新100校プロジェクト成果発表会
高等学校部会

農業高校のインターネット活用

山形県立庄内農業高等学校 折原 辰徳
1.はじめに
  本校は、明治34年創立、山形県庄内地方唯一の農業高校です。近年になり農業を取り巻く環境の変化から農業教育にも新しい波が押し寄せ、第一次、第二次学科改編を通して先端技術、特にコンピュータ導入による農業教育を目指してきました。平成4年の第二次学科改編により「生産情報科」を設置しました。学科設置により、農業高校では特異なケースとして、組織的に情報教育に取り組める環境となりました。生産情報科の教育目標は、これからの農業経営にはコンピュータが不可欠として、コンピュータの操作技術はもちろん、ネットワークを利用した情報収集やコミュニケーションを図ることができる人材を育成することです。従って、学科改編と同時に新しい情報教育システムを導入し、ネットワーク学習に取り組むことができるBBS(庄農ネット)のシステムが開設されました。ここに平成7年度より100校プロジェクトによりインターネットが接続されて、教育目標実現にむけてインターネットを使った様々な取り組みを行ってきました。その結果、ネットワーク学習もより充実したものになり、さらにインターネット活用の手がかりを見つけることができました。ここに、主に生産情報科が取り組んだインターネットの活用事例を紹介します。

2.インターネット導入以前の校内ネットワーク
 インターネットが導入されるまでの本校のネットワークは、UNIXマシンをサーバとしたパソコン教室内LANと電話回線を使ったBBSの環境が整っていました。教室内のLANはファイルサーバ機能と本校BBSに接続できる環境にありました。この環境においてのネットワーク学習は、まだコンピュータネットワークの導入の段階ということもあり、メールの送受信、ファイルの送受信などの操作技術が中心でありました。

3.インターネット導入
 平成7年6月よりインターネットへの接続がなされました。しかし、クライアント用のパソコンが1台ということもあり、いかにして授業に活かすか大きな問題でした。既存の本校ネットワークへの接続も双方の環境の違いから不可能ということもあり、しばらくはクライアント1台を交代で使うような状況が続きました。

4.ネットワークの活用事例
(1)プロジェクト学習(課題研究)での成果
 プロジェクト学習は、課題(目標)の設定→計画→実施→反省・評価 という手順で学習を進めて、問題解決の学習として効果的です。この学習は、生徒が自発的、意欲的に取り組むことが大切で、「自ら考え、自ら実践する」ことにある。プロジェクト学習の意義は、プロジェクトを実際に行う課程で、問題のとらえかたや、解決の方法などについて、理論的なものの考え方を養うことにあります。このプロジェクト学習にインターネットを取り入れました。学習の流れは次の通りです。
1)研究テーマと研究計画の作成
2)情報収集
   WWWを用いた情報収集
   サーチエンジンを使った情報検索
   データの収集・蓄積
3)データの整理・分析
   画像の処理
   データの分析
4)HTMLを使い研究内容のまとめ
   ホームページの作成
5)ブラウザを用いた発表・サーバへの蓄積
   情報の発信

 生徒自身がテーマを設定し、年間を通して1つのテーマについてインターネットを使って解決し、まとめていくことは生徒のやる気を喚起することができ、生徒の自発的な活動を生み出すことができた。ホームページを閲覧する度に新しい何かを発見する喜びを知り、充実したものになった。様々な情報の中から自分が必要とするデータを探し出すことは、はじめの頃はだいぶ時間がかかっていたが徐々に検索に要する時間が短くなっていき、スムーズな検索が可能となった。また、自分の研究内容についてホームページを作成し発表することは、生徒の発表能力の育成につながった。

(2)気象データのホームページ掲載
 本校敷地内に通信用気象観測ロボットが設置されており、リアルタイムな気象観測が可能となっている。ただ、このシステムも、インターネットへ直接接続することが不可能で、気象ロボットから収集したデータをHTML形式に書き直し、改めてインターネットサーバに載せることになる。気象データの蓄積による地域への情報提供を目的としている。

(3)CU−SeeMeの活用
 県産業教育フェアにおいて会場と本校をCU−SeeMeで結び、会場に来ている人と本校生徒との交流をおこなった。他校の生徒との交流はたいへんスームズにおこなわれた。生徒はリアルタイムにお互いの表情を確認しながらの会話にたいへん興味を示してくれた。また、これを見学してくれた他校から、CU−SeeMeでの交流を申し込まれ、まだ実験段階であるが情報交換をしながらの交流を続けている。
 この体験を通して生徒は、他との交流の楽しさを体験できた。また、ビデオカメラにより人がいることを認識することとなり、ネットワークの向こうには人がいることを意識することができ、人との交流がより身近になったことと共に表現することの難しさとエチケットの大切さを学ぶことができた。

5.まとめ
インターネット接続当初はクライアント1台という状況であったが、それからクライアントの増設を試み、なんとか3台を確保でき、しばらくこの状態が続いていた。そしてついに今年の1月にシステム更新があり、生徒用のコンピュータ全てがインターネットに接続可能になった。生徒一人一人が自由にインターネットに接続することが可能となり、ますます、インターネットの活用が充実してきた。反面、使用者のモラルについての教育が必要不可欠となってきた。インターネットで得られる情報は、精選されていない生の情報も含まれており、それを扱うことができるのは農業高校としてたいへん魅力的なことである。農業問題や、経営情報、技術情報など最新の情報を簡単に得ることができる。しかし、そのような情報がネットワークを通じ学校に自由に入る込むことは、社会と学校の垣根が無くなることを意味する。学校という保護された環境を越え、生々しい現実に直面する場合もでてくる。インターネットを教材として使用するにあたり、使用する者のモラルと使用の目的を明確にすることが要求されてくる。また、生徒教師共々、的確な情報を見定める能力を養う必要がある。
 今日、農業では、生産から販売までたくさんの情報を入手し、それらの情報を加工分析して経営に役立ている。農業とインターネットを考えた場合、農業経営へのインターネットの活用は今後ますます必要性が増すことが考えられる。本校では、地域農業の振興のためのインターネット活用を模索している。農業経営に有益な情報の提供や、農業経営者(または支援者)同士のコミュニケーションの場としてのインターネット活用など、情報交換の場としての活用を目指している。まず、手始めに本校卒業生のネットワーク作りを進めている。卒業後もインターネットを活用している卒業生との情報交換は、在校生にとって大きな励みになっている。また、このような人と人のネットワークは地域農業の活性化に大きく寄与するものと考えている。