平成8年11月から本データベースの運用を開始し,平成9年度には検索機能を付加し現在に至っている。図1は平成9年1月〜2月15日までの利用状況を示したものである。また,図2は2月15日現在で登録されている実験120件にしめる各区分ごと登録件数の割合を示している。

図1

図2

 同じような内容の実験でも,授業での展開,発問といった部分は,それぞれの学校の実情に応じて各指導者が独自に工夫していると考えられる。他校での実験事例は直接利用できない可能性が大きいものの他の人が実践している方法を見ることで,新しい発想で自分の授業を改善することができることを期待している。これからも,多くの方の力添えを得て,データベースの充実を図りたい。

4. まとめ
 これまで本校では,インターネットの活用について課外活動,授業,教材の入手・交流など多角的な利用を研究してきた。この結果,学校内にとどまらず双方向のやりとりが広範囲・迅速にできること,誰もが情報発信者になることができることなどの特長を各場面に応じて活用することで,生徒の意欲を引き出したり,学習効果を高めることができることが明らかになってきた。